「雲行きが怪しくなってきたな」
「・・・・戦(いくさ)のか?」
「そんなわけないだろう。空のだ」

三騎士は空を見上げる。
青い空が灰色の雲に侵略されつつあった。

「雨が降りそうだな」
「・・・・・・・・・あぁ・・・・・あの日を思い出す。ノカンと戦ったあの日を・・・・」
「カプリコ兵達を退却させよう。後片付けは我らだけでどうにでもなる
 あとはロッキーの連れてきたあいつら次第だ。あいつらがGMだけ倒してくれれば・・・・」
「他人に運命を委ねるというのは・・・・・嫌なものだな」
「しゃぁねぇだろ。カプリコの運命のためだ」
「・・・・・・・・・その運命を握っているあの人間達は・・・・うまくやっているだろうか・・・・」
「さぁな」
「いや、ロッキーはあれで見る目がある。あの者たちはきっとやってくれるだろうさ」
















「うそだろ!?ありえねぇありえねぇありえねぇ!!」

ドジャーは一人ジタバタと叫ぶ。
そう。
スオミの森の一角。
いや、一角なのか?
ドジャーは一人、絶望を感じていた。
まさに体も浮く思い。

何せ、彼は宙にいるのだから。
そして落ちているのだから

「なんでこんなとこにテレポートすんだよ!」

ドジャーがテレポートした場所。
そこは・・・・
ニミュ湖の上空。
そう空中。
着地地点としては大はずれと言ったところだ。
なにせ着"地"でないのだから。

「くそったれ!」

空中で手をかくドジャー。
だがそれで落下が止まる訳がなく、
ドジャーは無残に湖へ落ちていく。

そして大きな水しぶきをあげて、
ドジャーはニミュ湖に池ポチャした。

ニミュ湖の一つの面に、
ブクブクと泡がたちのぼった。

(くそ・・・・俺は泳ぎに来たんじゃねぇぞ・・・・)














「あいたたた・・・・体は商売道具なのに・・・・困ったもんだわ」

マリナは腰をさすりながら立ち上がる。
そして「年かしら」と自分で思ったことに激しく嫌悪した。

何の変哲もないスオミの森の一角。
さきほどまでいた場所と違う場所なのかも分からない。
そんなありふれたスオミの森の一角。
マリナはそんな場所にテレポートした。
まず方角だけでもと思い、マリナは空を見上げた。

「雨が降りそうね・・・・」

灰色の雲をみてマリナは言う。
そして視点を元に戻した。
木の少ないスオミの森。
ありふれた光景。
だがこの光景の中で、ひとつ違うことがあった。

そこには一人の女魔術師が立っていた。

《メイジプール》の人間だという事は分かった。
そしてかなり上位の人間であることも。
当然だった。

マリナがニコりと笑って一言言う。

「大きくなったわね・・・・マリン」



















「道もわからなーい!方角もわからなーい!しかもお腹がすいたー!
 あぁ神様!僕に死ねとでも言うんですか!もう全部ドジャーさんのせいだ!」

ドジャーの責任など何一つないが
アレックスは一人なのをいいことに好き放題言う。
まぁだが文句を言いたいのも頷けるといえば頷ける。
突然ハンマーで吹っ飛ばされ。
さらにテレポートした先は右も左も分からない。
敵の一人でも見つかればまだマシなのだが・・・・・人影はない。
そしておなかが減っているのである。
この点に至ってはアレックスにとっては致命的といえよう。

アレックスはフラリと空を見上げた。
雨雲と思われしきものが空一面を覆い隠していた。

「雨でも降るんだろうなぁ・・・
 でも今は雨よりおいしい食べ物でも降ってきてくれればいいのに・・・・」

アレックスは
どうせならチキンドリアが降ってこればいいのに・・・・と
そんなわけの分からない幻想を浮かべながら、空を見上げていた。
チキンドリアが降ってきたら世界は大惨事である。
雨よりも先に、妄想でアレックスの涎が地に降り注いだ。

と、
何かが空に・・・・

「なんだろあれ・・・・」

・・・・・・・?
え!?
落ちてくる!?

それは何か分からなかった。
咄嗟に身構えた。
敵は魔法使いばかりのこの戦場。
そんな戦場で落ちてくるもの。
雨でもなければ・・・
メテオとかそういった魔法か何かかもしれないのだ。

だが・・・・
それともまた違うようだ。
雨でもなく、
魔法でもない。
じゃぁなんなんだ・・・・

・・・・・・・まさか!!

「チキンドリアか!?」

アレックスの叫び声と共に。
その何かがアレックスに直撃した。

残念ながらチキンドリアではなかった。
ムギュっとアレックスを押しつぶしたソレ。
ソレは立ち上がり。
外れたウルフキャップをかぶりなおした。

「あれ〜?アレックスだ〜」

それはロッキーだった。
ロッキーはピョコンと立ち上がり。
そしてすぐ近くに落ちたカプリコハンマーを拾った。
アレックスも鼻血の出ている鼻にヒールをかけながら立ち上がった。

「ロッキー君じゃないですか・・・・なんで空から
 今日の天気予報は"雨のちロッキー"でしたっけ?」
「ただ〜テレポートした場所が高かっただけだよぉ〜」

ロッキーがそういいながら小さな指で空を指差した。

結構高いとこから落ちてきていたけど・・・・
下に僕がいなかったら大変だったんじゃ・・・・

だが結果的に大変だったのはアレックスだけである。
アレックスは自分の運無き人生を哀れんだ。

「まぁでも落ちてきたのがメッツさんじゃなくてよかったですよ・・・・
 もしメッツさんだったら僕はたぶんハムみたいにペシャンコに・・・・」
「そうだった〜!メッツが大変なんだよ〜!」
「・・・・・?メッツさんが大変?」

アレックスは少し考えた後、
ロッキーに返事を返した。

「そんな状況思いつきませんけど・・・・・
 どっちかっていうとメッツさんと戦う相手が大変だと思いますよ?」
「ん〜・・・・そうかも〜!!」















「オーラァ!!俺を苦しませてくれる奴ぁいねぇのかコラァ!?」

魔術師の死体が五体。
斧で真っ二つにされた状態で転がっていた。

「くっそ強ぇ・・・」
「化け物かあいつ・・・・」

数十人VSメッツ一人。
どう考えてもメッツにとって不利なのだが。
実際はそうではなかった。
それは魔術師達自身も、
メッツ自身も分かっている事だった。

「魔法を撃てるもんなら撃ってきやがれ!ガハハ!」

小さい頃から対大人数に慣れているメッツ。
魔術師達が魔法をやたらに撃てないのは分かっていた。
魔法というのは攻撃範囲があまりに大きい。
簡単に言うとつまり・・・一辺に使うと仲間に当たってしまうのだ。
魔法の効果範囲の大きさが大人数ではあだになる。
仲間同士でバゴーンドゴーン。
魔術師同士の同士討ちの可能性が大なのだ。
同士討ちを恐れ、ランクの低いスペルを使う魔術師達。
だがそんなもんはメッツには花火大会同然。
その結果が魔術師5人の死体として残っている。

「あんた達下がっちゃえみたいな〜?」

ジャグルヘダーをかぶった女魔術師・デリコが言う。
魔術師達はデリコの言うとおり後ろに下がった。

「一辺に戦うのがチョベリバなら〜。1・1で戦うのがチョベリグみたいな〜?
 別に皆でかからなくてもわたC達がこんな知能レベルの低いゴリラに負けるわけないC〜」

デリコは自分の体をフワッと浮かしながら言った。
タイマンなら全力で魔法が使えると踏み、
メッツに一対一をうながした。

「タイマンか?ガハハ!そりゃ面白ぇ!それならオメェらも思いっきり魔法が使えるってもんだな!」

メッツは口にくわえたタバコが根元まで燃えた事に気付いてプッと吐き捨てた。
っそして新しいタバコを出してまた火をつける。

「ふぅ〜・・・。っとそういやなんでオメェは浮けるんだ?」

メッツはデリコに聞く。
普通はそんな事聞かない。いや、聞けない。
手品師に「んで?種はなんなん?」と聞くようなものだ。
だがメッツの単細胞な性格は口にそのまま疑問が発せられる。

「普通それ聞く〜?マジおかC〜C〜。でもま。デリコが負けるわけないC〜
 教えてあげなくもなくなくないみたいな〜?」
「どっちなんだ・・・・」
「教えてあげるC〜♪」

デリコは突然指をクイッとあげる。
すると一個の小石が宙に浮いた。

「サイコキネシスって知ってる〜?超能力ってやつ〜。ま、それみたいな〜?
 でも不思議とかじゃないC〜。これ魔術師のスペルだC〜」
「んあ?そんなスペルあったか?」
「あるC〜」

デリコは今度は両手の手首を丸々グイっとあげる。
するとまわりの数十個の小石がヒュンと宙に浮いた。
デリコの周りで浮かぶ数十個の小石。
デリコが両手をメッツに向けて突き出した。
すると・・・・
小石達がメッツに向かって飛んできた。

「うぉ!?」

メッツは咄嗟に両手でガードする。
メッツにぶつかる小石の石つぶて。
ベシベシと当たってまた地に落ちた。

「周囲の小石を対象にぶつけるスペル〜。"スプレットサンド"みたいな〜?
 有名じゃぁ〜ん?これってナウでヤングな初心者魔術師にバカウケ〜?
 そんでもって〜・・・・・」

デリコがまた両手首をグイっとあげる。
すると今度は一つの大きめの石・・・・いや、岩まで宙に浮かび上がった。

「進化系のスペルの"メガスプレッドサンド"〜。修行と魔力次第でなんでも持ち上がるC〜
 もちろん応用すればわたC自身だって簡単に浮かび上がるみたいな〜?」

デリコの超能力の正体は全てスプレッドサンド。
明かしてみればポピュラーのスペルである。
まぁ少し考えればモノを自由にコントロールするぐらいの事は、
魔術師にとって至極簡単なのだ。

「なんじゃそりゃ。ま、どんなトリックも種がわかりゃぁたいしたこたぁねぇよな」
「あんたみたいな頭の悪いゴリラにそんな事言われるとマジむかつき〜。潰れちゃえみたいな〜?」

そう言うなり。
デリコは浮かべた岩をメッツに放ってきた。
魔力の力。
女の力では飛んでくるはずのない岩がメッツに飛んでくる。

「こんなもんで・・・・・俺が潰れるかコラァ!!!」

メッツがグレートアックスを振り下ろす。
すると岩は真っ二つ割れ・・・・・いや砕かれた。
破片が飛び散り、メッツの周りに無残に散乱した。

「チョベリバ〜・・・・・やっぱゴリラって野蛮だC〜・・・・・」
「ガハハ!野蛮で上等だコラァ!それに俺だって魔法使えるんだぜ?」
「チョベリバ。出来るわけないC〜」
「んじゃ見てろよ!」

メッツは言うなり、砕かれた岩の一片を拾い上げる。
岩の破片。つまりただの石ころだ。
メッツはそれをしっかり握り締め、
持ったまま振りかぶる。

「これが俺流スプレッドサンドだラァァァ!!」

思いっきり投げつけた。
石を。
魔法もクソも
石ころによるのただの150km/h剛速球である。

「・・・・・マジアホだC〜・・・・」

その石はデリコの目の前でピタリと止まる。
デリコのスプレッドサンド(サイコキネシス)の前ではそんなものは無意味だった。

「んじゃこれならどうだ!」

メッツはもう一度振りかぶる。
そして・・・・溜める。
溜める溜める溜める。
力を。
まるでカタパルトのように力を溜めに溜める。

「俺流メガスプレッドサンドぉだぁああ!!」

そして・・・・・放った。

今回もただの150lm/hの剛速球。
ただの・・・・・・・・数十キロのグレートアックスのだ。

「チョ!チョベリ・・・・・」

デリコは両手を前に突き出す。
全力のスプレットサンドで斧を止めようとする。

デリコは数十キロの岩を浮かすことができる。
飛ばすことが出来る。
40キロの自分の体を浮かすこともできる。
そのまま宙を移動することさえできる。
簡単に言えばスプレットサンドのエキスパート中のエキスパート。
重いものだろうとデリコの思いのままに動かせる。
もちろんグレートアックスだろうと
浮かすも飛ばすも思いのままなのだ。

だが・・・・それが大砲のようにこちらに飛んでくるのなら話は別だった。
"重量×速度"
その簡単な公式で表される最悪の攻撃力は、
デリコの力を簡単に超えていた。

斧はデリコの横腹を思いっきりかっさばいた。
飛び散る血しぶき。
一撃必殺。
あまりにあっけないその一幕には、
その言葉ひとつで十分だった。

斧は大木にぶっ刺さって止まった。
当然、その斧(トマホーク)を受けて大木はメシメシと倒れ去った。

「オラどけどけ!斧を拾うからよぉ!」

メッツは堂々と投げた斧に向かって歩く。
デリコの死体の側を通り過ぎ、
横にいた他の魔術師を手をどかし、
そして斧を拾った。

「ば、化け物め!」
「クソォ!どぉすんだよ!?」
「き、決まってんだろ!やるしかねぇ!」
「や、やるったってどうすんだ!?こんな化け物とタイマンしろってのか!?」
「アホか!全員でやるんだよ!この際仲間に魔法が当たったってしゃぁーねぇよ!
 この化け物と一人づつ戦ってたら全滅に決まってる!全員で一斉に魔法を撃ちこむんだ!」

魔術師達はステッキ・オーブ・・・・各々の武器を構える。
数十人の魔術師全員がメッツに向かってだ。

「うぉ!そりゃやべぇぜ。この俺でもそんな事されたらどうしようもねぇな」

メッツはドレッドヘアーをポリポリとかいた。
どうしようもないというのは本当だ。
ここら一帯にまるまる数十という魔法を放たれたら、
逃げ場もクソもない。
彼らも魔術師のエリート。
ハンパではないだろう。
もうどうしようもないのだ。

メッツは考えた。
というか悩んだ。
だが「ん〜」と少し考えた後、
何かを心に決めたのか。
大きなため息をひとつ吐いた。

「あ〜あ・・・・つまんねぇ時間になりそうだぜ。
 戦闘は楽しむからいいのによぉ。コレ使ったら楽しめねぇんだぜ?
 ・・・でもま。死ぬわけにも負けるわけにもいかねぇもんな。ったくクソッタレだぜコラァ!」

メッツは懐からひとつのタバコの箱を取り出す。
そしてそこから三本のタバコを取り出した。
箱に書いてある文字。
"バーサーカー"

「ガハハ!俺にコレを使わせるってのは光栄に思うべきだぜ?何にしろ俺を追い詰めたって事だからな!
 ま、だが結果としてはオメェらは死んじまうなぁ。残念だった・・・としかかける言葉はねぇよ
 同情するぜ。生き残る可能性が限りなく"0"なんだからな。ま、オメェらが悪いんだぜ?」

メッツはタバコをくわえ、
火をつける。

「フゥ〜・・・・・・あぁ・・・・もう俺を止められねぇ。お前らでも・・・・・俺自身でもな!
 もう呪文を唱える意味はねぇぞ!かわりに念仏を唱えな!
 そうすりゃ一つだけ学習できるだろうよ!こんな時にも助けてくれる神なんていねぇってことにな!
 さぁてメッツ様から死をプレゼントだ!生涯に一回のご褒美だ!噛み締めろよ!
 敗北を!恐怖を!血を!肉を!骨を・・・痛みを・・・・かなシみを・・・・・つメタさヲ・・・・・
 ヤルよ・・・・アゲうを・・・・・ヲれが・・・・・・・・死・・・・・シシ詩しシしぃをぉおヲおオォお!!!!!」

叫び声が響く。
そして唸る。
その声は猛獣のごとくスオミの森に響き渡る。

メッツは変貌した。
狂気中毒者(バーサーカー)に。
憤怒中毒者(バーサーカー)に。
殺戮中毒者(バーサーカー)に。

目の照準があわない。
口にしまりがなく、ダランと怪しい笑みでゆるんでいる。
頭は傾き、
斧を持った両手もダランとぶら下がるような状態。
まるで人間であったことを忘れたような立たずまい。

「あへ・・・・あへらが・・・・あ゙ああはああああああああ!!!」

メッツがさらに叫ぶ。

その声に魔術師達は恐怖した。

「な、なんだアレ!?どうなったんだ!?」
「この症状・・・・・まさか!?アレだ!!あのタバコの副作用だ!!!
 "???薬"の中に麻薬に近い種があると聞いたことがある!」
「《昇竜会》のヤクザどもが流してるヤクか!?」
「つまりこの戦士はトチ狂っちまった・・・・と」
「だが、"???薬"ってことは能力はアップしてるってことだ!」
「や、やべぇ!う、うちこめ!魔法をだ!ありったけの魔力で!」
「全員!急げ!」

魔術師達が全員呪文の詠唱を始める。
詠唱が必要な呪文。
つまり全ての魔術師が高位レベルのスペルを放つという事。
腐っても世界最高の魔道ギルド《メイジプール》
魔術師の中でもエリート達の集まりだ。
その者達による最大級のスペル。
それがどういう事か。
天災に近い規模の被害が発生するということだ。

だが狂気のメッツにはそんな事考える頭はない。
ただヨダレをたらしながら、キョロキョロとしていた。
そんな間に魔術師達の詠唱が終わる。

「うてぇええええええええ!!!!」

一人の魔術師の言葉と共に。
高位のスペルが乱れ撃ち。
ビッグフレアバースト。
ハリケーンバイン。
クロスモノボルトにメテオ。
そんな特大級のスペルが一点。
メッツという一点に向かって放たれた。

そして炸裂した。

その衝撃はすさまじかった。
近くにあった岩を、木を吹っ飛ばし、
魔術師達自身も数名吹っ飛ばされた。

当然だ。
この規模。
魔術師同士への被害も大きかった。

スペルの後。
着弾点に立ち上る特大の煙。
えぐれた地面。
倒れ果てた木々。
息をしない魔術師十数名。

「や、やったか?」

煙が晴れる。
そして着弾点。
煙の晴れた着弾点は跡形も無かった。
ガッタガタに崩れた地面だけ。

「おっしゃぁ粉々だぜ!!」
「当然だろうがよ。世界最高級の魔術師がここに集まってんだぞ」
「だがチクショウ!今ので味方もかなり犠牲にしちまった!」
「しゃぁねぇよ。そうしなきゃヤバい相手だった」
「あぁ。結果の問題だ」
「だが斧まで無いのは少し気になるな。破片くらい残っててもいいのによ」

魔術師の一人が着弾点まで歩み寄る。

「おいおいジョーイ。お前も几帳面だな」
「死んだに決まってんだろ?」
「クイックスペル(高速詠唱)ならお手の物っつー『早口』ジョーイも地に落ちたか?」
「ハハハっ!違いねぇや!」
「うっせ!お前ら!念には念をってやつだ。エリートなら確認は怠らないに限る」

魔法の着弾点の地面がガタガタだった。
ひび割れで地面はイビツな形状になっていた。

ジョーイが地面のひび割れに触れようとする・・・・・・
その時
その地面のひび割れから太い腕が勢いよく飛び出し、
ジョーイの腕を掴んだ。

「う、うわ!?」

ジョーイは地面から生えてきた手を引き剥がそうとする。
が、自分の腕から外れない。
逆に引っ張られた。
そしてジョーイはひび割れに引き連りこまれる。
体ごと地面の中に・・・・・・・。

「た!たすけ・・・・・」

地面の中からジョーイの声が聞こえた。
が、声は途中で途切れ、
代わりに地面の中で「ゴキン」と鈍い音が一度鳴り響いた。
それきりジョーイが出てくることはなかった。

代わりに地面から出てきたのは・・・・・・
ドレッドヘアーの斧戦士だった。

「あが・・・・いへ葉はらがははハは!!!」

無傷のメッツ。
両手には最凶な斧が二本。
右手が赤く染まっている。
その赤はジョーイの血の色だろうことは誰にも分かった。
口元は嬉しそうに歪んでいた。

悪魔は生きていた。

「うそ・・・・だろ・・・・」
「ほんとに化けモンか・・・」
「・・・・・泣きてぇ」

魔術師達は誰もが恐怖した。
いや、恐怖を感じる前に三人の首が吹っ飛んだ。
いつから動き出していたのか
メッツの動きは速すぎる。
ドレッドヘアーという鬣(たてがみ)を揺らし、
一匹の獣が殺戮のために獲物を狙う。
運動能力に乏しい魔術師達には、到底追うことのできない運動量。
つまりメッツの視界に入ったが最後。
その魔術師は死んでいった。

聞こえる叫び声
いや悲鳴
泣き声に断末魔。

血しぶきがあがる。
斧が横に動けば首が飛び。
縦に動けば二等分。

生産されているのは死体ではない。
ただの残骸。

クレイジー(イカれた)ジャンキー(中毒者)がただ踊る。

死んでいく魔術師達を哀れむ者も
死んでいく魔術師達を弔う者もいない。

これからこの場に残るのは

たった一人のバーサーカーだけなのだから。













                 






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