雨の中。
戦闘は佳境。

逃げてきたアレックスとロッキー。

そこに居たマリナと
ボロボロの女性マリン。

アレックス達を追ってきたルカとケティ。

役者は揃い踏み・・・・・といったところだ。


「マ、マリナさん!」
「マリナ〜!偶然だね〜〜」
「その女性は誰ですか?」

マリナはギターの銃口を突きつけていた。
その銃口の先には一人の女性。
女魔術師。
もうボロボロになっている所を見ると
マリナがもう倒した相手なんだろうとわかる。
よく見ると顔がマリナに似ている。
髪が短いがそっくりである。

「あぁ・・・その方が・・・・・・・・マリンさんですね・・・・・・・」
「・・・・・・・・」

マリンは返事をしなかった。
もうすでにマリナとの戦いで負けている。
もう死ぬだけの運命。
姉のマリナに殺されるだけの運命。
そこに横槍が飛んできた、そんな顔をしていた。

「そうよ。この子が私の妹のマリンよ」

そういうマリナの顔は・・・・・・・悲しい眼をしていた。


「あーもう!なんなんですの!?なんなんですの!?めんどうくさいですわ!
 なんでこんな時に"いらないもの"が増えるのかしら!
 わらわの狙いは最初からロコ・スタンプちゃんだけ!
 それ以外の人間なんてぜぇーんぶ要りませんことよ!」

ルカの照準がマリナとマリンの方へと移る。

「なんなんですの?この小娘二人は?《MD》のメンバーなんですの!??」

「そうよ、私が『Queen B』。文句あるの?」
「・・・・・私は違う。私は《メイジプール》の・・・・・・・・・」

「なんでもいいですわ!本当に《MD》には愚民が多いですわ!
 なんたって犯罪者の集まりなんてろくなもんじゃないですわ!
 そこのふざけた騎士といい!そこの汚らわしいアマといい!
 昔わらわの珍品をふっ飛ばしてくれた時計爆弾野郎といい!
 金と大事さも!気品も分かっちゃいない者ばかり!
 もう全部!全部殺しちゃいますわ!」

「・・・・・・・・・殺す?」

その言葉にマリンは立ち上がる。
ヨロヨロと・・・・
マリナとの戦いの後のせいで、
立ち上がるのがやっとといったところだが・・・・
ルカを睨んで言う。

「私を殺す?私はマリン。メイジプールのGM。『クーラ・シェイカー』のマリンよ」

体勢も整わないままフラフラと立つマリン。
エリート魔術師ギルド、《メイジプール》のGMの威厳。
そんなものはカケラもなかった。

「あら、雑巾のようにボロボロで死にそうな姿ですわ。あなたがメイジプールのGM?
 オホホホ、メイジプールも地に落ちましたわね」

「そう・・・・・たしかに私はお姉ちゃんに負けてもう死にそうよ・・・・・・・・
 だけどこんな私を殺していいのは"私を倒したお姉ちゃんだけ"・・・・・・
 素性もわからないし興味もない魔女なんかに殺されるわけにはいかないのよ」

マリンは右手を氷付けにする。
氷槍アイスランス。
魔力的にはギリギリなんとか・・・といったところだった。

「あら、愚かな。わらわを倒そうっていいますの?
 おかしな話ですわ。金・権力・名声・実力・・・・・・・どれをとってもわらわ以下のあなたが?
 所詮愚民風情ですのに・・・・・・よっぽど黒焦げになりたいみたいですわね」

魔女ルカは杖を構える。
モノボルトをいつでも落としてやる・・・・と。

「なによ!このマリナお嬢さんを抜いて何チャッチャと話続けてるのよ!
 あんねこの魔女アマ!私はマリンとだけ用があるの。これから大事な話とトドメがあったのよ?
 いきなり入ってきて話をゴチャゴチャさせないでくれる?
 それとも料理されたいの?ハンバーグ?そうね。グッチャグチャのミンチにしてあげるわ」

マリナはギターを構える。
マシンガンを放つ構え。

マリン・ルカ・マリナ。
三人の女性が睨み合う。


「ア、アレックス〜・・・なんか怖いんだけど〜・・・・」

ロッキーがアレックスの後ろに隠れながら言う。
アレックスも口元が引きつっていた。

「ぼ、僕も怖いですね・・・・・・・・・・。
 世界最高の魔術師ギルド《メイジプール》のGMのマリンさん・・・・
 世界最強ギルドの六大オフィサーの一人の魔女ルカさん・・・・・・・・
 世界最大級にぶっとんでるターミネーターマリナさん・・・・・
 はっきり言って世界の怖い女魔術師ベスト3って感じです・・・・・・・
 こういう時って女性は怖いです・・・・・近寄りがたい雰囲気というか・・・・
 最狂女性三人の核反応というか・・・・・・」

修羅場・・・・
といった言葉がアレックスによぎった。

「マリン」
「?」

マリナがマリンに向かって何かを投げた。
瓶。
透き通る青色の液体が入っている。

「マナリクシャ?」
「MP切れてるんでしょ?それであの魔女倒せると思ってるの?」
「お姉ちゃん・・・・」
「勘違いしないでねマリン。後であなたが私の手で死ぬのは代わりないのよ」

マリンはフッと笑った。
そしてマナリクシャを一気に飲み干し、
空瓶を投げ捨てた。

「お礼にもうちょっとだけ・・・・お姉ちゃんに大海(マリン)の恐ろしさを見せてあげるわ」

マリンが凍り付けの右手を上空へ向ける。

「お姉ちゃんにはさっきも言ったけど・・・・・・・
 雨なんて海にとっては小さな存在。海に浸み込んでいくだけの些細な問題。
 そう、海は雨を支配する者!雨も私の力!大海の手に落ちる天の恵み!!!」

アレックスは上空へ目をやる。
今もなお振り続ける大雨。
だが、
違和感に気付く、
雨に変化が起こっている。
水が凝固していっている。
みぞれ?
いや、まだ変化する。
さらに固く、
さらに冷たく。
それは・・・・・・・・・小さな雹(ひょう)?
いや!違う!

「ロッキー君!離れますよ!!」
「え?」

アレックスはロッキーを抱えて離れる。
そしてマリンは叫ぶ。

「私の"コレ"はフローズンシャワーより強いわよ?
 万物に恵みの裁きを降り注げ!!!!アイシクルレイン!!!!!」

雨の粒は、氷の粒・・・・・雹(ひょう)も通り抜け、
一つ一つがツララへと変貌する。
それは小さな小さな槍。
雨の大きさの、爪楊枝のような小さな氷のツララ。
そして・・・・・・・・・降り注ぐ。

「チッ、こんな低レベルスペル!」

が、強力。
無数という名の大多数。
降り注ぐ小さなツララの雨あられ。

ルカは両手とホウキでガードする。
が、無理。
防御しきれない。
雨を二つの手で防げる者などいない。
隙間からルカの全身へと小さなツララが降り注いだ。

「降り注ぐ海(スコール)のお味はどうかしら? 
 私、『クーラ・シェイカー』は肝まで冷やすわよ」

降り止んだアイシクルレイン。
ルカは・・・・・・・
血だらけだった。

「愚民のくせにヤボなことをしますわね・・・・」

ダメージは・・・・中・・・といったところだ。
攻撃力自体はいまいちだったようだ。
雨程度の大きさのアイシクルレイン。
浅い。
さらにルカのローブ。
魔女特有のローブだろうが、
なかなかに魔法耐性が高いようだ。
世界一の富豪が着ているにはみすぼらしいと思ったが、
それ相応。
なかなかいい品のようだ。
恐らく珍品。
魔女服の光服。

「たしかに面白い攻撃でしたわ。ダメージは少ないけどガードしようがない。
 もし全快ならこれを受け続けるだけでアウトだったかもしれませんわ
 さすが・・・・《メイジプール》のGMとだけお褒めしてあげますわ
 で・す・け・ど・・・・・・・・・・それでも愚民に違いない!死んでおしまい!!!
 我、望みしは自ら下した判への助力、それは天罰の力、それは愚民には眩しき光の裁き!
 神よ力を貸したまへ、そして雲を刺し殺し、地を貫きたまへ!降り注げ!クロスモノボルト!!!」

ルカが振り上げたホウキ。
と同時に唸る雨雲。
いや、雷雲。
そして直滑降に落ちる・・・・カミナリの群れ。

「ヤバそうねお姉ちゃん」
「たしかに・・・・・・でもわたしは料理人。料理されるのは勘弁だわ!」

マリナは咄嗟にフラフラのマリンを押して逃げる。
数本のカミナリが無差別に地に落ちた。
落ちる。
まるで逆モグラ叩き。
あっちかと思うとこっちに
こっちかと思うとあっちに
落ちまくるモノボルト。

「マリナさん!チャンスは攻撃の合間です!
 高レベルなスペルは詠唱に時間がかかります!!!」

アレックスが叫ぶ。
だが、

「どこにっ!合間がっ!あるのよっ!!!」

マリナは空から降り注ぐカミナリを必死に避ける。
それは降り止まないカミナリ。
合間なく、
落ちては次の瞬間落ちる雷。
それはまるで・・・
たった今降り続いている雨と同じ。
雨のように絶え間なく降り続けるモノボルト。
これでは攻撃に移れない。

おかしい・・・・・・・と
アレックスは単純に思う。
ルカはたしかに物凄い魔術師だ。
それはそう。
ルカは六銃士(リヴァルヴァーナンバーズ)のNo.5。
世界最強ギルドの六大オフィサーの一人なのだから。
だが、
それとこれとは別。
どれだけ物凄いモノボルトを放てようとも、
呪文の詠唱は必須。
よってモノボルトを落とし続けることなんて不可。
が、・・・・している。

思い出すとG-Uで終われている時も絶え間ない雷を放っていた。
何故・・・・

「あっ!」

アレックスはハッする。

「もしかして・・・・・・・・・・」

試してみる価値はある。
いや、多分間違いない。
アレックスは気付くと十時を描いていた。
パージフレアの動作。
そして指を刺す。
ルカの方を。

「アハハハ!わらわがお前の警戒を怠っていると思ってますの!?」

ルカはマリナとマリンを攻撃しながらも、
アレックスとロッキーを警戒していたようだ。
さすが・・・という他ない。
そしてすぐさまパージを避けようとした。

「?」

だが、
ルカの足元にパージの魔方陣は現れていなかった。
当然。
そう、
アレックスの狙いはルカではない。

「うぎゃああああああああああ」

悲鳴があがる。
その声。
その声をあげたのは・・・・・・・・・・
ケティのピエトロ。

「熱い!燃える!燃えるぅうう!」

ケティは地面をゴロゴロと転がり、
聖なるパージを消そうとする。
・・・・人語をしゃべりながら。

「あの猫!ひとの言葉しゃべってる〜!」
「何?あのケティ・・・人間なの?」
「・・・・・・・・・・そういう事です」

「クソォ!」

ルカの表情が鋭くなる。
紫色の唇を噛み、眉間にしわを寄せる。

「いつから気付いてたんですの?!」

「・・・・・・・一人ではモノボルトを絶え間なく撃つ事は不可能です
 なら、単純にもう一人いると考えただけですよ
 二人がかりで交互に詠唱していけば・・・・モノボルトを絶え間なく撃つ事は可能です」
「猫も魔法使ってたの〜?本当は人間だったからか〜
 あっ!だからぼくもあの猫の言葉が読みづらかったんだね〜」
「そういうことです」

「チッ、まるでわらわのミスみたいなってしまったではないの!!」

ルカは満身創痍のケティを蹴飛ばす。

「にゃ、にゃぁん!」
「今更ケティぶっても無駄ですわ!さっさとわらわの前から消えなさい!」

ケティのピエトロは・・・・
しぶしぶ後ずさりをする。

「消えろと言ってるんですわ!」

その声にビクリとしたあと、
ケティのピエトロはたったと逃げていった。
猫の後ろ姿は見えなくなった。
そして落ち着きを取り戻してルカはアレックスへ言う。

「正解ですわ・・・・・・・あのケティは人間。
 わらわの珍品コレクションのひとつ。"無限変スク"の実験台に使った人間ですわ」

無限変スク・・・。
ペ天使アンジェロも使ってたアレか・・・・
使ったらもう戻れない。
本来のお楽しみアイテムとは遠く離れた悪魔のようなアイテム。

「たしかにこれで連発はできなくなりましたわ・・・・・・・・・
 けど!わらわのモノボルトが封印されたわけではない!
 連続で撃てなくなっただけですわ!食らいなさい!」

ルカがクロスモノボルトの詠唱を始める。
そしてホウキを振り上げる。

「黒焦げになっちゃいなさい!!」

落ちる雷鳴。
落ちる雷光。
9本の雷。
クロスモノボルトが落ちる、
が、

「なんですの・・・・・」

マリナとマリンを狙ったクロスモノボルト。
だが、二人の周りに落ちた雷だけ、
まるで避けるようにして落ちる。
いや、
避けたのではない。
なにかに引き込まれるように・・・・・・・・

「全力・・・・・・・・アイスランス」

そこにあったのは馬鹿でかいアイスランス。
天へと・・・・・・・上へと向いた氷槍。
ツララ・・・というよりはもう、ひとつの大木。
氷で出来た長い大木。

そう、氷でできた避雷針だ。

「これでもう・・・当分カミナリは通用しないわ」

「ぐ、愚民のくせに!!いいですわ!あなた方は後回し!
 そちらの騎士とロコ・スタンプちゃんを先に・・・・・・・・・」

ルカは振り向く。
アレックスたちの方を。
だが、そこには笑顔のアレックスがいた。
そう、"アレックスがいた"

「ロコ・スタンプちゃんは・・・・・・ロコ・スタンプちゃんはどこにいったんですの!!!?」
「さぁ?」
「ふざけるのはおよし!」
「今日はいい天気ですね」
「ふざけるなって言ってるんですわ!」
「ふざけてないですよ。いい天気だって言ったんです。
 雨が降るわ。ツララが振るわ。雷が降るわ。もうなんでもありですよね。
 そういった天災っていうのは神様の天罰だって聞いたことがあります
 ま、言いたいことはですね・・・・・・・・・・・・・"天罰が核爆弾の時もありますよ"ってことです」

ルカはハッと思い、
天を見上げる。
降り注いでくる雨。
その雨の隙間。
上空。
薄っすらと見える影。
もちろんそれは・・・・・・・

「てぇ〜んばぁぁぁぁ〜〜〜〜つ!!!!!」

核弾頭(ロッキー)

「なっ!?」

ルカがホウキを持つ手を動かそうとする。
が、何も間に合わない。
詠唱時間もない。
いや、ホウキで防御。
それさえも間に合わない。

カプハンを振り落としながら落ちてくるロッキー。
それは流星。
いや、それはもう爆裂隕石(メテオ)
その急降下爆弾が・・・・・・・

「わらわが愚民達ごときにぃいいいいいいいい!!!!」

炸裂。
直撃。
爆発を起こすカプハン。
バーストウェーブの大爆発。
ぬかるんだ地面が弾け上がる。
ルカを中心に、
そこら一体をぶっ飛ばした。
その表現が適切だ。

そして・・・
静かになった。
勝負アリ、
というしかない。

「やった〜!」

ロッキーはイヒヒと笑いながら
アレックスにビシっ!と親指を立てる。
アレックスは返事をするように親指をビシっと立て返した。


「終わったわね・・・・・・お姉ちゃん」

マリンはその場に膝を着いた。
さきほどマリナにやられた時からダメージは癒えていないのだ。
動いていたことの方が不思議なくらいである。

「えぇ、でも私達の話は終わってないわ」

マリナは再び・・・・
マリンにギターの銃口を向けた。
マリンはそれに動じなかった。

「最後に・・・・ちょっとだけお話をしましょ。お姉ちゃん」
「聞くわ」

その言葉にマリンはフッと笑い。
そして話を続けた。

「私のギルドに・・・・・・・・・・・ルー&ライス兄弟ってのがいたわ」
「は?」
「仲のいい兄弟でね。男同士だってのにいっつも一緒にいるのよ
 ほんとあんた達ホモ?ってなぐらいにね・・・・・・・・」

マリンは尻餅をついた。
雨で泥だらけの地面に。
まだ話を続ける。

「それであの兄弟は自慢げに言うわけよ・・・・・・・・
 "俺達はお互いたった一人しかない兄弟が近くにいて幸せだぜ"ってね
 フッ、おかしいでしょ?殺すのも躊躇しない兄弟がそんな事を言うのよ?
 "兄弟っていうのは誰にでもいるわけじゃないんだから"・・・・ってさ
 私は思ったわよ。姉妹がいるのに幸せじゃない私がここにいるわ・・・って」
「・・・・・・・・・・・」
「あの兄弟は小さい頃から一緒に魔法の勉強をしてきたって自慢してたわ
 "GMにも姉がいるなら同じだろ?"って聞いてくるの」
「アハハ、間逆じゃんね」

マリナが笑った。
マリンも笑った。

「でもね・・・・・・・・」

「でも死ねぇえええ!!!!」

突然の声。
それはルカの声。
まだ息があったのだ。
ボロッボロの布切れのような瀕死状態で。

そして上空から唸る音。
モノボルト。

それは・・・・マリンへと落ちた。

「な・・・・・・・・」

マリナは目の前に突然落ちた雷に・・・言葉も出ない。
突然妹の上に落ちた雷。
自然にこみ上げるのは・・・・怒り。

「何やってんだテメェエエエエエ!!」

マリナがルカの方へと突っ込む。
額に血管を浮き上がらせ、
ルカはマリナが来る前に
自分からバタンと血に倒れた。
それほどのダメージを受けていた。
今のモノボルトは最後の力で出しただけのもの。
だが今のマリナにそんな事は関係ない。
地面に伏せったルカに・・・・。
ギターを叩きつける。
叩きつける。
何度も。
何度も何度も。

「マリンを殺すのはっ!マリンを殺すのは私だって言ったでしょうがぁぁぁあ!」

我を忘れているマリナ。
ルカの息が完全になくなっても、
何度も何度も。
ギターで殴る。

「いいの・・・お姉ちゃん」

同じく地面に倒れ伏せっているマリン。
マリナは手を止め、
そちらを向く。
そしてギターを引きずり、
マリンに近寄る。

「話の・・・・・続き・・・・・・・」

マリナはマリンの手を握った。

「私は・・・お姉ちゃんと・・・・一緒に修行もしたことがない・・・・・
 それどころか・・・・・・・・思い出もない・・・・・・・
 シャル家の皆は・・・・優等生の私と・・・・劣等性のお姉ちゃんを区別するようにしてたから・・・
 ・・・・・・・一緒に遊んだ記憶も・・・・・・・・話した記憶も・・・・・・・・・ない・・・・・
 だから・・・・・・・どちらかというと・・・・何の感情もない・・・・他人・・・・・・・
 お姉ちゃんの事を・・・・・・・・好きか・・・・・と聞かれたら・・・・・・・別に好きじゃない・・・・・・
 嫌いか・・・・・・・と聞かれたら・・・・・・・・別に嫌いでもない・・・・・・・
 でも・・・・今更だけど・・・・どうせ死ぬんだし・・・・・・・最後にクサい事を言わせて・・・・・・・・」

マリンの口からは血が流れ続ける。
そしてその口から言葉も漏れるように発せられる。
マリナに向けて。

「多分・・・・・・"好きになりたかった"・・・・・・・・・・だって・・・・・・・・
 私は・・・・・・産まれた瞬間・・・・・・・・・娘じゃなくて・・・・妹の称号をもらって産まれたんだから・・・・・」

マリンは血を吐いた。
吐いた血は流れ、
雨で水浸しの地面に溶けていった。

「さ、殺して・・・・・さっきも言ったけど・・・・・お姉ちゃんに殺されたい・・・・・・・・・・」

マリナは無言でギターをマリンの額に付ける。
すぐには撃てなかった。
全ては今更だが・・・・・・・・

だが・・・・・・
マリナも決心していた。
気持ちは揺るがない。
そして、

銃弾を撃とうとした。

「あぁ・・・・・・・・次は・・・・・・お姉ちゃんのお姉ちゃんに生まれますように・・・・・・・」

その言葉を最後に、
マリンは息を引き取った。


マリナは・・・・

ただただマリンの死体を見つめていた。

「撃たなかったんですね・・・・・・」

アレックスがマリナに言う。

「撃てなかった・・・・のよ。自分で戦って・・・酷い目にあわせといて・・・・無責任な話よね」
「無責任じゃないですよ」
「・・・?」
「戦わなければ・・・・いつまでも他人だったでしょう
 けど、戦ったからこそ姉妹の絆ができた・・・・・・・・・皮肉ですけどね」
「そうね・・・・・・・・・・言うならば"世知辛い"って奴だわ・・・・・・」


マリナはマリンの死体を背負う。

「・・・・・・・埋葬するんですか」
「うん。実家に持ってくわ・・・・」
「そうですか」

アレックスはマリナの顔を見る。
表情を見る。
目を・・・・・・・見る。
濡れた目を。

「マリナさん・・・・・・」
「・・・・・・ただの・・・・・・雨よ・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・そうですか・・・・・・」




雨だけが降り止まなかった。

それはこの空間全てに降り注ぐ涙のようだった。

まるで海。


万物の源である海がこの空間全てに形成されているような・・・・・・

万物の源・・・・
命が生まれた場所。
それが海。

・・・・・・・・天国(アスガルド)にも海があるらしい。

本当かどうかは分からないが、
天の川という言葉もある。

だが空の海、
それが本当なら、

雨はそれが落とした結晶。
そう、その一粒一粒が命の結晶かもしれない。

その二粒が・・・・
同じ屋根の下に落ちた。

二年ずれてはじけた二つ雨粒は
"姉"と"妹"と呼ばれるようになった。

だが、二つの小さな雨(海)は、
分かり合うことなく、
片方はまた天へと帰っていった。

そんな悲しい物語。

いや、最後の最後に分かり合ったのかもしれない。

何故なら


姉の目から今、
雨が流れ落ちているのだから



















                 






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