「へぇ〜。ここがマイソシア名物ブラックマーケット(闇市場)かぁ〜」
「うむ。ここはなチェスター。マイソシアの裏と闇が滞るば・・・・・」
「うっひょ〜!!座布団ばっかジャン!すっげぇ!見て回ろうぜチェチェ!」
「ウキキ!」
「は、話を聞けチェスター・・・・」

さっそく走り回るチェスター。
イスカもさっそくため息をつく。

「はぁ・・・・これが子供のお守(も)り・・・・というやつか・・・・・
 他人に振り回されるという意味では、ドジャーの気持ちがよく分かるな・・・」


ブラックマーケット(闇市場)

ヤクザギルド《昇竜会》が仕切るなんでもありの露店場。
行き方は簡単。
ルアス・ミルレス・スオミにいる案内人に話しかけるだけ。
するとこの市場に飛ばしてもらえる
昔は王国騎士団ご法度だったが、
今の世の中誰でも気軽に入れる。

闇市場の内容も至極想像通り。
違法品。
珍品。
盗品。
なんでもあり。
なんといってもルールはヤクザが決めているのだ。

「守護動物〜守護動物はいらんか〜?バキ、ウッドノカン格安だよ〜」
「こっちは騎士団崩壊で廃棄になったエルモア売るよ〜!」
「奴隷はいらんか〜?生きのいいイカルス民族が入ったぞ!」
「ほれ見なお客さん!かのデムピアスが使ったかもしれないダガーだ!」
「ファーマシーで調合した"???薬"買わないかぁ!?
 遊べるものから便利なもの、そしてブっとぶものまで目白押しだぁ〜!!!」
「違法改造(チート)品いらんかねぇ〜。どうなっても知らんが強いよ〜」

そこら中から露店商の声がする。
怪しい物が盛りだくさん。
それはチェスターの好奇心を満たすに十分の内容だった。

「すっげ!すっげぇ!イスカ見てくれよ!リビが50000グロッドだってさ!安っ!
 なんでこんな安いんだよっ!サギジャン?おかしいジャン?」
「あぁ。サギ紛いのものもよぉあるから気をつけろ
 まぁだが、安く割に良い物も多いぞ。なんといっても盗品を売っておる輩が多いからな
 元手0グロッドで売れるからピンキリで安いものがある。
 そういえばメッツもこないだ斧はここで買ったと言っておった気がするな」
「ぉぉ!噂をすれば"バーサーカー"ジャン!メッツのあのタバコここで売ってたのかっ!
 ふむふむ。この"???薬"は中毒性及び、体への負担が多いので・・・・・・
 ってほとんど麻薬ジャン!メッツこんなん吸ってドーピングしてたのかっ!
 そりゃ中毒にもなるよなっ!・・・・ってうぉお!?
 あっちにノンアルコールモス酒ってあんジャン!ほっしー!」
「おいチェスター・・・・それより今日は・・・・」
「こっちにも!あっちにも!うひょー!!ここおもしれぇー!」

チェスターはイスカの話を聞いてか聞いてないのか。
そこら中を走り回る。
好奇心の塊というものは凄い。
あっちに行ったと思うとこっちに
そっちに行ったと思うと向こうに。
そう思っているとまたイスカの元へ戻ってきてる。

「なぁなぁイスカっ!なんで広場と違ってここは座布団で露店してんだっ?」
「あ、あぁ・・・・それはな、騎士団があった頃の名残だ。
 騎士団の手入れがあった時に逃げやすいように座布団でと決まっていたのだ」
「へ〜!・・・・ってぉお!?すげっ!アイング帽ジャン!めっちゃ欲しっ!」

またチェスターはぴゅ〜っと走っていく。
まるでオモチャ売り場の子供。

「こ、これチェスター・・・・あんまり走りまわるな・・・・
 目的を忘れたのか。ここは《昇竜会》の巣窟なんだぞ・・・・・」
「大丈夫大丈夫!それにヒーローは急には止まられな・・・・・・・ってあ痛っ!」

チェスターが突然何かにぶつかってすっ転ぶ。
言わんこっちゃない。
イスカはそう思った。
そう、
ぶつかった"何か"は・・・・

「あぁん?なんだガキィ!」
「うあっ!このガキ!俺のスーツ汚しやがった!新調してばっかなのによぉ!」

ヤクザ。
さっそくからまれるチェスター。
イスカは「馬鹿猿小僧・・・・」と片手で顔を覆う。
出来れば《昇竜会》との全面戦争はさけ、
リュウをコッソリ探し出したかった。
無駄な戦いはしたくない。
ヤクザの数はとんでもないのだ。
なんといってもここが《昇竜会》の本拠地だ。
《昇竜会》のヤクザのほとんどはここにいるのだ。

そんなイスカの思惑などさも知らず、
尻餅をついたチェスターは「え?え?」と訳もわからず、キョロキョロしていた。

「オラ坊主!どう落とし前つけてくれるんや!」
「知ってるか?《昇竜会》の制服でもあるこの黒スーツはなぁ?
 イカルスで売ってるタキシードをいじって作られてるもんなんだぞ!」
「お前でもあの馬鹿高いタキシードの値段知ってるだろぅなぁ?」
「200万グロッドだ!キッカリ200万!!」
「エンコじゃ済まんぞ!耳ぃ揃えて払いやがれ!」

「200万グロッド!?うぅ・・・・オイラそんな持ってないよっ!」

「持ってないで済むかボケェ!」
「極道なめてんのかっ!」

チェスターは焦る。
そしてイスカの方を情けない目で見つめて言う。
涙目だ。

「うぅ・・・・イスカァ・・・200万グロッドもってないか〜・・・・」
「払うつもりなのか・・・馬鹿者・・・・」

チェスターはしょんぼりした。
どうしたらいいのだろうかという悩む子供の顔。

イスカはまた顔を覆う。
呆れてもう声も出ない。
もちろん助ける気もない。

「ヤ、ヤクザさん達!オイラそんなに払えないや!ほんとゴメンっ!」

チェスターは両手を合わせて膝をつく。
深心からの謝罪。
情けない。

「ぁあん!?払えないだぁ〜?」
「払えないで済むかって言ってんだよこの金髪野郎がっ!」

とうとうヤクザが手を出した。
さすがヤクザ。
手を出すのも早い。
その黒スーツのヤクザは、
おもくそチェスターを殴りかかった。

が、

「ごめんって言ってるジャン」

チェスターはいとも簡単にその拳を掴んで止めた。
先ほどまでの脅えた目はもうない。

「なっ!?このクソガキっ!」

ヤクザは振りほどこうとする。
が、出来ない。
チェスターに掴まれた腕は、
ビクとも動かない。
まるで鉄に固定されたかのように・・・・

「クソッ!このっ!離しやがれっ!」

「ねぇ、ちゃんと謝ったジャン。それなのに殴ってくるなんて酷くない?ひでぇよな
 まぁつまり何?この手はオイラとヤる気って見ていいわけジャンね?
 そういう事ジャンね?いいんジャンね?おっし。おっけ〜。じゃぁ・・・・・・」

チェスターはヤクザの腕をパッと放す。
そして

「ふっとんじゃえ・・・・よっ!!!!!」

強烈な一撃。
会心の拳。
チェスターの拳を食らったヤクザはすっ飛び、
ゴンゴロと地面を転がった後
パタンと止まり、
意識を失った。

「弱っ!?ヘボッ!?何々?オッサンそれでも本職なの?ザコっちぃなっ!
 つまんねぇの。それでよくもまぁオイラに手ぇ出せたもんだね」

チェスターは拳をコキコキと鳴らす。

「クッ・・・・」

残ったもう一人のヤクザが焦り、
後ろへ下がる。
そして見回した後、
大声で叫んだ。

「お、おいっ!野郎共!来い!集まれ!」

すると、
まるで犬笛でも吹いたかのようにヤクザが集まる。
すぐさまウジ虫のように沸く。
あっという間にヤクザ集団がイスカとチェスターを取り巻いた。
その数ざっと50人。
四方八方が黒・黒・黒。
黒スーツヤクザのオンパレード。
そして殺意のオンパレード。

「うわっ!多っ!仲間の呼び方ノカンジェネラルみてぇ!」

「はっ!ガキめ!」
「この道のモンに手ぇ出した事後悔しろよっ!」
「ちょーしこいて金髪になんて染めやがってよぉ・・・・」
「ボコじゃ済まねぇからなっ!」

自分を取り囲むヤクザたち。
その状況。
だが、チェスターは臆するわけでなく、
面倒くさがるわけでもない。

「わっお!?これまるで悪の戦闘員がヒーローを囲んでるみたいジャン!」

・・・・楽しんでいた。

「これ全部倒したらオイラまじかっこいいジャン?
 スーパーヒーローのショータイムって奴ぅ?カッコイイよなっ?チェチェ!」
「ウキキ!」
「だっよなっ〜!じゃぁ〜〜・・・・・・・」

突然チェスターは右手に力を込める。
いや、力?
違う。
込めているのは力じゃない。
それは魔力でもなく、
そう、言うならば・・・
"気"

「スーパーヒーロー『ノック・ザ・ドアー』の力見せてやるよっ!
 どんな事も始まりはノックからってね♪特大のノックを見せてやるジャン!
 目ん玉開いてよぉ〜く見てろよっ!はぁ〜・・・・・・・・・・」

気力が吸い込まれていくよう、
そして右手が光り輝く。
気力の塊がチェスターの右拳に集まった。
そして次の瞬間。

「どっかぁぁぁああ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!!」

威勢のいい声と共に、
チェスターが勢い良く右拳を突き出す。
"勢いの良い拳"と共に、
"勢い良く放たれた"それは・・・・・・・・・・

イミットゲイザー。

飛んでいくのは気の塊。
エネルギー弾。

「ごぇっ!」「がぁ!?」「ふぎゃぁ!」

そのイミットゲイザーはヤクザの3人をもろとも吹っ飛ばした。
まるでボーリングのピンが吹っ飛んだかのよう。
イミットゲイザーで3人吹っ飛ばすその威力・・・・

一時期ヤクザたちは唖然とした。
そしてどよどよと話し出す。

「今っ!?今あのガキ『ノック・ザ・ドアー』って言ったか!?」
「あの8億6000万グロッドの賞金首?!」
「あの小僧がかっ?!」
「ウソだろ?もっとオッサンだと思ってたぞっ!」
「お、俺も・・・・・もっとイカつい修道士だと・・・・」
「だけどイミットゲイザーであの威力・・・」
「しかも片手だぜっ!?イミゲって両手で撃つもんだろ!?」
「クソっ!あれなら・・・・エネミーレイゾン一撃で外門を吹っ飛ばしたって話も頷けるぜ・・・・・・・」
「・・・・・・ってあのガキどこ行った!?」

「こっこだよん♪」

いつの間にか一人のヤクザの後ろに回りこんでいたチェスター。
そのままヤクザの後頭部を掴み、
勢い良く地面に叩きつける。
「うぇ」という声と鈍い音。
そして結果は、
地に伏せてピクピクしているヤクザ。

だがそれを見届けるヒマなく、
すかさず回し蹴り。
また一人ヤクザが吹っ飛ぶ。
その辺のヤクザ数人を巻き込んで。

「こ・・・このクッソ小僧!ドス(ダガー)でも食らえっ!」

一人のヤクザの突き刺し。
が、
チェスターはバク転でそれを避ける。

「猿みたいな動きしやがって!」
「・・・チョコマカとぉ!」

「猿をなめんなよっと♪」
「ウッキキッキ♪」

すぐさまチェスターは猛ダッシュ。
ヤクザの懐までもぐりこむ。
そして

「じっくり腹で受け止めなっ!!師匠直伝!イミットゲイザー参式(さんしき)!
 0距離グレートゲイザーボンバー!!はぁ〜!どっ!かぁぁぁあん!!!!!」

究極に"ダッサいネーミング"と裏腹に、
ヤクザの体に直接イミットゲイザーが叩き込まれる。
至近距離、いや、ネーミング通りの0距離で。
結果は言うまでもない。
ヤクザはイミゲと共に吹っ飛んだ。
いや、ぶっ飛んだ。

「たぁ〜まやぁ〜ッ・・・・と!どっんなもんだぃ!オイラまじ強っ!
 ハハッ!この強さ!やっぱオイラってスーパーヒーローじゃんねっ!チェチェ?」
「ウッキキー!」


チェスターの有無を言わさぬ戦い方。
効率もなにもない戦い方。



イスカはそれを見て、
呆れと感心が同時に起こる。

「相変わらず楽しんで戦う奴だな・・・・
 メッツと違う事は戦闘自体を楽しんでるというよりは、
 "敵を倒す"というヒーロー染みた楽しみ方なのがなんというか・・・・
 まぁ、ヒーローごっこを実演してしまうほど実力が伴っているからまたなんとも言えん・・・」

イスカは剣を鞘に入れたまま、
呆れたように傍観していた。

呆れるのも当然。
結局チェスターのせいで、
《昇竜会》まるまる相手にする結果となったのだ。

「おぅおうぅ!侍さんよぉ!」
「あんたもあのガキの仲間だろっ!」
「ならお前も死んでもらうぞ!」

数人のヤクザがイスカに言ってきた。
イスカは当然のようにため息をついた。

「ふぅ・・・とうとう拙者も巻き込まれたか・・・・」

「ゴチャゴチャ言ってんじゃねぇ!」
「俺様のポン刀の錆にしてやろうかっ!?」

刹那。
という言葉が適している。
いつ鞘から抜いたのか。
イスカは剣をヤクザの首元に突きつけていた。

「おい極道。お主"ポン刀"の意味を分かって使っておるのか?
 お主が持っているのはポンナイトの剣。意味が違う。馬鹿なのか?
 そしてなんなのだその剣は・・・・・お主本当に剣を使う者なのか?
 錆にしてやるもクソもすでに錆だらけではないか愚か者・・・・
 手入れはしておるのか?磨いてはおるのか?剣がそんなで、お主それでも剣士なのか?」

説教を垂れるイスカ。
女にいいように言われ、
ヤクザは剣を突きつけられている事も忘れ、怒り、
反論した。

「だ、だまれ女のクセに!剣なんか斬れりゃぁいいんだよっ!」

その言葉に、
イスカの表情が険しくなる。
理由は二つ。
それはイスカにとって重要な二つ。

「剣を持つことに性別なぞ関係なかろう!性別なぞいらぬ!
 そして分かった。お主は剣を愛していないな!?剣を愛さぬ者が・・・・・・剣を持つな!」

「うっせ!」

ヤクザは斬りかかろうとする。
が、異変に気付く。

「あ・・・れ?」

自分が持っていたはずの剣を・・・・・・・・・・持っていない。
そしてもう一つ気付く。
自分のポンナイトの剣は・・・・・すでにイスカの手の内にあった。

「い、いつの間に・・・・」

イスカはヤクザのポンナイトの剣を指でなぞりながら話し始める。

「本当に酷い剣だ。お主・・・・・これで斬られる者の気持ちを考えた事があるか?
 なぁぇえ?どうなのだ。ふん。ないだろうな。ないであろう。
 ならば・・・・・・・・代わりに拙者が教えてしんぜよう」

そのポンナイトの剣でイスカはヤクザをおもくそぶった斬る。
一刀両断。
ヤクザの体は肩口からざっくり切り開かれて地に倒れた。
あっけなさだけが残る。

「ふん。斬れ味が最悪だな。やはり酷い剣だ。そして持つ者もしかり・・・・か」

イスカはその剣を投げ捨てる。
剣はカランカランと地で鳴り響いた。

「てめぇ!よくも仲間を!」

「仲間?ほぉ。つまりお主も同族か。死にたいのだな?・・・・・"逆二戦斬"」

言うなりイスカはヤクザを蹴り飛ばす。
そして間を置かずセイキマツで一閃。
逆二戦斬。
つまりはウォーリアーダブルアタックの逆コンボ。
飛ぶ血しぶき。
無駄なく、それでいてそつがない。

「ふん。怒りでまたつまらぬものを斬ってしまった」

ヒュンッと剣の血をはらい、
カチンという音と共に、
イスカの剣は鞘に納められた。

「また一人やられたっ!」
「クソっ!野郎共!あの女侍もぶっ殺すぞ!」

チェスターばかりに集まっていたはずのヤクザだが、
いつの間にかその半数がイスカをも取り囲む。
その中心でイスカは、
鞘に手を据え、
片目だけつぶり、
スカして言う。

「ふん。こうなってはしょうがなかろう。拙者も戦わねばなるまい。
 まぁどうせお主らは、数日後に拙者ら《MD》の命とオブジェを狙いに来るはずであったのだから
 死んでも文句は言えぬであろう。どうせ死人に口無しだがな。
 拙者は人斬り。お望みとあればお主ら全員斬って斬って斬り伏せてやろう。
 さぁ・・・・・・・・・・・拙者に斬られたい奴はどいつだ!死にたい奴から返事しろっ!」

「こ、このっ!」

声を出した瞬間。
そのヤクザは真っ二つになっていた。

「次」

いつ抜いたかも分からぬ抜刀。
しかもイスカはすでに剣を鞘に納めていた。

「は、速っ!いつの間・・・ゴハッ!」

「次」

しゃべっている途中で両断されるヤクザ。
剣はまたイスカの鞘に納められた。
瞬速の居合い斬り。
その居合い斬りのスピードはカージナルをもすでにしのいでいるだろう。

さすがのヤクザ達も恐れおおのく。
誰一人言葉を発しず、
動かない。
当然だ。
そのどちらかの条件を満たしたとき、
イスカに真っ二つにされるのだから。

「ふん。情けないヤクザ共だな。それでもリュウの子飼いなのか?
 情けなさ過ぎて拙者がわざわざ斬るにも値しない。
 ・・・・・・・・おいチェスター!遊んでないで片付けてしまえ!」




声の先、
チェスター。

すでにチェスターの周りには20近くのヤクザが地に伏せていた。



「チェッ!もう終わりにするの?まってよイスカ!あと3人くらい遊んでからっ!」

「あ、遊ぶだとっ!」
「ヤクザ相手に小僧!遊戯のつもりか?!」

「そう。遊びだよーん♪」

言いながら、
チェスターは瞬時に相手に近づく、
そして拳による一撃。
それでヤクザは吹っ飛ぶ。

「よっと!」

突如チェスターは跳ぶ。
ムーンサルト。
空中をくるくると回転しながら舞う。
そして

「じゃぁん♪」

着地した場所は・・・・・
ヤクザの頭の上。
片手で逆立ちして着地した。

「やっ、このっ!」

当然ヤクザはもがく、
が、チェスターは頭の上で片手立ちしたままバランスを取る。
そして・・・・・・・
鈍い音。
逆立ちしていた片手。
それを勢い良くひねったのだ。
ヤクザの首は曲がってはいけない方へ曲がっている。
その後、
チェスターはもう一回跳んで地面に着地した。

「ラストッ!」

適当に選んだ一人のヤクザ。
そのヤクザの方へ走りこみ、
瞬時に後ろへ回り込むチェスター。
だが攻撃はしない。
掴む。
ヤクザの大事な大事な高い高い、
200万グロッドの黒スーツを両手で掴む。
そして全身に勢いをつけてヤクザごと空中へ放り投げた。

「わわわわっ!」

空中でじたばたするヤクザ。
空中故に何一つ身動きできない。

「んじゃバイビ♪」

チェスターは笑顔で手を振った後、
右手に気を溜める。
チェスターを相手にしてきたヤクザにはお馴染みの動作。

「どっかぁあああああん!」

空へ向けてイミットゲイザーを放つチェスター。
もちろん標的は宙に投げたヤクザ。
無情。
どうする事もできないヤクザは、
イミットゲイザーの餌食になって吹っ飛んだ。

「はぁ〜・・・遊びはこんなもんかな」
「ウキキ!」

チェスターは「ん〜!」と背伸びをする。
いい準備運動だった・・・という感じだ。

そしてジャンプ。
大きな跳躍。
着地地点はイスカの横。

「じゃぁ終わらせるかっ!あ、イスカァ。何点いくと思うぅ?」
「ふっ。また名響きの悪い技を使う気か」
「ケッ!ネーミングセンスの悪さならイスカだって負けてないっての!で、何点いくと思う?」
「ふん。10といったとこか」
「残念!15はいっちゃうよっ!」

チェスターは右拳に気を溜める。
いや、訂正。
両手に拳を溜める。
今まで右手のみでイミゲを放ってきたチェスター。
ここに来て両手で溜める。

「や、やばっ!とうとう両手でくるぞっ!」
「正攻法のイミットゲイザーだ!」
「気をつけろ!」

「ブッブー!」

チェスターは言いながらさらに溜める。
両手に気は溜まっていく。

「両手のイミットゲイザーってのは正解ジャン!だけど正しくは間違いジャン?」

気が溜め終わった。

「さぁ!オイラの活躍を見逃すな!目ん玉開いて食らいなぁっ!
 師匠直伝!イミットゲイザー伍式(ごしき)!!
 ゲイザー爆裂拳スペシャルゥ!!!どどどどどど!どっかぁぁああああんん!」

またもやダッサイネーミングと共に放たれたイミットゲイザー。
だが、普通のイミゲとは違う。
なにが違うかというと、
放たれたのは・・・・

イミットゲイザーの連射。

両拳の連打。
その両手からガトリングのように小規模のイミットゲイザーが放たれる。
まるでイミゲの連発ショットガン。いや、マシンガン。
ざっと20連射。
弾幕のように飛んでいく。

「ウッソ・・・」
「イミゲの連射なんてありかよ・・・・」

20発のイミットゲイザーは、
ヤクザ達に直撃。
一発だけ直撃した者もいれば、
三発ぶち込まれた可哀想なヤクザもいる。
計、13人ほどのヤクザが吹っ飛んだ。

「あっちゃ。15いかなかったジャン!
 まだまだこれの命中率よくないなぁ・・・ちっくしょー!!」

13のヤクザが地面に落ちた音がした時、
試合は終わっていた。

残ったヤクザ達。
《昇竜会》の本拠地故に、
途中、50からさらに増えていったヤクザだったが、
チェスターとイスカの手によって、
いや、最後の連発イミットゲイザーが決め手で
全員戦意喪失。

勝負あり・・・という他ない。

今さらこの二人に挑もうなんてヤクザはいない。


・・・・・
いや、

「どけどけぇ!お前ら。親っさんのお通りだ!」

一人、
いや、二人いた。

下っ端ヤクザ達をかきわけて叫んでいるのは、
赤いスーツのヤクザ。
若頭のタカヤ。
そしてその後ろを堂々と歩いている一際威厳のある男・・・・

リュウ=カクノウザン。


「あらら、騒がしいと思ってきてみりゃぁ・・・・あんたですかいイスカ嬢
 ここは花見席じゃぁねぇんでさぁ。少しおうびんにしてやくれやせんかねぇ
 ここはあっしの仕切り場でさぁ。郷に入っては郷に従えともいいやすでしょぅや
 ま、あんたにゃぁちと無理強いな話かもしれやせんがねぇ。・・・・おいタカ坊。火ぃ。」
「へい」

タカヤがリュウの口のタバコに火をつける。

そんな中、
一人盛り上がる男がいた。

「きったー!ラスボス登場!悪の親玉っ!うっおー!」

チェスターの拳で気がバゴンと破裂する。

「燃えるジャン」









                 






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