ここは99番街の酒場「Queen B」。
この酒場にギルド《MD》の10人が・・・いや、そのうち5人が集っていた。

「で、何で急に呼び出したりするの?」
さっきからグラスを拭いている店員と思しき女性が盗賊に向かって言った。
すると、それがきっかけになったかのように一人を除いた4人が喋り始めた。

「ケッ!数十秒も黙ってられない奴らだ。とりあえず黙れ」
アクセサリーだらけのギルマスと思しき盗賊がつばを床に吐き捨てて言った。

「ドジャーさん。黙れと言われても困るんですよ。マリナさんも、何で呼び出されたか知りたいんですよ?」
いかにも優しそうな顔つきをした騎士がさっきの盗賊に向かって言った。

「そうだ! アレックスの言う通りだ! ・・・でも、とりあえず戦いてぇ〜!」
トレッドヘアーの一人がタバコを吹かしながら叫んだ。

「・・・こっちは仕事すっぽかして来てんだ・・・・・・めんどくさいな・・・・メッツ以外は乗り気じゃないんだ・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・」
医者の身なりをした顔色の悪い男がトレッドヘアー・・・いやメッツを指さしてボソッと言った。

「まあ、とりあえず落ち着け。今回はなぜ呼んだかと言うと・・・」
 盗賊・・・いやドジャーがまともに喋り始めた。すると酒場が水を打ったように静まり返った。
「最近、誰かに見られているような気がするんだ。それで皆にちょっと協力してもらいたいんだ」

「チッ、ばれていたのかクソ野郎!」
その見ていた男が小さく舌打ちをして毒づいた。

「・・・つまりはだな」
 ドジャーの話は続いていた。
「こういう事だ!」
 そういった瞬間いきなり振り向きざまにこちらに向かってダガーを投げつけた。

その男は咄嗟に身をかわしいつでも敵が出てきてもいいように身構えた。
「ク、計算違いだ!」
 その男は叫ぶと逃げようとした。しかし、その足にスパイダーウェブが絡んできた。
 
 その男が振り返ると後ろに《MD》のメンバーが居た。
「くそ!」
 その男はスパイダーカットを使うと一目散に逃げ出した。
「追うぞ!」
 ドジャーがそう言うとアレックスが一番先にその後をついていった。

 しかし、盗賊と思しき男は何かを投げつけてきた。
「ジョーカーポーク? 違います。何でしょう」
 アレックスとドジャーはついつい投げてきた物をボーッと眺めてしまった。
 
 そして眺めている間に投げてきた物が地面に落下した。
・ ・・・変化は無い。
「なんでしょうね、これ?」
「さあな。ちょっと調べてみるか」
 ドジャーがそう言うとアレックスがと共に落下したビンのような物に歩み寄った。他のメンバーも恐る恐る歩み寄る。

 ポン!
 その音と共にそのビンがいきなり破裂しビンを中心に地面に真っ黒い穴が開いた。
「「「「うわ!」」」」
 呼び出された《MD》全員の声が重なる。
 ・・・・レイズだけは例外だが。
 
もちろん、アレックスとドジャーはその穴の中・・・・。
「「うわぁぁ〜〜〜〜」」
 アレックスとドジャーが穴の中に落ちていった。







――――――SOAD番外編 崩壊という名の必然――――――






「こ、ここはどこです?」
意識が戻ったアレックスがつぶやいた。
「さあな」
同じく意識が戻ったドジャーが言った。

アレックスとドジャーは立ち上がり、辺りを見回してみる・・・。
「見れば見るほど場所がわからないな・・・」
「ドジャーさんの言う通りです」
 確かにここに広がるのは無数の廃墟、廃墟、廃墟。サラセンみたいなところだが何かが違う。

 アレックスは目を凝らして周りを見た。
「あ、ドジャーさん。あそこに中央広場みたいなところがありますよ。行ってみましょう」
 アレックスは言い終わるか言い終わらないかのうちに走り出していた。

「おい! 待てアレックス! この先にはどんな危険が有るかわから無いぞ!」
 しかし、そういいながらもドジャーはこの町にどこと無く懐かしさを感じていた。
 なぜか道もわかる。どこかで見かけた事があるぞ。この光景は。

 しかし、ここはドジャーの言う通り危険な危険な町だった・・・。

 ドジャーは自慢の足でアレックスの後を追って走った。
 すぐにアレックスに追いつく。
 しかし、アレックスの表情がなんだか変だ。こわばっているというか・・・? なんと言えばいいんだろう?
 
 ドジャーはすぐに感づいた。
「止まれアレックス」
 ドジャーはそう言うと歩み寄り手を縦に振った。

「ディテクション」
 するとアレックスの後ろでアレックスにダガーを突きつけている盗賊が現れた。

「チッ!」
 その盗賊は舌打ちをするとアレックスに強くダガーを突きつけて言った。
「こいつがどうなってもいいのか?」

「くそ!」
 ドジャーはアレックスを人質にされているために動けない。
 しかし、こんな所で終わるアレックスではない。
 
 アレックスは指でそっと十字を描くとアーメンも言わずにパージフレアを発動した。
「うがぁぁ〜〜!」
 魔方陣から上がる聖なる炎。
 そんなのを食らったらひとたまりも無いだろう。
アレックスの予想通り盗賊はアレックスの喉をかき切る事を忘れて倒れた。

「盗賊の丸焼きの出来上がりで〜す」
 その言葉にドジャーはクスリと笑った。





「アレックス〜! ドジャー! どこへ行ったの?」
 マリナが叫んだ。
「・・・・無駄だろ・・・・正体不明の穴に・・・・落ちたんだから・・・・・・ククッ・・・・死んでるかもな」
 レイズが悪魔のようにボソッとつぶやく。
「そんな事言うな! ドジャーに何かあったら大変だろぉ!」
 メッツがレイズの言葉を掻き消さんとばかりに叫んだ。

「とりあえず救出に行くぞ!」
 
メッツが皆、来い! という風に歩いた。しかし、後が続かない。
 疑問に思ってメッツが振り返ると、そこにはため息をつくマリナとレイズが居た。

「・・・・メッツは本当にバカだな・・・・・・・インビジされたら探しようが無いだろ・・・・・・それに俺達を偵察するのが・・・・・目的なんだから・・・・・戻ってくるだろ」
 
メッツは疑問が解けたようで一目散に「Queen B」の中に入っていった。

「全く。単純な奴ね・・・」
「・・・・そうだな・・・もう少し考えろ・・・・・・死ねばいいのに・・・」
 
マリナは初めてレイズの気持ちがわかった気がした。






ボキ! ボキ! ボキ!!
この音はドジャーが指を鳴らす音。
バコ!
この音はドジャーが盗賊を殴って目を覚ませる音。
「さあ、言え! ここはなんだ? サラセンか?」
 これはドジャーが拷問をしている音。

 盗賊はパージで大火傷を負っていて話せるような状態では無いらしい。
「・・・仕方ないですね」
 
事態を察知したアレックスは男にヒールをかけた。
「これで話せますね?」
 
アレックスは盗賊の腹に槍を突きつけながら言った。
「ああ・・話せるぞ・・」
 
盗賊は明らかに怯えた様子で話した。
 ドジャーはアレックスにちょっと感心した。

「で? 質問とは?」
 ドジャーは質問しやすいようにしゃがみ込み、盗賊の顔を品定めするように見た。
「ふん、そうだな・・・。ここはサラセンか?」
 すると盗賊は不思議そうにドジャーを見つめた。
「何でお前ら5年前に滅んだ都市の名前を出すんだ?」

「「滅んだ?」」
 アレックスとドジャーの声が重なった。それほど予想外だったのだ。

「そんな事も知らずに生きてきたのか? 悲しい奴らだ」
「うるさいです」
 アレックスはそう言うと盗賊を殴って黙らせた。

「おい、本当なんだな?」
 ドジャーがいぶかしがって盗賊の首をつかんだ。
「なぜ嘘を言う必要が?」
 それもそうだなとドジャーは盗賊から手を離した。

「よし、質問だ。今日、俺らのギルドを監視していた奴は誰か知っているか?」
 盗賊はさらに不思議そうにドジャーを見た。
「はよ言わんかい!」
 ドジャーは盗賊を殴りつけた。
「ぐはっ! ・・・ギルドなんて残っていたのか。珍しいな。聞いたところお前ら以外のギルドはほとんど滅びた」
 ドジャーとアレックスは驚いた。
「なんてところに来てしまったんでしょうか・・・」

「当然の結末だ・・・」
 盗賊は語り始めた。
「あの都市ではずっと殺し合いをしてきた。どこでもいつでも。すぐ人が居なくなるに決まっている。だが殺し合いが絶えないという点はどこでも一緒だ。この都市だってそろそろ滅びるさ。今まともな都市はレビアだけなのさ。はぁ〜」
 盗賊はそう言うと大きなため息をついた。

「で、ギルドもどんどん滅んで行ったと・・・。信じらんねえ・・・・」
 ドジャーは相当ショックな様子だ。

 突然、盗賊が狂ったように喋り始めた。
「いや、お前ら以外にまだもう一つある。アレはギルドというのか二人組というのか・・・。盗賊と魔術師の二人組だ。多分お前らを偵察したのは盗賊の方だろう。そして、魔術師の方は名前が無い。通り名は〈魔法戦・・・・〉」
 そう言い終わる前に盗賊は火に包まれた。
「うがぁ〜〜〜!」

「これは! バーニングデスです!」
 アレックスが慌ててファイアダウンを唱えたが、盗賊は既に屍と化していた。
「なっ! 一体誰が?!」
 辺りを見回すドジャー。しかし、人影は見当たらない。

「あそこです!」
 そういい終わらない内にアレックスは胸の前で十字を描き、路地の一つに向かってプレイアを放った。
 しかし、何の反応も無い。
「カッ、アレックス。とんだお騒がせだったな」
 ドジャーはそう言うと地面に唾を吐き捨てた。

「ふっふっふっふ、お騒がせ? 笑わせるな!」
 その路地から出てきたのは戦士の身なりした男。帽子を深く被っているため、顔はよくわからなかったが、ただ、一ついえることがあった。そいつは〈魔法戦士〉だ。
 そして、こちらへ向かって猛スピードで走ってきた。
 ドジャーの頭の中では試合開始のゴングが鳴っていた。









                 






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