-夜-





夜はふけた。
日付としてはクリスマスイブがクリスマスへと変わるが
聖夜は聖夜のままだ。
そんな聖夜、
昼とはうってかわりレビアの街は静けさが漂う。



そんな聖なる闇の中。
一人の男が一軒の家の屋根の上にいた。
帽子も服も赤づくしの格好に白い髭。
そして大きな白い袋。
サンタクロース。
どう見てもサンタクロースだ。
しかし彼は通称『怪盗X(クリス)』
世間を賑わす泥棒だっただった。

「ここで27軒目っと」

今夜だけで27件目の標的の家。
その屋根の上で聖夜の月光をあげながら
赤い服の泥棒サンタは大きな白い袋を担ぎ上げる。

軽くジャンプし、煙突に飛び込むクリス
そして暗く長い煙突のトンネルを落ち抜けると、
火の消えた暖炉の灰の上にザスンという音を立てて降り立った。
泥棒サンタの登場だ。

クリスは暖炉から抜け出すように部屋に一歩踏み出す。

そこは小さな部屋。
子供部屋だった。
暗いその部屋にはベッドが一つ。
子供は布団に包まって寝ているようだ。
寝息も聞こえないほど静かである。

安心して屋探りをしたいところだが
起きていないか一応確認しておかなければならない。

だからクリスは言う。

「良い子はいねぇ〜かぁ?」

その言葉。
それに合わせたかのように
突然布団が跳ね飛ばされる。
子供が寝ていると思われたベッドの布団だった。

「悪い子でよかったらいるぜ」

ベッドの中から現れたのは目つきの悪い盗賊。
ドジャーだった。

「カッ!サンタっつってもそんな年じゃねぇな。白い髭は偽モンか
 こう見るとほんとただの普通の男だ。マジ偽者まるだし」
「な、貴様だれだ!」
「街があんたにかけてる懸賞金が目当ての盗賊ってとこだ
 カカカッ!あんたと金。クリスマスに相応しい最高のプレゼント交換だぜ!」
「ここの家の者はどうした!?」
「ちと説得したら今日は外でバーベキューするってココを快く貸してくれたぜ」

もちろん説得というのはダガーをちらつかせた・・・いわば脅迫である。
今この家の本当の家主達はドジャーに追い出されて外を彷徨っている。
路頭に迷い、聖夜に天に召されない事を心から祈るばかりである。

「チッ!捕まってたまるか!」

怪盗クリスが体をひるがえす。
そして入ってきた煙突から脱出しようとした。
クリスが暖炉のレンガに手をつける。
その瞬間だった。
突然暖炉の薪が激しく燃え盛り、クリスの進入を遮った。
その炎は青白い聖なる炎。
パージフレアだった。

「逃げられませんよサンタさん。いや、怪盗クリスさん」

ドアの影から姿を現したのはアレックスだった。
アレックスが右手の指を下ろす。
と、同時に暖炉の床から吹き出すパージフレアがやんだ。

「くそぉ・・・・貴様ら・・・・」

怪盗X(クリス)があとずさりする。
だが小さな部屋の中。
2対1。
逃げ場があっても逃げるのは困難な状況。
分けのわからない騎士と盗賊にまんまと捕らえられた形である。

「さぁてお縄に・・・いや、蜘蛛の巣についてもらおうか!」

ドジャーが右手を振り落とす。
同時に怪盗クリスの両足に魔法の蜘蛛の糸が絡みつく。
グルグルと巻きついたスパイダーウェブの糸は、
クリスがどう身動きをとっても千切れなかった。

「クッ!こんなもの!」

怪盗クリスも同じように右腕を振った。
するとクリスの両足に絡みついた蜘蛛の糸が千切れ跳んだ。
スパイダーカットというスパイダーウェブ解除スキルだ。

「やっぱ盗賊か」
「みんなのアイドルのサンタさんが"盗"が仕事ですか
 普通のサンタとまったく逆の事をしているなんて笑えないですよ」

「フンっ!"サンタさん"逆から読んでも"さんたさん"ってな!逆こそ正だ!」

クリスが叫ぶ。
アレックスがそれはいろいろ違うだろと思った瞬間だった。
怪盗クリスの赤い服が一瞬なびいて浮き上がった。
移動速度向上スキルであるブリズウィクをかけたのだ。

「逃げる気です!」
「させるか!」

ドジャーがクリスに駆け寄ろうとする。
だがその前に怪盗クリスが両手に数個の爆弾を持ち上げた

「サンタ(俺)からのクリスマスプレゼントだ!ハッハーッ!メリークリスマス!」

それらが部屋にぶちまけられた。
爆音と同時に部屋に煙幕が大量に立ち上る。
ジョーカーポーク。いや、スモークボムか。
とにかく煙の暗闇でまったく視界がなくなってしまった。

「やられたっ!」
「アレックス!ホーリービジョンだ!」

アレックスが左手で十字を画き
そして手を伸ばす。
同時に聖なる光が煙幕の暗闇を開け放った。

が、視界の戻った部屋の窓は割れて、外の冷たい空気を流し込んでいた。

「もうモヌケの殻か・・・・・逃げられましたね・・・・さすが毎年やってるだけはあります」
「カッ!同じ盗賊(同業者)としてその逃げる手際は表彰に値すんぜ偽サンタさんよぉ」

夜の冷たい風が吹き込み、部屋のカーテンが揺れる。
その動きはまるでクリスがアレックスとドジャーを馬鹿にするかのようだった。

「アレックス。てめぇが盗賊であいつの立場ならこれからどうする」
「インビジをしますね。十中八苦。逃走にこれほど適したスキルはありません」
「だろうな。最悪だがビンゴだろうよ」

広いレビアは一面銀世界。
さらに夜の暗闇の中。
そんなレビアの街中で
どうやってインビジをしているサンタを見つけることができるのか。

「・・・・・って普通なら諦める所ですけど」
「ところがどっこいってなもんだな」
「フフ、トラップを仕掛けといてよかったですね。」
「だな。ま、アレだ。こちらから見つけられないなら・・・・・」
「あちらから合図を送ってもらうだけ・・・・ですね」
「多分そろそろだな」

調度そのころ"そのトラップ"にかかった音が鳴り響く。

「この音は・・・やりましたね」
「おぉっと。ジングルベ〜ル♪ってか?聖歌よりご機嫌な音だぜ」

アレックスとドジャーはハイタッチをする。

「あとは持久戦ですね」
「カッ!パーティーは長い方が楽しいってなもんだ!」

アレックスとドジャーが窓から寒いレビアの街に飛び出した。

トラップの"ある音"へ向かって。

















                 






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