「カブ!」「イィィ!」

ブレーブは片方の盾を上向きにした。
まるでおぼんを持つような格好だ。
そこにカブが飛び乗る。

「いらっしゃいませ。猿のミートパテでございます・・・ってか?」
「ケッ!盗賊の方は口だけ達者だな!」「な!」

ブレーブの盾の上で
カブは両腕の爪を重ねるように前へ突き出す格好をした。
両腕の爪が真っ直ぐアレックスとドジャーに向けられている。

一方ブレーブはなにやら右腕に力をこめている。
ゴツい腕から血管が浮き出ているのがキモい。
次の瞬間。ブレーブが叫ぶ。

「くらえ!カブドリルミサァァァイル!!!」「ァァィィィイイ!!!」

大声と同時にブレーブが盾の上に乗ったカブを思いっきり投げた。
まるで盾によるパイ投げのようなフォームである。

そして投げ飛ばされたカブの方はすごい勢いで回転して飛んでくる。
突き出した爪がドリルのようになっている。
まるでミサイルのように空(くう)を突き進んできた。
空気を掘るような勢いだ。

「「な、なんじゃそりゃああ!!」」

人間を投げ飛ばしてくるという無茶苦茶な技に二人は驚く。
だが驚いている暇もなくカブはぶっ飛んでくる。
アホみたいな技だが当たったら多分痛いじゃ済まない。

咄嗟に二人はそれぞれ左右に跳んで避けた。
ギリギリだがなんとか二人は避け切った。
カブの回転の風圧が二人の髪を揺らした。

「チィ!はずしたか!」「ィィイ!」

カブが軽く地面を削りながら着地した。
地面を削るとは・・・アホみたいな技だがやはり威力は凄いようだ。
カブがすぐさま反転してブレーブの所に戻っていこうとする。

「行かせません!」

アレックスは戻り際のカブに向かって槍をなぎ払った。
だが消えたかと思うほど素早い身のこなしで避けられてしまった。
予想以上のカブの動きの速さにアレックスは驚く。

「あのカブって小男、爪を付けてるって事は修道士ですよね?
 なんであんなに素早いんですか?」
「あぁ、俺もあのスピードに手こずったんだ。体格的なもんもあるんだろうが・・・」

そこでまた遠くからルエンが話の間に入るように叫ぶ。

「アハハ!カブはピュタワーカーと速度ポーションでドーピングしてんのよ!
 一流盗賊のブリズ時並の速度で動けるわ!あんたらじゃお話にならないよ!」
「ならないよ!」「よ!」

「くっそぉ・・・ルエンの野郎。部下二人にまかせっきりで口だけだしやがって」
「僕がブレーブと戦ってる時もゴチャゴチャうるさかったです」 
「むしろチキン野郎はあいつじゃねぇか・・・
 大体おれは一流盗賊よりも速いぞ。超一流、いや特上盗賊だっての」
「特上トロのドジャーさん。今はルエンより二人組です。」

「次ははずさないぜ」「ぜ!」

カブがいつの間にかブレーブの肩の上に戻っていた。
またもや大猿小猿コンビ完成である、
そしてもう一度ブレーブは盾で人間カタパルトを作成した。
盾の上にカブが乗っかる。

「おい、アレックス」
「分かってます。」

アレックスとドジャーは急に横に走りだした。
露店の合間を縫って不規則に走り回る。

「ブーレブ!あんたの狙いを乱すつもりよ!気をつけな!」
「分かってるぜ姉御!」「ご!」
「あいつらは二人で動いてるわ、まとめて貫いてやりな!」
「分かったぜ姉御!」「ご!」

ブレーブは狙いをつける。
だが不規則に動く二人になかなか狙いを定められない。

「ク、クソォ・・・姉御ぉ・・・」「ごぉ・・・」
「しょーがないね!」

ルエンが遠くから何かを投げた。
いや、発射した?
そして飛んできたソレは突然アレックスとドジャーの足元で炸裂した。
パパパンという音が広場に鳴り響く。

「わぁっ!」
「ぬぁ!爆竹か!」

アレックスとドジャーが驚きで足を止めたその瞬間を
ルエンは見逃さなかった。

「今よブレーブ!」
「くらええええぇぇえ!」「ェェアア!」

また物凄い勢いでカブが射出された。
ネジのように回転しながら突っ込んでくる。
カブは目を廻さないのだろうか。

しかしそんな事を考えているヒマはない。
なぜならさっきより勢いが強い。
しかもルエンの爆竹のせいで体勢が悪い。
このままでは避け切れない。
アレックスとドジャーは一瞬目を合わせた。

「「てぃ!」」

二人はお互いを突き飛ばした。
その勢いでカブミサイルの軌道から外れる。
二人の視線の間をカブミサイルが通り過ぎていった。

一瞬アレックスとドジャーの口元に笑みがこぼれた。

そして次の瞬間
広場に鈍い大音と「へぎゃぁぁっ!!」という声が響き渡る。
そして何かが崩れていくような音がその後に続いた。

「しまった!!大丈夫かカーーーーーブ!!!」

カブはなんでも屋に突っ込んでいた。
ギュンギュンに詰め込まれた大量の商品が崩れる。
店自体も衝撃で大きな軋みをあげた。

アレックスとドジャーはこうなる事を狙って同じ所をグルグル回っていたのだった。

「あ、あたいのなんでも屋が・・・」

まるで積み木のように崩れていく商品の数々。
バコンっという音を立てて看板が地面に落ちた。
よくみると商品の山の中にカブの足らしきものが見える。
だがピクリとも動かない。
あの凄い勢いで突っ込んだのだからタダでは済んでいないだろう。
とりあえずは再起不能のはずである。

「バカだが凄い技だったな・・・」
「でも凄いバカでよかったですね」

なんでも屋に着弾したカブミサイル。
死因は誤射による自爆。
「殉職したカブ少佐のご冥福を深くお祈りします」
アレックスとドジャーはなんでも屋に敬礼をささげた。

「く、くそぉぉぉおお!姉御ぉぉぉ・・・」
「あ、あわてんじゃないよ!」

ルエンを外して考えるとあちらはブレーブ一人。こちらは二人。
2VS1では勝負は見えていた。
だが、

「ドジャーさん。さっきの責任をとってください」
「あん?」
「ドジャーさんのせいでブレーブを倒し損ねた事です
 本当は倒してた敵をもう一度倒すのは面倒この上ないです」
「俺一人でやれってことか。まぁ当然か・・・」

ドジャーは両手のダガーをクルクルと回した。

「ふん!わざわざブレーブとタイマンしようって事かい。
 死んでから後悔しないことね。ブレーブ!やっちまいな!」
「おぅ!姉御ぉ!」

ブレーブはガンガンっと両手の盾をぶつける。

一方ドジャーは両手を後方に伸ばし、投芸の溜めを作る。
指には4本づつのダガーがはさまれていた。

「ごちそうをくれてやる!」

そう言った瞬間ドジャーは両手4本づつのダガーをブレーブに放った。
8本の閃光が広場の騒ぎ声を切り裂いてブレーブを襲う。

「きかぁぁーーーん!無力!」

ブレーブは声をあげながら2つの盾で投げダガーをガードした。
8本のダガーは盾に弾かれて広場の舗装された地面に散った。
ブレーブの口がニヤける。
だが次の瞬間ブレーブは何かに気付く。

「ヌッ!いつの間に!」

ブレーブのすぐ目の前までドジャーが近づいてきていた。
それもたった一瞬で。
ドジャーは投げたダガーを追いかけるように走ってきていたのだ。
投げられたダガーとほぼ同速で走るなんて・・・
アレックスは眺めながらあらためてドジャーの速さに驚いた。
一流盗賊より上とか言っていたのもまんざら嘘ではない。

「食らいな!」

ドジャーが右手のダガーを至近距離でブレーブに向けて突き刺す。

「甘いわ!」

ブレーブは当然のごとくドジャーのダガーを盾でガードする。
そしてアレックスにそうしたように
そのままその盾で目の前のドジャーをぶん殴った。

・・・はずだった。
だがすでにブレーブの目の前にドジャーの姿は無かった。
さっきまでドジャーがいた場所はただの空虚な空間があるだけである。

「なっ!どこ行っ…」
「ここだ」

声のした先はブレーブの背後。
そして血が垂れているのもブレーブの背後だった。
ドジャーのダガーがブレーブの背中に突き刺さっている。

「バカ・・・な・・・。カウンターより速く動くなんて・・・・」

その言葉に対してドジャーは左手の人差し指をチッチッと振った。

「そんな簡単な言葉で片付けて欲しくねぇな。
 こりゃぁラウンドバックっつぅれっきとした技だ
 簡単に言えば一撃を与えながらの超高速回り込みだが
 言うほど簡単な技じゃないんでね。上級盗賊にしか無理な技なんだぜ?」

ドジャーは「光栄に思いな」と言ってブレーブの背中からダガーを引き抜いた。
するとブレーブのゴツい体が力なく倒れる。
巨体が大きな音と小さな砂煙を舞い上げて地面に倒れ去った。

「ブレーブ!!!!」

ルエンが叫ぶ。

「さぁ、後はあなただけですよ」
「観念するんだな」

アレックスとドジャーが歩み寄る。
ルエンはそれに反発するように大声をあげた。


「クッソォオオ!あたいをなめるなよ!」

ルエンが腰から武器を取り出した。
だがそれは武器というにはあまりに頼りない、肉の採取用ナイフだった。

「食らいな!」

ルエンが爆竹花火を発射してくる。
人に向けて花火を発射するのは危ない。
だが・・・・危ないという程度だった。

ドジャーが瞬足でルエンへ間合いを詰め、ルエンの手のナイフを弾いた。
採取用ナイフが広場の地面を滑っていった。

「もう終わりだ悪女さんよ」

「く・・・・・・そぉぉ・・・」

ルエンの膝が崩れ落ちた。
そしてルエンは手を広場の地面につけてうな垂れた。





                 






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