人間を違法変スクで魔物に変えてコロシアムで戦わせる。

それがアンジェロの行いであった。
強力なモンスターを捕まえるというのは予想以上に大変なものだ。
だがそれなら作ってしまえばいいのだ。
材料は人間と変スクだけでできるのだから。
欲しいモンスターが・・・・・

「メッツさんもアナハイムさんもモンスターにされるためにここに捕らわれたって訳ですか・・」
「それにしてもメッツ。おめぇほどの奴が安々と捕まるなんてらしくねぇぜ?」

「そ、そりゃぁドジャーおめぇ・・・・その・・・」

「アハハハハ!そのメッツという男はコロシアムで借金を溜め込みましてね!
 むしろ捕らわれるのは正当理由ですよ!」

ドジャーが片手を額にあてて呆れたように顔をしかめた。
メッツは「わ、わりぃ」と手で軽く謝る格好をした。

「いや、ドジャーに世話になってばっかじゃと思ってよぉ・・・・
 だが俺にゃぁ金を作る方法が思いつかなくて一発狙いでここに・・・・」
「ったく。お前が家を出て長く帰らないなんておかしいと思ったが、そんなこったろうと思ったぜ」

家を出て?
アレックスはそこで納得した。
メッツはドジャーと住んでいたのだと。
ドジャーの家に居候してそこそこの日がたつが、住んでいて不自由がない。
ベッドも食器も家庭用品もすべてアレックスの分があったのだ。
そしてドジャーは吸わないのに置いてあった灰皿。
つまり最初からあの家には二人住んでいたのだった。
ドジャーとメッツはギルメンというよりも親友というよりも
それ以前に云わば家族。
そういうことだった。

「お喋りが過ぎました。さぁ、話はこれで終わりです。
 覚悟しなさいメッツ、貴方は大事な素体なのですから」

アンジェロが右手を構える。
それと同時に右の羽が揺れた。
"何か"してくる気だ。
だがここは小部屋。
そして入り口にアンジェロ。
どうすれば・・・・

「チッ!まずここから出るぞ!」
「で、出るったって!」
「ドジャーてめぇなんか策はあんのかよ!」
「カッ!俺をなめてんのか?」

ドジャーがアンジェロより先に右手を振り落とす。
するとアンジェロの足にクモの巣のようなモノが絡みついた。

「クッ、蜘蛛(スパイダーウェブ)か!下等生物らしき小賢しさですね
 だがこんなもので私の動きを封じたところで・・・・」

そんなアンジェロの目の前に黒き球体が迫る。
ジョーカーポークだった。
ジョカポはアンジェロの顔にぶつかり灰色の煙を吐き出した。

「なぁぁぁ!!!目が!!目がぁぁぁ!!」

「小賢しさってのは大事だぜ?」
「ナイスですドジャーさん!今です出ましょう!」

3人は同時に煙に包まれた入り口へと向かう。
そして目をおさえるアンジェロを横目にその部屋を難なく脱出した。

3人は部屋を出ると
そこはコロシアムの長い廊下。

とりあえず3人は出口を目指して走る事にした。
走りながらメッツが言う。

「チッ、アンジェロの野郎を殴っとけばよかったぜ」
「まぁ、このままただで帰してもらえるとも思えませんけど・・・」
「たしかにな、羽が生えてるだけに"飛ぶように"追いかけてきそうだ」
「ガハハ!あんな服から生えてる羽で飛べりゃぁ苦労ねぇぜ!
 ・・・・とぉ、そうだ。ちょっとこの部屋寄ってくぜ」

メッツが急に足にブレーキをかけた。
それに反応してドジャーとアレックスも走るのをやめる。
アレックスは急すぎて少し転んだ。

そこは廊下の途中の物置のような部屋だった。

メッツがドアノブを回すが開かなかった。

「鍵なら開けてやろうか?」
「ガッハハ!いや、俺はオメェと違って小細工は好かねぇ
 こういうドアはな・・・・」

メッツは突然軽い助走を付ける。
そして自分の体を思いっきりドアへとぶつけた。
ガコンッ!と悲鳴をあげながらドアはすごい勢いで吹っ飛び。
お入りくださいと道を開けた。

「ガハハ!"押して駄目なら押し倒せ"ってな」

見た目の通り豪快な人だとアレックスは思った。

「"押し倒せ"ねぇ・・・。マリナ相手にもそれくらいの猛烈アタックできるといいのにな」
「ッガ!!!う、うるせぇ!!!関係ねぇだろそんなこと!!」
「え?メッツさんマリナさんの事・・・・」
「なっ、ち、違う!」
「あー。そうだよなー。お前の恋人はディドだっけかぁー?」
「あれは冗談だっつってんだろがオラァ!」
「え、じゃぁやっぱりマリナさんを・・・・」
「うぅーーるぅーーせぇーーーー!!!!!」

メッツはドレッドヘアー揺らしながら叫んだ。
まぁ、図星だったのだろう。

「はいはい。んで?この押し入れはなんなんだ?」
「ん?あぁ」

カビが生えていそうな物置はとても暗かった。
メッツが電気の代わりにライターで灯りを付ける。
そしてそのついでにタバコをくわえて火を付けた。

「俺の装備だよ。チッ、使えねぇと思ってこんな所に放りこみやがって」
「これですか?」

奥にある大きな包みをアレックスは持ち上げようとした。
が、

「お、重っ!!!何入ってるんですかこれ?!」

アレックスには両手でなんとか立ち上げるのがやっとであった。
それをメッツは片手で受け取り、
担ぎ上げた。

「こりゃぁ俺の武器だ」
「相変わらずに怪力だな。別に人より特別デカい体ってわけでもねぇのに」
「ガハハ!つまり"強い"って事だ!」
「話は後です。用が終わったなら早くここから出ましょう!」

3人はまた廊下を走る。


そして少し走った先にとうとう出口を見つけた。


出口を出る。

空気が途端に変わった。

やっと外の夜の空気に触れたのだ
月明かりが3人を射す
夜だというのに明るく艶かしい月光は
それだけでも手元が見えるほど明るかった。
その光が真ん中のコロシアムをスポットライトのように照らしていた。

「ゲ、こっちコロシアムの中側じゃねぇか」
「大丈夫だ。コロシアム場の正面出口はそのまま外に繋がってる」
「あの・・・真ん中のコロシアム場・・・・なんかいつもよりも大きくないですか?」

アレックスは指差しながら言う。

「ホントだな。あれじゃねぇか?明日の大イベントの用意ってやつだろ
 何せドラゴンライダーVSデスメッセンジャーだからな」
「ガハハ!まぁ、それももう開かれる事はねぇんだけどな」
「え?なんでですか?」
「ガハハ!そりゃおめぇ、俺がデスメッセンジャーにされる予定だったんだからよ」
「ぇぇえ!?」
「ケケケ。マジかよおめぇ。花形になれるところを邪魔して悪かったな」
「だからアナハイムさんは今日が最後の晩だと言ってたんですね」
「そういうこったぁ。なんか強いモンスターを作るにはそれ相応の人間が必要らしい
 デスメッセンジャーほどとなると俺ぐらいしかその対象がいないんだとよ!ガハハ!」
「って事はメッツさんはかなりの実力って事ですね」
「ガッハハ!そりゃぁ凄ぇぜ俺はよぉ!」
「ああ、頭の中身も頭自体も凄ぇ事になってるけどな」

ドジャーがメッツの爆発したようなドレッドヘアーを指で弾きながら言った。

「うっせぇ!」
「まぁ、メッツの実力は本物だ。世間じゃ『クレイジージャンキー』って呼ばれててな」
「あ、なんか聞いた事あるような無いような」
「意味は"とち狂ってる"って意味だ」
「ざけんなテメェ!」

メッツが殴りかかるがドジャーはさも簡単に避ける。

「まぁまぁ、ケンカは後でもできます。早くコロシアムから出ましょう」



「黙って出すと思っているのですか!!!」

突然の声はコロシアム場の真ん中からだった。

そこには『天使』アンジェロがいた。
羽を折りたたみ、こちらを見ている。

「チッ、もう追いついてきたか」
「やる気か。こう広い所なら俺らに相打ちはないぜ?」
「3対1ですよアンジェロさん。多勢に無勢は得意な方ですか?」

「多勢に無勢?フフ、それはそちらの事をいうのですよ。あれを見なさい。」

アンジェロはコロシアムの隅へ羽を広げた。
そこはコロシアムだと思えば当然といえば当然。
唸り声の巣窟。
コロシアムのモンスター達の檻であった。
檻は大きく、
中にいる生物の数も多かった。
ざっと数十匹を下らないだろう。

「なっ、まさかあれ全部が元は人間・・・」

「フ、安心なさい。あれは全て元からの魔物です。
 変スクで変えた人間は大事なのでこんなところでは使いません
 それに少し自我が残るのでコロシアムなどで戦闘を強要しない限り戦ってくれませんのでね」

手に入れる事が難しいモンスター。を手に入れたい時に人間を変スクで魔物化させると考えると
あの檻にいるのは捕獲が比較的楽な、つまりどちらかというと弱いモンスターであろう。
だが・・・。モンスターはモンスターである。
あの数は半端じゃなかった。

「さぁ、出てきなさい。そしてあの者達を殺すのです!」

アンジェロは右手と右の翼を同時に檻を方へ勢い良く振った。
すると突然に檻の鍵が勢い良く開いた。
何かに斬り空けられたようだ。
だがアンジェロが何をしたかまでは分からなかった。

それにそれどころではなかった。
無数のモンスター達が檻を飛び出してきたのだから。

「アハハハ!私は高みの見物とさせていただきましょう」

突如アンジェロは翼を羽ばたかせて宙へと舞った。
羽根をこぼしながら空へ昇る天使。
月を背にニ翼が怪しく透ける。

「なっ、あの羽って飛べるのか?!」
「それよりドジャーさん!魔物魔物!!!」

どう少なく見積もっても30をくだらないモンスター達。
それがこちらへと群れをなして向かってくる。

「僕達三人であの数の魔物を・・・・」
「・・・・いや、二人で頼む」

ドジャーが言う。

「へ?」
「あん?」
「俺は・・・・あいつをやる!!!!」

そう言いながらドジャーがダガーを天へ向かって投げる。
その目標は空で羽を動かしているアンジェロだった。

「いい気になるんじゃありませんよ下等生物!」

アンジェロは右手と右羽を同時に突き出した
するとダガー空で急にピタリと止まり、
そして地面へ落ちていった・・・・

「カッ!何してんだアレ。天の加護とか言い出すんじゃねぇだろうな・・・
 まぁいいや。アレックス!メッツ!モンスター頼んだぞ!」
「頼んだぞじゃないですよ!二人で?!そんな無茶な・・・」
「メッツがいればどうとでもなる!
 なんせメッツはうちのギルドの中でも戦闘力においては随一だからな!!」
「ナハハハ!分かってんじゃねぇかドジャー」
「ったく。調子こくんじゃねぇよ」
「メッツさんが強くたってあの数は・・・・」
「大丈夫だ。仲の欲目じゃぁねぇ!『クレイジージャンキー』は伊達じゃねぇよな!?」
「ガハハ!おうよ!」

ドジャーはメッツに向けてニヤっと笑い、
アンジェロの浮かぶ方へと走っていった。

アレックスは迫り来るモンスターの群れを見る。
絶対ドジャーはモンスターと戦うのがめんどくさくてアンジェロを選んだなと確信した。

「まぁ・・・・やるしかない見たいですねメッツさん」
「楽勝だっての!」

アレックスが槍を構える。
そしてメッツも大きな包みをほどいて武器を取り出した。






                 






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