「あんたが『木造りの昇り竜』だよなっ!つっよそうジャン?!!」

チェスターの右拳に気が溜まっていく。
もう少しでイミットゲイザーが放てるまで気が溜まりきるだろう。

「いかにも。あっし(手前)、性はカクノウザン。名はリュウと申しやす
 あんたぁたしかマーチェって偽名で通ってる外門の壊し屋と記憶してまさぁ
 ただ・・・あんたぁまだジャリンコだ。仁義に関わる。あっしはあんたとヤる気はねぇ
 できるならばお控えしなすってもらえませんかねぇ・・・・・・」

「ジャリンコォ?!オイラこれでも20だぜ!?ナメんなよっ!」

「酒とヤニが楽しめれば一人前っつぅわけじゃぁありやせんよ」

「う・・・うっさいジャン!ちょっと強いからって調子こいてんじゃないぞっ!
 どんな強かろうがオイラより強いって事はありえないんだからなっ!」

言うなり気が溜まりきる。
チェスターの右手は気で轟々と唸り、光っていた。

「とりあえずご挨拶といくぜぇえええええ!!!
 ご挨拶(ノック)を食らいなっ!!どっかぁぁぁあああん!!!!!!」

チェスターがイミットゲイザーを放つ。
右手から放たれた気の弾丸は、
真っ直ぐリュウ目掛けて飛んでいく。

「タカ坊!」
「へい!」

リュウの一声。
若頭のタカヤはすぐさまリュウへ何かを投げた。
それは宙をグルングルンと周りながら、
リュウの元へ飛んでいく。
それは木刀"大木殺"。
回転しながら飛ぶ木刀を、リュウは片手でキャッチした。

瞬間、
リュウは木刀を横に振り切る。
イミットゲイザーを弾く形。
チェスターのイミゲは軌道がズレ、
いや、力負けして弾かれ、
あさっての方向へ飛んでいった。

「うっそ・・・・」

チェスターは右手を突き出したまま呆然とした。
よほど自信があったのだろう。

「もう一度だけ言いまさぁ。あっしはジャリとゴロする気はねぇ
 もしする事になるとしても、それは・・・・・イスカ嬢との後でごぜぇやす」

リュウは木刀を突き出す。
イスカの方へ。

「イスカさん・・・・・・・・・・・・・再戦といきやしょうや。
 座興にゃぁ中断はあっても、中止は無粋ってもんでしょう?
 結末があるからこそ劇にゃぁ興があるってなもんでさぁ」

リュウのもつ手に血管が浮き出、
ピキピキと音を鳴らしている。

「やけに力が入っておるな・・・リュウ」

「当然でさぁ!今こそ筋を通してあんたにタイマン挑んでやすが・・・・・
 実の所あっしはすこぉし・・・・・・いや、至極ムカっ腹ってやつでごぜぇやす!
 あんたとそこのジャリンコに下のモンかなり殺られてますからねぇ!」

「部下は大事だったか」

「大事じゃぁございやせん!"必需"でさぁ!!!言いましたでございやしょぅ!
 組ってもんは親子であり!血ぃ繋がった一つの体でごぜぇやす!言うならば一つの"大木"・・・・・」

リュウはタイルの地面に木刀を突き刺す。

「根っこを噛まれて怒りにならねぇ道理はごぜぇやせん!!!!」

リュウの怒り。
それは他の大ギルドにはないものだった。
それは尋常にならないほどの甲斐性。
自分の子(ギルメン)を愛する心。
義理と人情。

「気持ちは分かるがリュウ、まるで拙者らに非を訴える言い草だな」
「そうジャンそうジャン!オイラ達だってやらなきゃやられてたんだぜ?!」

「違いまさぁ。たしかにこの抗争はあっしらが持ち出したもんでお門違いな怒りやもしれやせん。
 今回も手ぇ出したのはウチのモンが先やもしれやせん。
 子の不始末は親の責任。あっしはむしろ頭を下げるのが道理でしょうや。
 ですがぁ!子が殺されて心ぉ動かさねぇ親はいねぇ!
 子の悲劇もまた親の悲しみ!今はまだ怒りぃ腹ん中に抑えてつけてやすが・・・・・・
 場合によっちゃぁ今日、アマとジャリは殺さねぇって仁義をも破る覚悟でごぜぇやす!」

「リュウの親っさん!」
「組長!惚れなおしましたぜ!」
「怖いときもあるけどやっぱ親父は最高だ!」

部下のヤクザ達は盛り上がる。
リュウという男はよほど部下に愛されているのだろう。
まさに親と子の関係のように。
《昇竜会》がタダの悪者の集まりでなく、
親子関係と契りで繋がっているものだと分かる

「ふん。気にするなリュウ。前にも申したが拙者は女など当に捨てた」
「オイラだってガキじゃねぇよ!永久歯だってもう生えてるし!」

イスカは微笑しながら、
チェスターは両手で口を引き伸ばして言う。

リュウはフっと笑った。

「あんたらぁ面白く、立派なお方だ。
 相手があんたらじゃなけりゃぁもうちょっと純粋に怒れただろう事が世知辛ぇでさぁ
 ここは感謝しときやす。相手が・・・仇がぁあんたぁだからこそあっしは仁義を貫ける!」

マントのように羽織っていた黒スーツ。
リュウはそれを投げ捨てる。
そしてリュウが背を向けた。
リュウの背。
そこにあったのは・・・・
見事なまでの・・・・"竜の刺青"。

「御覧くだせぇ!あっしが盃(さかずき)もらったその日から!
 背で消えることなく生き続ける昇り竜!こいつがあっしの仁義の証!
 鯉が竜になるために叩く、仁義という名の登竜門はぁ!あっしの背中で色あせてねぇ!
 後生の一つは組のため!後生の一つは仁のため!
 手前リュウ=カクノウザン!この命枯らす気でお相手致す!!!!!」

リュウは叫び終わると、
木刀を肩に担ぐ。
イスカとチェスターの方を向いた時の威圧感。
芯まで筋が通ってる男の迷い無き心を感じられる。

「見事なり・・・・・お相手しよう。リュウ殿」

イスカも剣を構える。

「チェッ、結局オイラは見るだけかよっ」
「ウキキ?」
「分かってるよチェチェ・・・・」

チェスターは地べたに座り込んだ。
そしてあぐらをかき、手を振って叫ぶ。

「頑張れよ〜イスカァ〜!」

露店場の真ん中。
黒スーツのヤクザが取り囲むその真ん中。
睨み合う二人。
リュウ。
イスカ。

両者動かない。
それとも両者動けないのか。
違う、やはり動かないのだ。
どちらも機をうかがっている。
一度剣をあわせているのだ。
お互い力量を知り合っている。

が、
まだ攻撃は始まっていないというのに、
異変がひとつ。
さきほどまでは気付かなかったが、
すでにリュウの腹のサラシから血が滲み、垂れているのだ。

「・・・・・・リュウ殿。お主のその腹の傷・・・・」

「へい?あぁ。忘れたんですかい?先刻のゴロで、お嬢につけられた傷でございやしょう?」

「そうじゃなく・・・・癒さなかったのかという事だ?《昇竜会》に聖職者はおらんのか?
 いや、それ以上にアイテムで治療すればよかろうものなのに・・・・・・」

「ハハッ!痛いのなんのは関係ないんでさぁ。この傷はあんたがあっしを傷つけた証!
 言うならば強者と戦った誇り。あんたを認めたからこそあっしはそれを身に刻む。
 それを治療なんて無粋ってもんでございやす!それがあっしの筋でござい!」

「ふん。改めて見事」

「お褒め預かり光栄でござんす。が、こう睨みあっててもカラスが鳴くってもんで・・・
 あっしは今回私情だけで戦ってるわけじゃぁございやせん
 組のため、我がため、子のため、そして《昇竜会》が親であるがため!
 今日(こんにち)!木刀という名の竜の牙は!あんたを食いちぎるまで離しやせん!!!!」

リュウが飛び掛る。
木刀は肩に担いだまま。
そして振り落とす。
何一つ仕掛けなどない。
ただ真っ直ぐ。馬鹿正直な剣。
ただの一閃。
振り落とした木刀を、
イスカは剣で受け止める。
受けた剣はジンジンと響いた。

「相変わらず力任せな剣筋だな。リュウ」
「あっしの剣は"剛"の剣でさぁ!剣の切れ味に任せた軟弱な剣とは違いやす!」
「なるほど。刃に頼るからこそ腕が鈍る。一理あるな」
「大功は拙なるが如しとも言いまさぁ」
「が、剣に頼るのでなく、剣を信じる。それが産むのは"柔"の剣」
「剛と・・・」
「柔」
「イスカ嬢!あんたとのヤゴロにゃぁどんな状況にも興があってよござんすなぁ!
 こんな楽しい水火の争いってぇもんは天地を返しても出てくるもんじゃございやせん!
 じゃぁあっしの一世一代の剛剣!仁と筋を乗せてお見舞いしまさぁ!!!」

リュウが剣を弾き、
また木刀を担ぐ。
いや、振りかぶる。
背中の後ろまで。
まるでマキ割りの斧を振りかぶるかのような
大きな振りかぶり。
そして
たたき出したのは真っ正直な縦振り。
全力の剣。
木刀がハンマーのように振られてくる。

「む・・・」

イスカは剣で受けようとするが、
それは出来ない。
不可。
何故なら剣は"斬るもの"
鋭く、性能がよければよい剣なほど・・・薄く、細い。
名刀セイキマツはさすがに切れ味と耐久度を両立してはいるが・・・・
リュウの剛剣。

受ければ・・・・
折れる。

「ならば・・・・流す」

イスカは刃を斜めに寝かせ、
地面に突き立て固定した。

リュウの木刀はイスカの剣にぶち当たるが、
イスカの剣。
それはまるでレール。
優しく、それでいて確実に
リュウの木刀はイスカの剣に沿って軌道をずらされる。
そして目標違いの地面に勢いよくぶつかり、地のタイルを砕く勢いで跳ね上げた。

跳ね上がった地クズの中、
二人の剣士は笑う。

「さすがぁイスカ嬢でさぁ!」
「言ったであろう。剣とは・・・・"柔"だ」
「柔を習えと?ご冗談!あっしは組が頭ぁ!組の"芯"でさぁ!」

リュウがブンッと力任せに木刀を横に振る。
イスカは見切り、
上半身だけ反らせて避ける。

「"芯"は文字通り、草の冠に心と書きまさぁ!あっしは《昇竜会》てぇ大木の芯!
 あっしは強くなけりゃぁならねぇ!寄らば大樹の陰とも言いまさぁ!
 芯であらば太く!曲がらねぇ丈夫な剛の心を持たなきゃならねぇんでごぜぇやすよ!」
「ならば、固き故の鈍さ。突かせて戴く」

初のイスカの攻撃、剣撃。
それは連撃。
イスカの剣から放たれるのは、
速度を生かした連続斬り。
常人なら目にも留まらぬ速さ。
秒間3斬の斬撃。

「こりゃぁ・・・たまりやせんなぁ・・・・」

斬る。斬る。斬る。
イスカの連続斬りを、
一本の木刀で防ぐのは無理があった。
リュウは致命傷を避け、的確に防げるものだけ防ぐ。
が、防ぎそこなったイスカの剣は、リュウに浅くとも確実に傷をつける。
リュウの体中に無数の小さな傷が付く、
およそ十数個の切り傷。
リュウは防戦一方。
体は薄く血まみれ。
決定打は全て防いでいるとはいえ、
長くもつものではなかった。
が、

「せぃや!」

とうとうリュウの一太刀が、
イスカの剣を捕らえる。
リュウの木刀が、イスカの剣を地面へと叩きつけた。

「クッ、」

イスカは咄嗟に距離を離す。

「終わりですかい?イスカ嬢」
「お主・・・・何故避けぬ・・・・」
「また質問ですかい?質問が多い事で」
「あぁ、聞きたいのだ。拙者は腐った輩とばかり戦ってきたからな。
 お主との戦いは新鮮で面白い。興味が尽きぬ。ゆえに教えてくれ。
 少し避ければ、少し退けばそこまで傷だらけにならずにすんだであろう?何故ひかぬ」
「簡単でさぁ!そりゃぁ理屈じゃありやせん!
 あっしは数百という部下(根っこ)に支えられた退くことを知らぬ大木!
 たとえ風が吹こうと!雨が降ろうと!台風が来たって引っこ抜ける事はありやせん!そしてぇ!」

リュウは木刀を肩に担ぎなおす。
そしてもう片方の手でイスカを指差した。

「竜の頭はいつも前だけ見てるものでさぁ・・・・・
 これから根っこの生えた木竜の強さをお見せしやす!
 ある伝説を知ってやすよね?鯉が滝登りをして竜へと変わる話でさぁ
 土の中を!底辺を知っているから!鯉として水面下を生きてきたからこそ竜は強い!
 鯉は滝を登る!その竜の牙はあんたに噛み付き!昇り!浄土の果まで離さねぇ!」

リュウは突如木刀を地面に突き刺す。
地面のタイルはえぐれ、破片が飛び散った。

「地を泳ぐ鯉!」

走り出すリュウ。
木刀を地面を引きずりながら、
いや、木刀で地面を削りながら。
ガガガッ!と地面に一本のライン。
それはまるで硬い地面を泳ぐ魚。

「滝登り!」

リュウは剣を真下から上へと振り上げた。
まるで木刀によるアッパー。
地面の中から木刀の先が顔を出す。
真下からの剣撃。

(まずい・・・)

下からの剣。
先ほどのように流すことはできない。
かといってこの勢い。
受けたら・・・剣が折れる・・・・。
ならば。

「だぁらぁああああ!」

振り上げた木刀が剣の上からイスカを直撃。
イスカを斜め上に吹っ飛ばした。
女であるイスカの軽い体は宙に飛ぶ。

「ぐっ、」

少しの空中浮遊を終え、
吹っ飛ばされたイスカは地面に着地する。
さすがの威力。
着地際でさえ地面に足をひきずった。

「手ごたえが浅ぇ?」

疑問を持ったのはむしろリュウの方だった。
思ったよりイスカが吹っ飛びすぎたのだ。
そしてイスカのダメージも思ったほどではない。

「体で受けなすったか・・・」

イスカは剣で受けるのではなく、
剣自体を体に押し当て、
直で自分の体に衝撃がくるようにしたのだ。
そして少し自分で飛ぶ。
受けるより吹っ飛ばされる方がダメージは少ない。

「ははっ!自分から吹っ飛んでダメージを減らすなんてぇ事を
 あの場面で咄嗟にやるなんてぇ仏様でも思いませんやな!
 さすがぁイスカ嬢!面白い方でさぁ!腕鳴り、心響きまさぁ!」
「剛で岩は砕けるが、剛で紙くずは砕けない。それだけだ」
「興がある!興がありまさぁ!つまりジャンケンみたいなもんでさぁね!
 剣(チョキ)で岩(グー)が受けれないが、紙(パー)でならって事でやしょう!ですがね!」

リュウは再び木刀を地面に突き立てる。

「あっしはグーしか知らない不器用もんでさぁ!地を泳ぐ鯉!」

再び。
リュウは地面を削りながら突き進む。
同じ技。
無意味・・・・ではない。
軽減したと言ってもイスカへのダメージはあった。
むしろイスカへ攻撃が当たるならば効果的。

「滝登り!!!」

木刀による振り上げアッパー。
先程より角度が鋭く、
渾身。

イスカも先ほどと同じく、
自ら飛び、
衝撃を剣を伝え、心身で受ける。

「でぇあらぁあああああ!!」

吹っ飛ぶ。
上へ。
宙へ。
まるで滝を逆に受けたかのように。
イスカの体は上空へ吹っ飛ばされる。

「陸の河童ってやつでさぁ!あんたであれど宙ではどうしようもございやせん!
 落ちてきた時!それが終焉!浄土の一本道!臍を固めてくだせぇよ!」

リュウに吹っ飛ばされ、
イスカの宙へ投げ出された体。
リュウの言うとおり、
羽が生えてるわけでもないので、飛んで逃げる事もできない。
ただ落ちるだけ。
が、
不思議な気分だった。

「空・・・か」

地に足を付けず、
全身で空間を感じる。
こんな時であるのに、
何故か晴れ晴れしい気分だった。

「感じる・・・・浮雲が如く思い。・・・・・・・・・拙者は・・・・・」

イスカは宙で剣を鞘に納めた。

「大空を知っている」

落ちるイスカの体。
下ではリュウが木刀を肩に担ぎ、狙っている。
そこへ向けて、落ちる。
言うならば格好の、いや滑降の標的。
剣は鞘の中。
周りのヤクザ達は、
親分の勝利を確信し、盛り上がっていた。
が、一人表情の曇る男。
リュウ。

「馬鹿な・・・・宙で構えだと?」

落ちるイスカ。
落ちてきながらもその体勢。
鞘に片手を沿えている。
居合い斬りの体勢。
まるで地面に立っている時のような違和感なき構え。
それは鍛錬で体に染み付いている体勢。

「不思議だ。空の体感か。否、重力の体感か。否、勝負の終焉での心の高鳴りか。
 どんな時にでも剣はあるものだな。いつよりも自然に剣が抜けそうだ」

イスカは剣を掴む。

「終わりだ。リュウ」
「チィイ!!」

リュウはイスカへ木刀を振りつける。
が、
宙にいるというのにイスカの剣。
それは最速の抜刀術。
そこから放たれる居合い斬り。

誰の目にも一瞬結果は分からなかった。
二つの剣が振り切られたのだけは誰もが確認できた。
その後。
落ちてきたイスカの体とリュウの体がぶつかった。

「組長ぃ!?」
「リュウのオジキぃ!?!?!」

呼び声虚しく。
立ち上がったのはイスカだった。

「興ある・・・・勝負だったぞリュウ殿」

イスカは背を向けた。

「親っさん!」
「組長ぉおおお!!」

親を亡くした子の声。
・・・・ではなかった。
リュウも立ち上がった。

「見・・・事でさぁ・・・・」

だが、
木刀は真っ二つ。
そしてリュウの体には、
肩から腰まで斜めに大きな剣の通り跡があった。
そして、
その傷は大きく血を噴出し、
リュウは片膝を付いた。

「あんたの勝・・ちでさぁ・・・・イスカ嬢。
 死んでも食いつくつもりでしたが・・・・そうも問屋がおろさようで・・・・
 一念天に通じず・・・・・・天に食らい付くほど・・・竜は昇れなかったって事でしょうや・・・・
 部下にゃぁ・・・・悪ぃが・・・・・筋ぃ通し・・・・・ここで終焉にしやしょう・・・・・・」

「リュウのオジキ!」
「俺達ぁあんたぁと違って小汚い悪党だがぁ!」
「親ぁやられて黙って見逃すわけにはいきませんよ!」

「前・・・から・・・言ってるだろぅ・・・・"筋"だけ・・・・・通せと・・・・
 今回は・・・・磯際で・・・・船を破っちまった・・・・・それだけだ・・・・・・」

リュウは口から大きく大きく吐血した。
地に血の溜まりができる。

「負けても見事だリュウ。お主の事は死んでも忘れまい」
「あっしも・・・同じでさぁ・・・・」

イスカは振り向き、
そしてリュウに小さく笑った。
リュウも笑った。

「ごがっ!?」

もう一度大きな吐血。
リュウの口から赤い血が吹き出された。

だが、
それは・・・
イスカの傷によるものではなかった。

「あんたぁよくても。こっちとしては黙って帰すわけにはいかねぇなぁ」

リュウの背中から何かが引き抜かれた。
それは、赤い。
赤いクローアーム。

「リュウの親っさん。すいませんねぇ。3倍悪いとは思ってる」

リュウを後ろから刺した男。
赤いスーツ。
赤いクローアーム。

「・・・・タカ・・・・坊・・・・・?」

それは、
若頭のタカヤ。

「若頭!?」
「タカさん?!」
「タカヤさん!?何を!」

一人のヤクザがタカヤに近づく。
が、そのヤクザにもクローアームを突き刺す。

「悪い。3倍悪いな兄弟。昨日と共は今日の敵。
 任務は今日で終わりなんだ。長い・・・長い任務だった」

タカヤはクローアームを突き刺したヤクザを、
投げ飛ばすようにアームを引き抜いた。

「たった今を持って若頭の盃は捨てる。もう親も子もねぇ」

そしてクローアームをイスカとチェスターへと突きつけた。


「この俺タカヤ=タネガシマ。もとい《GUN's Revolver》が六銃士No.3。
 3倍の力と3倍の恐怖を持って、お前らを赤く染めてやる」











                 






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