「あやつ・・・・今なんと言った?」

イスカが目を見開く。

目の前に立っているのは赤いスーツの修道士。
右手には赤いクローアーム。
先は・・・血で濡れている。

タカヤ=タネガシマ。
彼は言った。
《GUN's Revolver》の六銃士の一人だと。
六銃士(リヴォルバーナンバーズ)のNo.3だと。

周りのヤクザ達もおどおどしていた。
それもそのはず。
長い年月自分達の上司だった男が、
兄弟の義理を結んだ仲間が、
組長を手にかけ、そんな事を名乗っているのだ。

が、一人。
まったく動じていない男がいた。

「なんかまったく状況がわかんないけどっ!悪モンならオイラが倒〜〜〜っす!!!」

右手を掲げてチェスターが言う。
状況の変化を理解する脳がないようだ。
というより脳みそ自体、回転する意思がないのかもしれない。

そんなチェスターの頭をイスカのゲンコツが降り注ぐ。

「どこまで猿脳なんだお主は!」
「いって〜!!!何すんだよっイスカっ!
 ともかくアレは敵なんだろっ!?だったらそれでイージャン!!!」

チェスターは言い切る。
言い切れるはず。
チェスターにとってはそれ以上も以下も必要ないのだから。

が、それで納得できないのは、
むしろヤクザ達。

「タカヤさん!」
「なんで親父をぉ!!」
「一番組長の傍に居たのはあんたじゃねぇか!!」

「分からねぇのか?兄弟」

タカヤはゆっくり、そしておもむろに歩き、
一人のヤクザの目の前に行く。
そして

「なっ」

そのヤクザの首に、クローアームをひっかけた。
クワガタ状をしているクローアーム。
アームの二枚刃は、そのヤクザの首を挟む形。

「や、やめてくれよタカヤさんっ!どうしてだよっ!?」

「昨日までの義兄弟よ。教えてやらぁ。怖いのはいつも"3"だ。
 今回怖かったのはまるで無関係の第3者だ。俺が3だったって事だ。3は怖いぜぇ?」

言うなりタカヤが右手を思いっきり横に振り切る。
それがなす答え。
ひとつの首が飛んだという結果。
ヤクザの首が、市場のタイルに転がった。

さきほどまでの仲間だったタカヤに、自分達の仲間を殺され、
ヤクザ達は身動き一つしなかった。

そんな中、
タカヤはひとり怪しく笑いながら話し始めた

「今も昔も"裏"を牛耳る大ギルド。《昇竜会》のスパイ。
 このタカヤ様が10年以上もこの任務をしていた理由は3倍簡単だ。
 3っつにまとめてやるよ。
 一つ。GUN'sに邪魔な大ギルドの偵察。
 二つ、異常なまでの情報網と組織力の根深さの利用価値は絶大だ。
 そして三つ。貴重な闇市場の物資横領。どれもGUN'sにゃ3倍ヨダレの出る話よ」

「けっ!よく分かんないけどずっとヨダレ垂らしてりゃいいジャン!」

「一つ。任務終了の命令が来たんだよ。GM(ボス)ドラグノフ様の命令は絶対だ。
 二つ。リュウの親っさんがやられた。これから弱体化するギルドに用はねぇ
 三つ。目の前にオブジェの尻尾がいるのに逃げられちまっちゃぁたまらねぇ
 ま、これがスパイ終了の理由だ。今日まで3倍世話んなったぜリュウの親っさん」

タカヤは横たわるリュウを見る。
リュウはまだギリギリ意識があるようだった。
が、声を出す元気もないようだ。
ダラリと横たわり、明らかな致死量の血を垂れ流している。
それに気付き、聖職者らしきヤクザの一人がリュウにかけよるが、
もう治療も間に合わないだろう。

「・・・・・・・・・・・・ふん。親っさん。仮とはいえ10年以上も俺の親やってたのに情けない限りだぜ」

タカヤは冷たい目をした後、
ケッとツバを吐いた。

「タカヤぁぁぁあ!リュウの親父を侮辱するかぁぁあ!」

親の侮辱に耐えかね、
一人のヤクザがドス(剣)を持ってタカヤに突っ込む。
だがタカヤは軽くさけ、
そのヤクザの脇腹にクローアームを突き刺した。

「ゴハッ・・・」
「むやみに俺も昨日までの兄弟を殺したくねぇんだぜ?」
「きさ・・ま・・・・義理・・・はねぇのか・・・・」
「・・・・・・・知るか。死ね」

タカヤは突き刺したアームを横に振り切る。
そのヤクザは腹から血を飛ばして息絶えた。

「こういう義理義理言ってる馬鹿が多いからよぉ、取り入るのは簡単だったなぁ。ハハッ!
 "親のためぇ!"とかそーいう事言ってりゃ義理ばっかの3倍あほな野郎共はすぐ信じる。
 若頭の盃を手に入れる事なんざぁ、この俺にゃぁ3倍簡単な仕事だったぜ」

そういい捨て、
タカヤは目の前のヤクザの死体。
さきほどまで仲間(兄弟)だった死体を蹴飛ばす。

「まぁ難しいのはスパイ中だったな。目立ちすぎず、それでいていいポジションにいなきゃならねぇ
 あんまり3倍強ぇとこも見せれねぇし、3倍ショボくても駄目だ。
 まぁスパイだからしゃぁねぇけどな。ストレス溜まったぜ。3倍溜まった」

タカヤはクローアームの先に付着した血。
それを指でなぞってふき取った。

「付かず離れず。そんなスパイ任務は今日まで続いた。長かった。3倍長かったねぇ
 ってまあそんな事どうでもいいか。3倍どうでもいいよな
 つー事で俺が六銃士No.3『クリムゾン・3(スリー)』のタカヤだ。
 これからお前らを3倍殺すから、改めてよろしく」

タカヤが赤いクローアームをイスカとチェスターに突きつけた。
そしてニヤリと笑う。

チェスターは大声で、
かつ元気いっぱいで答えた。

「話とか理由とかよく分からんかったけどヨロシク悪モンっ!!」

なぜか両手を腰に添え、偉そうだった。
イスカは片手で顔を覆う。

「よく分からなかったって・・・・・
 チェスター・・・・・あのタカヤという男が今説明しておったろう・・・・・」
「だって話の意味分かんねぇジャン!?具体的に説明してくれなきゃさっ!」
「なかなか具体的に話しておったじゃないか・・・」
「長いんだもんよっ!10文字くらいにまとめてくれよっ!」
「それは具体的とは言わぬ・・・・・」

片手で顔を覆ったまま、
イスカは呆れて首を振った。

「もーイージャン!!!!オイラ分かったもんね!」

チェスターはビシっとタカヤを指を刺す

「あいつは敵!てーーきーーー!!!!!!」

敵。
1文字の理解。
チェスターにとって最高級の"具体的な理解"なのだろう

「とにかくあいつは悪いやつ!仲間は殺すわ、オイラ達を殺そうとするわ、完璧悪ジャン!!!
 そーいうのヒーローとして許せないんだよね!・・・・・・・・・・・・だから敵!」

それを聞いてタカヤは怪しく笑った。
チェスターの言う事が可笑しくて笑った。

「ハハハハッ!3倍面白いな猿ガキ!・・・・そうだな。こんな話無駄だな!
 俺が何モンだろうと関係ねぇ。お前らは今から俺に3倍殺しにされ、
 3倍キツイ拷問の末、オブジェについて吐かされ、そして死ぬ。それだけだ」

「3倍3倍!3333!!3ばっかうっさい奴だなっ!オイラは算数嫌いなんだよっ!」
「ふん。たしかに3・3とうるさいな。3までしか数えれん馬鹿者か何かか?」

「お?お?お前ら今"3"を馬鹿にしたか?聞け。耳を3倍広げてよぉーく聞け。
 俺はな。"3"って数字が大好きなんだ。3は素晴らしい。3は神の数字だ
 この世で"3"ほど効率的で、"3"よりバランスのいい数字はねぇ!だから"3倍"はイイっ!」

タカヤは赤スーツの片側を広げる。

「このスーツにしろそう!普通のスーツは200万のイカルス製タキシードを改造して作るが、
 俺のスーツは3倍!600万もする指揮官専用タキシードからできた特注スーツ!
 どうだ?3倍イカスだろ!?色もナイスなレッド!この赤はタカヤ専用って奴だ!」

タカヤはさらに右手の赤いクローアームを構える。
クワガタの角型のクローアームは、太陽の光で刃が輝いた。

「見ろっ!このクローアームは指揮官専用クローアーム!
 性能!機動性は通常のクローアームの3倍!色も赤くてシビれるだろ?
 赤はいいぜ?血の色だとかじゃねぇ。色の根源"3原色"の一つだからだ!
 このタカヤは3度の飯より赤が好きぃいい!!!」

そしてタカヤは自分自身に親指を突きつける。

「そしてこの俺タカヤ=タネガシマは3倍強ぇ!ザコとは違う!ザコとは!ナハハハッ!」

大声で笑うタカヤ。

性格が変わってないか?とイスカは思う。
まぁどうでもいいが・・・・

そして性格の変わりようがない馬鹿猿が返事を返した。

「何が3度の飯より赤が好きだバァーッカ!!オイラは3度の飯よりバナナが好きだもんねっ!
 なぁチェチェ?バナナは最高ジャン?バナナなら3回どころか100回だって食べたいよな?」
「ウキキ♪」
「だよなー♪」

「フッ、猿と同意見の猿小僧に3の素晴らしさは分からねぇみてぇだな
 いいか?一日3食を始め、世の理は全て3によってもたらされ・・・・」

「バナナのおいしさが分かんない馬鹿の話なんて聞かないよーぉーっだ!!!」

「ふん。猿め・・・」

「ウッキー♪"聞か猿"ってやつジャン!?
 ま、なんにしろそろそろスーパーヒーローの活躍時間ジャン?」

「活躍?ハハッ!馬鹿が猿ガキめ!お前など・・・・・・・・」

タカヤが突っ込む。
地面を蹴り、
チェスターの方へと走る。

「3分で片付けてやる!キッカリ"3"分だ!」

右手のクローアームを構える。
クワガタ状の二枚刃。
それがチェスターを睨む。

「食らいなぁ!」

あっという間にチェスターの目の前まで間合いを詰めたタカヤは、
クローアームを突き出した。

あがる金属音。

止まるクローアーム。

「邪魔するかアマ侍」
「誰がサシの勝負と言った?」

イスカの剣がクローアームを止めていた。
ギリギリと押し合う名刀セイキマツとクローアーム。

「タカヤ。お主はリュウとは違う。この戦いには興もなにもない。
 つまり・・・・・・何がどうだろうと、ただのお主を倒すだけ」
「チェッ!オイラの楽しみが減るジャンかっ!」

チェスターも拳を突き出す。
一直線のパンチ。
それはイスカと押し合うタカヤを襲う。

「関係ないぜアマとガキぃ!」

止める。
タカヤはイスカと押し合っている手と逆の腕、
左手でチェスターのパンチを止める。
タカヤは右手のクローアームでイスカ。
左手でチェスターを止めている状態。

「二人がかりでこようが関係ねぇ!キッカリ3分!それだけで仕留めてやらぁ!」

タカヤが両手で大きく弾き飛ばす。
イスカ・チェスター・タカヤはそれぞれ後方へ同時に飛んだ。

「おめぇら二人がかりならこのタカヤ様を倒せると思ってるだろ?有利になったと思ってるだろ?
 逆だ!おめぇらが二人だと逆にこの俺が3倍有利なんだよぉ!」

「何を戯言を・・・・」
「ばっかジャン?あいつ算数もできない馬鹿なんジャン?」

「ククッ、2VS1・・・・つまり3人だ。3はイイ。3は俺にとって幸福の数字だ!」

「くだらん・・・・・・うっ」

イスカが突然片膝をつく。
そして左肩を押さえた。

「あれ?どーしたんだよイスカっ!?」

チェスターはイスカが押さえる左肩を見る。
それは鈍い紫にはれていた。

「何それっ!?今さっきタカヤにやられたん!?」
「・・・・・否。あんな奴にやられるか・・・・・
 ・・・・・先ほど・・・リュウの最後の一撃でもらったやつだ」
「最後食らってたのかっ!」

リュウとの勝負の最後の交差。
リュウはやはり甘くなかった。
木刀を等分されながらもイスカにキッチリいれていた。
それはイスカの左肩に大ダメージとして残っている。
左腕を動かす事が難しいほどに。

「ハハハッ!見ろ!やっぱり幸福は俺の元にあるっ!3が運んだ幸福だっ!
 分かったかっ!3が一番素晴らしく!3が一番恐ろしい!!!!!」

「うっせ馬鹿!」

チェスターは右腕に力を込める。
気。
それを右手に集中する。

「オイラからのご挨拶(ノック)だ!目ぇ開いとけよっ!どっかぁぁあああん!!!」

イミットゲイザー。
繰り出された波動は、
タカヤへと飛ぶ。

「一直線の攻撃は駄目だ馬鹿が!一直線は"1"だからだっ!」

タカヤは前に走りながら、
イミットゲイザーを避ける。

「"1"は駄目だ!単純すぎる!"3"でないと駄目なんだよぉ!」

走るタカヤ。
勢いよく向かうその足は、
再びチェスターへと向かう。

たが先ほどとは違う点がひとつ。
それは修道士の実力者であるチェスターだからこそ気付いた一点。
・・・・タカヤは右手に力を溜めている。

「"3"の恐怖を見せてやるっ!3は絶対的な数字だっ!これ以上もこれ以下もないっ!
 この世が3次元で完成しているようになっ!」

先ほど間合いを詰めたように、
タカヤはあっという間にチェスターの目の前まで間合いを詰めた。

「3を見せてやる・・・・そしてお前がその次に見るのは・・・・"三途"だっ!!!」

タカヤが突き出したのは・・・・

「爆っ!!!」

強烈な左手のパンチ。

「オイラをなめんなヨッ!!」

この至近距離でも、
チェスターの動体視力は反応する。
左手の爆(パンチ)を腕でガード。

「烈っ!!!!」

「のえっ!?」

不意に連続攻撃。
タカヤの右足が、地面を這うように振りぬかれた。
鋭い蹴り。
威力より鋭さに重きをおいた蹴り。
それはチェスターの足をとらえ、
チェスターはバランスを崩す。

「剛衝破っ!!!!!」

ずっと力を溜めていた右手。
アーム付きのタカヤの右腕。
それが放つ強烈なパンチ。

「ごっ・・・・」

直撃。
チェスターの腹にめり込む・・・・・。
チェスターの腹にアームが食い込む・・・・・。
そして、
吹っ飛ぶ。

チェスターは無残に周りのヤクザの群れに突っ込んだ。


「効いたか?ククッ!効かねぇわけねぇよな!爆・列・剛衝破の三連撃だ!
 この完成度の高い派生技!!見事なまでの3連撃!!イイッ!!・・・・やはり"3"は最高だ!!!!」









                 






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