ここはレビア。


この街の人々は祭好きだ。
普段から毎日遊び倒しているようにハシャぐ住民達。
寒空の下で大道芸なんて当たり前。
色とりどり数多く揃えられたクラッカーが鳴り響き、
ゲームにギャンブル、ミュージアム。
楽しみだけが楽しみ。
そんな街である。

そして今日はクリスマスイブ。

年中雪の降るこの街はそのせいで季節など分からないが、
人々はクリスマスだけは覚えていた。

なぜならこれほどビッグなイベントはないからだ。

そんな日の夜ももうふけていた。

いつも祭だ祭だと騒がしいこの街も
夜になると静かになる。
みんな子供のよに遊びつかれてベッドに向かう。
クリスマスイブも例外ではない。
雪の降るこの街の夜は途端に静かだ。


そんなレビアの一角。
ひとつのただの民家。

その煙突のから一人の男が家の中に入っていった。

煙突で汚れた服の炭を手で払いながら
その男は言った。

「良い子はいねぇ〜かぁ?」

服・ズボン・帽子。
全身を赤で着飾り
白い髭をたくわえたその男は
白く大きな袋を持っていた。
中はたくさんのオモチャでいっぱいだ。

その男は子供部屋へと入る。

「メリークリスマス」

そして中で子供が小さな寝息をたてているのを確認すると

男は白い袋の中を広げ




ありったけのオモチャを盗んでいった。













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-レビア街角-






「ったく。さっみぃなオイ」

ドジャーが両手をコスりながら言う。

「そりゃぁレビアですよレビア!?雪雪ゆっきー♪」

アレックスは寒さも感じないといった感じでウキウキだ。
鼻歌まじりで雪の降る街を楽しむ。
まるで子供のようだ。

一面銀世界の街の中。
2人の男は雪の積もる道に足跡を残して歩いていた。

雪国万歳!とハシャイでいるのはアレックス。
全滅した王国騎士団の医療部隊出身であり、
そのため聖職者としての修行もつんでいる聖騎士<パラディン>である。

そして寒そうにしているのはドジャー
ルアスのスラム街であるルアス99番街の盗賊であり、
老若男女得物を選ばない彼の行動から世間では『人見知り知らず』と呼ばれている。

「ちょ!見てくださいよドジャーさん!雪だるまですよユーキーダールーマ!
 あ、こっちにも!ねぇねぇ!僕たちも作りましょうよ!あ、あそこにバケツが!」

「・・・・・・犬は喜び庭かけ回りってか?」

寒いながらハシャギまくるアレックスをドジャーは"ついていけねぇ"と白い目でみていた。

「なぁアレックス・・・とりあえずその辺の店に入ろうぜ・・・・」
「えー!もうですか?!雪ですよ雪!こんなにも!」
「こんなにもあるからこそ別に急がなくてもいいじゃねぇか・・・」
「これだけあったら一生カキ氷食べてくらせますね!」
「・・・・・・こんな時に恐ろしい事言うんじゃねぇよ・・・」

このままでは思考まで凍ってしまいそうなので
ドジャーはアレックスの首根っこを掴み、無理矢理ひきづっていった。
アレックスは不満そうにひきづられる。
雪の上にひきづられるアレックスの足で二つのレールができた。

そのレールは小さなレストランへと向かっていった。









「カァー!!生き返るなコリャ」

適当に入った小さなレストランの中。
ドジャーは酒を片手に言う。

「"生き返るな"って別に死んでないじゃないですか」
「うっせぇな!酒のロマンもわからねぇくせによぉ!」
「僕はロマンよりもマロンです」
「うっわサッム。サッム。サム。サームー。マジサムっ!」
「・・・・」
「外も寒いしアレックスのいう事も寒ぃ。いや、アレックスっていうかむしろサムだな」
「だれがサムですか・・・失礼な・・・」
「おっと。"失礼"ってそりゃぁ全国のサムさんを馬鹿にしてんのか?」
「・・・・・・馬鹿にしてるのはドジャーさんでしょ」
「カカカッ!まぁとりあえず外は当分勘弁だぜ、凍え死じまう。
 どうせ死ぬなら酒に覚えて死にてぇもんだぜ。おぅら必殺"ひとり乾杯"」

ドジャーは両手のジョッキをカコンと当てる。
その行動もある意味寒いだろうとアレックスは思ったが
その話題をひっぱりたくなかったので黙っていた。

「もーいいから外で遊びましょーよー」
「ふ、ふざけんな!出ねぇって言ってんだろが!ほんとに死んじまうっての!」
「その時はリバースで復活させてあげます」
「・・・・・・・・・怖い発想すんじゃねぇよ」

ドジャーはまたジョッキを口に近づけた。
本当に動く気がないらしい
アレックスは口をとがらせ、スネたように椅子にもたれかかった。
遊べないのが相当不満なのである。

「ったく。でもレビアの住人はのん気なのが多いよな」

ドジャーがレストランの窓から外を見る。
そこにはピエロのような格好をしてハシャぐレビアの住人達がいた。

「まぁ中立都市ですからね。平和で気楽ですよね」
「なーんかその中立都市っていう言葉が違和感だぜ。
 こんな辺境にある街だから善都市にも悪都市にも干渉できねぇだけじゃねぇか
 レビアといいイカルスといい"中立"っつーよりはただの"外国"だな」
「ま、あんま関係ないですよ。ゲートでひとっとびって時代ですからね
 レビアの人々はただ根本から遊ぶのが好きなんですよ」
「カッ!世界情勢と関係なく年がら年中遊んでますってか。
 王国騎士団が滅んだ無法時代だってのに幸せだなオィ」
「楽しそうなんだから幸せなんでしょうね。いい事じゃないですか」
「その"いい事"ってのが気に入らねぇんだよ」

年中雪の降る寒い寒い街レビア。
だが住人の心はどこよりも熱い。
寒いからこそ熱くなろう
寒さを吹き飛ばして盛り上がろう
それがこの街の人々のポリシーだった。
実際騒ぎすぎて寒さなんて忘れている。
わざわざ雪を降らしている神様も降らしがいがないものである。

アレックスが外で遊びレビアの人々をうらやましがっている時
突然ドジャーがゴンっとジョッキを置いた。

「あぁ、調度レビアの住人の話になったから言っておくけどよぉ、
 アレックス。お前当初の目的を忘れたんじゃねぇだろな?」

ドジャーがテーブルの横に転がしてあった新聞をバサッ!と広げた
見出しにはこうある。

"今年も来るのか怪盗X(クリス)!去年の被害総額は・・・"

怪盗X(クリス)。
世間を賑わせている泥棒だ。
といってもレビア(世間)は常時賑わっているのだが。
年一のイベントであるクリスマスに一際目立つのが彼である。
毎年クリスマスの夜。
正確にはクリスマスイブの夜。
つまり今日であるが、
サンタの格好をして家に侵入し、オモチャを盗んでいくのだそうだ。
X'masの泥棒というところから怪盗X(クリス)と呼ばれている。
あまりに毎年の被害がひどいのでレビアの街が直々に多額の懸賞金をかけているのだ。
夢を盗むという事はレビアの住人にとってこれほどの犯罪はないのだろう。
まるで凶悪殺人犯にかけるような賞金である。

「ったく、堂々と新聞に載りやがって目立ちたがり屋の泥棒さんだぜ
 ま、忘れてないよな?この同業者についた懸賞金狙いで俺らは来たんだぜ?」
「まぁそうですけど・・・・」
「んだよ。乗り気じゃねぇな。最初はめっちゃ乗り気だったじゃねぇか」
「それはレビアにこれるからですよぉ・・・・。
 僕はわざわざイブの夜に泥棒探しなんてしたくないです」
「カァ〜!コソドロ一匹で大金が入るってぇ大チャンスに何言ってやがんだ」
「あ〜あ、神様聞いてください。聖夜に盗賊が泥棒を捕まえようとしてますよ。
 まったく世も末ですよね。こんな世の中にアーメン」

そう言ってアレックスは水の入ったグラスをドジャーのジョッキにコンッと当てた。

「神もサンタもいようがいまいがどうでもいんだよ。そんなあやふやな存在
 この世で最もハッキリ明確な物は金だ金。金は何より偉いってんだ」
「そーいう悪い子のもとにはサンタさんはきませんよドジャーさん」
「悪い子で結構。ってか頼んでないで欲しい物は自分で掴み取れよってんだ」
「・・・・まったく夢がないんだから」
「夢より金だ。夢は酒代に代わらないからな
 神もサンタも酒をおごってくれるってんなら信じるぜ」

そう言ってドジャーはウエイトレスに酒のおかわりを頼んだ。
アレックスはまだ飲む気でいるドジャーを見て
まだ外で遊べない事を残念に思った。

「んで、まぁ本題の方だ。ま、手伝ってくれるんだろ?」
「・・・・・まぁしょうがないですね」
「おぉ、案外潔いいな。どした?オモチャを盗られる子供達のためってか?」
「いや、まぁどっちかっていうと選択肢がないかなぁーって・・・・
 だってどういったって手伝わせる気なんでしょ?」
「分かってんじゃねぇか!」

面倒だが居候の身としては何も言えない。
たまにお金を稼ぎの手伝いでもしておかないとまたその内愚痴愚痴言われるのだ。

「でも特に作戦とか考えてないんですよね?」
「んあ?作戦なんかいるか?一応そこらで張ってようと思ってただけだけどよぉ」
「はぁー・・・・。ドジャーさん。毎年クリスマスの夜に盗むって分かってるのにですね、
 怪盗X(クリス)は今まで一度たりとも捕らえられてないんですよ?」
「ん・・・まぁそうだな」
「まぁ十中八苦怪盗クリスは盗賊でしょうね。しかもそれなりの。」
「ほぉ、まぁそうだろうな」
「そうなると逃げ足とインビジ、それだけでやっかいです。
 まぁでも作戦として一箇所に絞って張るってのは僕も賛成です。
 あとは・・・・・・・・そうですね。ドジャーさん。スコップを用意してください」
「スコップ?落とし穴でも掘るのか?」
「まぁ仕掛けですね。使わず終わるかもしれません。
 ま、あくまでも予防線。念のためってやつですよ」

「フ。まぁとにかく今夜が楽しみだな」
「怪盗X(クリス)捕獲作戦ですね」

「カッカ!いや、サンタ狩りだぜ!」












                 






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