「ご乗車ありがとうございました。お手数ですが"エリス"チケットを拝見します」
「ねぇよそんなもん」

ドジャーはチケットの代わりだと言わんがごとく
駅員のウサギの顔に拳を入れて列車を降りた。

鼻血を出して"ウサギのように飛び跳ねるウサギ"を横目に
アレックスとエクスポも何事もなかったかのように列車を降りた。




「これが出口とエリスに続く門かってのが問題だな」


駅からすぐそこにそびえ立つ門。
くぐってくれと言っているような大掛かりな門だった。

そしてその先の光景。
そこには大量とも言えるモンスター達の姿が見えた。
槍を持ったトランプの形をしたカードマンというモンスター。
不思議の国という名にふさわしいモンスター達だった。

「うっわぁー!トランプ人間がいっぱいですね」
「ボク達を黙って通す気はなさそうだね」
「カッ!これだけトランプがありゃ街人集めて神経衰弱でもやれそうだな」

強そうではないがこの数。
少し・・・いや、かなりめんどくさそうだ。
山積みの宿題でも見たように見るだけでやる気が失せる。


「まっ、でも・・・・・」

ドジャーは腰から2本のダガーを取り出す。
そして片方のダガーを右手でクルクルと回した後、

「やらなきゃしゃぁねぇか!」

それを一匹のカードマン目掛けて投げつけた。

空気を裂いて飛ぶダガー。
そして見事一匹のカードマンの頭のど真ん中にストライクした。

「っしゃぁ! ババ抜きといこうか!!」

ドジャーの周りにブリズウィクの風がフワッと浮き上がる。
そして次の瞬間ドジャーが猛スピードでカードマンの群れの中に突っこんだ。

カードマン達が一斉にドジャーに飛び掛る。


「まったくドジャーはいつになってもせっかちなんだからね。美しくないなぁ」

一人でカードマン達をなぎ倒すドジャーを横目に
エクスポはやれやれと右手に何かを取り出した。
何かと思うとそれは線の細い雰囲気のエクスポにはあまりにも似つかわしくない物だった。

「ば、爆弾!?」
「どうしたんだいアレックス君。爆弾<スマートボム>が珍しいかい?」
「い、いえ。ただエクスポさんがそういったタイプだと思わなくて・・・」
「そうかい?爆弾はこの世でいっとう美しい武器だよ
 一瞬の爆発<ラスト>に全てをかける武器。それが爆弾さ
 言っただろ?積み重ねて積み重ねて最後は華々しく。それが最高の美だって」
「は、はぁ・・・」
「この爆弾は一個一個ボクの自作でね。これらは刹那の爆発のためのボクの結晶達さ」
「こ、これ全部ですか!?器用なんですね」
「ハハハ。これでもボクは世間ではこう呼ばれていて有名なんだよ?
 『時計仕掛けの芸術家<チクタクアーティスト>』ってね」

アレックスは聞いたことあった。
たしか昔は懸賞金もついていたはずの人だ。
やはりドジャーと同じ針のムシロなのだと分かる。
まぁいい人だとは分かるので特にたいした問題ではないとアレックスは思った。

「ま、ボク達も加勢するかな」
「そうですね」

そう言ってアレックスとエクスポも門の先へと足を踏み入れる。

するといらっしゃいませと言わんがごとくカードマン達が飛び掛ってくる。

アレックスは飛び掛ってきたカードマンを槍で横に切り飛ばし、
もう一匹のカードマンを槍で貫いた。
紙なだけにあまりにも手ごたえが無い。
簡単に言えば極力に弱い。
が、数がやっかいである。

「ったく。美しくない奴らだなぁ」

エクスポに向かってカードマンが飛び掛る。
が、エクスポはそれを華麗に避けたと思うと
避け際にそのカードマンの頭に小さな爆弾を付けた。

「"佳人薄命"とか"美人薄命"っていうけどさ」

エクスポは爆弾を仕掛けたカードマンを蹴り飛ばす。

「これはその逆。散りゆく物こそ美しいよね」

その瞬間。
そのカードマンは爆音と共に粉々に砕け散った。
紙の燃えカスが空気中を舞う。


「てっめぇエクスポ!おめぇの戦闘はあぶなっかしいんだよ!
 俺を巻き込まないようにもっと離れた所で戦ってくれ!」

少し離れた所からドジャーが叫ぶ。
ドジャーは叫びながらもダガーを両手にカードマン達を切り刻んでいた。
盗賊らしい素早い身のこなしで回り込み、潜り込み
ドジャーが動いたと思われる所から順にトランプの切れ端が飛び交う。

「今日はダガーをあまり投げないんですね」
「あぁ、そりゃこれだけ敵がいたんじゃあんまり投げるともったいねぇだろ?
 それにな、カードはよく"切る"ってのがマナーだ」
「アハハッ、なるほどね」

そんな事を話していると3匹のカードマンがアレックスに飛びかかってきた。

アレックスが腰を深く落として槍を構える。
ピアシングボディの構えだ。
そして一気に槍を突き出した。

槍は一突きで3匹のカードマンを貫いた。

「6、12(絵札)、7。ありゃ、バースト(ブタ)だぁ」
「何言ってんだ?アレックス」
「ただ斬っててもヒマなんでブラックジャックでもしようかなって」
「うぉ、アレックス。法を司る元王国騎士団様がブラックジャックなんて知ってちゃまずいだろ」
「騎士団だって遊びますよ。ってか遠征の時なんかはトランプくらいしかする事ないんです」
「カッ、たまんねぇなそりゃ」

ダガーでカードマンを斜めに斬りつけながらドジャーは言った。
そして「キリがねぇな」とため息をついた。

「マジこの数はたまんねぇな。
 アレックス。ここはドーンとお前のパージで全部燃やしちまえよ
 紙は燃えるゴミだろ?」
「いやですよ。物凄く魔力使いそうじゃないですか
 これからどれだけ先があるのか分からないのにそんな事したくないですよ」
「んじゃぁどうすんだよ!」
「ドジャーさんが頑張ればいいじゃないですか。
 ほら、疲れたら僕がヒールかけてあげますから」
「てめぇが自分で頑張って自分で回復すればいいじゃねぇか!!」

「コラコラドジャー、アレックス君。ケンカしてる場合じゃないよ
 こんな心のない醜いモンスターの群れなんて見るに耐えないんだ
 さっさと片付けて進もうよ」
「じゃぁエクスポ!テメェもモンスター退治手伝えよ!」
「さっきドジャーがボクに自重しろって言ったんじゃないか」
「楽しろとは言ってねぇ!」

エクスポが両手を広げて"やれやれ"といった仕草を見せる。

「まぁもう手伝いは終わってるさ」
「あん?」
「まぁ、見てよ」

エクスポは手のひらに懐中時計を取り出した。
そしてその長針は時計の天辺を目掛けてチッチッとカウントダウンを奏でていた。

「ソリッドボム(時限爆弾)だよ」

時計の長針が0を示す。
その瞬間。

3人の辺り一体がドーナツ型の爆発に囲まれた。

「うぉっ!」
「うわぁっ!」

轟音と爆風が飛び込んでくる。
その爆発で周り一体のモンスターが全て跡形も無く砕け散った。
3人を中心に円形の爆発。
まるで3人以外の全てが爆発したかと思うような大爆発。
どれほどの爆弾を使ったらこれほどの爆発をおこせるのだろうか。
だがそんな事は分からなかった。
なぜなら全ての爆弾はコンマ1秒のズレも無く同時に爆発したからだった。

「あぁ・・・・。美しい。ボクはこの瞬間が一番好きだ・・・」

煙の中でエクスポが感無量といった顔つきで言った。
やっぱ少し危ない人だとアレックスは思う。
だが凄い。
先ほど爆弾は全て自作していると言っていた。
しかもこの同時爆発。
かなりの計算力がないと無理なはずだ。
並大抵の技術と頭脳じゃない。

「さぁ、今のうちにこのモンスター群を突破しようじゃないか」



アレックスとドジャーとエクスポはさらにエリスゾーンの奥へと進んでいった。





                 






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