「なぁ、いつになったらあいつは現れるんだ?」 メッツが「Queen B」の店内を歩き回りながら言った。 「まあ、もう少し待てばきっと来るわよ」 「・・・・そうだ。・・・・・・少しはじっとする事も・・・覚えたらどうだ?・・・・・」 いかにも興味無さそうにレイズがつぶやいた。 ・・・・それからしばしの沈黙があった。何もできない。そんな状況にメッツが耐えられるだろうか? 「もう我慢ならねえ! 殴り込んでやる!」 メッツがドアへ歩み寄る。 「・・・・どこへ殴り込むんだ?・・・・・よく考えろ・・・・」 レイズがバカにしたように言った。 その光景を見てマリナはため息をついた。 「でもやっぱり暇じゃない?」 そうは言ってもどうしようもない。皆が認識している事だ。しかし、メッツはもう我慢できないようで、斧を持ち、ドアを蹴って開けた。 そこには盗賊が立っていた。 「う、うは?!」 盗賊はひどく驚いた様子で、メッツを見るなりダガーを突き出してきた。 しかし、ダガーはレイズの超人的なプレイアによって弾かれた。 「何ぃ! くそ! インビジ!」 メッツは大きく斧を振ったが、その時には既に盗賊はどこかに行ってしまっていた。 メッツの斧は空しく空振りするだけだった。 「・・・・また消えた・・・小賢しい奴だな・・・・・死ねばいいのに・・・・・・」 ツリスタッフを取りながらレイズはボソッと言った。 「まあ、とりあえず襲撃しに来たんだから、もう一回来るわよね?」 マリナもギターから2、3回軽くマジックボールを撃って調子を確認した。 「・・・・だけど、店内ではやらせないわよ」 「「はい」」 そっけなく言うマリナからは異常な程の殺気が放たれていた。 「出たのは良いが敵が居ないな・・・・」 つまらなそうにメッツがつぶやいた。 「居るんだけどな・・・」 何も無い所からつぶやき声が飛んできた。 皆がそう思ったのとレイズの胸から鮮血が飛ぶのは同時だった。 一番ひ弱そうなレイズを狙ったのだろうが、その選択は間違えだった。 レイズはそんな攻撃など無かったかのようにSTR(力)を込めてツリスタッフを横に一振りした。 ボコ! そんな音と共に盗賊が横に吹っ飛ばされた。 「なっ! こいつ、なぜひるまない?」 その理由は数秒後にわかった。 なぜなら、レイズの傷が見る見るうちに消えていったからだ。 「ブレシングヘルス!? なるほどな」 「・・・・ほう・・・・・最初から見破ったのは多分・・・お前が最初だ・・・・・」 レイズは首をかしげながら言った。 「まあ、とりあえず一つだけ言える事は・・・・」 ギターを構えるマリナ。 「あなたはこれから蜂の巣になるって事よ!」 マリナはそう言うなりギターでマジックボールを連射した。 「うお! ブリズウィク!」 盗賊は咄嗟にブリズウィクを使って避けた。 「何だコイツ! 吟遊詩人じゃないのか?!」 そう、マリナはギターを持って詩人服を着ているくせに魔術師だ。 「この変人め! いくら変人の集まりでもこれでどうだ!」 またインビジだ。 「・・・・・くそ・・・どこにいるんだ?・・・・どうせなら死ねばいいのに・・・・」 その時、メッツが動き出した。 「そこだ!」 メッツが斧を大きく振る。 すると空間から血が舞い、盗賊の姿が現れた。 「ぐあああああ〜〜!」 「ガハハ! やったぜ!」 盗賊は傷口を押さえながら膝を付いた。 「な、なぜ? ・・・・・・・インビジをかけたのに?」 盗賊が蒼い顔で苦しそうに言った。 「ガハハ! 直感って奴よ!」 そう言うとメッツは片方の斧を大きく振りかぶり・・・・。 とどめを刺した・・・・。 ザクッ! 突然、メッツの斧の軌道が変わって斧が、地面に突き刺さった。 メッツは事態が把握できなかった。 「あれ? 何が起きたんだ?」 メッツは自分の斧を、次に自分の腕を確かめてみた。 「・・・・ククッ・・・・・・メッツは馬鹿だな・・・・・・・本当に・・・・・・・・・」 そこには右腕を突き出したレイズがいた。 「レイズ! 何でプレイアを撃つんだ!」 メッツが怒りながら歩み寄ってきた。 「・・・・馬鹿は困るな・・・・・・・こいつが死んだら・・・・どうやってドジャー達を助けるんだ? ため息交じりにつぶやくと、盗賊にヒールをかけ始めた。 「メッツ、コイツを拘束しといてね」 マリナはそう言うと店の中に入って行った。 ・・・・しばらくするとマリナが縄を持って出てきた。 「本当はレンコンにしようと思ったんだけど、仕方ないわね・・・。でも、ちゃんと仲間は救出してもらうわよ。でも、そしたら用は無いわよね?」 そしてマリナは死神の笑いを浮かべた。 盗賊は恐怖で震え上がった。 キン! アレックスは向かって来る〈魔法戦士〉の剣を槍で防いだ。 避け切れないくらい速い一撃だった。そして重い一撃だった。 「こっちもいるんだぜ? 〈魔法戦士〉さんよお」 ドジャーがダガーを突き出したため、〈魔法戦士〉は一旦、バックステップで後ろに下がった。 「くっ! 2対1か・・・・」 〈魔法戦士〉はそうつぶやくと、詠唱を始めた。 「しまった! 距離をとられてしまいました! ドジャーさん!」 「わかってる!」 ドジャーは最高速で〈魔法戦士〉へ突っ込んでいった。 「チッ!」 〈魔法戦士〉は何とか盾でドジャーの攻撃を防ぐと居合い切りを放った。 しかし、〈魔法戦士〉の一撃も速いが、それ以上にドジャーは速かった。 「カッ! そんなのろい攻撃なんて当たらねえよ」 悠々と攻撃をかわしたドジャーがなめたように言った。 「くそ、調子に乗りおって!」 〈魔法戦士〉はフレアバーストを唱えようとしたが、アレックスの槍に阻まれた。 「くそ! 2対1だからって調子に乗るなよ!」 そう言うと〈魔法戦士〉はウィザードゲートセルフでどこかへ飛んでいってしまった。 |
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