「ケッ! 逃げやがったか。根性の無い野郎だ」
「そうですね。でも、油断はしていられません。相手には策略があるかも・・・・」
 アレックスがそう言い終わった瞬間だった。
 大きな炎が遠くから迫ってきた。

「フレアバーストです!」
 アレックスがそう叫ぶとドジャーとアレックスは一目散に逃げ出した。

 ドジャーの持ち前の俊足でも逃げ切れなかったようだ。つまり、アレックスは・・・・。
「「うがあああ〜!」」
 あたりにアレックスとドジャーの悲鳴が響き渡る。
 ドジャーは直撃とは行かないものの、ダイブした時に足に当たってしまった。無論、アレックスは直撃だ。燃え上がるドジャーの足とアレックス。

「聖職者が居なかったのが運の尽きだったな」
 フレアバーストが飛んできた方から〈魔法戦士〉が歩み寄ってきた。

「とんだ計算違いでしたね」
 アレックスはすでに自分とドジャーにファイアダウンを掛けて、今スーパーヒールをかけているところだった。
 しかし、流石のアレックスでも完全な治療は無理だった。かろうじて生きているが、体が言う事を聞かない・・・・。座る事で精一杯だ。
だが、カクテル・ジョブということを見せ付けただけで十分な動揺を与えたようだ。

「な、何ぃ! お、お前もカ、カ、カクテル・ジョブ(混合職)なのか?!」
 〈魔法戦士〉は震えながら言った。
 明らかに動揺している。
「落ち着け・・・・。そんなはずは無い。カクテル・ジョブができたのは俺ともう一人しか居ないはずだ」
 明らかに慌てている様子で〈魔法戦士〉は一人、喋っていた。
「だが、こ、こ、殺してしまえば同じ事。き、金品を盗めば同じ事・・・・」
 〈魔法戦士〉は呪文のようにつぶやくと、二人にとどめを刺そうとした。

「待って下さい」
 アレックスは慌てて制止すると〈魔法戦士〉は何とか剣を止めてくれた。
アレックスは話しを続けた。
「あなたはどうしてこの街がこんなに荒れたか知っていますか?」
 
ドウシテ アレタ?
「強盗・略奪等をし続けたからな」
 即答だった。そしてまた殺そうとした。
「今あなたがしている事はなんですか?」
 
オレ ハ ナニヲ シテイル?
リャクダツ? ソノセイデ マチガ アレタ?
〈魔法戦士〉の動きが止まる。
「略奪ですよね? あなたみたいな略奪をする人が居るから人口が減るんですよね?」
 
ジンコウガ ヘル? ホカノヤツノ イノチ キョウミナイ。
アレックスは問いかける。〈魔法戦士〉にとって答えにくい難問を。
「そうしないと生きていけない」
 今度は迷いを振り切った様子でまた剣を動かした。
「でも、そうする事によって生活がさらに苦しくなるのは知ってますか?」
 
ジブンノ セイカツ クルシクナル?
 クルシクナル?
 サラニ?
 イヤダ! ゼッタイ イヤダ!
〈魔法戦士〉の心が揺らぐ。
「ぐっ! 俺は! 俺はぁぁ! 何をしているんだ?!」
「人間は一人では生きていけない動物です。過去の過ちは忘れましょう。店でも開いていがみ合うのはやめましょう!」
 アレックスはこれでもかと最後の一押しをする。

 イガミアウノハ ヤメル?
 キョウリョク スル?
 ヒトリジャ イキテ イケナイ?
 イママデ オレハ ナニヲ シテイタンダ?
 ナニヲ シテイタンダ?
 イガミ アッテ イタ
 ヌスンデ イタ
 コロシテ イタ
 イケナイ コト・・・・・・!

「うおおおおお〜〜! 俺は、俺は一体・・・?!」
 〈魔法戦士〉は頭を抱え込み叫びだした。精神状態を保てる一線を越えてしまったようだ。
「落ち着いてください。まだ修正はきくんです。いまから仲良くしましょう。‘汝の隣人を愛せ’とはこの事です。皆で協力しましょう」
 アレックスが優しく語り掛けると〈魔法戦士〉は正気を取り戻した。

「くそ! アレックスにおいしいところを全部持ってかれたな・・・」
 そんな中、一人ドジャーは悪態をついていた。

 〈魔法戦士〉はゆっくり話し始めた。
「一つ聞いていいか?」
「はい?」
「お前はカクテル・ナイトなんだな?」
「はい。そうです」
 男は大きく頷くと更に話し続けた。

「俺の相方は時空を飛び回るビンを開発したんだ。それでほかの時空からお前らを・・・」
 アレックスは手でその話を遮った。
「つまり僕らの世界に平行して存在するパラレルワールド来たと言う訳ですか?」
 〈魔法戦士〉は首を横に振った。
「違うね。どこかから飛んできたかはわからない。未来か。過去か。パラレルワールドか」
「カッ! つまり俺らはお前らのせいで、得体の知れない世界へ連れて来られたと。迷惑な話だ!」
 ドジャーは地面に唾を吐き捨てて言った。どうやら怒り心頭のようだ。

「その事はすまなかった。お前らが以前、ギルドの潰しあいでピルゲンらと相殺された《MD》か」
 ドジャーは目を見開いた。
「なに?! 俺らがピルゲンらと相殺?!」
「ドジャーさん。ここは黙って聞きましょう」
 驚くドジャーをたしなめるアレックス。

「でもって、また支配者が居なくなった世界はSOADに再突入。それでこんな状況になったんだ・・・」
 〈魔法戦士〉はうなだれながら言った。
「カッ! 結局お前らが悪いんだろ!」
「ドジャーさん!」

「お、お前らのお迎えが来たみたいだぞ」
 〈魔法戦士〉が指差した先にはマリナたちが居た。
 メッツはなにやら縄でぐるぐる巻きになった物を抱えている。

「メッツ!」
 ドジャーがメッツに駆け寄ろうとするが、足が上手く動かない。
「・・・・ククッ・・・・・・相当な戦い・・・だったみたいだな・・・・・アレックスでも完治できなかったか・・・・・・・むしろ死ねばいいのに・・・・・」
 レイズがつぶやきながらもヒールをかけて二人の火傷を治した。

「もう、こいつに用は無いな。ガハハ! 戦闘に勝つといい気分だな!」
 メッツは肩の縄でぐるぐる巻きになった物からビンを取り出すと、縄でぐるぐる巻きになった物をドサリと投げ下ろした。
 アレックスにはかろうじてあの盗賊だと確認できた。

「もう俺に用はないだろ。さっさと行け」
 〈魔法戦士〉は荒っぽく言った。
 しかし、言葉とは裏腹に〈魔法戦士〉の心は光を得たようだった。
 《MD》の5人は歩き出した。
 適当な場所に向かって。―――――いや、なぜか皆、道を知っているようだった。








「ストップ! ここら辺でいいよなぁ?」
 メッツが言うと《MD》の5人は足を止めた。
「これはどうやって使用するんだ?」
 いつのまにかビンを持ったドジャーが、ビンを眺めながら言った。

「これは、地面に叩きつけると・・・・・」
 マリナがドジャーからビンを奪って説明した。
「皆、見て!」
 マリナが古ぼけた酒場の跡を指して叫んだ。
 そこには辛うじて文字が読める看板があった。
 皆が呆然としてその看板を読み上げた。
「「「「「・・・Queen・・・B?」」」」」

―――そう。その看板には「Queen B」と書いてあった。つまり《MD》の皆は未来へ行っていたのだ。







 その夜、ドジャーの家の窓辺にはドジャーが腰掛けて、物思いにふけっていた。
「ドジャーさん」
 後ろからアレックスの声がした。

「何だよ」
「僕達はあんな未来になってしまうのですかね?」
 悲しげにアレックスが口を開いた。
「それは違うと思うな。俺は」
 ドジャーは語り出した。
「未来は自分たちで創るものだと俺は思うな。あれは未来なんかじゃない。未来の1パターンだと俺は思う。だから・・・・」
 ドジャーはもういいだろという風に、言葉を切った。
「僕達は頑張ると言うわけですね」
「そうだな」

ドジャーとアレックスはそれから部屋に入りそれぞれ眠りについた・・・・・。








未来は自分で創る――――そう再確認した一日だった。





                 






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