「どっかぁああああああああん!!!!」


チェスターの拳から放たれるエネルギーの塊。
気の塊。
イミットゲイザー。

「無駄いうてるネ」

だが、
ダ=フイはそれを簡単に避ける。

「何度やってきても同じヨ。ワタシ、何人のサラセンの男と戦った思ってる?
 修道士との戦い熟練者ネ。言うなら対修道士のエキスパートあるヨ」

「ぐむ・・・ぬぅっー!!!!」

チェスターは顔を真っ赤にし、
地団太を踏んで怒った。
まるで猿だ。

「あったまくるなーっ!もうっ!さっきからぁー!!」

さっきから。
チェスターはもうダ=フイと戦い始めてから十数分過ぎようとしていた。
だが、
チェスターの攻撃はまだ一度もダ=フイに当たっていない。

「相手の攻撃を読む。修道士の基本ネ。修道のメッカ・マサイの戦士をなめちゃダメあるよ」

「絶対あててやるジャンっ!!!どっかぁぁあああああああん!!!」

また懲りずにイミットゲイザー。
もちろん当たらない。
避けられる。
もう何発放っているだろうか。
まぁそれも仕方が無い。
チェスターの戦いはイミットゲイザーによる気孔術。
そのイミットゲイザーが当たらないのは悔しくてたまらないのだろう。
子供のようにムキになる。

「ムッカァァッーーーー!!!」

また地団太を踏むチェスター。
これを数十分繰り返しているのだ。
飽きないものである。

「・・・・・・・・・・」

ダ=フイは呆れながらも、
シャベリンをクルクルと回しながら・・・
チェスターに真剣な顔で聞いた。

「・・・・・・・なんでアルか?」

「ん?何がジャン?」

突然の問い。
チェスターには訳が分からない。
首を傾げる。

「あんたそんなに戦意満々ネ。見るからに戦意に満ち溢れてるヨ。
 そういった人間でアルわけカ。・・・・・・なのになんでアルか?
 なんで一年前逃げた。なんでお前はミルレスから逃げたのカ?」

一年前。
ミルレス。
GUN'Sとの戦いの時だ。
その終盤、
チェスターはアインハルトの下の者達に追い詰められた。
いや、44部隊と言ったほうがいい。
地獄と化したミルレス。
そこでチェスターを追い詰める44部隊。

「・・・・・・・・に、逃げてないもんねっ!」

「逃げたネっ!!」

ダ=フイの声は何故か怒りがこもっていた。

「ワタシ達44部隊は、ナックルがあんたとタイマンでやりたい言うから、
 あの日ワタシ達は黙ってあんたとナックルを戦わせたヨ。
 なのにあんた、負けそうになったら逃げたネ。尻尾巻いて逃げたヨ」

「・・・・・・・・あ、あんまり覚えてないんだっ!無我夢中だったからっ!
 オイラは普通逃げたりしないもんねっ!ヒーローだかんなっ!」

「ヒーローとかそういうのどうでもいいヨ。ワタシ言いたいは一つネ。
 ・・・・・・・・・ワタシは逃げる奴が大っ嫌いアル。敵でも味方でもヨ」

ダ=フイは回していたシャベリンをもう一度握りなおし、
それを勢いよく地面に突き刺した。

「逃げる奴には誇りがないヨッ!戦う者!戦士としてクズあるヨ!
 マサイの男は決して逃げないネっ!背を向けることは死より恥アルヨ!」

「だ・・・だからオイラよく覚えてないんだって・・・」

「あんただけないネ。アレックス部隊長もヨ」

ダ=フイは明らかに顔を歪ませて続ける。

「生きる生き延びる。勝つ勝たない。大事アルね。だけどそれ以上に大事なのは誇りヨ。
 あの人逃げたネ。考えがあってなのは分かるヨ。だけど逃げたネ。誇り捨ててネ。
 他の騎士、逃げずに戦って散ったヨ。誇りある王国騎士団だったアル。
 けどアレックス部隊長はクズあるネ。誇りすらないネ。それが許せないアルヨ」

「アレックスだっていろいろ大変だったわけジャン!」

「大変を捨てる。目をそらす。それを"逃げる"言うネ」

ダ=フイはもう一度槍を抜き、
回す。

「言いたい事ソレね。ワタシ逃げる奴が一番許せないヨ。
 誇りあるマサイの血と、誇りある王国騎士団の心が言うネ」

「じゃぁ・・・・」

チェスターは拳を握る。
握り締める。

「今オイラは逃げないぜっ!!文句あっかっ!!!」

チェスターは拳を突き出し、
ニカりと笑って堂々とそう叫んだ。
チェスターに難しい理屈なんか分からない。
ただ理解したのは・・・・
目の前の男が"勝負"というものを求めているのだろう。
そう解釈した。

「・・・・・・・・・・・・面白いアル。あんたがサラセン生まれじゃなくてよかったネ!!!」

ダ=フイが突っ込んできた。
初めてのことだ。
先ほどから攻撃を仕掛けてきたことが無かった。
が、
シャベリンを回しながらチェスターに迫ってきた。

「そーこなくっちゃっ!!!ハァァァァァ・・・・・」

チェスターが両手に力を込める。
気を溜める。
チェスターの手が輝く。
両腕が光に満ちていく。

「師匠直伝っ!!!イミットゲイザー五式っ!!!
 バリバリスペシャルウルトラマシンガンイミット爆裂拳っ!!
 どどどどどどどどどっどっかぁぁぁぁあああああああん!!!!」

連打されるチェスターの両腕。
高速で突き出される左と右の拳。
そしてその度発射される無数のエネルギー弾。
イミットゲイザーの連射。
雨嵐が真横に降り注ぐように、イミットゲイザーの連射が放たれた。

「こりゃ凄いネ」

ダ=フイの目の前に広がるイミットゲイザー。
視界が埋め尽くされる。
ハッキリ言って逃げ場がない。
散弾され、広がったイミットゲイザーの山は、
ダ=フイの運動神経であっても逃げ場が見当たらない。

「けど・・・・こんな場面何度でも打開してきたネ」

迫るイミットゲイザーの連射。
一方ダ=フイは、
走りながらシャベリンを・・・・・・

「ホイッ」

地面に突き刺した。
そしてそれをしならせて・・・・・

「アィヤーーー!!!」

跳んだ。
シャベリンを棒高跳びのように使い、
空高く跳んだ。

「うはっ!!すっげぇジャン!!!」

イミットゲイザーの連射を全て飛び越え、
空中からチェスターに向かって飛んでくるダ=フイ。
こんな避け方をされたのは初めてだった。

「面白いジャン」

避けられたのにチェスターはニヤりと笑う。
そして空中のダ=フイ。

「素手で戦うの久しぶりアルヨ」

高飛びに使ったため、
シャベリンは地面に刺したままだ。
ダ=フイは空中で左手で右手を掴み、
コキコキと鳴らした。

「行くヨっ!」

「こいっ!!!」

ダ=フイは空中から拳を突き出す。
チェスターも空中に向かって拳を突き出す。
パンチとパンチ。
拳と拳。
そしてそのまま・・・・
二人の拳がぶつかった。

「・・・・ァィヤー」

「痛っ!!!」

きしむ音。
相殺。
お互いの拳が痛む。

「さすがアルネ」

ダ=フイは一度下がる。
バックステップ。

「でもこれからヨ」

と思うとすぐさま立て続けに突っ込んできた。
身軽さはチェスター以上かもしれない。

「アタァ!!!」

ダ=フイの回し蹴り。
速い。
重さより速さ。
そんな蹴りだ。

「やるジャン!!」

チェスターは左腕でガード。
そしてそのまま右腕でパンチ。

「甘いヨ」

しかしそれはダ=フイに弾かれる。
回し蹴りの体勢から、
ダ=フイは軽快な身のこなしで体を回転させ、
チェスターのパンチを蹴り弾いた。

「セィヤっ!」

そしてそのまま空中。
未だ空中に滞在したまま、
体を縦に回転。
回転しながらの・・・・・

「ネリチャギネッ!」

カカト落とし。
やはり威力の重さよりも機動力を重視した動き。
それがチェスターの脳天に・・・

「ほんっとすげぇっ!!」

チェスターはガードした。
両腕をクロスさせてカカトを受け止めた。

「よく止めたヨ」

カカトがチェスターの両腕に乗っかっている状態。
ダ=フイはそのまま、
チェスターの両腕を踏み台に跳んだ。
チェスターの背後へ。

「でも後ろはガラ空きヨっ!!!」

ダ=フイはそのままチェスターの背後に着地し、
チェスターの背中に思いっきり肘打ち。

「!?」

だが、
肘を突き出した先に、
チェスターの姿は無かった。

「こっちだよん!!」

声は上からした。
ダ=フイが背後に回りこむ一瞬。
ほんの一瞬の隙にチェスターは跳んで避けていた。

「食らっちゃいなっ!!!」

チェスターは空中からそのまま直滑降。
腕を突き出してダ=フイへ一直進。
そして拳がダ=フイに迫る。

「これは避けられないネ」

チェスターのパンチに対し、
ダ=フイがガードする体勢をとった。
避けられないと踏んでだ。
だが・・・
その防ぎ方は少し異様だった。

「これがマサイ流ヨ」

両手を前に突き出していた。
手のひらを前にしてだ。
ガードする体勢には見えない。

「腕折れても知らないかんねっ!!!」

チェスターの右拳。
パンチ。
それがダ=フイに・・・・・

「でりゃぁあああっ!!」

「ぐっ・・・・・」

ヒットした。
ダ=フイが突き出した両腕。
そこにおもくそに拳が叩き込まれた。

「・・・・・痛いヨ」

ダ=フイは吹っ飛んだ。
当然だ。
手のひらを突き出すガードでチェスターの攻撃を受け止められるはずが無い。
ダ=フイは明らかにダメージを受けていた。

「どーんなもんだいっ!!!・・・・・・・・ってあれ?」

チェスターは違和感を感じた。

「お、おかしいな・・・・」

どんなもんだいという言葉と共に、
チェスターは拳を突き上げてポーズを決めようと思った。
だが・・・・
動かないのだ。
右腕が動かない。
ピクりとも反応しない。

「あれ?あれ?なんでっ!?」

チェスターが右腕を持ち上げようとする。
だが、
力なく、
感覚なく、
右腕はダラりと垂れ下がるだけだった。

「ナーブダウンよ」

ダ=フイはニヤりと笑って言った。

「気を流し込んで気絶させる技ネ」

「気を?」

「あんたは気を放つ事に特化してるヨ。けどマサイ族は気を流し込む事に特化してるネ」

ダ=フイは構える。
低い体勢にだ。
走りこんでこようとする構え。

「腕に流し込んでも効くネ。ま、腕だとすぐ血と気が流れて治るけどネ。
 あんたは頭馬鹿だけど、気の使いはうまいから治るのも速そうアル。
 だけどあと10秒くらいはその腕死んでるヨ。残念アルネ!十分過ぎる時間ヨッ!」

ダ=フイが突っ込んできた。
走りこんでくる。
凄い速さだ。

「ちょ、ちょまって!!!」

「待てないネッ!!」

あっという間。
ダ=フイはチェスターの目の前まで走りこんできた。
そしてパンチを繰り出す。
軽いパンチ。
しかし止めないことにはどうしようもない。

「くっ!」

チェスターはいう事のきく左腕で止める。

「がら空きアルよっ!!!」

左手で止めてしまい、
左手が弾かれる。
右手は動かない。
完全なるがら空き。

「死ぬヨロシ」

ダ=フイは両手を揃える。
左と右。
手のひらを重ねる。
そして重ねた手のひらを、

「ハァッ!!」

チェスターの腹に叩き込んだ。
両手の平で押し込まれただけなのに、
チェスターはおもくそ吹っ飛んだ。
衝撃が走るかのように、
真っ直ぐ吹っ飛ばされた。

「ガハッ!!」

そして壁にぶつかる。
背中からレンガの家の壁に叩きつけられた。

「うぐっ・・・・」

チェスターは立ち上がる。

「へへ・・・・痛かったジャン・・・。でも派手に吹っ飛んだにしてはあんまり効いて・・・・ぉあ?」

また違和感を感じた。
何かおかしい。
立ち上がるにしても、
何か自分の体じゃないようで・・・・・

「腹に思いっきりナーブダウン叩きこんだネ」

不思議な感じだった。
頭はしっかりしているのに、
体だけ痛みなくフラフラするような・・・・
チェスターはとりあえず無意識に後ろの壁にもたれかかった。

「驚いたネ。本当は今ので完全に気絶する思ったヨ。
 普通のやつなら腹に気を叩き込んでも気絶するからネ」

「お・・・オイラはヒーローだから普通じゃないわけジャン」

「ま。人並み以上なのは間違いないネ。気絶するどころか立ってるしネ。
 あんたワタシが今まで戦った中で気を使う修道士の中では最高ヨ」

「あ、やっぱり?さっすがヒーロー」

「直に頭に気を送りこまなきゃ駄目アルね。頭にナーブダウンあげるヨ
 あんた体はともかく頭は馬鹿にみたいアル。あんまり価値ないその脳みそを停止してあげるネ」

ダ=フイがゆっくり近づいてくる。
とことこと歩んでくる。
余裕の歩みだ。
思ったほど効かなかったとはいえ、
自分のナーブダウンに自信があるのだろう。
全力で腹に気を叩き込んだのだから、
当分気の作用が効いたままなのかもしれない。

「ハハッ、オイラはこんなので負けないぜ」

「空元気ご苦労さんアル」

ダ=フイはチェスターに近づく途中、
地面に刺さっていたスネイルシャベリンを引き抜いた。
引き抜くと同時に、
頭の上でグルグルと回す。

「頭は元気でも体がいう事効いてないの分かってるカ?
 一番使えない脳みそって部分だけ自由で大変ネ」

ダ=フイはシャベリンをグルグルと回し、
近づいてくる。

「・・・・いける」

チェスターはつぶやいた。
家の壁に体を任せた体勢。
だが、
自分の体が調子良くなってきているのが分かる。
恐らくダ=フイの予想以上の早さだ。
もう少し回復を待てば動き出せる。

「師匠を思い出すジャン・・・・」

師匠。
ナタク=ロン。
チェスターの育ての親とも言ってよく、
チェスターの技を全て叩きこんだ師匠でもある。
幼少の頃から、彼の気孔術を体で食らってきたチェスターは、
それによって気の耐性が出来ていたのかもしれない。

「ニヒヒ・・・・ダ=フイ!オイラはもういけそうだぜっ!!」

言わなくてもいい事を言う。
チェスターらしい。
せっかく相手の予想外の回復をしているのに、
不意打ちやらといった思考はないようだ。

「空元気おつかれアル」

「へっへーーん♪ホントにオイラが元気だってとこを見せてやるジャン!!」

チェスターが壁から背を離し、
ダ=フイに向かって・・・・・


「ギュィイイイイイイイイン!!!」

「へ?」

突然だった。
背後の壁。
そこから声。
そして破片。
破壊音。
チェスターの背後の壁に、
二つの穴が空き、
同時にその穴からドリルのついた二つの腕が飛び出してきた。

「捕まえたぜっ!!!!」

後ろの壁から飛び出てきた二つの腕は、
チェスターを腕の部分で掴みかかる。

「うぉあっ!!なんだお前!はなせっ!!」

「離せねぇなぁぁぁぁあ♪」

背後の壁が、ひび割れた所から崩れていった。
壁が崩壊する。
そして壁の向こうから出てきたのは・・・・・・・スキンヘッドの男。
ヴァーティゴだった。

「ほーれほーれ♪動けない上に目の前にドォーリルゥー♪
 こいつがお前を掘って刻んですり潰すぜぇぇぇ♪ギュゥィイイン♪」

両腕でチェスターを背負い締めにしたまま、
チェスターの目の前でドリルを回転させる。
ドリルを見せびらかす。

「ぬぁぁぁー!目の前でドリル回すなよ歯医者!」

「だ、だれが敗者だ!」

「どう見ても歯医者さんジャンかっ!」

「敗者じゃねぇぇええええ負けてねぇえええええ!!!!」

スキンヘッドと猿。
噛み合ってないのか噛み合ってるのか分からない会話。
まぁ、ともかくだ。
ヴァーティゴはチェスターを腕で背負い締めにしたまま。
すぐに殺すつもりはないようだ。

「ヴァーティゴあるか。いきなり出てくるの悪いクセね」
「俺の趣味だからな♪。それよりダ=フイ。
 ほれ、こいつ見てみろよ、この猿野郎俺の腕のなかで元気に暴れてんだろ?」

ヴァーティゴの腕で固定されたまま、
チェスターはジタバタと暴れる。

「はーーーなーーーせーーー!!!」

捕まった猿そのものだった。

「なんでこの猿野郎こんな元気か分かるか?こいつナーブダウンの効果切れてたんだぜ?
 へへへ、気付いてなかったろ?ダ=フイ。てめぇもツメが甘くてざまぁねぇな!
 ・・・・・・・・・・・・・・・ってまぁ、それを証明したくてすり潰さずに捕まえたわけだ」
「人の不手際がそんな嬉しいカ?しょうもないアルね」
「何言ってんだ。お前この猿にやられてたかもだぜ?俺に感謝する機会くらい設けようかなっとね!」
「アィヤー・・・・頭痛い男アルね。で、満足したアルか?」
「あぁ!だからもうそろそろ掘り刻んでやろうかなぁ!そんですり潰ぅぅぅぅぅううううすっ!」

背負い締めにしたまま、
ヴァーティゴはドリルを回す。
この悪趣味な姿は、
チェスターの言ったとおり歯医者に通じるものがある。

「ほれギュィィィイイイイイイイン♪」

背負い締めにしたまま、
回転したドリルを・・・・チェスターに近づけていく。

「や、やめろってオイ!!こら!!!オイラにそれ近づけるなってぇぇええ!!」

「やだね♪ギュィイイイイイイイン♪」

ドリルは少しづつ・・
少しづつ・・・
チェスターの顔に近づいていく・・・
高速回転したドリル。
空気を切り刻む音。
風を切り刻む音。
その二つのドリルがチェスターへゆっくりと近づいてくる。

「ほれほれ!お前のお仲間みたいにすり潰してやっぞ!!」

「な、仲間?」

「ァー・・・そういえばヴァーティゴ。ここに来たいうことは他は終わったアルカ?」
「あぁ。サクラコは死んだけどな。死因はなんつーか・・・まぁ・・・・いいだろ・・・・・」
「ヘマやらかしたネ」
「ゔ・・・・・・・・・・・・けどよっ!!変な侍女とアレックス部隊長は俺が仕留めてきたぜっ!」

「っ!?イスカとアレックス!?ウソッ?!ウソつけっ!!!!」

「ウソじゃねぇよっ!!女侍はエースが連れてった。
 ちゃんと削り取りたかったけどな・・・・女の肉が柔らかくて堀りがいがあんだ!
 アレックス部隊長はオジャンだぜ!俺のドリルでくたばった!
 そのままルアス川の中にポチャンだ!後で拾ってもっかい解体してやっぜ!」

「二人が死ぬわけないジャンっ!!!」

「それはお前が決める事じゃねぇんだよっ!
 そんでお前の命もなっ!ほれ!ほれギュィイイイイイイン♪」

チェスターの目の前にドリルを近づける。
高速で回転するドリル。
軋みをあげて回るドリル。
それがチェスターの鼻先へ・・・・・

「やめ・・・・・」

チェスターは右足を前に振りかぶった。

「ろってのっ!!!!!」

「おごぁぁぁああああああああああああ!!!!!!!!!」

物凄く・・・
イヤな鈍い音が鳴り響いた。
あまり聞いたくない音と、
ヴァーティゴの悲鳴が残響する。

「ヘヘ・・・ばーか!」

ヴァーティゴが腕を離す。
チェスターが解放された。
チェスターはニヒヒと笑いながら、
自分の鼻をこする。
どんなもんだいと。

一方ヴァーティゴは・・・・

「・・・・・・・・・・ぉお・・・ご・・・・・・・・・・・もの・・・・凄い・・・・・・・・・キクっ・・・・・・」

目に焦点があっていない。
顔の全ての筋肉を使っているかのように、
表情が限界まで変形して歪んでいた。

「こ・・・いつ・・・・おおお俺の・・・・・・キャンタマに・・・・・・をぉおお!・・・・・・・・おぉぅん・・・・・・」

チェスターはおもくそ、
ヴァーティゴの股間を蹴り上げてやったのだ。
しかもイミットゲイザー付き。
イミットゲイザー四式。
チェスターは足でもイミットゲイザーを放つ事が出来る。

「・・・・・や・・・・やばい・・・・衝撃走る・・・宇宙が・・・見える・・・・・お星さ・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・・」

ヴァーティゴの表情。
もう"可哀想"な表情と言うしかなかった。
スキンヘッドのコワモテの顔が・・・・もう作画崩壊の域に達している。
可哀想というしかない。
目から涙がこぼれている。
涙が煌き流れ落ちる。

「・・・・・マジ・・・・・・痛い・・・そ・・・・・走馬灯が・・・・・・しかも・・・・・・めちゃ痛いのに・・・・・・・
 ・・・・りょりょ両手に・・・・ドリルがあるから・・・・・・股間を・・・・・押さえれない・・・・・・」

内股になりながら、
フラフラと揺らめく男。
行き場もなくヨロヨロ・・・・。
まるで変質者だ。
これが最強の44部隊の一人と誰が信じるやら。

「ヴァーティゴ・・・・・ドリル止めるアル・・・・」
「そ、そうか・・・・・」

やっとヴァーティゴはドリルを止め、その場にかがみこんだ。
まるでセミの抜け殻のように前かがみに座り込む。
もう声も出ないようだ。
死んでいるように・・・・
そしてピクピクと痙攣したように動いている。

「・・・・・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・・ぅぅ・・・・・・・・・・」

「だ・・・大丈夫か?」

チェスターは自分がやったにも関わらず、
さすがにあんまりな事をしてしまったんじゃないかと心配になってきた。

「ちょ、ちょっと休めば元気になるよっ!」

そう言い、
チェスターはヴァーティゴの背中をさすってやった。

「ら、楽になるか?」

「あっ・・・・トントンッ・・・・って叩いてくれ・・・・」

「わ、分かった!」

「お前いい奴だな・・・」
「そいつが蹴ったせいアルけどな」
「!?」















-10分後-








「ふっかぁっぁあああああああっつ!!!!ギュィイイイイイイン♪」

両手を天に振りかざし、
その先で二つのドリルが回る。
高速で元気に回る。

「アィヤー・・・・ヴァーティゴ。あんた今の今まで・・・・」
「ダ=フイ!みなまで言うな!仕切りなおしだ!」

ヴァーティゴはチェスターに向け、
ドリルを突き出す。

「仕切りなおしだぞ猿野郎!今この瞬間までの事は忘れろ!いいな!」

「あいよー」

チェスターは白い目で見る。
げんきんな奴だ。
あんな情けない姿の後に・・・・・

「ま、いっか」

チェスターは拳を握る。

「戦いだもんなっ!!」

そう。
これは殺し合い。
今更下手な感情はいらない。
そしてイスカとアレックス。
彼らも生きていると確信する。
大丈夫に決まっている。
チェスターの単純で純粋な心がそう決め付けた。
信じるよりも簡単な確信。
だからこれは・・・・
チェスター自身の戦い。
ヒーローとしての戦い。

「ヒーロー再開!さっきまでやられっぱなしだったけどさっ!カッコイイとこ見せてやるジャン!」

「それはどうアルかねぇ」
「だっなぁ!!俺ら二人相手だぜ!?」

ダ=フイがシャベリンを回す。
そしてその横にはヴァーティゴ。
ヴァーティゴは嬉しそうにドリルを回す。

「勝負あったも同然ネ」
「どうすり潰してやろうかなぁぁああああ!!!」

「へへーん。2対1かー。・・・・・・・・・燃えるジャン?」

チェスターは笑う。
状況は一転だ。
なんだかんだ言って現状相手は44部隊二人。
一人でもキツいのに二人同時に真っ向勝負。
はっきりいって絶望的な状況だ。

だがチェスターにとって、
逆境などというものは好都合でしかない。
勝算とかではない。
理論とかでもない。
勝てばカッコイイからだ。

「じゃぁ・・・・行くかぁ!?」

チェスターの右腕が輝く。
光に満ち溢れる。

「師匠直伝っ!!!イミットゲイザー八式っ!!!」

チェスターは右腕を振り上げる。

「スーパーウルトラ魚雷ミサイルゲイザー!!!どっかぁぁあああああああん!!!!」

そのまま拳を叩きつける。
右腕を地面へ突き立てる。
地面のタイルが弾け飛び、
そしてその地点から・・・・・イミットゲイザーが飛び出す。
いや、走り出す。
地面を這う。
地面をイミットゲイザーが生き物のように突き進む。

「本当におもしろい技使うアルよ」
「こりゃぁ俺を差し置いてモグラの真似事かぁああ!?」

ダ=フイとヴァーティゴは同時に跳ぶ。
イミットゲイザーを避けるように、
それぞれ左右に散会する。

「いくぜぇぇえええああああ!ギュゥィイイイイイイイイイイイイイン!!」

着地したヴァーティゴは、
そのままチェスターに一直線。

「ギュゥゥゥイイイイイイイン♪」

ただ走りこんでくるわけではない。
低姿勢。
そして両腕のドリル。
それを高速で回転しながら、
ドリルを引きずるように走ってくる。
地面を削りながら突き進んでくる。

「掘って刻んですり潰すぅううううううう!!!!」

ドリルで地面のタイルを弾け飛ばしながら、
迫り来るスキンヘッド。
ブルドーザーが突っ込んでくるかのよう。

「なんじゃあれ!こっえぇっ!!!」

ヴァーティゴが両腕のドリルを同時に突き出してくる。
高速で回転するドリル。
ガードの仕様がない殺傷能力。

「受けてらんねぇジャン!」

「ぶっすり潰れろぉおおお!!!」

突き出されるドリル二つ。
チェスターはジャンプ。
前にジャンプ。

「踏みやすい頭ジャン♪」

チェスターはヴァーティゴの頭に足をかける。
スキンヘッドの上を踏み台にして避ける。

「こっの猿っ!!」

「へへーん♪」

チェスターはヴァーティゴの頭を踏みつけ、
いい気になっていたが、

「調子に乗る早いネ」

「うわっ!!」

目の前を見ると・・・・・ダ=フイ。
ダ=フイがジャンプしてきている。
空中でシャベリンを回しながら、
チェスターに迫ってきている。

「ハイヤァーッ!!!!」

ダ=フイがスネイルシャベリンで大きく横振り。

「よっ!!」

チェスターはヴァーティゴの頭を踏み台に、
さらに上へジャンプ。
さらにダ=フイを飛び越す。

「どんなもんジャン?」

ダ=フイの頭上を飛び越えながら、
チェスターはニヤりと笑う。

「ほんと猿みたいな奴アル」

「いだっ!」

ダ=フイはヴァーティゴの頭に一度足をついてから、
地面に着地した。

「そのすばしっこさ。止めてあげるネ」

スネイルシャベリンをグルグルと回した後、
ダ=フイがまた走りこんでくる。

「そっちだってすばしっこいジャン!!」

チェスターは着地した後、ダ=フイの方を振り向く。
そして両腕にエネルギーを溜める。
気を集中させる。

「師匠直伝っ!イミットゲイザー弐式っ!!!
 ダブルグレートイミゲバリバリ鋼鉄グローッブっ!!」

イミットゲイザーのエネルギーを両腕に滞在させる。
気がチェスターの両腕を取り巻く。
その名の通りイミットゲイザーのグローブ。

「それが何アルかっ!!」

ダ=フイがまたシャベリンを大振り。
横に大きく振付ける。
チェスターはジャンプで避ける。

「やっぱりそう避けたカ。それが狙いネ」

空中のチェスター。
シャベリンを振り切ったダ=フイ。
だがダ=フイは左手が開いている。

「気絶するがイイネ!!」

ナーブダウン。
ダ=フイが左手をチェスターに突き出す。
当たればその部位の自由が奪われてしまう。

「何度もやられてたまっかぁー!」

チェスターは両腕でガード。
いや、
両手でダ=フイの手を押さえつける。
止めた。

「ジャジャーン♪やっぱイミゲの気ごしには効かないみたいジャン♪」

チェスターの両手に包まっているイミットゲイザーの気。
それがナーブダウンの気を押さえつける。

「こしゃくな奴ネ」

「へへっ!このままいっちゃうよーん!!!」

ダ=フイの左手。
それを押さえつけたまま・・・・・

「ダブルイミットゲイザー!!!どっかんどっかぁぁああああん!!!」

超至近距離。
チェスターの両腕に滞在していたエネルギー。
その気をそのまま発射。

爆音。
地面ごと弾け飛ぶ音。
炸裂音。
エネルギーの炸裂。
気の爆発。

「どぉっだ!!!」

気の炸裂の後、
チェスターは確認する。
が、

「あれ?」

当たったはずのイミットゲイザー。
その直撃地点。
そこにダ=フイの姿は無かった。
シャベリンが地面に突き刺さっているだけだ。

「あの距離で避けたの!?どこに!?」

「ここアルよ」

すぐ側から声。
それはシャベリンの上。
地面に真っ直ぐ突き刺さったシャベリン。
その先、
ダ=フイはシャベリンの上につま先で立っていた。

「ちょっと痛かったアルよ」

さすがにあの至近距離で完全に避けるのは無理だったようだ。
ダメージの様子が見られる。

「困った子アルネ!!!」

ダ=フイはシャベリンの上から、
おもくそにチェスターを蹴りとばす。

「ってぇ!!!!」

顔面を蹴られた。
吹っ飛ぶチェスター。

「クソッ!!」

体勢を立て直す。
そしてシャベリンの上で立っているダ=フイを見る。

「やるジャンっ!!!」

「嬉しくないネ」

「えー?褒められて嬉しくないのか?」

「かなり今のはヤバかったからネ。でもホメ言葉の御返しあげるよ」

「へー。なにくれんの?ホメてくれんの?」

「その逆ネ。・・・・・・・・・・これタイマンじゃないヨ?」

「あっ・・・・」

もう遅かった。
背後から聞こえる音。
二重の重音。
高速の回転音。
ドリル。

「刻んでやんぜっ!!!ギュィイイイイイイン!!!!!」

「うわっ!!」

咄嗟に避ける。
が、避けた。
いや、カスった。
ドリルの片方が肩にカスった。
カスっただけならば・・・・・・

「いってぇぇええええええええ!!!」

カスっただけで猛烈な痛みが襲った。
高速回転しているドリル。
それはカスっただけでチェスターの肉を少々剥ぎ散らした。

「いてぇっ!!!いってぇえええええ!!!!」

チェスターは肩口を押さえながら、
ピョンピョンと逃げる。
一目散に逃げる。
走り、
跳んで逃げる。
そして軽快に一つの家の屋根の上に登った。

「ててて・・・・・・・・ふぅーふぅー」

屋根の上に座り込み、
傷口に息を吹きかける。
息を吹きかけると余計に痛かった。
涙が出そうだった。

「だぁーーー!その武器ずっこい!!!反則!!!」

チェスターは屋根の上から指を突き出して抗議した。
だが、ヴァーティゴは聞く耳を持たなかった。

「ずっこいぐらい強いからいんじゃねぇかぁ♪」

ヴァーティゴは自慢げにドリルを止めたり回転させたりして笑った。
自慢のドリルなのだろう。
自分の体かのように嬉しそうに見せびらかす。

「たしかにずるいアルね」

予期せずダ=フイが言った。
いつの間にかシャベリンから降りている。

「ぁああん?なんでテメェが文句あんだダ=フイ」
「武器に頼る。それ修道士として恥ずかしいネ」
「おっめぇも使ってんじゃねぇか!槍っ!槍をよぉ!!!」
「これは武器であって武器にあらずネ。己の身体能力を生かすための物ネ」
「屁理屈うっせぇ!!」
「でもドリルは自分の力じゃないヨ。そういうのマサイの修道は許さないネ」
「いーーーーんだよっ!!!」

ヴァーティゴは両手を掲げる。

「これはドラグノフの野郎に!・・・・あっ、今は将軍か。ドラグノフ将軍に改造してもらったんだ!
 このドリルはもう俺の体の一部なんだよっ!サイボーグってやつだ!
 両腕のドリルの強さは俺の強さだっ!俺の身体能力なんだよっ!」

ヴァーティゴはドリルの回転を止め、
両腕のドリルをカンカンッと打ち付ける。

「見ろよこのドリルの素晴らしさっ!水陸両用ドリルだっ!
 もともと緑地戦用ドリルと荒野専用ドリルだったがなっ!
 なんでもどこでも掘って刻んですり潰せるように両方水陸両用にしたんだ!
 これでたとえ火の中水の中草の中森の中!どこでも掘り進める土竜(モグラ)になれる!」

ヴァーティゴはドリルの回転をまた始める。
牙よりも鋭い、
ドリルという名のモグラの角。

「俺は全てを打開すんだよぉおおおおおお!!!!!」

ヴァーティゴが突っ込んできた。
両腕のドリル。
それを自信に突っ込んでくる。
屋根の上のチェスター。
その家の方へ突っ込んでくる。

「こいよっ!!ヒーローは逃げないぜっ!!!」

チェスターは屋根の上で構える。
迎え撃つ。
真正面から。
だが・・・・

「あれ?」

ヴァーティゴは跳んでこない。
チェスターは家の上にいるのに、
真っ直ぐ地面を這って突っ込んでくる。
そして・・・・・

「ギュィイイイイイイイイイン!!!!!!」

そのまま家に突っ込んでいった。
チェスターの真下の家の中に。
家の壁が爆音と共に弾け飛ぶ。
レンガが崩れてぶっ飛ぶ。
ヴァーティゴは家の中に突っ込んでいってしまった。

「何やってんジャン・・・・・」

物凄い勢いで家の中に突っ込んでいった。
家を壊しかねない勢いで。

「だからなんなん・・・・・!?」

チェスターは敏感に何かを感じ取った。
そしてすぐさま屋根の上で横に跳ぶ。
この勘は当たった。
じゃなければ死んでいた。

「どっかぁぁぁあああああんん!!ってかぁぁああ!?」

飛び出してきたのだ。
家の中から。
屋根を突き破って、
真上にドリルで突きあがってきた。
モグラが地面から飛び上がってきた。
ドリルで屋根をふっ飛ばして。

「刻みそこねたかぁぁあああああ!!!!!」

屋根を突きぬけ、
空中で悔しがるヴァーティゴ。

「ぜってぇすり潰してやるぁぁああああ!!!」

「でももう終わりジャン?」

屋根の上。
チェスターはニヤりと笑って拳を構えていた。
右腕。
光り輝き、気が充満している。
エネルギー装填完了。

「逃げ場はないぜっ!!!食らっちゃいなっ!!どっかぁぁあああああん!!!!」

拳を勢いよく突き出す。
そして放たれるイミットゲイザー。
真っ直ぐヴァーティゴに向かって突き進む気の弾丸。
避けようが無い。
空中にいるのだから。

「ざけんなぁぁぁあああ!!!!」

ヴァーティゴは両腕を揃えて突き出す。
そして高速で回転する二つのドリル。

「言っただろうがっ!俺のドリルはなんでも掘り進む!ギュィイイイイイン!!!!!」

イミットゲイザーが直撃した。
炸裂した。

「うげっ!?」

チェスターは驚いて目を見開いた。

「ギュィイイイイイイイイイン!!!!!!」

イミットゲイザーを・・・・弾いた。
いや砕いた。
刻んだ。
削り破った。
イミットゲイザーはドリルに削られ、
ドリルを中心に四方へ散開した。

「どうだ!!!!」

ヴァーティゴは屋根の上に着地する。

「俺のドリルは俺の強さだっ!剣士が剣を磨いて強くなるのが強さならっ!
 俺だってそうだ!このドリルは俺だっ!これに誇りを持って何が悪いっ!!!
 こうやって強くなる事をロウマ隊長は認めてくれたっ!
 イカれて歪んだ強さでも!これが俺の強さの道だと認めてくれたっ!!!!」

「くそっ!!やばいジャン・・・・・」

チェスターは後ろにバク宙する。
屋根から飛び降りる。
空中をクルクルと回りながら、
屋根から背後へと後ろ向きに飛び降りる。
そしてくるくると回転した後、
地面に着地した。

「と、とにかく近づくのはヤバいジャン・・・・・」

「それはワタシにもね」

「!?」

背後。
ダ=フイ。
着地を狙ってきた。

「おねんねするアルっ!」

ダ=フイが左手を突き出してきている。
手のひらを突き出してきている。
ナーブダウンだ。
食らうとやばい。
背後。
止めようがない。
かといってダ=フイの素早さ。
避けようにも・・・・・・

「ならこうジャンっ!!!!」

チェスターは咄嗟にキック。
後ろを向いたまま、
背後に馬のようにキック。

「ぐっ!!!!」

手よりも足の方が長い。
チェスターの後ろ蹴りはダ=フイの腹に直撃し、
ダ=フイは思いっきり吹っ飛んだ。

「よしっ!さすがに二人同時には相手してらんないかんなっ!
 ・・・・・あっ、それはオイラがそれじゃぁ勝てないって事じゃなくて・・・
 ヒーロー的戦術!そう!ヒーロー的戦術だからジャン?」

「悪役がきたぜぇぇぇええええええ!!!!!!」

空中。
屋根の上から飛び降りてくるヴァーティゴ。
高速回転する二つの水陸両用ドリル。

「ギュゥイイイイイイイイイン!!!!」

ドリルを突き出してくる。

「こりゃヤバ・・・・・・」

                      逃げるのか?

「へ?」

どこからか声がした。
どこからか分からない。

「またあの声・・・・・・」

                   ダ=フイという男が言った通り、
                   ヒーローなのに逃げてばかりでいいのか?

時間が止まったような感覚。
周りの音が聞こえない。
その中で語りかけてくる声。

「いや、それも作戦だから・・・・」

                    お前は逃げなくても勝てる。
                    迎え撃て。
                    真正面からいけ。
                    お前は・・・・・・・ヒーローだろ?

声がやんだ。
また周りの音が再開する。

「・・・・・・・・」

幾度とかけてくる声。
何か分からないが・・・・・・・

「へへ、師匠かな?わかんないけどヒーローの事をよく分かってる人みたいジャン?」

チェスターは両手に気を溜める。
どかんと両腕に気が放出される。

「師匠直伝っ!イミットゲイザー弐式!!!
 パワフルカチカチスペシャルイミゲグロォオオーーーッブ!!!」

両腕に滞在するイミットゲイザーの気。
腕を取り巻く暖かい気のエネルギー。

「血迷ったか!!!ならすり潰してやっぜぇえええええ!!!!!」

ヴァーティゴが突っ込んでくる。
両腕のドリルを突き出し、
空中からミサイルのように突っ込んでくる。

「ヒーローは・・・・・・」

チェスターは・・・・
両手を突き出した。

「真正面から全てを打ち砕くんだぜっ!!!!」

ぶつかった。
衝突。
二つのドリルと、
二つの腕。
チェスターの両腕と、
ヴァーティゴの両腕。
その二つがぶつかる。

「ががっ!!!掘れねぇ!!!」

「ヒーローの心は砕けないっ!!!!」

押し合う。
ドリルと両腕。
殺人的回転と、
気のエネルギー。
押し合う。

「硬気功かっ!こんなに硬ぇのは初めてだぜっ!!!
 だがっ!!だがぁあああ!!この俺に貫けねぇもんなんてねぇ!!!!!
 ギュゥイイイイイイイイイイイイイイン!!!!!!!」

ヴァーティゴがドリルをさらに押し込める。
チェスターが少し押される。
このままでは・・・・・気を貫かれる。

「ヒーローは負けないっ!!!!!!」

チェスターもさらに気を放出する。
全身の気を両腕に集める。
そして・・・・・

「なっ!?」

掴んだ。
ドリルを掴んだ。
両手で。
だがドリルは回る。
高速で回り続ける。

「まけなぃいいいいいいっ!!!!!!」

押しとめようとする。
回転するドリルを、
両手で握り止め様とする。
気が炸裂する。
ドリルでほとばしる。
弾ける。
血が飛ぶ。
だがチェスターは握る。
そして・・・・・

「んだとぉおおおおお!?!!?」

「へへ・・・・・」

止まった。
握りとめた。
ドリルが回転していない。
ドリルを素手で握りとめている。

「俺に掘れねぇもんなんてねぇはずっ!!!」

「簡単っ!!オイラに止められないもんはないんだよっ!そしてっ!!!」

チェスターは払いのける。
ドリルを。
ヴァーティゴの二つのドリルを、
左右に払いのける。
ヴァーティゴは全身隙だらけ。

「ヒーローは決して止められないっ!!!!」

右腕に力を込める。
気の流れがチェスターの右腕に集まる。
気が圧縮されていく。
右腕が光り輝く。

「師匠直伝っ!!イミットゲイザー参式!!!
 0距離ゲイザーデラックスボンバァァァァアアアア!!」

右腕を振りぬく。
全力で。
ヴァーティゴの腹へと。

「うごぉぁあああ!!!!!!」

直撃する。
ヴァーティゴの腹にイミットゲイザーの塊が。
気の塊が叩き付けられる。
そしてヴァーティゴは吹っ飛んだ。
チェスターの力の限り吹っ飛んだ。
イミットゲイザーの塊と共に、
ヴァーティゴはロケットのように吹っ飛ばされ、
背後の家の壁に叩きつけられた。

「・・・・・ぁ・・・・・・・が・・・・・・・・」

張り付けにされたようにヴァーティゴはレンガの壁にめり込む。
レンガはひび割れ、
ヴァーティゴを埋め込む。
ヴァーティゴの首が、
スキンヘッドの頭がカクンと垂れ落ちる。

「・・・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・・」

チェスターは息切れしていた。
全力で戦ったのだ。
襲い掛かる疲れ。
それが全身を襲う。
それほどの相手だった。
両手のひらを見ると、
血だらけ。
皮がはがれている。
だが無茶をしたとはいえ、
後悔は無かった。

「オイラの・・・・勝ちぃ・・・・」

「俺に貫けねぇもんはねぇ!!!!」

突然ヴァーティゴの首が上がった。
スキンヘッドが持ち上がる。
生き返ったかのように。
いや、生き返った。

「げ・・・・どんだけタフなんだよ・・・・」

「俺ぁぁあああ!!!この世の全てを掘って・・・・・」

バリっ・・・と、
めり込んでいたヴァーティゴの左腕が壁から剥がれる。

「刻んで・・・・・」

今度は右腕が壁から剥がれる。
レンガの粉が落ちる。

「すり潰すんだぁぁぁあああああああ!!!!!」

そして全身が壁から抜け出た。
と、同時に後ろの壁が崩壊し、
ヴァーティゴは空に向かって雄たけびを上げた。

「俺に貫けねぇもんなんてねぇ!!!!ギュゥイイイイイイイイン!!!!」

掲げる両腕。
回るドリル。
彼の二つの誇り。

「・・・・・・・・こい・・・猿野郎・・・・」

「あぁ・・・行くさ・・・・」

チェスターは右手を突き出す。
真っ直ぐヴァーティゴに向かって。

「きかねぇよ!!!俺にゃぁイミゲは効かねぇ!!!
 なんたって俺が刻めねぇもんなんてねぇ!この世のどんなものでも打開するっ!!!」

スキンヘッドに血管が浮き出る。
強気。
それがドリルの回転にも現れる。

「言ったジャン・・・・オイラにも貫けないもんなんてないんだよっ!!」

突き出した右腕。
その右腕を・・・・
右腕の手首を・・・・左手で掴む。
右腕に左手でエネルギーを送るように。

「師匠に教えてもらったジャン・・・・・強さは一点を極める事ってね。
 気を集中させれば・・・・・それはオイラの力の全てジャン!!!」

突き出した右腕。
気が溢れるかのように凝縮されていく。
右腕に集まる気。
左手から右腕に送り込まれるエネルギー。
全身から搾り出す全力。

「俺にはきかねぇぇええ!!!!きかねぇってんだよぉおおお!!!!!!」

ヴァーティゴは両腕を突き出す。
ドリル。
最大回転。
全てを突き破る三角錐。

「師匠直伝・・・・・イミットゲイザー七式・・・・・・・」

チェスターの右腕に全てのエネルギーが集まる。
突き出された右腕。
そしてその右手の先。
右手の先に・・・・伸びる二本の指。
槍のように伸びている二本の指。

「イミットォオオオオオオ!!!!レェェェエエザァァァアアアアアア!!!!!!」

放たれた閃光。
一本の光。
イミットゲイザー。
いや、
イミットゲイザーであってイミットゲイザーではない。
一直線の光。
ビーム。
いや、レーザー。
それも・・・・
指先から放たれた細い・・・・細いレーザー。
それは真っ直ぐ。
ただ直線で、
光として、
閃光として放たれ・・・・・
ヴァーティゴに向かって・・・・・

「俺は・・・・・俺は全てをすり潰っ!!!」

突き出した両腕。
ドリル。
ヴァーティゴの鋼鉄のドリル。
それを・・・・・・

突き破った。

「・・・・・・・・・・・・・す・・・・・・・」

ドリルに穴が空いていた。
綺麗に、
ただイミットレーザーの光の大きさだけ。
小さく。
細く。
ドリルを貫通していた。
そして・・・・・

ヴァーティゴの胸を貫いていた。

「・・・・・あ・・・・・・・・」

ヴァーティゴは自分の胸を見る。
穴の空いた胸を。
そして腕のドリルに目を動かす。
誇りに穴が空いている。

「・・・・・・隊長・・・・・・・俺は・・・・・・・あんたのように・・・・・・・・・」

ヴァーティゴは口から大きく吐血した。

「・・・・・・・矛盾には・・・・・・・・なれな・・・・・か・・・・・っ・・・・・・・・・」

そしてヴァーティゴはその場に倒れ去った。

「・・・・・・・・・・」

チェスターは力もなく、
フラつく体でそれを見つめた。
おかしな奴だったが、
・・・・・・嫌いではなかった。
それをどう思うか。
それは敵だったから。
それ思うしかなかった。

「ごめんな。オイラはヒーローだから・・・・お前には悪・・・・うっ!!!」

それで終わった。
その瞬間。
チェスターの視界は真っ白になった。
真っ白で、
全ての思考は消え去った。

その場に倒れ去るチェスター。
そしてその背後には・・・・・

左手を突き出してダ=フイが立っていた。

「不意打ちみたいで悪いアルね。けどずっと狙ってたネ。
 あんたがこうやって隙を見せるのを待ち構えてたヨ。
 目的のため、最善を尽くさせてもらったアル。けどネ。
 ・・・・・・まさかヴァーティゴがやられるとは思わなかったヨ。
 オトリ程度に思てたケド。そこは褒めてあげるネ」

ダ=フイがシャベリンを回す。
頭の上でグルングルンと回す。

「頭へ直接ナーブダウン叩きつけたヨ。今のあんたじゃ目覚めること無理ネ」

横たわるチェスター。
ピクリとも動かない。
完全にナーブダウンが効いている。
気絶状態。
完全なる喪失状態。
全力を使い切ったチェスターには、
この気絶から抜け出す気力などない。
自分がどうなっているかも分からず、
ただ真っ白な夢の中を彷徨う。
死んだかのように・・・・・。

「じゃぁ・・・・・・・死ぬヨロシ」

回すシャベリン。
その先端の刃。
回し、
回し、
そして横たわるチェスターへと。

「・・・・・・・・・・・ん?・・・・・・・」

急に・・・・
急にダ=フイは自分の体から力が抜けたのが分かった。
力が入らない。

「おかしいアル・・・・」

だが現実のようだった。
手からスネイルシャベリンが零れ落ちる。
シャベリンは地面に落ち、
カランと音を鳴らして転がった。
そしてその地面に・・・・
・・・・・何かが滴り落ちる音。

「・・・・・・何アルカ・・・・・・これ・・・・・・・・」

血の雫。
地面に零れ落ちる血。
いや、
それ以上に・・・・・・・
自分の腹から突き出している物。
自分の腹部から生え出している・・・・・・銀色の・・・・・・・

「間に合い・・・・・・ました・・・・・・・」

背後から声がして、
銀色の物体はダ=フイから引き抜かれた。
ダ=フイはよろめきながら腹に手を当て、
ヨロヨロと後ろを振り向く。

「・・・・・・・・死んだ聞いたけどネ・・・・・」

「ここにいるのが結果で・・・それ以上も以下もないです・・・・」

そこには、
地面に横たわったまま、
槍だけを突き出すアレックスの姿があった。

「・・・・・・・・生きてて嬉しいアルよ・・・・・」

よろけるダ=フイ。
腹の穴。
槍の傷。
大穴だ。
血が溢れかえっている。
内臓がはみ出しそうだ。
倒れかけるのをなんとかこらえる。

「よくここまでこれた・・・って姿アルネ・・・・」

アレックスの姿。
地面に横たわったまま、
槍を持つアレックスの姿。
アレックスも横腹から血が垂れ流れている。
そして・・・・
その後ろには血の道。
血の通り道。
明らかに引きずってきた跡だ。

「芋虫の気分でしたよ・・・・」

体を引きずってきたのだ。
体をずりずりと。
そしてその道がアレックスの血によって出来上がっている。

「・・・・・・・くっ・・・・う・・・・・」

ダ=フイはよろめきながら、
フラフラと歩む。
そしてシャベリンを拾う。

「・・・・・もっかい言うネ・・・・生きてて嬉しいヨ・・・・・この手で殺せるアル・・・カラ・・・・・」

また倒れかけるダ=フイ。
なんとかシャベリンを地面に突き刺し、
杖のようにこらえる。
口から血が流れ落ちる。

「・・・・・・・その体でまだやる気ですか?」

「・・・・・・・それはそっちも同じことネ・・・」

シャベリンに体を任せ、
立っているのがやっとの状態のダ=フイ。
だが目は戦意に満ち溢れていた。

「今・・・・どっちが有利か分かるアルか?・・・・・」

ダ=フイは顔色の悪いまま言った。
腹に大きな穴が空き、
大量の血が流れ落ちる。
見るからに致命傷のダ=フイ。
そして横たわるアレックス。
傷だけで言えばダ=フイの方が重症だ。
が、
立てもしないアレックスと、戦意のみでなんとか立っているダ=フイ。

「・・・・・・・・あなたですね・・・・・」

「そういう事アル・・・・」

ダ=フイは地面からシャベリンを抜く。
足が折れ曲がる。
膝をつく。
立っていられない。

「・・・・いや・・・・・ワタシの負けアルか・・・・・」

膝とつき、
低くなった視界。
ダ=フイの目に映ったのは・・・
指を突き出すアレックスと、
自分の真下に展開される魔方陣。
パージフレアの魔方陣。

「・・・・・それでもやりますか?」

「・・・・・・・・・・・」

ダ=フイは歯を食いしばった。
その歯の隙間から垂れ落ちる血。
それが地面に落ちると、
腹から流れた大量の血と混ざった。

「・・・・・凄いですね。その出血でまだ立っていられるなんて・・・・
 ・・・・・常人なら・・・・いや、どんな人だって死んでますよ」

「・・・・ワタシを立たせているのは誇り・・・それだけネ・・・・」

ダ=フイの目がアレックスを見据える。

「誇り・・・・分かるアルか?・・・ワタシはその誇りだけで生きてきたアル・・・・
 マサイの誇り・・・・王国騎士団としての誇り・・・・それがワタシの戦士としての誇りネ・・・・
 誇りを守る事・・・・それは逃げない事ヨ・・・・・逃げる・・・これだけはやっちゃいけないネ・・・・」

それは完全にアレックスに対しての言葉だった。
訴えかける言葉だった。

「アレックス部隊長・・・・あんたは逃げたヨ・・・・全ての騎士が誇り守ったネ・・・。
 けどあんたは・・・・逃げたネ・・・誇りを捨てた・・・・最悪ヨ・・・・・・・」

「・・・・・・・・・否定はしません」

「・・・・・・弁解もしないアルか?・・・・・誇りより大切なモノがあった・・・・
 ・・・・・・それくらい言ってくれないと・・・・・・・・・ワタシは納得できないヨ・・・・」

「納得してもらうつもりはありません。
 どんな理由でも・・・・・僕が僕個人の理由だけで逃げた事に変わりありません」

「そうアルか・・・・だからワタシあんたが嫌いネ・・・・何にも縛られずに自由に・・・・生き・・・・」

ダ=フイはまた大きく吐血した。
その量を見ても、
地面に流れ落ちた血を見ても、
体の全ての血液が流れ出てしまったんじゃないかと思える量。

「・・・・・・・だから・・・・・・・あんたには死んでもらいたいネ・・・・・・」

それでもダ=フイは、
槍を持つ。
シャベリンを持つ。
頭上でフラフラと回す。

「誇りを持って戦って死にたい・・・・・そういう事ですか・・・・・・」

「いや・・・・」

次の瞬間。
ダ=フイは槍を突き刺した。
深々と。
自分の胸に・・・・

「な・・・何やってるんですか!」

「ごっ・・・・」

トドメになる一撃。

「・・・・・でも・・・・・アレックス部隊長・・・・・ワタシはあんたを殺せないヨ・・・・
 ・・・・・・・・・凄く憎い・・・・けど・・・・・・・それはあんたがワタシだから・・・・・・・・」

「え?」

「ワタシも・・・・ただ一人生き残ったネ・・・・・・サラセンの攻撃から・・・・・・・
 ・・・・・マサイの戦士なのに・・・・・・・一人生き残ったネ・・・・・・
 逃げたアルヨ・・・・・・・・皆戦ったのに・・・・・ワタシは逃げたネ・・・・・・・・
 ・・・・だからアル・・・・・・ワタシは逃げる事が大嫌いヨ・・・・・・・・
 ・・・・・・・生き残る苦しみ・・・・・・・ワタシはあんたの気持ちが誰よりも分かるネ・・・・・・」

そしてダ=フイは槍を突き刺したまま倒れた。

「・・・・・・結局・・・・・・あんたも・・・・・・・グレイも・・・・・・・・殺せなかったネ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・しょうがないネ・・・・・・・・同士・・・・・・・・・だからネ・・・・・・・・
 ・・・・・・・・どう・・・・・・アルカ・・・・・・・・羨ましいデショ・・・・アレックス部隊長・・・・・・・・
 ・・・・・・ワタシは・・・・・・・・誇りを守ったまま・・・・・・・・・死ねるヨ・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・あぁ・・・・・・・マサイと・・・・・・王国騎士団に・・・・・・えい・・・こ・・・・・ぁ・・・・・・・・」

そのまま流れるようにダ=フイは息絶えた。
死に絶えた。
どこにも逃げることなく。
そのまま死んでいった。

「・・・・・・・・・」

アレックスはなんとか立ち上がり、
膝を引きずりながらダ=フイの側へ行った。
そして目を閉じさせてやる。

「・・・・・・・誇りですか・・・・・・・・痛いとこついてきます・・・・・・・・」

羨ましいかと、
ダ=フイは最後に言った。
それが心に響いた。

「そりゃ羨ましいですよ・・・・・僕だって誇りを守ってカッコヨク死ねたらと思います」

アレックスは振り向き、
ダ=フイに背を向けた。

「だけど・・・すいません。僕にはそんな勇気ないんですよ。
 生きたいからです。生きてなきゃできない事が沢山ありますから・・・・・」

ふと目線を変えると、
路地の向こう。
遠く向こうの方にドジャーの姿が見えた。
満身創痍のようだ。
だが。こちらに向かってきているという事は勝ったのだろう。

「意志のある人と・・・・正しい人が生き残るとは限らないんですね・・・・・
 ・・・・・誇りを持って戦った人じゃなくて・・・・わがままな僕達が生きてる・・・・・・
 やりたくなくても殺したくなくても・・・・殺し殺され死に生きる・・・・・そんな世の中・・・か。
 ・・・・・ドジャーさんに言わせれば世知辛いって奴ですか・・・・」

遠くに見えるドジャーが、
アレックスを見て笑ったのを確認すると、

アレックスは安心してその場で気を失った。













                 






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