-ルアス中央広場-




「ちょ・・・」
「ウ、ウソだろオイ・・・・・」


アレックスとドジャーとレン爺は、しばし呆然とした。

そのあまりの光景に・・・・

「どうなってんだこりゃ・・・」

今回マリナは店が始まったばかりなので来なかった。
"何よりお店。全てがその次"
だそうだ。
よって
孫を探したいレン爺と
金の欲しいドジャーと
付き合わされるアレックスの3人だけである。

そうして3人は先ほど広場についた。

そして目に飛び込んできた光景がこれである。

見慣れた広場。

真ん中にひとつ出っ張るなんでも屋。
最横を流れるルアス川。
広場中に露店が溢れるほどに立ち並び
溢れんばかりの人の声。

全ていつもの広場の光景だ。

だがたった一ついつもと決定的に違う事があった。



誰一人として人の姿がない事である。



「人の声は聞こえますけど・・・・」
「もしかして幻聴だってのか?」
「それは違うのぉ。たしかにここにはたくさんの人の気配があるわい」
「で、でも・・・」

アレックスは周りを見渡す。
だがやはり広場には人っ子一人の姿も見えない。

明らかに人々の声は聞こえる。
が、誰一人の姿も見えない。

・・・・ん。今何か・・・

アレックスは何か違和感を一瞬感じた。
といっても違和感どころの光景ではないのだが
何かが目に映ったような・・・

いや、気のせいだろう。
なにせ目の前には物だけ転がっているだけで
誰一人の姿もないのだから。

「ほんとどうなってんだこりゃ」

「・・・・まさか」

レン爺が真剣な顔つきになる。
状況を飲み込んだようだ。
爺さんの真顔は怖いと思ったがここは黙っておこう。

そしてレン爺ゆっくりと口を開いた。

「・・・・・・フィリーがカモフラージュまで体得しておるとわのぉ」

「「カ、カモフラ!?」」

アレックスとドジャーは同時に驚きの声をあげた。
カモフラージュとは他人をインビジ(透明)状態にするスキルである。
だがかなり高位の盗賊しか使えない高等技術だ。

「カモフラって・・・フィリー君はまだ10歳でしょ?!」
「そうだぜ。俺だってカモフラは苦手なくらいだってのに」
「・・・・思い当たる節があるんじゃ」
「っていうと?」
「酒場のコーヒーカップがいきなり割れてダガーが現れた騒動を覚えておるか?」
「あぁ、変なパンプキンダガーな。今さっきの話だし覚えてる」
「その時"インビジは身に着けている物も消える"・・・・とフィリーは言っておった」
「は、はぁ・・・」
「それがどうしたってんだよ。当たり前の事じゃねぇか」
「そう、それがカモフラを使える者と使えない者の差なんじゃ」
「あん?」

「"身につけた物が消える"。インビジのこの特性を応用したのがカモフラなんじゃ
 そこをうまく理解でき、コントロールできるかがカモフラの基礎であり肝じゃ。
 じゃからこそカモフラージュは高等な盗賊しか使えない事が多いんじゃよ」
「インビジで毎日イタズラして遊んでるからこその成長ですね」
「末恐ろしいなんてモンじゃねぇぜ・・・・」

アレックスは天才盗賊『ハイド&シーク』と呼ばれる凄さを身にしみた。
世の中(マイソシア)は広い。
こんな子供もいるのだと感じる。

とにかくこれで分かった。
だれもいないようで広場中に聞こえる声。
広場にはだれもいないようで本当は物凄い数の人がいるのだ。
そしてこれは全てフィリーのカモフラの効果なのだ。
・・・ん?全て?
アレックスは疑問が浮かぶ。

「ちょ、こんなにたくさんの人を消すのって大変じゃないですか?」
「そりゃそうだ。魔力の消費量とかそんなチャチな話じゃねぇぞ
 普通は数人に使ったら魔力は底を尽きるもんだ」
「あぁ、そりゃぁ間違いなくマナリクシャでも大量に持ち歩いておるんじゃろ
 普段から必需携帯しとるんじゃ。なんといってもネイトマナが使えないしの
 インビジのイタズラで泥棒なんてあの子にとっちゃしょっちゅうじゃから・・・」

なるほどねぇ・・・。
アレックスはまた改めて広場を見回した。
詳細が分かってもやはり目を疑う。
この人っ子ひとり見えない広場の中に
人がたくさんいるという事をまだにわかに信じられない。

それよりさっきからたまに"何か"が目に映る気がする。
だが一瞬の事で分からない。

分からないことはしょうがないので
まずどうやってフィリーを捕まえようか考えた。
それにはまず少しでもいいから何か手がかりを作っていかなければ。
アレックスは2人の方を見て言った。

「とりあえずどれくらいの人がいるか調べてみましょうか」
「ほ?」
「ぁん?どうやって」
「使い方は間違ってるんですが僕に方法はあります。
 ちょっと疲れるんですけど頑張ってみます。・・・・・・スゥウウウウ!」

アレックスは突然息を大きく吸った。
胸がパンクしそうな量だ。
そして今度はその息を思いっきり吐いた。
と思った次の瞬間
目を瞑り。
周りを引き込みそうなほどに集中しだした。
そしてブツブツと唱える。

そして最後にアレックスは胸の前で十字を画き
しゃがんで両手の指を組んだ。
祈りのポーズだ。

「全力ホーリービジュァアア!!!!」

神か天使か。
広場全体に特大の祈りの声が響いた。
ァァァァァァァァアアア!
アレックス自身がいうのもナンだが、はっきり言ってうるさいスペルだ。
でもそんな事を言うとバチが当たりそうなので心にしまっておく。

広場中に数え切れないほどの魔方陣が現れた。
まるで絨毯のように敷き詰められている。

「あの魔方陣の数が人の数です」
「・・・って・・・・」
「・・・はい。ほとんど埋まってますね・・・」

広場から湧き出る声の量で予想はしていたが
やはりうんざりするほどの人の数。
こんな中からフィリーを探さなければならない。
しかも全て透明。
それを考えると
全魔力を使ってしまった事と合い重なって、疲れがドッときた。

「ドジャーさん」
「あん?」
「ドジャーさんも全力だせばディテクを広場全体に・・・」
「無理だな」

でしょうね。

TRRRRRRRRRRRRRR

突然全員のオーブに着信。
当然フィリーからである。
ほぼドン詰まり状態の今。
フィリーを説得するのが一番早く、確実で面倒くさくない道だったが
アレックスにはそうならない事が分かっていた。

〔テメェ!ガキ!〕

ドジャーがそんなんじゃ納得しないと分かっているからだった。

〔えへへへ。広場見た?いっぱいいるのにいなんだ。どう?凄いでしょ〕
〔「凄いでしょ」じゃねぇぜ!てめぇどこにいやがる!〕
〔そーれ教えちゃったらかくれんぼの意味ないじゃーん!〕
〔ガキのくせに調子こきやがって・・・〕
〔にひひひ。この通信自体も盛り上げるためだもーん♪じゃぁね!〕

「くそったれ!ぜってぇ見つけてやる!」

「ドジャーさん。意気込むのはいいけどどうする気ですか?」
「とりあえず突き進んでみるぜ!」

ドジャーがとりあえずディテクションを連発しながら広場を突き進む。
ディテクションでどんどん人の姿があらわになる。
見えていれば人と人の隙間を通るくらいドジャーには訳なかった。
が、

「ダメだ・・・・魔力足りねぇ・・・」

数秒で戻ってきた。
マナリクシャを携帯してないドジャーはの魔力はすぐに尽きた。
魔力の量的に不可能な作戦だった。
ネイトマナでカバーできる話じゃない。

それにこの作戦に決定的な欠陥はディテクション自体にあった。
ディテクションされまくっている所なんて
フィリーは離れていくに決まっている。
なにせこっちから向こうは見えなくても
向こうからこっちはドンドン見えていくわけなのだから。

他の作戦を考えなければいけなかった。
その時だった。

「あれま。ドジャー。アレックス。あれを見るんじゃ」
「ん?」

レン爺が指差した。
そして二人が見たのは
せっかくディテクで姿を現した人々がまた一人づつ透明になっていく姿だった。
そして瞬く間にまた誰一人いないように見える広場が完成した。

〔アハハハハ!ふりだしにもどるるるぅーーー♪〕

オーブからフィリーの挑発が聞こえてくる。
そして何かドジャーの怒りの音も聞こえた。

「くそガキ!」

「あっ!」

アレックスは一瞬何かに気付いた。
それはさっきから気付いた違和感の正体だった。
今度はそれがなんなのかよく分かった。

「どした?」
「今チラっと人影が見えたんです」
「人影?」
「はい。でもすぐまた消えてしまいました」
「フィリーがカモフラをかけたんじゃろうな」
「なんで姿が現れた・・かですね」
「あぁ、そりゃぁ誰かと誰かがぶつかったんだろ」
「ぶつかった?」
「そりゃぁ透明な人同士も見えねぇんだ。そりゃぁ頭もゴッツンコっだっての」
「そんでなんで透明状態が解除されたんですか」
「それはな・・・・・・・・あっ、なるほどな」

ドジャーが何かを思いついたのか深い顔つきになる。
そしてアレックスとレン爺に向かって言う。

「透明を解除する方法はディテクだけじゃねぇんだ」
「・・・っていうと?」
「一つは攻撃をする。もう一つは・・・・・攻撃されるだ」
「なるほど、何か衝撃を与えてやれば透明状態は解除されるわけじゃな」
「でもこれだけの人数ですよ?」
「それにちまちまやってもまたフィリーに端からカモフラされるじゃろうて」
「俺に考えがある」

ドジャーは片手を腰にあて
もう片方の手を広場に向けて言い放った。

「アレックス!広場中をパージフレアで焼け野原にしてやれ!」
「ちょっと!?何言い出すんですか!?」
「いい!俺が許す!金のため!いや、あのナメたガキを痛い目にあわせるため!
 そのためならこれぐらいの犠牲はやむをえん!塵にしてやれ!」

メチャクチャな事を言い出した。
怒りで思考回路がバグってるのだろうか。
おちつけ。

「大体全員の姿を現しても意味ないですよ。
 ここがまた人ごみに戻ったってあの子供を見つけるのは難しいんですから」
「うーん・・・そりゃそだな」
「せめて場所を特定してから姿を・・・・・・・・・」

ん?
アレックスの頭にいろいろな事がかけめぐる。

「アッ!!」
「どうしたアレックス」
「ドジャーさん。レン爺さん。耳を貸してください」
「?」「?」
「いいからいいから」

(まず・・・・・・・が・・・・・・で店・・・・・ジャー・・・を・・・・レン爺・・・・そこで・・・・)

「なるほど。危険じゃがそれならうまくいきそうじゃの」
「カッ!やっぱテメェの考えることは信じらんねぇな」
「フフ。さぁ、まず準備です」


                 






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