「ドラグノフ・・・・・」
「こいつが本物のか・・・・」

ドラグノフ=カラシニコフ。
帝国アルガルド騎士団。
絶騎将軍(ジャガーノート)。

そして・・・・・
策略で《GUN'S Revolver》を立ち上げた張本人。

「本物?偽物?えぇ〜〜・・・・・・どっちだろ?なんちって♪イヒヒヒヒ♪アハハハハハハ!!!!!」

羽を広げたイカれた男は、
顔をあげ、
両手を広げ、
無精ひげを誇示しながら笑った。

「イカれてんぜコイツ・・・・」
「頭のネジが数本吹っ飛んでやがる」

「ネジが足ぁりない〜?僕ですかぁ?・・・・そりゃいいね!イヒヒ♪・・・そりゃ凄い発明だ!!
 ネジが足りなくても動いてるんだから!それは凄い発明なんだよぉー!
 シンプルで!効率的で!動く!これがエッリィイイイイットな発明の三代要素!!
 ・・・・・・・・なんちって♪今考えたちゃった♪アハハハハハハハハ!!!!!」

大声で笑うドラグノフ。
完全におかしな人間。
だが・・・・・

「これが絶騎将軍(ジャガーノート)だと?」
「ロウマやピルゲンと比べると明らかに見劣りするが・・・・」
「いえ・・・・彼はあれでも王国騎士団の生き残りなんです。ナメちゃいけません。
 アインハルトに認められて今も従う・・・・数少ない人間なんですから」

だが、
目の前でぶっ飛んだ大笑いをしているこの男がそうだと考えるのは・・・
受け入れ難かった。

「何?何?僕をなめてるんですかぁ〜?ねぇそうなの?・・・・ありゃ酷い!
 僕も傷つきやすいんだよ?・・・なんちって♪なんちってぇぇ〜〜〜・・・・イヒヒ・・・・」

「ふざけてんじゃねぇ!!!このド変態が!」
「大体お前・・・・・なんでこんなとこにいるんだ」

そうだった。
まずそこだ。
いきなりスマイルマンをぶつけてきた。
そして突然現れた。
内密な探索だったはずだ。
なのに何故・・・
それは絶騎将軍(ジャガーノート)なんてものがここにいるのか・・・・

「え?聞きたい?聞きたいの?ねぇ。ねぇ♪」

ドラグノフはニヤニヤこちらに笑いかけてくる。

「なんちって!!!教えてあげなぁぁぁ〜〜〜い♪アハハハハハハハハ!!!」

両手を広げてまた笑う。
ウザい。
そして怪しい雰囲気を纏った男だった。

「またまたなんちって♪僕優しいからねぇ・・・天才的には教えてあげなくもないなぁ!
 あんね。・・・・・君達がここに向かってるっていろいろと推測しちゃってね!ツヴァイの件でねぇ。
 だから遠路はるばる足を運んだわぁけさぁ!イヒ・・・・♪・・・・・・・僕頑張り屋さん♪」

「うっせぇ!!」

ドジャーはキレるのを我慢する。
なんともカンに触るからだろう。
しかし手がプルプルと震える。
ダガーを投げつけたくてしょうがない。

「出会っちまったのはどうでもいい・・・だが逆にこれを好機としてやる。
 いろいろ聞きてぇことはあるんだぜ・・・・吐いてもらおうか」

6対1の状況。
だからこその強気。
だが、実際に絶騎将軍(ジャガーノート)であるなら、
こんな脅しなど・・・・・。
だが、
ドラグノフは返事をした。

「いっよー♪教えてあげるよ〜!・・・・・・なんちって♪教えてあげようかどうしようかなぁ・・・・
 でも僕いい人!うん、いい人だからね!・・・・あれ?どっちかなぁ?アハハハハハハハハ!!!!」

「じゃぁ質問です」

アレックスが間髪入れずに言う。
真剣に。
ドラグノフはニタニタしながらこちらを見ている。

「絶騎将軍(ジャガノート)は全部で何人いるんですか?」

本質に届かずとも、意味のない質問でもない。
答えやすい質問だ。
これならはぐらかされないだろう。
そう言った思惑を入れながら、
知っておきたい質問をした。

「7人♪」

ドラグノフはニタりと即答した。

「な・・・7人だと!?」
「ロウマ級の人間が7人もいるってのか?信じられねぇな」

「僕はウソはつかないよ!!・・・・なんちって♪あれ?ウソつかないって事自体ウソ?
 どっちだろう?どっちかなぁ?なんなんだろなぁ?・・・・・イヒヒヒヒ♪」

「ロウマ・・・ピルゲン。ジャンヌダルキエル。ドラグノフ。
 そして53部隊の二人、ギルヴァングともう一人。これで6人」
「あと一人は誰だ?」

「デムピアス♪」

簡単な即答。
だが、
突きつけられた答えに、
6人は固まった。

「デム・・・ピアスだと?」
「てやんでぃ!!!海賊王が帝国だと!!!」

特に反応をしたのはジャッカルだった。
海の男。
海賊として
何かしら思う事があるのだろう。
本人がデムピアスの血がどうこう言っているんと事からも。

「奴が生きてるってのかっ!答えろっ!!」

ジャッカルの形相が変わる。
明らかに興味の真ん中のようだ。

「大体デムピアスはアインハルトの手で死んだんだろっ!!」
「生きてるってのか!」

「生きてるよ・・・・・・・なんちって♪うっそぉーーーーーん!!!
 死んじゃったよぉ♪デムピアスもぉ♪ツヴァイもぉ♪イヒヒ♪」

またはぐらかされる。
いや、真実か。
いろいろとおちょくってくるが、
なんだかんだでさきほどから結果的に真実を話している。
どれも確証はないが・・・・

「死んでるのか・・・」

ジャッカルがうな垂れた。
デムピアスとの関係は聞かないことにした。
悪いが、あまりこちらとは関係ない話だ。

「じゃぁ」
「絶騎将軍(ジャガーノート)はやっぱり6人か」

「いや♪7人♪」

いったりきたりの会話。
完全にこちらをおちょくってくるドラグノフ。

「空いてるんだよねぇ一人♪ほんとかな?ウソかなぁ?どっちだろ♪
 でもここだけの話・・・・アインハルト様はデムピアス用に一席空けてる♪
 ツヴァイは死んでるけどデムピアスは生きてるってことかなぁ?どっちかなぁ?
 イヒ♪・・・・・・分からないけどどっちでもいいよね♪アハハハハハハハハ!!!!」

分からない。
新しい情報が次々と入る。
だが、
どれも真偽の怪しいものばかり。
混乱する。
何もかもがウソのような。
だが・・・・どれも真実である可能性があるような。

「じゃぁ次の質問です」

「やだね!もう教えてあげなぁーーい!・・・・・・・・イヒ♪」

ドラグノフはクネクネと首を振りながら、
怪しく笑いながら、
イタズラにそう言った。

「なぁんで僕に関する質問はしないのかなぁ?なんでかなぁ?イヒ♪
 僕に興味ないわけぇ?僕も絶騎将軍(ジャガーノート)なんだけどぉ?」

「テメェの事なんざ知りたくねぇんだよ!」
「知ると頭イカれそうだしな」
「真偽が分かりにくいですし」

「そうー?残念だなぁ・・・・なんちって♪でも・・・・・・・・」

ドラグノフの表情は変わらなかった。
とぼけたように笑う。
だが・・・・
目に確実に殺意がこもった。

「冥途の土産って言葉もあるよ?」

「やっぱやる気か!!!」

ドジャーがダガーを構える。
アレックスが槍を、ジャスティンが鎌を。
ジャッカルが左腕を構える。
いつの間にかバンビとピンキッドは木の陰に隠れていた。

「・・・・・・・・・ウッソォーーーン♪どっちだろ♪イヒヒヒヒ♪アハハハハハハハハハハ!!!!!」

高笑い。
無精ひげの男は、
両手を広げ、
違和感のある背中の羽を広げ、
天へと、
暗い森にこだまする笑い声をあげる。

「でも自己紹介くらいしようかな♪」

ドラグノフはそう言う。
ドジャーはそんなことどうでもいいといった雰囲気で攻撃しようとしたが、
アレックスがそれを止めた。
相手を知っておくのは悪くないと思ったからだ。
・・・・・・なにせ相手は絶騎将軍(ジャガーノート)なのだから。

「自己紹介します!誰の?僕ですかぁ?・・・・・なんちって♪イヒヒ♪
 僕はドラグノフ=カラシニコフ!研究が趣味!天才でエッリート♪
 スンバラシー!!!・・・・発明が大好き♪生粋のエンジニィーーァー♪」

そう言い、
無精ひげのその男は、
その場でクルリと回った。

「無限変スクを最初に発明したのも僕ーーー!天上服の解明をしたのも僕ーーーー!
 WIS通信を発明したのも僕ーーーー!・・・・なんちって♪これはウソォーーーン♪
 でも僕は発明大好きだよね?知ってるよね♪なんちって♪知るわけないよねぇー!
 でもさっきのスマイルマン凄いでしょお?一年前ミルレスで壊れてるの直してみたんだ!」

壊れていたスマイルマンを直す。
それの凄さはよく分からないが、
あれだけ大掛かりなものを直すのはたしかに凄いのかもしれない。

「カッ、テメェの頭がイカれてトチ狂ってて・・・・そんでもって頭がいい事は分かった。
 だがよぉ・・・・つまるとこただのサイコ・プロフェッサーって感じじゃねぇか。
 なんで絶騎将軍(ジャガーノート)になれるんだ。実力は伴わないのか?」

「うーーーん?僕めっちゃ強いよ?ロウマとか一撃だよ?・・・なんちって♪ウッソォーーーン♪
 僕マジ弱♪めちゃ弱♪ノカンとかマジ怖いよねー♪オシッコちびっちゃうよねー♪」

「それを聞いて安心した」

ジャスティンが鎌をゆっくり円形に回しながら、
前に出る。

「見た目通りか。間違っても腕の立つ奴には見えないからな。
 ただ頭脳と功績が認められて側近についてるだけの奴って事・・・・・・・なら問題ない」

「シンガァーーーーイ!!!!イヒ♪」

ドラグノフはニタニタ笑いながら、
ジャスティンに指を指す。

「僕も絶騎将軍(ジャガーノート)ってのが僕の強さの証じゃないですかぁ?
 あれ?でも僕さっき自分でメチャ弱って言ったね?あれ?どっちかなぁ♪
 でもね。絶騎将軍は皆・・・・・・・・・・・・・"1000人分の戦力"とだけ言っておこうかな」

チャラけた言葉の中でも、
彼の言葉にはところどころ自信に満ち溢れている事が聞いて取れる。

「1000人分だと?」
「カッ、ロウマやらピルゲンやらギルヴァングなら確かに納得いくとこもあるけどな」
「あなたはどうみても千人力には見えませんね」

「なんで?僕って1000人いるんだよ?」

「・・・・は?」
「どういう事ですか?」

「・・・・・・なんちって♪ウッソォーーーン♪いるわけないじゃーーん!アハハハハハハハ!!!」

話が進まない。
おちょくり続けるドラグノフ。
笑い続けるドラグノフ。
イライラしてくる。
どれだけマイペースな男なのだろうか。
いや・・・
こうしてイラついている事自体が彼のペースなのだ。
間違いなくアレックス達を見下しての行動には間違いなかった。
確固たる自信はたしかにある。
そういった事が感じ取れた。

「証明しよっか♪」

ドラグノフは懐から何かを取り出した。
ナンだ・・・・
本?
一冊の本だった。
何の本かと思うと・・・・・記憶の書?

「僕さっき・・・・・"召喚師"って言ったの覚えてる?あれ?言ったっけ?どっちかなぁ?
 でも僕召喚師なんだよね!分かる?召喚する人!そりゃ分かるか!アハハハハハハハハ!!!!」

「・・・・・・なんだこいつ・・・」
「でも召喚師ってなんだ」

「・・・・・・・・イヒ♪僕はですねぇ・・・・・この記憶の書で・・・・・・・1000の仲間を呼ぶことができる♪」

簡単に言ったその言葉。
またウソか?
いや・・・・本当なのか?
じゃぁどういう意味だ・・・・。
呼ぶ?
連絡して応援を?
違う。
ドラグノフは"召喚師"と言った。
この場に一瞬で仲間を呼べるという事か?

「この記憶の書も僕の発明なんだよねぇー♪ききたい?ききたくない?でも教えちゃうー♪」

ドラグノフはまたクルッと回り、
記憶の書を広げてこちらに突き出す。

「この記憶の書に数千の座標が書かれてるわけね♪X軸Y軸Z軸に対応してて、
 マイソシアの幾多の場所と繋がってるわけぇー♪あれ?規模が凄いだけの記憶の書?
 そんなわけないよね♪すごぉーい僕♪何が凄い?教えてあげる!イヒ♪
 つまるところこの記憶の書の上り回線を空データで送信して下り回線を引っ張ってくる。
 空間転送エネルギーを2乗してそれを行うと目的座標から下り回線の座標軸にリンクしてね、
 座標から目的のデータを検索して空データに下り回線のデータを読み込んで引っ張ってこれてね、
 それで物体質量データが記憶の石のメモリを超えなければ転送データをリンクとゲートの・・・・」

「?」
「???」
「?・・・」

数人が同時に頭の上に「?」を浮かべる。
全く意味が分からないという顔をしている。
なんとかジャスティンとアレックスは理解していたが、
残りの人間には理解不能だった。

「・・・・・・あぁーっと・・・ルケっ子にはよく分からん・・・・ジャスティンどういう事だ・・・・」
「えっと・・・つまり記憶の書でな、どっかに飛ぶだろ?そこから誰かを連れて戻ってくるだろ?
 それを自分が飛ばずに行うっていうか・・・・逆に言えば普通のゲート転送の逆で・・・
 目的地に飛んでいくんじゃなくて、目的地からこっちに呼んでくるっていうか・・・・」
「・・・・・・・・カッ!つまりアレックス説明してくれ」
「つまりあの記憶の書に書いてある場所から人を召喚するんです」
「うん。分かった」

まぁ原理なんてどうでもいいのだろう。
大事なのは結果。
カッコよくないが、ドジャーにはそれが分かればいいようだった。

「つまりあの記憶の書がある限り・・・・どれだけでも人を転送してこれるのか・・・」

「そゆこと!!分かるね君!天才だよ!・・・・なんちって♪
 ま、つまり僕はねぇ・・・・・・・1000の仲間を呼んでこれる・・・・千人力だろ?」

大体の事は分かった。
他の絶騎将軍(ジャガーノート)とは違うという事だ。
他の絶騎将軍(ジャガーノート)は一人の力が千人力。
だが、ドラグノフは他人の力で千人力。

「やっぱあいつ自身は弱いんだな」
「ですが・・・・」
「分かってる。油断はしない。数で勝ってると思ってたが・・・
 この6対1の状況・・・・・見えないだけで実質6対1000って事だな・・・・・・・」

「じゃぁとりあえずやってみようかな」

ドラグノフがページをペラペラとめくる。
記憶の書を検索している。
どれだけページがあるのだろうか。
辞書のような太さだ。
あれの全てに座標が指定してあるのか。

「いけないっ!!」
「ドジャー!!」
「分かってるっ!!!」

すぐさまドジャーはダガーを投げつける。
召喚させてはいけない。
その前に殺(や)らなければ・・・・

「うわっ!!危ない!!・・・・・なんちって♪もう遅い」

ドラグノフがニヤりと笑う。
無精ひげの生えたアゴが歪む。
と・・・同時に・・・
光。
暗い森の中に光。
天から降り注いだ。
6本の光の柱。
それがドラグノフの前に降り注ぎ、
流れ星のように地面に突き刺さった。

「てて・・・・」
「いきなり呼び出しかよ」

砂煙の中から現れたのは・・・・。

6体のモンスターだった。

「おい人間様よぉ!!いつもいつも好き勝手呼び出すんじゃねぇよ!」
「戦場だったり天界だったり・・・・こんどは田舎森か・・・・」
「モンスターにだってプライベートがあるんだからね」

デスチャンプスミル。
デスカイソン。
デスエンゼルトプス。
ビーズ。
サファイアポンナイト。
キャメル船長。

「悪いねぇ♪うん♪反省してる・・・・・かも?なんちって♪」

ドラグノフの前に並び立つ・・・・6体のモンスター。

「さぁて前菜を用意しちゃった!たまたま皆が座標上に居てくれて助かったよ!
 もし居なくて誰も飛んでこなかったら恥じかいちゃうとこだった。イヒ♪」

並び立つ6体のモンスター。
どれも・・・・通常のモンスターより格上なのが見て取れる。
この状況下で肝が据わっている。
天敵である人間を何も恐れていない。

「で、ででで!君達6人いるみたいだから6匹用意したよ!
 あれ?そっちは5人と1匹って言うべきなのかな?とにかく6対6!イヒ♪
 面白そうでしょー?まずは前菜♪残さずお食べ?なんちって♪アハハハハハハハハ!!!」

アレックス、ドジャー、ジャスティン。
ジャッカル、バンビ、ピンキッド。
こちらが6人だから6匹用意したという事。
遊んでいる。
やろうと思えばもっと一気に召喚できたのだろう。
ただ・・・・こちらをオチョクっている。

「カッ!何が残さずお食べ?・・・だっ!すでにご馳走くらってんのが一匹いんじゃねぇか!!」

ドジャーが言う。

「あれ?」

ドラグノフは頭を傾けた。
と、同時に目の前のモンスター。
デスエンゼルトプスがパタりと倒れた。
額にダガーが刺さっている。

「あ、召喚する時に投げてきたダガーか。アハハハハハハ!!!!
 エンゼルちゃん!なんて運が悪いんだろね!呼ばれた瞬間刺さっちゃったのか!」

ドラグノフがおかしくて笑う。
たまたま召喚された時に、
ドジャーのダガーがたまたま当たって死んだ。
どんだけ運が悪いのだろうか。
何も見せ場なく死んでいった豚。
アレックス達もデスエンゼルトプスの不幸を同情した。

「ありゃりゃ、こいつ幼馴染だったのにな。なぁカイソン?」
「だなぁスミル。こりゃぁ敵討ちだな」
「死に偶然なんてない。その豚は死ぬ運命だっただけだ」

モンスター側も勝手な意見をしゃべっている。
ドラグノフはまだ笑っている。

「イヒ♪・・・・でもどーしよー?これじゃぁタイマンできないねー」

「気にすんなべらんめぃ。もともとタイマンなんざする気ねぇ」

ジャッカルがニヤけながら言う。

「うちの子分は使い物にならないからな」

アレックスがチラりと見ると、
バンビとピンキッドは木の陰に隠れたまま、
こちらに向かって申し訳無さそうに手を振った。
まぁたしかに戦力外だ。
アピールしかできない女海賊と、
ピンキオなのだから。

「俺が2匹受け持ってやらぁ」

ジャッカルが海賊帽子を直しながら言った。
眼帯をつけていない方の目が鋭くなる。

「海賊風情にカッコばかりつけさせられないなぁ。俺も2体いこうかな」

ジャスティンも鎌を軽く引きずりながら言った。
微笑みながら。

「近場にラスティルの墓もあるしな。カッコいい所見せてやらないと」
「ジャッカルさんが2体でジャスティンさんも2体やるんですか?
 じゃぁあと1体はドジャーさんがやるから僕はサボれますね」
「カッ、あほアレックス。俺がサボる」
「いえ、僕がサボります」
「俺がサボるってんだ!めんどくせぇんだよ!」
「おいおいてめぇら・・・」
「楽するので争ってんなよ・・・・」
「じゃぁ!」
「ジャッカルかジャスティン!どっちかが3体やれよ!」

ジャッカルもジャスティンも「はぁ?」と顔をしかめた。
アレックスとドジャーはどちらもサボりたいらしい。
ともかく、
絶騎将軍(ジャガーノート)とモンスター5体を目の前に、
暗い森の中でアレックスとドジャーはジャンケンをはじめた。

「さーいしょーは・・・」
「まてっ!ジャンっ!ケンっ!からだろ」

どうでもいい。
ともかくジャンケンをはじめ、
あいこが3回続き、
そして・・・・・アレックスがジャンケンに勝った。
アレックスはサボれる事を露骨に喜んだが、

「いや・・・てめぇ・・・・」

ドジャーに遅出しした事がバレて、
アレックスが戦う事になった。

「少しくらい遅くたっていいじゃないですか・・・・」

アレックスがしぶしぶと前に出る。
遅出しで反則負けしたのにも関わらず、
文句をブツブツ言っている。
ドジャーは嬉しそうに枯れた木を背に座り込み、
「がんばれよーっ」と皮肉を言った。

「面白いね君達!!イヒ♪・・・・まぁ好きに戦っておくれよ!」

ドラグノフが言う。

「じゃぁ俺と戦いたいやつこっちきな」

ジャッカルはそう言い、
カギヅメになっている左腕を振って歩き出した。

「海賊か。人間のくせに海賊を名乗るのはけしからんな」
「あぁいう人間が水を汚くするんだ。船からゴミ投げんな」

ジャッカルの後を、
キャメル船長とサファイアポンナイトがついていった。

「じゃぁ俺達もやるかカイソン」
「2体受け持つって言ってたなかなか男前な人間をやってやろうぜスミル」

ジャスティンの前に、
二体の虎のモンスターが並び立つ。
コキコキと腕を鳴らす2体のタイガー。

「じゃぁ僕はこの弱そうなのでいいんですね」

アレックスの前。
それはビーズだった。
球体の愛らしいボディに生えた羽が、
ぱたぱたと羽ばたいて浮いている。

「イヒ♪そいつらをただのモンスターだと思わないでねぇん♪」

ドラグノフはニタニタ笑っていた。
















「ここらでいいか」

ジャッカルが振り向く。
闇深い森の中、
そこには2体の魔物。
キャメル船長とサファイアポンナイト。

「さぁ、好きにかかってきな」

ジャッカルが帽子を深く被りなおし、
笑う。

「ナメるなよ人間海賊」

キャメル船長がヒュンッ!とサーベルを突き出す。

「お前らの海賊ごっこにはイライラしていたんだ。人間が海賊などとな。
 しかも知ってるぞ偽海賊。・・・・・・・・・・・お前ピッツバーグ一族だな。
 デムピアス卿の血族を名乗って海を渡っているらしいな」

キャメル船長は二度、
ヒュヒュンと目にも留まらぬ速さでサーベルを振り、
もう一度ジャッカルに槍を突き出す。

「デムピアス卿への侮辱。そして我々の真似格好。けしからん」

「てやんでぃ!何が悪い。ルケっ子をナメてんのか?」

「海賊はモンスターの誇りだ。それを盗んで遊ぶ人間が許せんのだ」

「そりゃぁそうか。だが海賊は盗むのが仕事でな」

ジャッカルは左腕を構え、
腰を深く落とす。

「海賊王は命さえ盗むぜ」

「やってみろ人間」

対峙するキャメル船長とジャッカル。
海賊と海賊。
眼帯と眼帯。
海賊帽と海賊帽。
サーベルとカギズメ。

「キャメルの剣を受けてみよっ!」

「ニンブルフィンガー!!!」

一瞬だった。
同時に飛び出すキャメル船長とジャッカル。
両者自分の武器を突き出し、
交差する。
そしてカキンッと金属音が奏でられ、
両者はすれ違った。
一瞬の交差後、
立ち居地が逆になる両者。

「ほぉ・・・モンスター風情が」

ジャッカルの右腕に切り傷が入っていた。

「人間にしてはなかなか」

キャメル船長が振り向き、
またジャッカルに向けてサーベルを突き出した構えをとる。

だが・・・・・・
ジャッカルがもう一度構えることはなかった。

「どうした人間。海賊の誇りを交えようぞ」

「もう終わった」

ジャッカルは左腕を目線の高さまで上げる。
左腕に埋め込まれたカギヅメ。
カギヅメのダガー。
そこには・・・・なにやらよく分からないものがついていた。
黒くてグニャグニャで、
赤くて何かに濡れたもの。
その塊。
その塊から、
なにか太い黒い紐のようなものが垂れていて、
その紐はジャッカルの足元からずっと地面を伝っていた。

「これは・・・・・」

その紐を伝っていくと・・・
キャメル船長の腹部に繋がっていた。
その時点でやっと・・・・・
キャメル船長はそれが自分の内臓だと気付いた。

「あぁ・・・が・・・・」

自分の腹からこぼれ落ちた内臓。
臓物。
腸が自分の体から伝い、
ヘソの緒のようにジャッカルのカギズメまで繋がっている。
ジャッカルのカギヅメに引っかかっているのは・・・
自分の大事な内臓・・・・・。

「残念だったな船長さん」

ジャッカルは目線を隠すように海賊帽を深くかぶり、

「藻屑になりな」

思いっきり左腕を引っ張った。
すでに血だらけのキャメル船長は、
その瞬間、
さらに腹から血を噴出し、
カラッポの腹を下にしたまま動かなくなった。

「やるな人間」

「っ!?」

背後から声。
殺気。
咄嗟に振り向くジャッカル。
そこには・・・・
剣を振りかぶったポンナイトが居た。

「べらんめぃ!!!」

ポンナイトの剣とジャッカルのカギヅメがぶつかる。
手に衝撃が走る。
金属のぶつかり。
ジャッカルのカギヅメから、
キャメル船長の内臓が吹き飛ばされるように飛び散った。
交わるポンナイトの剣と、
ジャッカルの鉤爪ダガー。

「不意打ちたぁさすがモンスター!」

「ナメるな。キャメルと1対1で戦わせてやっただけありがたく思え。
 俺は戦士だからな。勝負に手出しはしない。だがその後は別だ」

サファイアポンナイトは剣を弾く、
ジャッカルとまた距離をとる。

「モンスターのクセに何が戦士だ」

「人間のくせに何が海賊だ」

もう一度武器と武器がぶつかり、
弾き、
さらにもう一度ぶつかる。
ポンナイトとはいえ、
並の剣術ではない。

「くっ・・・やるなっ!」

「どうした人間。その程度か?そして俺には"内臓"などないぞ」

ポンは液体状のモンスター。
内臓などというものは存在しない。
さきほどのキャメル船長のように殺すのは不可能。

剣とカギヅメがぶつかる。
何度も。
そしてジャッカルのカギヅメがポンナイトの盾にぶつかった時点で、
また両者の動きが止まった。

「お前ら人間は勝手だ。自分達のために世界を愛さない。
 水を汚す。木を切る。大気を犯す。・・・・・・・腐った石ころの心だ」

ジャッカルが一度はじくが、
またポンナイトの盾に攻撃が防がれる。

「だからスオミの湖から汚染された仲間が生まれるようになった。
 公害に汚れた汚い水の体をもつポン達だ。俺はそれが許せない」

「説教なんて聞きたくねぇな!」

ジャッカルが盾を弾こうとする、
だが、
ポンナイトの剣がジャッカルの首元に突きつけられる。
ジャッカルは「くっ・・・」と動きを止めた。

「お前ら人間の心は薄汚れた石ころだ。我らポン族の足元に及ばない。
 だから今こうなっている。弱さだ。そして我々は戦士だ。誇り高き強さだ。
 サファイアのような・・・トパーズのようなエメラルドのような・・・・
 ガーネットのような・・・・そしてダイヤモンドのような堅き心が我らにはある。
 宝石のように堅く!透き通った!輝かしい美しい心がココにあるっ!!」

ジャッカルの首につきつけた剣。
それをポンナイトは突き出した。
ジャッカルは咄嗟に避ける。
皮一枚。
首の皮一枚もっていかれたところで避けた。

「そりゃぁすげぇ心でぃ・・・・・・・尊敬すっぜ」

「人間如きの言葉、戯言にしか思えん!」

ポンナイトは盾を突き出し、
ジャッカルを押し離そうとする。
だが・・・・
ポンナイトの左手に・・・・
盾がなかった。

「!?」

「ここだ」

ジャッカルが言うと同時に、
地面にドサッと音がする。
ポンナイトの盾が地面に転がっていた。

「いつの間に・・・・」

「盗むのが仕事でねぇ」

ニタニタと笑うジャッカル。
左腕に輝くカギヅメ。
ニンブルフィンガー。
それもかなり高度なものだ。
いつ、どんな時でも、そしてどんなものでも
彼の左腕は盗み取る。

「ポンの誇りをっ!!!」

サファイアポンナイトが剣を振りかぶる。
それをガードする。
左腕のカギヅメで。
ハンガー状のそのカギヅメダガー。
それをひっかけるような形でガードし、
そしてそのまま剣も抜き取った。
ひっかけて弾き飛ばした。

「くっ・・・・」

「あれま。剣も盾もなくなったぜ誇り高きポンナイトさんよぉ」

ジャッカルが海賊帽子を深くかぶりなおしながら、
口元を歪ませて笑う。

「そうなっちゃぁ・・・・ポンメットをかぶってるだけのただのポンだな」

ポンナイトは空中をふわふわ浮遊しながら後ずさりをする。

「逃げるなら逃げてもいいぜ」

「・・・・俺は戦士だ。最後まで逃げない」

「カッコいいなモンスターさんよぉ。お前の言った堅き心ってのは本当だな。
 べらんえぃ!!!ポンのくせに宝石みてぇに輝くすばらしい心でぃ!!!
 ・・・・・・・・・・・・・・欲しくなるな・・・・・・海賊王の性か?財宝は放っておけねぇなぁ」

ジャッカルは思いっきり足を振り上げる。
蹴り上げる。
その蹴りは・・・
ポンナイトに直撃する。
ポンナイトの液体状の体は、
その蹴り一撃で吹き飛び、
水しぶきをあげて飛び散り、
周りの固い地面に浸み込んでいった。
ポンメットだけが虚しくその場に転がり落ちた。

「地獄は海より深いとこらしいな・・・・元気でやってくれ。
 藻屑になっちまったが・・・・その宝石のような人生は確かに頂いたぜ」

ジャッカルは海賊帽を深く被りなおす。
そして眼帯のついていない方の目で道を見定め、
元の道を戻っていった。

「あ、魔物は人生じゃないか」

どうでもいい事を考えていると、
死角になっている眼帯の左目側の頭に、
枯れ木の枝がぶつかった。














「おぅらぁぁあああああ!!!!」

「わっと!」

ジャスティンが避けると、
デスカイソンの拳が背後の枯れ木に直撃した。
カイソンの拳が突き刺さった枯れ木は、
まるでお菓子のように割れ、
砕けて吹っ飛んだ。

「なっ!?・・・なんて威力だ!!」

「おうおう」
「ナメてるみてぇだな」

デスカイソンと
デスチャンプスミル。
二体の虎。
それらが並んで拳をコキコキと鳴らす。
虎が二体。
まるでムキムキの人間のようにも見える。

「お前魔物ナメてるだろ?」
「虎だと思ってナメてんじゃねぇか?」

「・・・・・・・どういう事だ?」

ジャスティンは警戒する。
デスカイソンとデスチャンプスミルの動きを。
攻撃力の強さがハンパじゃない。
一瞬の気の緩みで逝かされてしまう。

「俺達の攻撃はな」
「大地の怒りだ」

「自然を愛する動物様の技ってことか」

「違ぇーよ!」
「そこが人間と魔物を差別してるところだ!」

デスカイソンとデスチャンプスミルは、
同時に拳を突き出す。

「スキルの大地の怒りだ」
「俺達ぁスキルが使えるんだよ」

「モンスターが・・・・修道士の技だと?」

「その辺が差別してるとこだぜ」
「モンスターだって努力する」
「モンスターだって修行する」
「毎日サンドバッグを叩く」
「戦えば強くもなる」

カイソンとスミルが同時に足を突き出す。

「人間がこの世を制してるのはなんでだ?」
「それは"頭脳"だ」
「"技"だ」
「貧弱な体しかない人間が魔物に勝てるのは」
「文明を使い、経験を使い、知識を使うからだ」
「道具を使い、魔法を使い、技を使うからだ」

カイソンとスミルがまた同時に拳を突き出す。

「俺達の種族だって階級がある」
「俺達は修行の果てに力を得て、スキルを得た」
「そして"デス"の称号を得た」
「カイソン界の頂点に」
「チャンプスミル界の頂点に」
「俺達は立った」
「努力の果てにだ」

カイソンとスミルが腰を深く落とす。
走りこんでくる構えだ。

「お前のさっきのセリフもあながち間違ってねぇ」
「大地に生まれ、大地の上のみで生きた俺達」
「モンスターだから得られないわけじゃない」
「だが、モンスターだからこそ得られた技」
「大地の怒りを食らえ!!!」

カイソンとスミルが走りこんできた。

「やべぇな・・・・」

ジャスティンに向かって走りこんでくるカイソンとスミル。
決して速いわけじゃない。
が、それはジャスティンも同じ。
なんとか飛び越すような形で、
カイソンとスミルの突進を交わした。

「ちぃ!!!」
「外したか!!」

カイソンとスミルの突進。
そこから突き出された大地の怒り。
それはデコボコな森の地面に突き刺さった。
小さな小さな崖のようになっていたその地面は、
二匹の虎の拳によって吹き飛んだ。
固い固い地面がだ。
あれを食らったら・・・・・骨ごとオジャンだ。

「今死んだらラスティルの近くで眠れるな・・・・」

本気でもない事をジャスティンは言う。
自分でも言ってて冗談になっていない事だ。
顔をしかめた。

「ジャスティンさんがんばれー!!」
「頑張るでヤンスー!!」

木の陰からバンビとピンキッドの勝手な応援が聞こえる。
いい気なもんだ。
そして視界に入るドラグノフの姿。
ニタニタと笑っている。

「スキルとかで一気にやっちゃってー!」
「やっちゃうでヤンスー!!」

「いい気なもんだ・・・」

ため息をつきながらジャスティンは素早く左手を振った。
十字に。
そして突き出す左手の人差し指。

「アーメン」

指先をあげると同時に吹き出すパージフレアの炎。

「ぐぉぁ!!!」

それはデスカイソンの体を燃やした。
蒼白い炎が虎の丸焼きを形成する。
が・・・・・

「・・・・アッチィな・・・・」

ダメージは食らっているが、
あまり重症そうではないデスカイソンの姿。

「やっぱダメか・・・・」

「無駄だぜ人間」
「火山産まれをなめるなよ?」

熱には少々耐性があるようだ。
だが、
それ以上にジャスティン側にも問題があった。

「もう少し練習しとくべきだったかな・・・・
 混合職(カクテルジョブ)のアレックス君にスキルで負けるの嫌だったんだが」

ジャスティンは顔をしかめた。
ジャスティンはパージフレアが得意な方ではなかった。
人には不得手・得手がある。
ジャスティンの場合、得意なスキルというのは・・・・リベレーションだった。
聖職者であるという事。
その時点で基本的には団体戦を求められる。
だからこそ、
ジャスティンが極めていったのは仲間の力を借りるリベレーションだった。

「ラスティルがいればな・・・・」

いなくなった者を・・・・
こういう時こそ求めてしまう。
自分の女神。
自分だけの女神。
それがラスティルだった。

「・・・・・・泣いてばかりじゃダメだよねハニー・・・・」

「何めそめそしてやがる!」
「人間!そんなもんか!」
「試してやろうと思ったが」
「こないならこちらから行くぞ!」

「おっと待ってくれ」

ジャスティンは左手を突き出し、
虎達を制止した。
そしてそのまま首を大きく振り、
長い髪を一度撒き散らした。
左右に振ってその線の細い髪を整える。
そしてニヤりと笑う。
振り向くと、

「・・・・・・・・・・・イヒ♪」

ドラグノフが向こうで笑っていた。
分かっているのだ。
彼はジャスティンが手出しする術がないと。
近づかなければいけないのに、
近づくとあの虎達にやられる。
その状況を観客として楽しんでいる。

「見てろよ・・・・お前はGUN'Sを弄んでくれた借りがある。
 あんなギルドでも・・・・一度は俺が夢のために故郷と呼んだところなんだぜ」

ドラグノフを見返してやるために。
そしてラスティルに見せてやるために。
ジャスティンは目に力を込め、
両手で鎌(サバスロッド)を掴む。

「なぁーにする気だ人間」
「おめぇがそこからできることはねぇぞ」
「これでも勉強家なんだ俺らは」
「何百という人間を倒してきたからな」
「パージフレアは俺達に致命傷にならない」
「ポピュラーなプレイアは至近距離用」
「どうする気だ」

「もちろん・・・・」

ジャスティンはニヤりと笑い、
鎌を振り上げる。

「得意技さ!!!」

そして・・・
鎌の柄で・・・思いっきり地面を突いた。

「リベレーションっ!!!!!!!」

その瞬間、
デスチャンプスミルの体が光り輝く。
まるで周りが真っ白になるほどに、
そして幻想にしか見えないような・・・・
そんな女神がスミルの体を媒体に現れた。
それは・・・・
少しラスティルに似てる気がした。

「ぐあっぁああああ!!!」

デスカイソンの体が吹っ飛ぶ。
超至近距離。
真横にいたデスチャンプスミルがリベレーションの原点になったのだから・・・・。
デスカイソンは吹き飛び、
何度から地面にぶつかりながら転び、
衝撃で体の部品が幾度と千切れていった。
そして数十メートル吹き飛んだ場所で、
ボロボロで、
血だらけになった虎の死体が形成された。

「ば・・・ばかな・・・・・」

光りの中、
もとに戻ったデスチャンプスミルは驚きの表情を見せていた。

「人間のスキルは知っている・・・。今のはリベレーション・・・。
 だが、あれは仲間の体を媒体にするスペルのはずだっ!!!」

「じゃぁ君は仲間だったのかもね?」

ジャスティンが笑顔を振りまき、
鎌を二度回して見せた。

「ま、ものは考えようって事だね。ぶっつけ本番だったけど出来たよ。
 これはなかなか使えそうだ。得意技が無くならなくて安心したぜ。
 やっぱり俺は敵でも味方でも・・・・・・団体戦が得意なようだ」

ジャスティンは両手で掴んだ鎌を、
両手を交差させて前に突き出してポーズを決めて見せた。

「くっ・・・・カイソン・・・・・」

スミルは死体になったカイソンを見る。

「だが・・!!くそっ!もうタイマンだ!団体戦とやらじゃなくなったぜ!
 ズルはもう出来ねぇ!そうなったら努力の成果を発揮出来る!!」

スミルは拳を突き出した。
空気が揺れるような、重い拳。
人間にはない力強い大きな拳。

「接近戦しかもうないな人間・・・・・・・・大地は俺に微笑んだ!!!」

接近戦。
それをしてしまうと・・・あの拳にやられる。
どう上手く戦っても、
あの拳を一撃食らったら負けなのだ。
接近戦で使えるのは・・・・
鎌による斬撃と、
プレイア。
リベレーションは発動対象がいないし、
パージは役に立たない。

「だけど・・・・・・・」

ジャスティンは左手でまた十字を描いた。
すると、
左手が少し白く・・・
光り輝いた。
聖なる暖かい光。

「勉強不足だったみたいだな」

その左手でジャスティンは鎌を掴む。
結果、両手で掴んだ鎌は・・・・光り輝き始めた。
左手から移るように・・・鎌自体が白く光り輝き始めた。

「なんだ・・・・・」

「やはり知らないか。そこが勉強不足だったな」

ジャスティンは一度鎌を振って見せた。
そしてニヤりと笑う。

「何が勉強不足だ・・・ハッタリだろ?それにもし何かスキルだとしても、
 その光り輝いてる鎌。それで攻撃するにはやはり接近せ・・・・っ!?」

そこでやっと気付いた。
スミルの肩。
そこに一筋の・・・・傷。
左肩に血の滲む斬り傷が出来ていた。

「い、いつの間に?」

「ホーリーストライク」

ジャスティンがもう一度鎌を振ってみせる。
と、同時。
スミルの胸に浅い斬り傷が入る。

「聖職者の遠距離技ってのはまだこーいうのがあんだぜ?
 このホーリーストライクは魔力と距離によって威力の変わる技だ。
 だからまぁ・・・・・たしかに接近戦用とも言えなくもないが・・・・」

ジャスティンがもう一度鎌を振る。
今度はスミルの左頬に斬り傷が出来る。

「お前が接近戦を望むなら・・・・好きにしろよ。近づいてこい。
 その分ホーリーストライクの威力は上がっていく」

「クッ・・・・クソっ・・・・・」

「じゃぁ俺が近づこうか?」

ジャスティンは笑顔を見せながら、
鎌を一振り、
もう一振り。
そして一歩。
もう一歩。
近づいては斬り。
近づいては斬り。
離れているはずなのに、
スミルについていく斬り傷。
それは浅い傷。
だが、
ジャスティンが一歩。
また一歩の近づくたび、
デスチャンプスミルにつけられる傷は深くなっていく。

「くっ・・・・」

スミルは両腕で盾を作る。
ガードする。
が、
両腕に傷が作られていく。
両腕で隠れきらないところに傷が作られていく。
血が弾け飛ぶ。
そしてそれは・・・
少しづつ・・・
少しづつ深くなっていく。

「ダメだ!一端・・・」

スミルが後ろへ下がろうとした。
が、

「なっ?!」

後ろは・・・・壁だった。
盛り上がった地面。
サラセンの森特有の小さな崖のような地面。
そこにスミルの背中は当たった。
逃げ場は・・・・・ない。
そして・・・・

「もうすぐお得意の接近戦だぜ?」

気付くともうすぐそこまでジャスティンが近づいてきていた。

「ク・・・・・クク・・・・」

逃げ場のないスミルは少し笑った。
虎特有の牙を揺らしながら。

「かかったな!!接近戦にするためにわざとこうしたんだっ!!」

「嘘をつくな」

「っ!?!?」

その瞬間、
デスチャンプスミルの両腕が吹っ飛んだ。
もう、
ホーリーストライクでそれほどの威力が発揮される距離だった。

「あ・・・あぁぁああ!!!俺の努力の腕が!!!大地の恵みがああああ!!!」

両腕から吹き出す血液。
人間と同じ赤い血。
唯一怖かったその凶暴の両腕。
それはもう・・・・ただの血液噴出ポンプに変わってしまった。

「勉強不足がお前の死因だ虎野郎」

ジャスティンは鎌をもったまま、
スミルの前に立ちはだかる。
まるで・・・・
死神のように。

「待て!!もう俺は戦えない!戦意もない!お前を襲わない!」

「馬鹿かお前。お前は魔物のくせに勉強はするようだが・・・・勘違いしてるみたいだな」

「へ?」

「俺を正義の味方かなんかと間違えてるだろ」

ジャスティンはそう言い、
デスチャンプスミルの首に鎌を回した。

「俺は子供の頃から人を殺して生きてきてね。
 だけど結構皆普段の俺を見て勘違いしてるんだよ。
 なかなか話の通じる好青年だってね。だけど大きな間違いなんだ」

鎌を首に回したまま、
ジャスティンはスミルに顔を近づける。

「ドジャーとメッツはあれでも甘っちょろい。 
 その尻拭いをしてたのが俺さ。確実に首を仕留める。
 あいつらはいっつも勝手で尻拭いはいつも俺さ。
 苦労するよな。あぁいう親友を持つと・・・・まぁあいつらはあれがいんだけどな」

軽い笑顔のまま、
ジャスティンは軽くため息をついた。

「俺のあだ名を知ってるか?『ハローグッバイ』だ。戦場で会ったが最後ってね。
 お前とのハローは終わった。なら残ってるのは・・・・・バイバイだけさ」

ジャスティンは顔を離す。
そして少し冷たい目をして・・・・
鎌を思いっきり引き払った。
と、同時に虎の首は吹っ飛び、
両腕と同じように首から血液が噴出した。

「グッバイ♪」

ジャスティンは笑顔で鎌から血を払った。
冷酷なその姿は、
暗い闇の森に浮かぶ死神にも見えた。

「・・・・・・」

死神は振り向く。
そちらはラスティルの墓の方だった。

「ハニー・・・俺は死神だが、君は俺の女神だった。君には俺がどう見えてたのかな・・・。
 でも俺は地獄の底から・・・・・・最悪に血にまみれてでも雲の上の君を掴みにいくよ」























「うーん・・・・・」

アレックスは困っていた。
もう悩んでいた。
困っていた。

「どうしたもんか・・・・」

ため息が出た。
考え無しだったのが悪かった。
反省した。
自分を責めたかった。
目の前の光景を見ると。

「無理無理!」
「終わらない!」
「たおせなーい!」
「無限無限!」
「ループループ!」
「残念しょーーーー!」

紫色のビーズが9匹ほど浮いていた。

「だめだめー」
「あきらめよー」
「あきらめよーよー!」
「一生つづくー!」
「かてないよー!」
「無駄ーー!」

「はぁ・・・・」

ため息が出る。
ビーズ。
このモンスターの特性は有名だ。
まずは緑。
グリーンビーズ。
その一匹を倒すと・・・・
増殖。
分裂して赤色のビーズが生まれる。
そのビーズを倒すと・・・・また増える。
増殖。
分裂。
そうやって7色。
最後の紫。
パープルビーズになるまで、
ネズミ算方式に増え続けていく。

「戻った戻ったー!わーい!」

「うるさいですね・・・・」

アレックスが十字を切り、
指を突き出し、
パーフフレアを放つ。
するとそのビーズが分裂し、
紫のビーズが生まれた。

「また紫ー!」
「紫ー!」

「・・・・・・・・」

そう、
紫のビーズを倒せばそれで終わりだ。
終わりのはずなのだが・・・・

「ドラグノフさんの改造ビーズか何かですか・・・・」

このビーズは・・・特殊だった。
普通のビーズとは違う。
特異体質を持っていた。

「戻ったー!青ー!」

「だぁぁぁああ!!」

またパージフレアを放つ。
ブルービーズに。
すると、
ブルービーズは分裂し、
パープルビーズが現れた。

「キリがない・・・・」

キリがない理由。
それは・・・・・
戻るからだった。
このビーズ・・・・。
時間がたつと色が戻っていくのだ。

「悪趣味な研究成果ってとこですか・・・・」

紫のビーズ。
それを倒すと終わるのは同じ。
基本的には同じ。
だが、
時間がたつと紫から青に・・・
オレンジから赤に・・・・
時間につれてどんどん戻っていくのだ。
戻ったビーズを倒すとやっぱり増える。

「とにかく・・・紫である間に倒さないと・・・・また色が戻って増える・・・ってことですね」

向こうの方でドラグノフが笑っている。
「どうだい?僕の研究成果♪」
って顔をしている。

「あっ、今絶対「イヒ♪」って笑った・・・ムカツく人ですね・・・・・」

そうしている間にも、
ビーズがまた一匹青に戻る。
すかさずパージで燃やす。
また増える。

「はぁ・・・・」

とりあえず紫のビーズを何匹か攻撃する。
だが、
その間に他のビーズが青に戻る。
攻撃する増える。

「一生やれっていうんですか・・・・」

一応・・・
数はかなり減らした。
時間さえかければ、
いつか全部倒せるだろう。

「まぁ・・・・・MP(魔力)が足りれば・・・・の話ですけどね」

恐らく足りない。
そんな状況見えてきて、今硬直中なのだ。
着々と減る魔力。
増えたり減ったりのビーズ。

「あきらめろー!」
「むーりーーー!」
「そろそろこっちからもいくよー」
「殺しにいくよー!」
「いっせいにいくよー」

ビーズの羽根突き球体ボディ。
そしてその愛らしい顔。
まぁ・・・
こうモグラ叩きみたいなことをしていると、
ウザくてしょうがないが・・・・。

「僕らを倒すにはー」
「一斉に倒すしかないねー」
「青に戻るまでに一気にやっちゃうしかないねー」
「でも無理だよねー」
「そんな連続で放てるなら苦労しないよねー」

そう、
パージフレアには十字を切る動作が必要だ。
それを踏まえると・・・・
追いつかない。

「半径10mパージフレア・・・・・最初から思いついてればなぁ・・・・」

ため息をつく。
もうそんな魔力ないのだ。
見た目以上に魔力を消耗する技だ。
魔力のほとんどを持っていかれる。

「ざーんねーん」
「もうむりー」
「もうすぐまた青にもどるー」
「また減らさなきゃー」
「でも減らしてる間にまた戻るー」
「全部倒す前に魔力きれるー」
「むりー」

「あっ!!」

アレックスは何かを思い出した。
突然の思い出し。
あまりにいい思いつきで、
思わず指をパチンと鳴らした。
きたっ!と思う最高の思いつきだったからだった。
よくぞ思い出した自分。
そして早く思い出しとけ自分。

「僕もパージフレアに関しては世界最高だって事を見せとかなきゃね」

アレックスは笑い、
左手で十字を描く。

「無理だってー」
「むりむりー」
「もうすぐ青に戻るー」
「ざーんねーん」
「ビーズさいきょー」
「ビーズさいこー」

だが、
そのままアレックスは・・・・
右手でも十字を描いた。

「両手でも無理ー」
「2匹じゃ無理ー」
「それさっきからやってたねー」
「でも追いつかなかったねー」
「むりー」
「むりむりー」

「2発じゃなかったら?」

アレックスはニヤりと笑い、
そして両手を突き出す。
アレックスの目が真剣になる。
集中する。
異様な集中力。
アレックスではないような・・・
そんな真剣さ。

「・・・・・・・・」

突き出した両手。
その先に伸びる指。
全ての指だ。
それが一つ一つ別々の動きをする。
別々の方向を指す。
・・・・・
一つ一つの指が・・・・
10本の指が・・・・
ビーズを一匹ずつ捕えた。

「無理すればこういう事もできるんですよ。指が痛いですけどね」

そう・・・
指一本につき・・・・1体のビーズ。
調度今ビーズの数は10体。
そして・・・・
全てのビーズの下に・・・・
羽でパタパタ羽ばたくビーズの下に・・・・
魔方陣がしかれた。

「ロックオン完了ってとこですね」

「〜〜!?」
「ズルいー!」
「そんなのきいたこともないー!」

「僕もこんなビーズは聞いたことなかったですよ」

「やめてー」
「だめー!」
「青に戻るまでまってー」
「まってー」

「だーめー♪」

そしてアレックスは・・・・

「アーメン」

10本の指を・・・・
同時に上に上げた。

「あー」
「あぁー」
「あーあー!」

10本の火柱。
蒼白い炎が・・・10本同時に吹き上がる。
聖なる炎が、
全てのビーズを同時に焼き尽くした。
パージフレアの同時発動。
10発同時パージフレア。

「敵は動きますからね・・・10発なんて同時に放ったところで、
 普段は当たりませんから・・・最大2発に集中してましたけど・・・
 忘れるってのはよくないですね。こういう時に大変です」

目は2個しかないのだから、
普段は動き敵に対し、10個もロックオンできない。
どうせ数発外すなら1発づつ確実に。
じゃないと魔力がもったいない。
こういうケースは稀なのだ。

「あれ?」

アレックスは発火点を見る。
すると・・・
ビーズが2匹残っていた。

「やっぱ10発同時とかやったので・・・2発外しましたか・・・・」

「ちがうよー」
「ギリギリ青に戻ったー」

「あぁ、そういう事ですか」

アレックスは納得し、
左手と右手で同時に十字を切った。

「うわーうわー!やっぱり意味なかったー!」
「にげろーにげろー!」

ビーズは一生懸命羽を動かしながら、
パタパタトロトロと飛び回る。
だが、
アレックスの左手と右手は、
それぞれのビーズを追う。

「やはり1発づつに集中したほうが建設的ですね。狙いやすいです」

アレックスがニコりと笑うと同時に、
指が上を向き、
ビーズを炎が飲み込んだ。

「はぁ・・・・」

アレックスは疲れ顔でため息をつく。

「1匹相手だったのに1匹じゃなかったサギだ・・・・・」

ドジャーにジャンケンで負けた事をすこぶる後悔した。
そしてドッと疲れが流れ込んできた。
まったくダメージはないが、
魔力を使いすぎた。
いや・・・使い果たしたといっていいレベルだ。

「誰かにマナリクシャもらおう・・・・」

もう一度ため息が出た。


















デスチャンプスミルの首から血が噴出する。
また、
向こう側で火柱が二本上がる。
そして
奥からジャッカルが帰ってくる。

全員戦闘が終わった。

「あーー面白かった!面白かった!凄く残念!くやしい!・・・・なんちって♪」

ドラグノフはニタニタ笑う。
そして記憶の書のページをペラペラめくる。

「次は何にしようかな!次は何にしようかな!イヒ♪・・・・アハハハハハハハハ!!!!」

ドラグノフが大笑いをあげながら、
何一つ悔しい表情を見せず、
完全に楽しみながら記憶の書をめくる。
次は何を召喚しようか。
ゲーム。
ただのゲームだ。
彼にとってその程度。
アレックス達の戦闘など、
遊び。

「残念ながら・・・・」

ふと声。

「次なんかねぇよ」

聞こえるかどうかという小さな音。
鈍い音。
ザクッという・・・・小さな音。
ドラグノフの体が小さく揺れる。
背後。
血が滴り落ちる。
ダガー。
ダガーが・・・・・・ドラグノフの背中に突き刺さっている。

「・・・・・・あれ?」

ドラグノフの羽の生えた背中。
そこにダガー。
深々と刺さる。
それを持っているのは・・・・ドジャー。
いつの間にか背後にまわっていた。
血が滴り落ちる。

「カッ・・・・油断したな。これを狙ってたんだよヘタレが。
 ジャスティン達が無駄に2匹ずつ戦うと思ってたか?
 無意味に。完全に無意味に1人・・・俺って戦力を余らすと思ったか?」

ドジャーはドラグノフの背中にダガーを刺しこんだまま、
ニヤりと笑う。

「てめぇはザコだ。だがテメェを倒さない限り終わらない戦い。
 最初から誰もが思うってんだ。テメェ自体を叩かなきゃ・・・てな。
 放っておくとヤバかったが・・・・まだテメェが相手でよかったよ天才さんよぉ」

「痛いな・・・・。うん・・・・痛いね・・・・・・痛い・・・・・」

ドラグノフの動きが止まる。
ページをめくっていた手がとまる。
背中のダガー。
確実なる・・・致命傷。

「死ぬ・・・・・こんなあっけない形で僕が・・・・・?」

ドラグノフの手が震える。
カタカタと。
痛みで?
冷えていく自分の体温で?

「なぁぁぁーーーーんちって♪うっそぉーーーーん♪」

「・・・・・・あ?」

「えぇーーーっと次は誰にしようかなぁー♪」

ドラグノフはそのまま記憶の書をめくりはじめる。
また再開する。
何事もなかったかのように。
またページをペラペラめくる。

「な、なんだこいつ!このっ!!」

ドジャーは一度ダガーを抜き、
もう一度ドラグノフの背中に突き刺す。
思いっきり。
ダガーの柄の部分まで。
常人ならこれで即死・・・・・

「よし決めた!こいつにしよう!!自信作だしね!うん♪」

まるで何事もないように。
背中に傷などないように・・・・。
いや、
確実に血が垂れ流れている。
ボタボタと。
赤く、
そして温かい血だ。
間違いなく・・・
この体から流れている血だ。

「・・・・・!?」

ドジャーは目を見開いた。
さきほどの・・・
一回前の傷。
ダガーの傷。
それが・・・・
見る見る塞がっていく。

「こりゃぁ・・・・・テメェッ!!!これはレイズのっ!!!」

「そそー。特化型ブレシングヘルスだよ」

「なんでてめぇが・・・・・」

疑問に思ったが、
すぐに答えは出た。
ドラグノフ=カラシニコフ。
《GUN'S Revolver》の創始者。
もちろんアインハルトのためだとはいえ、
内容はかなり自由に作っただろう。
壊すためだけのギルドなのだから。

ヴァレンタイン=ルガー。
彼を通じて研究させていた。
人体実験。
そしてそこに・・・レイズ。
後任のミダンダスにも同じ事をさせた。
ミダンダスにはミダンダスの意志があったが、
結果的にGUN'Sは壊滅し、
その間もデータはまるまるドラグノフの下へ。

「不十分なデータだったけどねー。僕が完成させるには十分すぎたよ。
 え?天才すぎるから?やっぱりねーーー♪・・・・・なんちって♪」

「くっ・・・・」

ドジャーはダガーを抜く。
特化型ブレシングヘルス。
レイズと同じ能力なのだから、効果はすぐ分かる。
つまるところ・・・
ドラグノフは魔力があるかぎり再生し続ける。
無敵・・・・。
悪魔なのだ。
倒すには・・・・再生不能な状態にまでするか・・・・

「頭だっ!!!!」

ドジャーがドラグノフの後頭部にダガーを突き出した。
だが、
ドラグノフは間一髪。
振り向きながら後ろに飛んだ。
少しだ。
運動神経もいいわけではない。
だが攻撃は当たらなかった。
それで十分すぎた。

「危ない危ない♪死んじゃうとこだったー!!!
 まぁーーったくドジャー君・・・君にはプレゼントがあるのに!」

「プレゼントだと?」

「アイスクリームだよっ!!・・・なんちって♪ウッソォーーーん!」

「なるほどな。イライラをプレゼントしてくれたわけか。
 カッ、残念だがさっきからお前を見てるだけでそれは十分だ」

「違うよ!!!本当にいいもの!!僕の作った最近の最高傑作だよ!!・・・・・なんちって♪
 改造しただけなんだけどねー♪元が良かったからなかなかいいものが出来た!
 あ、ページめくれちゃってる。えぇーーっと研究実験保管室031・・・・あぁあったこれだこれだ」

ドラグノフはあるページで動きをとめた。
記憶の書。
それが輝く。
そしてニヤりと笑った。

光が飛んでくる。
暗い森の闇をかきわけ、
吹っ飛んでくる転送の光。
それが地面にぶつかった。

「会えたな・・・・・・」

砂煙の中から、
ソレはそう言った。
真っ白な髪をしていた。
血が通っていない真っ白な髪だ。
屈強とは言えない細めの体。
だが、
肩から先は違った。
無骨な機械。
左肩から先は鉄の間接があり、
先は鋭い無機質なナイフになっていた。
そして右肩から先は・・・・
まるまるライフルになっていた。

「これ、ミルレスで拾ってきたんだよねー♪」

「テメェは・・・・」

「・・・・・地獄に行っても・・・・また殺しにきたる言うたやろ?」

左目が機械で塞がれている。
見えているのか?
ともかく全身が機械で補強されている。
ところどころにパイプがつながれている。
もう血だけで動けないのか。
無理矢理繋ぎとめられた命。

「わいは消えうせへん。光のように。光速の中で・・・誰も掴み取れない世界の中、
 生きるんは誰にも見えへん世界ん中・・・・・・・やけど必ずそこにいて走り続ける。
 3度目の機会や・・・・証明したる。見えないって形で見せつけたる!わいが・・・・・」

男は右腕を、
ライフルをドジャーに向けた。

「世界最速やって事をな!!!」

「・・・・・・しつけぇ〜・・・・・さすがにお前は死んどけよ・・・・」









                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送