十人、いや十匹十色のモンスター達。
数は十匹どころではないのだが・・・・。
とにかく大勢のモンスター達が唸り声をあげながら地響きをたてて迫る。

「昼間ディドの行進に追いかけられてばっかなのに今度はモンスターの大行進。
 今日はパレード日和らしいです」
「ガハハ!そりゃ災難なこって。モテる男はツレぇなアレックスとやらよぉ」

メッツはシュボッとライターを点け、またタバコに火を点けた。

面倒だがやるしかない。
アレックスは左手で十字をかく。
そして人差し指を魔物の群れに突き出した。
指を上へ向ける。

「焼いてもおいしくなさそうですけど・・・・アーメン!」

そして地面から吹き出したパージフレアは先頭のヘンスタというモンスターを燃やした。
だが行進は止まらない。
すぐさま槍を構える。
そして腰を深く落とす。

「ブラストアッシュ!!!」

剣山のように突き出る槍の先端。
槍のその高速突きは二匹のモンスターを穴だらけにした。
突如上方向からアズモが飛び込んでくる。
アレックスは左手でまた十字をかく、

「アーメン!」

その左手をアズモの方へ手のひらを広げて突き出した。
と同時にアズモがはじけ飛ぶ。
プレイアという聖職者の攻撃スペルである。
休むヒマなんてない。
目の前のノカンをなぎ払い、首を飛ばす。
そして目の前のバギに向かって思いっきり槍を突き出した。
ピアシングボディ。
その大きく突き出された中距離攻撃は大きなバギの体を貫通した。
だが、
槍を大きく突き出したピアシングボディが命取りであった。
アレックスに大きな隙が生まれる。
ケティハンターがすかさず大きな鎌をアレックスへ振り下ろしてきた。

「や、やばっ!」

当たる。
そう思ったその時だった。

ケティハンが鎌ごと真っ二つになる。

「ガハハ!危ないとこだったなアレックスよぉ」

ケティハンの首を飛ばしたのはメッツだった。
そして首刈りの得物としてメッツが持っているのは・・・・巨大な斧だった。

「どぉーーりゃ!!!」

メッツが今度は右手の斧をブゥンと横に振った。
するとデカいノカンジェネラルの体が真っ二つにぶっ飛んだ。
"斬った"というより"ぶった斬った"というのが正解だろうか

「ラックショーだオルァ!」
「メ、メッツさん・・・・その武器・・・・・・両手斧ですよね?」
「あん?そうだぜ?」

両手斧。
通常は戦士が盾を犠牲にしてでも両手でやっと持つ事のできる斧。
それが両手斧。
扱うだけでもかなりの力を要する。
ただメッツは・・・・・

それを両手に一本づつ持っていた。

普通、両手じゃないと振れないのが両手斧だ。
なのにメッツは片手で何十キロという斧を振り回しているのである。
それも左手と右手で2本。
どれだけの怪力であればそれが可能なのだろうか。

「オゥーラ!死ね!」

メッツが両手の斧を同時に叩き落とす。
振り落とした2つの斧はマレックスの堅い甲羅を砕き、突き刺さった。
そしてブッ刺さったまま2つの斧を持ち上げた。
つまり・・・・。斧の刺さった巨大なマレックスが持ち上がった。

「パレードがあんならメリーゴーラウンドもあったほうがいいよな!!」

メッツは斧にブッ刺さったマレックスをグルグルと回し始めた。
それはもうジャイアントスイングのように。
そして「オゥラ!」という声と共に巨大なマレックスは吹っ飛び
何匹かのモンスターを巻き込んだ。

「ストラァーーイク!ってか?あ、そういやマレックスとアレックスって似てんな。
 ガハハ!アレックスよぉ、おめぇも回るか?」
「・・・・遠慮しときますよ。斧(アックス)に振り回されるアレックスなんて笑えません・・・・」
「ガッハハハハハ!!!うめぇなオメェ!」

普段からドジャーさんに振り回されてるのに本当に振り回されてたまるか!


「さぁてメッツ様の殺戮ショーの始まりだ!クソしてぇ奴は死ぬ前にいっときな!」

ドレッドヘアーが似合う煙草好きな豪傑は、
重兵器を両手に敵へ突っ込んだ。

























「クッソ!」

ドジャーの肩にまた切れ目が入る。
5つ目の切り傷から血がうっすら垂れる。

「ハハハハ!人が天使に対しようというのがすでに愚かなのですよ!」

「うるっせぇ!!」

ドジャーは右手の4本のダガーを空中に向けて投げ飛ばした。
4本のダガーは夜をかきわけ宙に羽ばたくアンジェロに向かって突き進んだ。

「無駄なのですよ」

アンジェロが左手と左翼を振る。
するとダガーは超能力でもかけられたように空中で急に失速し、
そしてアンジェロに届く事なくポロポロと落ちていった。

「カッ!一体何をしてやがんだ!」
「アハハハ!天使の偉業ですよ!」

アンジェロは宙で月を背に翼を羽ばたかせる。
羽を動かすたびに羽根がなびき落ちた。

「天罰です」

アンジェロが右翼と右手を振り落とす。
何をしたかは分からない。
だがドジャーの横腹にまた新しい傷が付いた。

「クソッ!まじで神の加護とか超能力とかを信じろってのか!絶対タネはあるはずだ!
 だが見えもしないもんどうやって・・・・・・・・ム、・・・・・そうか!」

ドジャーは懐からメッツ用に持ってきた煙草を取り出した。
そしてそれを口にくわえて火を点ける。

「どうしました?戦闘中に一腹とは。やはり下等生物の考える事は分からない」
「なぁに。景気づけだよ」

ドジャーは煙草をピンッと指で弾いて捨てた。

「ふん、くだらない。コロシアムの客もそういうジンクスやらを信じて券を買う。
 それで何が変わるのです。そんな事するヒマがあったら・・・・私のような天の者に祈りなさい!!」

アンジェロが宙から右翼を振り落とす。
そしてまたもやドジャーの右肩に傷がついた。

「アハハハ!みなさい!景気づけとやらでは何も変わりはしない!」
「変わってないが・・・分かったぜ」
「なに?」

ドジャーが右手でダガーをクルクルと回す。
そして話を続けた。

「テメェの今の攻撃の時、俺の捨てた煙草の煙が揺らいだ。いや、切れたというべきか
 カッカッ!種が分かればナンの事もねぇ。てめぇの攻撃の正体は"風"か!」
「・・・フフフ。見抜いた事は誉めてあげよう。ですがこの風も・・・・」
「風も天の力だってか!?カカカッ!ざけんなよ!何が天の力だ!
 てめぇの攻撃は超能力や加護が起こす風じゃねぇ!ただのウインドブレードだ!」

ドジャーが足を一歩踏み込む。

「ったく。一言目には天、天。なぁにが『天使』だこのウソつき野郎が!!」
「ウソだと・・・。宙を羽ばたくこの翼が天使である何よりの証拠・・・」
「翼で羽ばたくだぁ!?種は分かったっつってるだろが!
 浮いてるのも何もかもただの風!ウインドバインで自分を浮かしてるだけだ!
 おめぇはただの風使い!ただの魔術師!人間だ!神?天使?つくづくウソを繕いやがって!」
「ウソ・・・だと・・・」
「そうだ!服から生えた羽を自慢と誇りにしているだけの嘘つき人間!
 大体てめぇがインチキなんて実際周りはみんな気付いてるんだよ!」
「バカな!周りの下等生物どもは私を敬い『天使』と・・・」
「『天使』?カッ!そんなもんはテメェをいい気にさせる表のあだ名だ!
 裏じゃテメェがなんて呼ばれているか知ってるか?」
「う、うるさ・・・」

「『ペ天使』だってよ」

「うるさぁぁあいいいいいい!!!!」

突然、辺り一体に強烈な風が発生した。
そしてその風はアンジェロを中心に渦を巻くように宙へ立ち上っていった。
周りの砂・塵を巻き上げて凄い風が起こる。
巨大な竜巻である。
ドジャーは顔を腕で防ぎながら飛ばされないように踏ん張った。

「チッ!ハリケーンバインか!ここまでの魔術師だったとは!」

「くらえ下等生物がああああああ!!!」

アンジェロが両手と両翼を突き出す。
同時に大きな竜巻が向かってきた。

「のぉわ!やっべ!」

ドジャーが逃げ出す。
そして竜巻がそのドジャーを追いかけた。
だが、竜巻の速度はそこまで速いわけではなく、
ドジャーの足であれば、訳も無く逃げ続けることができた。

「逃げ足だけは速いですね!チョコマカと下等生物(ネズミ)め!」
「お褒めの言葉、ありがチュー・・・・っと」

・・・と余裕をこいてみたもののドジャーに余裕は無かった。
止まったらハリケーンに巻き込まれる。
かといってダガーを投げても・・・・。
となると。

「ま、小細工しかねぇか」

ドジャーは走りながらアンジェロに向けて爆弾を投げた。

「学習の無いことですね!ウインドブレード!」

アンジェロが爆弾に向かって右手と右翼を振り落とす。
見えない風の刃がドジャーの爆弾を切り裂いた。
だが、爆弾といっても当然・・・

「学習が無ぇのはテメェだ!」
「ナッ!」

おなじみのジョカポである。
暗黙の導き。
煙が噴出し、アンジェロを襲った。

と、同時にハリケーンの動きがおぼろげになる。

「クッ!私に右手を使わせた上にジョカポで唐突に視力を奪うことで
 ハリケーンバインのコントロールミスを狙いましたか!
 だがそんなもの一瞬のことでしかないのです!ウインドバイン!!!」

風が巻き起こる。
そして宙の煙幕はすぐに風で振り払われた。
かき飛んだといってもいい。

「カッカッ!魔術師ってのも自分で認めたか!」
「うるさい!貴方を殺してまた『天使』として君臨する!それだけです!」
「そーりゃ無理だな」
「・・・なんですって」
「だってテメェもう負けてるもんよ」
「・・・・戯言を」
「テメェはいつだって天が、アスガルドがとほざきっぱだった。
 自分を人間より上の者として考えて、他の者を見下した」
「だからなんだってんです!聞き飽きました!」
「見下す。まぁそこは俺も好きだな。されると嫌だがよ。
 ま、てめぇの場合は本当に宙から見下してるわけだがなぁ」
「何が言いたいのかと言っているのです!!!!」
「テメェは見下し過ぎたって事だ」

「うるさい!ウインドブレード!!!」

アンジェロがまた見えない刃をドジャーに向かって発射した。
だが、直線と分かっていれば今のドジャーに避けるのは容易であった。

「ま、お別れだアンジェロ。最後に質問。
 天界(アスガルド)にもよぉ、天気予報ってあんのかな」
「なんだと・・・・」
「たまには見上げろよ?降水確率・・・・・・100%だ」
「・・・・・・まさか!!??!」

アンジェロが咄嗟に上を見上げる。
闇夜の中に大きな月が目に入った。
そして・・・
月をバックに幾数もの・・・幾十もの影が浮かぶ。
細い・・・・・。
それは数十本のダガーだった。

「まさかジョカポの時に投げて!!!」

「ありったけのダガーだ!どしゃぶりだぜ?!」

「クソォッ!!!!」

アンジェロは咄嗟にウインドバインを唱えようと右手と右翼を振ろうとする。
が、
間に合わなかった。

「ぬぁぁぁああああああ!!!!」

ダガーの雨がアンジェロに降り注ぐ。
そのダガー達は風をも切り裂いてアンジェロを貫く。

そして血の雨と共に天使は地へと打ち落とされた。






                 






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