******注意******

この短編は、
実際のSOADと全く関係ありません。

本編と世界はリンクしていませんし、
実際のキャラとは無関係です。


**************
















淀んだ空気。

暗黒の世界。

それが一番良い呼び名かもしれない。


「え〜・・・では・・・・」

とてつもなく大きい。
山・・・といっても差し支えないような者。
大きな牙を伸ばし、
大きな髭を伸ばし、
赤い顔をしたその巨人は言った。

「ミダンダス=ヘブンズドア・・・及びベイ=レイズ両名。第5番地獄逝きを言い渡す」

その大きな鬼のような巨人が、
家のようにデカいハンマーを振り落とすと、

地獄逝きの音が鳴り響いた。















S・O・A・D 〜System Of A Down〜


<<レイズとミダンダスの
          研究(ファーマシー)材料調達ドキドキ珍道中>>












「あぁ〜憂鬱やにゃ〜。今日は死人多い言うしなぁ〜。こっから仕事てんこもりかぁ〜」

「・・・・・・・」
「・・・・・・」

二人は無言だった。
両手を縄でくくられたまま、
小鬼のような男にただ黙々と連れて行かれる。

「おみゃぁ〜ら第5番地獄逝きとはにゃ。よほど現世で悪いことしてきたんかにゃ」

小鬼がミダンダスとレイズを引っ張りながら言った。
その言葉に、レイズは無表情で答えた。

「・・・してない・・・・・現世の俺は超がつくほどの聖人だった・・・・」
「ふん。なぁにが聖人ですか。死んでまで冗談を言うとはね」
「・・・・うるさい・・・冗談くらい言わせろ・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・」
「もう死んでるのですよ。これだから頭の悪い輩は」

ミダンダスが眼鏡をクイっとあげる。
そのミダンダスの足をこっそりレイズは踏みつけた。

「痛っ!!何するんだDr.レイズ!!くだびれた凡人のくせに!」
「・・・・・・死ねばいいのに・・・・・」
「何回そう言う気ですか!!」
「・・・・・クク・・・あと300回・・・・・」
「・・・くっ・・・この変態医者め・・・・」

「なんにゃおみゃぁ〜りゃ。仲悪いのか?」

「仲がいいわけ!」「・・・・・・ない・・・・・」

いいわけなかった。
さっきのさっきまで、
現世では真剣中の真剣な殺し合いをしていたのだから。
言うならば敵どおし、
そんな二人。
仲が言い訳が無い。

「ありゃりゃ・・・おみゃぁ〜ら同時に死んで来たから心中でもしたんかと思ったんがにゃ〜」

「ふん。心中だって?」

ミダンダスが眼鏡を持ち上げながら、
鼻で笑いながら言った。

「まぁあえて言うならば無理心中ってやつですよ。
 この愚かな馬鹿者のせいで私ごと死んでしまった・・・
 世界の歴史に名を残すはずのこの私がね!!!」
「・・・・・・俺だって・・・・・お前と死にたかったわけじゃない・・・・・・」
「ならば生き返らせてみろDr.レイズ!!!この私を!!」
「・・・・・・・・無理に決まってる・・・・お前だって聖職者なら分かるだろ・・・
 ・・・クク・・・・・こんなのが偉大な研究者なら・・・・・・・世の中まだまだ平和だな・・・・・・」
「なんだと!!!」

ミダンダスが縄に縛られたままの腕でレイズに掴みかかる。

「もう一度言っておきましょうか!?
 貴方があんな事しなかったら今頃私の夢は叶っていたのです!!」
「・・・・・・・・叶わなかったさ・・・・・・」
「なんで分かる!お前如きに!!」
「・・・・・・・多分・・・・あの後・・・・・俺らが死んだ後・・・すごいのが来た・・・・」

わけのわからない事を言うレイズ。
ミダンダスは首をかしげた

「・・・・すごいのが来た?」
「・・・・・・・すごいのだ・・・・・・・・・・・・・・ただの予想だけどな・・・・・
 ・・・・・そのすごいのは・・・・・もうなんというかすごい・・・・・・
 ・・・・きっとあのロウマなんかでさえ・・・・下僕にする感じで・・・・
 ・・・神より凄くて・・・・なんか傲慢で・・・・めちゃめちゃ凄くて・・・・・
 ・・・・「カス!」とかが口癖で・・・女を「メス豚」とか呼んで・・・・
 ・・・・自分の事を「我」とか呼んで・・・・・アレックスとかを足蹴にして・・・・」
「ちょちょちょっと待った・・・それは予想ですよね?」
「・・・・・完全なる憶測だ・・・・・・」
「ふん。やけに具体的な憶測ですね・・・・」
「・・・・・・・クク・・・・まぁ実際にそんなもんいないだろうけどな・・・・・・・
 ・・・・・・・そんなもん居たら世界は終わりだ・・・・・・・・」
「全く。くだらない。予想で世界を滅ぼさないで欲しいものです」

なんかもう・・・
冗談にならない冗談を言いながら、
いつの間にかレイズとミダンダスはおとなしくまた小鬼に連れられていた。

「まぁ〜おみゃ〜ら。仲良くしなさんせぇ〜。
 なんてゆ〜てもおみゃ〜らはこれから少しの間パートナーだからにゃ〜」

「「パートナー??」」

「そう。ついたぞ〜い」

そう言い、
小鬼が立ち止まる。
そこは・・・・・地獄のようだった。
いや、地獄なわけだが、
うん・・・・・あまりに想像通りの地獄だった。
レイズが心の底でコッソリ期待してた面白い地獄ではなかった。
もうまんま地獄。
地獄の風景。
予想通りすぎて・・・・・正直あんまり怖くない。

「よっとぉ〜」

小鬼はレイズとミダンダスの縄を解く。
そしてレイズとミダンダスに子袋とメモを渡して言った。

「まぁ〜おみゃ〜らはこれから地獄で住むんだからにゃ〜。
 最初は見学も必要って事だぁ〜。
 そいでそれはファーマシーの材料表だが、スタンプラリーみたいなもん。
 おみゃぁ〜らはそれの通りにファーマシーの材料を集めて行けば〜。
 まぁ地獄は一通り見学できろ〜て〜〜。じゃ、くつろいでけや〜」

そう言いながら、
小鬼はどこかに行ってしまった。

「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

地獄に取り残されるレイズとミダンダス。
無言だったが・・・・・・それもそう。
なんかいきなりツアー気分のご招待。
なんか気が抜ける。
さらに横にはお互い気に食わない者が・・・・・

「・・・・・・・・行くぞ・・・・・・・・」
「この私に命令するな!」

言いながらも、
レイズとミダンダスは一緒に歩き始めた。


少々歩いた。
なんかもう。
地獄らしい悲鳴と叫び声
・・・・・・・は・・・・あまり聞こえなかった。
なんか地獄というよりは・・・・・なんというか・・・

「つきましたよDr.レイズ。最初の観光地です」

ミダンダスに言われて足を止めるレイズ。
そして見る。
まず立て札。
「血の池」
ふむ。
あまりに想像通りだ。
だが光景はあまり想像通りではない。

「ふぃ〜〜!」
「生き返る〜ってかぁ〜?」
「ハッハ!ワシらもう死んどるって!」
「あんたいつのギャグだいそりゃ?」
「30年前の地獄で流行ったギャグだなぁ」

うん。
なんか温泉である。
血の池という名の温泉である。
思いっきりくつろいでる。
まぁ血の池地獄というのは本来、
罪人達が溺れ苦しむ場所と聞いているが、
まさか温泉だとは思わなかった。

「・・・・・・・」

レイズは手を突っ込んでみた。
ふむ。
適温だ。
快適な温泉ライフを満喫できるに違いない。

「なんかよく分かりませんが、
 私はメモの通り、ファーマシーの材料としてこの血を採取しておきますよ」

真面目な事だ。
今からでも修学旅行のリーダーでもしてればいいのにと、
レイズは心の中でボソリと思った。
と・・・まぁ、
レイズはその間なにしてようと思うと、

向こうの方で、
変なのが二人ケンカをしているのが見えた。

「てめっ!!まだ分かんねぇのか!」
「NO!!全くをもってキャントアンダースタンだ!!」

なんか赤いスーツを来た奴と
全身青い変な奴だ。
赤鬼と青鬼かなんかだと思ったが、
なんやら名札が付いている。
「ジェイ」と「タカヤ=タネガシマ」と書いてある。

「・・・・・・名札て・・・・地獄は幼稚園か何かか・・・・」

レイズがボソりと言うが、
それと関係なしに、
向こうの方でジェイとタカヤが口争いをしている。

「いいか!!赤ってのは最高の色だ!なんでかっていうと赤は色の三原色だからだ!
 "三"はいい!三は至福の数字だ!俺に安定と強さを与えてくれる!!」
「ワッツ!!DAMDAM・・・・・Fxxk!!だからキャントアンダースタンだ!!
 ブルーだって"サンゲンショク"ってカラーだドゥーユーアンダスターン!?
 ブルーこそがファンタスティック!ブルーこそワンダフォー!!」
「馬鹿野郎!!この赤い血の池を見ても心が躍らないのか青馬鹿野郎め!
 赤っていうのは俺のスーツの色だ!指揮官専用色なわけだ!!」
「ノンノン!!ブルーこそマックスにグレート!!!ブルーはGO(青は進め)ね!」
「赤は止まれだ!!」
「Ah〜n・・・・・ユーアークレイジー?脳みそクルクルパァーン?」
「黙れ!三発でのすぞコラ!!」
「じゃぁミーはワンパンチね!!」
「じゃぁ俺は三発だ!!」
「ワッツ!?ユードントチェンジ!!」
「3が一番なんだよぉおおお!!!」
「DAMDAM....Fxxk!!!」

「・・・・・・・・・」

なんて幼稚なケンカをしているのだろうか。
赤か青か・・
どっちでもいいじゃないか・・・
・・・・
地獄というのはこんなに平和なものなのだろうか・・・・

「Dr.レイズ。採取が終わった。ちゃっちゃと次に行きますよ」
「・・・・・・・・・命令するな・・・・・・・」

そんなこんなで次の地獄へ二人は向かった。













「これまた絶景ですね」
「・・・・・・ここはまだ地獄っぽいな・・・・・・」

そこは・・・針の山と呼ばれる場所だった。
大小様々な針が否応無く生えている。
ここで地獄の罪人達は串刺しにされると聞いた事がある。

「まるで森のようですね」
「・・・・・・・」

森・・・・・ふむ。
たしかにそう言うのが正しい。
地面には小針が草のように敷き詰められ、
大きな針が木のように並んでいる。
つまるところ・・・

「痛くないですね」

そう。
小針は本当に画鋲より短いので靴を貫通しないので、
普通に歩ける。
大針は逆に大きすぎて刺さりようが無い。
さらには・・・・

「・・・・・おい・・・・・これ・・・・・・」
「ん?」

レイズが指差す。
それは「針の山」と書かれた看板。
そしてその横に矢印。

「こちらに・・・・・安全な通行用道路・・・ですか」
「・・・・・・・・通行用の道・・・・・・・・」
「なんのための針山なんだ・・・・」
「・・・・・・・・・・メモによると・・・・・通行用の道の途中に・・・・・
 ・・・・・・・・・なんたらの爪ってのが落ちてるらしい・・・・・・」
「もうただの観光地ですね」

二人は苦笑いをしながら、
通行用の道を歩む。
周りは針の山。
うむ。絶景。
針山を身ながら観光。
・・・・
何しにこんなとこに来るハメに・・・
と考えても死んだからだと考えるしか・・・・

少し歩くとガッカリするほど簡単にファーマシーの材料は落ちていて、
あとは針山を抜けるだけだった。
少し見るとこの光景も飽きてくる。
だって針しかないのだから。
つまらない。
本当につまらない。
こんなとこトコトコ歩くくらいなら死にたい。
いや、死んでいる。
そんなわけの分からない事を考えながら、
レイズとミダンダスはただヒマそうに歩いた。

「ここは人が少ないですね」
「・・・・・・そりゃ・・・・・こんなとこで遊びにくいだろ・・・・・
 ・・・・・・・こんな針しかないとこいるぐらいなら・・・俺も血の温泉に浸かってる・・・・」
「それはそうですね」

この針の山。
ここまで歩いてくる間、一度たりとも人を見なかった。
そしてもう出口・・・という所。

だが、
レイズが見上げると・・・・・・・・・・人がいた。
二人。
いや、見上げたらいた?
なんで上に?
・・・・
つまるところ・・・・その二人は大きな針の上につま先で立っていた。
どんな人間が針の上に立てるんだ・・

「腕は落ちてませんね。さすが剣聖といったところでしょうか」
「ホッホ。お主の腕はまだまだじゃな」

巨大な針の上に立っている男二人。
片方は老人だ。
そして双方とも剣を持っている。
名札を見ると・・・・
老人には「ルイス=カージナル」、
もう一人の男には「シシドウ=ヒエイ」と書いてあった。

「・・・・・あぁ・・・・イスカの親父か・・・・・・」

会った事はないが、
名前からしてそうなのだろう。
だがまぁ・・・なんというか・・・
地獄にきてまで頑張って剣を持っている。
修行やら手合わせといったところか。
それは結構なことだ。
死ねばいいのに。
んでもって針の上に立っている意味が分からない。
凄いには凄いことだが・・

「ん?おぉ、これはこれは・・・たしか《MD》の誰か・・・レイズとやらじゃったか?」
「ほぉ、アスカのツレですか。これはこれは、アスカがお世話になってます」

ヒエイが針の上から頭を下げる。
・・・・・
そんな目上な場所からそんな風に頭を下げられても・・・・・。

「今、カージナル殿とお手合わせしてましてな」
「ハッハ!シシドウがこれじゃぁこの先不安じゃてな!」
「何を言いますカージナル殿!私はまだまだ本気じゃありませんよ!」
「・・・・・・ほほぉ」

と同時、
針の上から二人の姿が消える。
そしてキンッ!と金きり音が聞こえると、
二人は入れ替わりの場所に剣を振り切って立っていた。
また針の上に・・・・
一瞬の攻防。
そしてあの小さな針の上に着地。
二人とも凄すぎる。
・・・・・が
どうでもいい。

「それにですねカージナル殿」

ヒエイが剣を収めながら言う。

「我が娘、アスカには"シシドウ"をついで欲しくないのです。
 あんな殺しと死の螺旋・・・・あんなものからは解放され・・・
 そして飛ぶ鳥のように自由に生きて欲しいのです・・・・」

ヒエイがしんみりと話す。
カージナルは目をシワクシャにしてうんうんと頷き、
横にいるミダンダスはガラにもなく眼鏡を外して目を拭いていた。
ふむ。
たしかにいい話ではある。
だがなんかレイズには地獄にきてまでそんな話は面白くなかった。
だから言った。
ヒマつぶし

気分晴らしに・・・・

「・・・・・ヒエイさんだったな・・・・・・」

「ん?なんだいレイズ君」

「・・・・・・・・お前の娘さんは立派に生きている・・・・・あんたが望むように・・・自由に・・・・」

「ほ、本当か!!?」

「・・・・・・だが・・・・」

レイズは顔をにやかしながら、
ヒエイに言った。

「・・・・自由が行き過ぎてるぞ・・・・」

「ん?」

「・・・・・・お前の娘さんが今なにしてるか知ってるか・・・・・・」

「なんだい?是非聞かせてくれよ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・女のケツを追っかけまわしてる・・・・・・・・」

「ぶッ!!!」

そのレイズの言葉にヒエイは針の山の上でふらつく。
そして同様のあまり針の山から落っこち、
通行用道路の上に落下した。
だがヒエイは痛みより、
レイズが言った衝撃的一言に必死だった。

「ぐっ・・・・ちょちょっとまってくれ!!本当なのか?!俺の娘は!!アスカは!!!」

「・・・・・・・あぁ・・・・そういえば名前ももう変わってるぞ・・・・・・・今の名はイスカだ・・・・・・」

「え、ぇえ!!??な、ちょ!どういう事なんだ!もしかして女と結婚して名前が!?
 いや、まさか女を捨てて男になってしまったとか!?あぁもう!えぇ??」

「・・・・・・・・クク・・・・女を捨てたはあいつのクセ癖だ・・・・・・」

「う、うそだぁあああああ!!!!」

ヒエイは苦悩のあまり叫んだ。
両手で頭を抱えて叫ぶ。
絶叫という奴だ。

「ウソだウソだウソだ!!!アスカぁぁああ!!
 お父さんはお前をそんな風に育てた覚えはないぞぉお!!!うわぁあああ!!!」

悲しき父親の叫びは針の山の中を乱反射して響き渡った。
レイズは笑いをこらえるのに必死で、
クックとこぼしていた。
そしてミダンダスと共に先に進み始めながらも、
「・・・・・・・ウソは言ってない・・・ウソは・・・・」
と怪しく笑いながら、針の山をあとにした。


「ウソだぁあああ!!!アスカぁぁああ!!!
 昔はお父さんと結婚するって言ってたのにぃいいいい!!!
 あんなに可愛かったのになんでだアスカぁあああああ!!!」




























「・・・・・・・・ぬぅ・・・・・・・暑い・・・・・・・・・」


いきなり周りの温度が上昇してきた。
空間がボヤけているような・・・
それでいて揺らめいているような・・・・
まぁとにかく熱い・・・暑い・・・・
さきほどヒエイを馬鹿にして得た上機嫌は吹っ飛んでしまった。

「暑いはずですね。次は灼熱地獄だそうです」
「・・・・・・それは地獄らしい地獄だな・・・・・・」

そして・・・
見えてきた。
まさに地獄のような光景だ。
ある意味これを待っていた。
地獄らしい地獄。
もうなんか主旨がはずれているが、
なんか地獄なのに平和だとガッカリだ。
せめて地獄らしい景色を見たかった。

そしてその光景。
まるで山のように燃えほとばしる・・・・・・炎。
凄い・・・
これが・・・地獄。

「看板ですよ」

ミダンダスが指を刺す。
そして今までどおり看板があった。
「灼熱地獄」
うむ。
見れば分かる。
そして他の看板よりなにかしら説明文が多かった。

「何々・・・ここは名物「灼熱地獄」です。是非とも炎にお触りください」
「・・・・・・・・?・・・・・」
「炎に触る・・・?」

二人は顔を見合した。

「・・・・・・・やれ・・・・・」
「チッ、命令するな」

ミダンダスは言われるままに手を指し出した。
まるで静電気を怖がるようにチョィ!チョィ!と炎に手を伸ばす。
さすが世界一のひきこもり。
どれだけ身の守りが堅いんだ。
怖がりすぎる。
これで世界をどうこうしようとしてたのだからお笑いだ。

「てや!・・・・ん?」

ミダンダスは炎に触れると・・・不思議に思ったのか、
今度はどんどん触る。

「・・・・・この炎・・・・熱くないですね。これビニールだ」
「・・・・・・!?・・・・・・・ビニール!?・・・・・」

レイズは驚き、
自分も触る。
・・・・
うん。
間違いなくビニールだ。

「続きがありますね。ふむ。なになに・・
 この炎は予算の問題で地獄暦xxxx年からビニール製に変わりました。
 予算以上に地獄内の環境問題のデモがあり、鬼側としても妥協する運びとなりました。
 ただ名物を無くすのは惜しいとの声から、ここはサウナとしてお使いください」

ふと横を見ると、
暑さの原因が分かる。
・・・・・ガンガンにストーブがついてる。
これが厚さの原因・・・。
なんとも・・・・情けない。
さらにはその横にいくつも看板と張り紙。
「ストーブ反対!」
「貴重な燃料の無駄遣いだ!」
どうやら灼熱地獄サウナ化にも批判があるらしい。
なんともエコロな地獄だ。
地獄は地獄で平和にうるさいらしい。

「実際人気ないようですしね・・・」

そう言いながら、ミダンダスはストーブを開けて中の物を取り出す。
火鏤岩という地獄ファーマシーの材料らしい。
・・・現世でも見たことがある。
まぁともかく・・・・
地獄には苦しんでいる輩はいないのだろうか・・・・

「燃え・・・燃える・・・・・」

ボソボソと声が聞こえた。
なんか胸が高鳴った。
人が苦しんでいる。
それは嬉しい事ではないはずだが、
なんかもう地獄で罰なんだからお前ら苦しめよという気分だった。
そしてボソボソとしゃべる者を見つける。
なにやらを漁っている。

「・・・燃える・・・燃え・・・・・」

それは女性のようだった。
なにを手取り足取り・・
魔物?人形?
いや、まるで彼女自体が魔物。
そして彼女は生き物と物に囲まれ、
その女性は・・・・・・叫んだ。

「萌え〜〜〜〜!!!萌えますわ!わらわ萌えまくりですわ!!!」

・・・・どうやら聞き間違いだったらしい。
"燃える"でなく"萌える"。
魔女のような格好をしたその女性は、
なにやら物をひっかき回しながら・・・萌えている。

「この子もいいですわ!この子も!!あぁ!なんと素晴らしき世界!!
 これもこれもこれも!全部わらわのコレクションにしてしまおう!!!」

名札には・・・「ルカ=ベレッタ」と書いてある。
たしかGUN’Sの六銃士の一人だ。
コレクション狂とかいう・・・。
ロッキーも狙われたとかどうとか・・・・

「・・・・・・酷いところだな・・・・・・・」
「あぁ・・・この地獄は違う意味で酷いところだ・・・・」

ミダンダスとレイズは同時にため息をつきながら、
振り向き、
ここから立ち退こうとした・・・・が、
その目の前に・・・

同じ顔をした二人の男が立ちふさがっていた。

「おいおいマイブラザー(兄者)、こいつらまだ名札がついてないぜ?」
「あぁ。こりゃぁ楽しい痴話だぜマイブラザー(弟よ)。可愛い可愛い新入生みたいだな」
「そりゃあご機嫌だマイブラザー(兄者)。お仕事じゃねぇの?」
「あぁ。犬をしつけるにゃぁまず初対面からだ」
「クソの世話までしてやるかマイブラザー(兄貴よ)!」
「そうだな。足の先まで搾り取ってやる!」

二つの同じ顔。
それはレイズとミダンダスの前に立ち、
ブンブンと足の素振りを始めた。

「なんなんですかこいつらは」
「・・・・・・さぁ・・・・・・」

名札には
「エド=ソックス」、
「ワイト=ソックス」と書いてある
双子か何かだろうか。
まぁ果てしなくどうでもいい。
だがまぁなんか知らんが襲ってくるつもりのようだ。
あぁめんどくさい。
ただでもサウナ地獄で暑いのに・・・・

そう思っている時だった。

「待て待て待てぇえええええええい!!!」

次から次へとなんなんだ・・・・
横からさらに暑苦しい声が聞こえてきた。
その男は暑苦しい声が聞こえる。
それは剣を振り翳しながら走ってくる。

「待てぇえええええええ!!!!はぁ・・・はぁ・・・・」

どこから走ってきたのか。
その剣を持った男は息切れをしていた。
そしてもう一度剣を振りかざし、叫ぶ。

「俺はリヨン=オーリンパックぅうううう!!!
 悪はぁああああ!悪はぁぁああああ!!・・・・はぁ・・・はぁ・・・・」

いや、少し休憩してからしゃべってくれ、
聞き取れん。
ふと、
レイズはその男の名札を見る。
「リヨン=オーリンパック」
ふむ。
聞いてもいないのに先に名乗ったのはこいつが初めてだな。
激しくどうでもいい。
名前自体も。
まぁこいつとは会った事あるし、
さらにどうでもいい。

だが、
少し気になるところがあった。
それはリヨンの腕。

「・・・・・・・・・・風紀委員?・・・・・・・」

腕に風紀委員と書かれた帯を付けている。
意味が分からない。

「・・・・はぁ・・・はぁ・・・・ぁあ・・・俺は!俺はぁぁああああ!!
 ここらの地獄のぉおおおお!!風紀紀委員のリヨンだぁああああああ!!!」

いや、
それは分かる。
もっと深い内容を話してくれ。
いや、知りたくもないな。
多分まんまなんだろう。
風紀委員・・・・
地獄で風紀?
なんとまぁ・・・訳がわからない。

「あ、あなたはぁああああ!たしかミルレス白十字病院のぉおおお!!
 んん!?それよりもお前らぁぁぁあああ!!お前らだぁああああ!!
 ソックス兄弟だなぁあああ!悪のぉおおお!悪の手先めぇえええええ!!!」

「チッ、めんどいのが来たぜマイブラザー(兄者)」
「あぁそうだなマイブラザー(弟よ)。便所のクソみたいな奴が来た」
「クソは臭くなる前に流しちまおうぜ」
「あぁ、さっさと逃げるか」

「待てぇええええ!!!!!悪・即・ざぁぁああああああん!!」

「ぐへっ!!!」

リヨンは問答無用でワイトという男に斬りかかった。

「痛ぇええええ痛ぇぞマイブラザー(弟よ)!!!」
「てめっ!なにしやがる!!!」

「悪はぁあああ!!!悪は即刻たたッ斬るんだぁあああああ!!!」

「まだなんもしてねぇだろクソ野郎!」
「そうだ!アホか!風紀委員名乗ってるくせに!!」

「うるさぁぁあああい!!!お前らは悪だぁああああ!!!そうだろぉおおおおお!!!!」

「まぁ・・・なぁマイブラザー(兄者)・・・」
「悪かっつったら悪だな・・・・」

「ならぁぁあ!!!滅せよぉおお!!滅せよ悪めぇええええ!!!」

「そんなメチャクチャな・・・・こいつはアホなのかマイブラザー(兄者)・・・」
「そうみたいだなマイブラザー(弟よ)・・・いくら地獄じゃ死なないっつっても・・・
 ここまで問答無用で斬ってくるアホはこいつぐらいだ・・・・・」
「逃げるかマイブラザー(兄者)・・・」
「だなマイブラザー(弟よ)・・・きりがない・・・」

そういいつつ、
双子の兄弟は自慢の脚力ですぐさま逃げていった。

「待てぇぇえええ!!待てぇ悪めぇえええ!!!!」

リヨンは追いかける。
まるでお巡りさんのように。

「あぁぁあああ!!貴様ぁぁあああ!!貴様ぁぁああルカだなぁああああ!!!」

「な、なんですの!!」

「それはアナハイムさんから奪ったディドだなあああああ!!!
 強奪犯めぇえええ!悪ぅうう!!悪は叩き斬るぅううううう!!」

「なんでです!?」

「罪だぁああ!罪だからだぁあああ!!」

「罪?そんなもの買った覚えは・・・・・きゃあああ!!わらわのコレクションが!!!!」

「あぁぁあああ!斬るものを間違えたぁあああああ!!!」


「「・・・・・・」」

ミダンダスとレイズは引いた目でその光景を見つめた。
なんとまた・・・・

「なんなんですかあれは・・・」
「・・・・・さぁ・・・・・・一応知った顔だが・・・・
 ・・・・・・・明らかに地獄に来て・・・・方向性を間違えてる・・・・・・・」

レイズの言葉がそのままだった。
明らかに間違った方向に正義が進んでいる。
まぁ悪人だらけの地獄なら当然かもしれないが・・・
うぅむ・・・
まぁ自分の信念を一秒のヒマもなく貫けるなら彼は幸せなのかもしれない。

「・・・・・・・・行きますよDr.レイズ」
「・・・・・・・・・・・命令するな・・・・・・・・・」




地獄を歩く二人。
ミダンダスとレイズ。
たった三つだが、
とりあえずファーマシーの材料は揃った。
めぼしい観光地は一応全て回ったのだろう。

「あとは帰ればいいんですかね?」
「・・・・・・・・だろうな・・・・・・・ん?・・・・・・・」

歩いている途中、
レイズの視線に何者かが映った。
・・・・見たことある姿だった。
女性が二人。
看護婦のようだ。
そして・・・・白衣を着た男。

「・・・・・・・・・・・い・・・・・・院長・・・・・・・・・・・・」

レイズは立ち止まり、
思わず声に出た。
そして、
ヴァレンタインもレイズに気付いたようだった。

「お?やぁDr.レイズ。やっと君も来たか」

ヴァレンタインはそう言い、
こちらに歩みよってくる。

「おめでとうDr.レイズ。命の価値を全うしたようだね」

「・・・・・・また・・・・冗談にならない事を・・・・・・」

冗談かどうかは分からない。
ヴァレンタインは真面目な話かもしれない。
だが、ともかくヴァレンタインは笑っていた。

「あぁそうそう。あとで僕のとこにきなよ。こっちでも相変わらず僕は医者をしてるんだ」

「・・・・・・・医者?・・・・・」
「地獄では死なないのに?」

「死なないからさ。死なない人間相手ならどれだけでも人体実験ができる」

そう怪しくヴァレンタインは笑った。

「・・・・・・・・相変わらずですね・・・・・院長・・・・・・・・」

「何か言いたげだなDr.レイズ。ま、だからこそ後から僕のところにこればいい。
 生前話してたろ?・・・・死んだら好きなだけ命の価値について討論しようってね」
「院長、手術(人体実験)中の患者が・・・・」
「死なないからって麻酔無しだったから苦しんでます」
「あぁそうだったそうだった。ありがとうクロエ君、チャラ君。
 じゃぁなDr.レイズ。また後でゆっくり話そう。
 何せ時間は死ぬほどあるからね。・・・・・・ひひ・・・・・・死んでるから」

そう言ってヴァレンタインはまた戻っていった。


















「おめでとうだにゃ〜。これでおみゃ〜らも地獄の仲間入り〜」

そう言いながら、
小鬼はレイズとミダンダスに名札を与えた。

「ま、地獄も悪いとこじゃぁ〜ないよ。満喫してけれ〜」

小鬼はそれっきりどっかに行ってしまった。
ミダンダスとレイズはそれぞれ自分の名札を見た。

「これからずっとここで生活ですか・・・・やっぱ死んだと思うとイヤなものです」
「・・・・・・・ふん・・・・・・・・らしくもないな・・・・・」
「それはそうですよ」

ミダンダスはため息をついた。

「自分の事がよく分かりましたからね」

そんなミダンダスの姿に、
レイズは疑問だった。
明らかに来てばかりの時と様子が違う。

「・・・・・・・・・なんなんだ?・・・・・・・・・」
「いや・・・ね・・・・」

ミダンダスはまたため息をつき、
眼鏡を持ち上げながら話し始める。

「私はずっと一人でひきこもっていた。自分の夢のために・・・
 生前はそれが当たり前で・・・それ以外の事は実際にどうでもよかった・・・・」

ミダンダスはレイズをチラリと見る。

「だが・・・地獄を回ってみて気付いたよ。僕はそれ故に・・・やはり一人だったんだな・・・と」
「・・・・・・・・は?・・・・・・」
「君に話しかけてくる人は結構いたでしょう。だが・・・・私にはいない。
 先ほど見てきた者のうち・・・・3人はGUN'Sの六銃士だった。
 だが・・・彼らでさえ話しかけてこない・・・ふん。そりゃぁ面識がないのだからね。
 当然といえば当然。だが・・・身内にさえ知り合いというのを目の辺りにしましたからね」
「・・・・・・・・・・・クック・・・」

レイズは小さく、
クックック・・とただ笑った。

「何がおかしいのですか!」
「・・・・・・・いや・・・・これが本当の・・・・・死ななきゃ分からないってやつなんだな・・・・と・・・・」
「・・・・イヤなジョークですね」
「・・・・・・・・・・まぁ・・・・いいだろう・・・・・・・・・これから時間はどれくらいでもある・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・死んでからってのもおかしいが・・・・・・交友を作ってみろ・・・・・・・」
「ふん・・・敵である君に言われるとはね」
「・・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・俺だって・・・・・・てめぇにゃ恨み事だらけだ・・・・・・・・
 ・・・・・・・だが・・・・・地獄の生活は長い・・・・・・長くチビチビと・・・・・・・・
 ・・・・・・・・ゆっくり・・・・・恨みがてら・・・・・・・復讐してやる・・・・・・・・・・・・」
「そりゃ楽しみですね」

ミダンダスは苦笑いをした。

「・・・・・・・・・さて・・・・・・・・院長のところにでもいくか・・・・・・・」
「あぁ、行ってくればいい」
「・・・・・・・・・何言ってるんだ・・・・・お前も来るんだよ・・・・・・・・」
「は?」
「・・・・・・・・・間接的にとはいえ・・・・・・・院長に・・・・命令してたんだろ・・・・・・・
 ・・・・・・・・俺の体・・・・・特化型ブレシングヘルスのことを・・・・調べろと・・・・・・・
 ・・・・・・・・話題があるんだから・・・・・・しゃべってみろよ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・はぁ・・・なんだかなぁ」
「・・・・・・クク・・・・・・転校生みたいだな・・・・ダサい・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・」
「まぁ転校生というよりは、不登校のひきこもりの学校デビューってとこですかね」
「・・・・・・・・・・クク・・・・・・・・」
「笑うなよ低知能のくせに」
「・・・・・・・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・」
「死んでるっていってるのです」
「・・・・・やっぱむかつくやつだ・・・・・・・もっかい死ねばいい・・・・・
 ・・・・・・・ってか殺させろ・・・・・・生前の恨みを晴らしてやる・・・・・」
「あぁ、殺せ殺せ」
「・・・・・・・・・・30回は殺してやる・・・・・・・・・・」
「はいはい」
「・・・・・・・・・・・・・・とりあえず院長のとこ・・・・・・行くぞ・・・・・・・・」
「私に命令しないでくれと言ってるでしょう」









こうして、
彼らの地獄生活は始まった。


彼らの事だ。


地獄なら地獄で、


それなりに楽しんでいけるに違いない。













******注意******

この短編は、
実際のSOADと全く関係ありません。

本編と世界はリンクしていませんし、
実際のキャラとは無関係です。


**************


今回のリクエスト
遅くなってすいませんですm(__)m

まぁ内容が内容なのでこの時期まで出せませんでしたw

というか
今回のリクエストをもらった時・・・・・
え!?
今後のSOADの展開が読まれた!?
とビックリしましたw
まさかピンポイントでミダンダスとレイズがくると思いませんでしたからw
いろんな意味でドキドキしましたよw

あ、
注意にもかきましたが、
この作品でイメージなどが変わったとしても、
本編とは切り離して考えていただけるとありがたいです。

おきて破りっていうか・・・
完全にオマケなのでw

でもこういう完全なる番外編ってのも面白いですね(* ̄∇ ̄*)ノ


                 






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