「あーいい天気ですね」

青空は雲がチラホラ
だが太陽がアレックス達を照らしてくれている。
土という名の絨毯。
自然という名の床を踏みしめ、
横には広大なニミュ湖。
そこから吹き抜けてくる風は心地よいとしかいいようがない。

そしてそこら中から聞こえてくる・・・・・・・・・・爆音

「戦場だなぁ〜」
「戦場ね〜」

スオミの森のいろんなところで魔法が飛び交っている。
その真ん中で、
アレックス・ドジャー・マリナ・ロッキー・メッツの5人はのんびりと風流を感じていた。

「やっぱ戦場はいいぜ!なんかこうピシピシと張り詰めるもんがあるわな」

メッツはそう言いながらも、
地面であぐらをかいてタバコをふかしていた。
横には巨大な両手斧が二つ。

「グレートアックスを買ってきたんですね」
「おぅ、ルアスの闇市でなかなか特価だったんでよ!
 ま、"中の上"って斧だがあんまりいいの買ったって大事に使わねぇからな」

メッツはそう言った後、口から煙を噴き出した。
まぁたしかにメッツの戦いを見ていたら、斧の方が持たないだろう事は誰にも分かる。

「お、見ろ見ろ!」

ドジャーが指差した空。
相変わらずの雲交じりの青い空。
そこからは火を纏った塊が落ちていた。

「あら、メテオね」
「わぁ〜!ひさしぶりに見たぁ〜」
「ガハハ!たぁ〜〜まやぁ〜〜〜ってかぁ!」

まぁここまで緊張感がないのも困りものである。
戦場の真ん中で、戦いを楽しむでもなく、悲しむでもなく、
ただのんびりしているアホ達なのだから。

だがやっとドジャーが切り出した。

「んじゃ本題に入るか」
「うん〜」

そうするとロッキーが説明を始めた。

「あのね〜。今パパ達が戦ってるけどね〜。敵のボスがどこにいるか分からないんだって〜」
「は?」
「なんじゃそりゃ」
「っていうかどんな顔かも分からないんだって〜」

まぁカプリコが人間界のギルドの新人ギルマスの顔なんて分からないかもしれない
というよりも
僕達がカプリコの見分けが付かないみたいに
カプリコにとっても人間を見分けるのは困難なのかもしれない

「んじゃマリナがいてよかったんじゃね?」

いてよかった・・・・のだろうか。
姉妹対決。
つけなきゃならない因縁だったとしても
少し・・・悲しい気はする。

「じゃぁ適当に手分けして探すしかないですね」
「スオミの森中をか!?」
「カッ、"人間には歩き回れる足があります"ってか?頭の下がる作戦だぜ」
「僕だってダルいですよ・・・・でも他に方法ないんだからしょうがないじゃないですか
 マリナさんが妹の匂いでも嗅いで辿れるなら話は違いますけど・・・・」
「わたしは犬か!できるわけないでしょ!?」

「ウネラヌルノメロー」

ロッキーのカプハンから声が聞こえる。
フェイスオーブのオリオールだ。

「どゆこと〜?」
「ニヌヌレノウラー」
「へ〜。そんな事もできるんだぁ〜」

いや、どんな事ができるんだ・・・・

「ロッキー・・・そいつなんて言ってんだ?」

「オリオールが〜〜テレポートランダムで適当に飛ばしてくれるんだって〜」

「おぉ!そりゃ便利じゃねぇか!」
「ですね。すぐに五人バラバラの位置へいけますし。手分けして探すにはもってこいです」
「他人にテレポートランダムができるたぁ、腐っても最高のオーブってわけだな」
「でもどこに飛ばされるか分からないから迷子にだけ気をつけなきゃね」

「んじゃ〜!みんな一列に並んで〜〜」

アレックス・ドジャー・メッツ・マリナは適当に一列に並ぶ。
その意味はよく分からないが、
多分順番か何かだろう。
さすがに一気に全員飛ばす事はできないんじゃないだろうか。

ロッキーが一番端・・・・ドジャーの前に立った。

「いっくよ〜!ドジャ〜!歯ぁ食いしばってね〜〜!」
「は?」「はぁ?」「歯?」

ドジャーは何か嫌な予感がした。
いや、それは当たりだった。
予感の通りである。

ロッキーがカプリコハンマーを振りかぶったのだ。

「ちょ、ちょまったロッキー!まさかカプハンを・・・・」
「飛んじゃぇ〜〜〜!!!」
「うぉあ!?」

カプリコハンマーが振り切られる。
そしてそれはドジャーにクリティカルヒットした。
あぁ無情。
ドジャーがロケットのように吹っ飛ぶ。
ひゅるるるる・・・・・とドジャーが天高く舞い上がる。
そして途中でフッ・・・・と消えた。

「たぁ〜まやぁ〜〜!」

ロッキーが飛び跳ねながら嬉しそうに言う。
ドジャーが宙で消えたという事はテレポートは成功したのだろう・・・・
だが。
問題はその前
誰もが思うその前である。

「あの・・・ロッキー君・・・。ハンマーは当たらないとだめなの・・・?」
「うん〜!!だって魔法を使うのはオリオールだもん!」
「で、でも痛いんじゃないですか?」
「痛いと思うよ〜!」
「お、思うよじゃねぇよコラァ!痛くない方法はねぇのか!?」
「ロロラ」
「"ない"。だって〜」

オリオールがロッキーの魔力を使うためには、
ロッキーが魔力を放出してくれないといけないのだが、
ロッキーは魔力を出し入れしたりというコントロールは全く出来ない。
だが、最高のオーブであるオリオールは気付いていた。
ロッキーがハンマーで攻撃する瞬間だけ、
力んで魔力も一緒に漏れていることを。
オリオールはその時の魔力を使って魔法を使う。
つまりロッキーが攻撃しないと魔法は使えないのだ。

「はい〜〜〜次アレックスだよ〜〜」
「・・・・・」

ロッキーはカプハンを振りかぶる。
アレックスは目をつぶった。
そして心の中でアーメンと唱えた。
神も無情。
アレックスの横腹にカプハンがヒットする。
アレックスは「ぐへぇ」と情けない声をあげながら吹っ飛び、
そして宙で消えた。

「次マリナだよ〜」
「あ、あたしはいいわ・・・・歩くし・・・・」
「遠慮することないよ〜!」

ロッキーはイヒヒと笑う。
オリオールもウニニと笑った。
そしてロッキーがふりかぶると、マリナは一目散に逃げ出した。
が、野生育ちのロッキーは速い。
一瞬でマリナに追いつき、
そして後ろ向きのままマリナにカプハンを横から叩きつける。
低空を滑降するようにマリナは吹っ飛んで・・・・消えた。

フゥ〜とロッキーは一仕事終えた!と言わんばかりの動作をした。
そして振り向く。

「残りはメッツだけだね〜〜」

ロッキーがメッツに一歩。また一歩と歩み寄る。
一歩づつ歩くたび、引きずるカプハンで地面にレールが描かれた。

「お、俺はいいってんだロッキー・・・・」
「ダメだよ〜♪」

何がダメなのか分からないが、
まぁぼくの楽しみを奪わないで!といったところだろう。
無邪気というのは時として最高に怖い。
メッツが後ずさりする。
逆にロッキーはゆっくり前進する。

・・・・・
ふと
メッツは自分のドレッドに違和感を感じた。
いや、ドレッドに違和感を感じた・・・というのは勘違いかもしれない。
それは音?空気?・・・いや勘?
とにかくメッツは後頭部に何か違和感を感じた。


「伏せやがれ!ロッキー!」


メッツは咄嗟にロッキーに飛びつく。
メッツがロッキーを地面へ押し倒す形になる。
間一髪。
そのすぐ横を・・・・一本の何かが通り抜けた。
メッツがすぐさまそれに目をやる。
地面に刺さっている"ソレ"。
アイスアローの矢だった。

「クソッタレ!いつの間に!」

メッツが周りを見渡して気付く。
メッツとロッキーはいつの間にか《メイジプール》の魔術師達に囲まれていたのだ。
まぁ「いつの間に」というセリフは、
戦場でノンビリしてたメッツ達が言っていいセリフではにと思うが・・・

《メイジプール》の魔術師達。
その数ざっと40人。
しかも彼らの服装・・・・。
どの魔術師も高位の魔術師しか切れないローブに身を包んでいる。
さすが腐ってもマイソシア一の魔道ギルドである。
腕利きの魔術師達は多くいるのだろう。
これだけのメンツであれば、
小さな村ぐらいなら飛ばせるだろう

「やっぱり人間が混じってるみたいだC〜。
 カプリコ以外の所に魔術師配備しといてよかったみたいな〜?
 昨日デリコがカプリコ砦行ってチョベリグみたいな〜♪」

魔術師の中の一人の女がしゃべる。
それはジャグルヘダーをかぶった変なしゃべり方をする女。
昨日アレックス達がカプリコ砦で遭遇した『サイコ・ジャグル』の"デリコ"である。

「あ〜!あいつがおかしな術を使うっていう女の人だよ〜!」
「あぁ、ドジャーが言ってた奴か」

「なに〜?それってデリコの事だったりするみたいな〜?
 おかC〜な術って〜もしかしてこういう術の事を言ってるみたいな〜?」

デリコの体が突然フワっと浮く。
そしてフワフワと空中に滞在した。

「すごぉ〜ぃ!」

ロッキーはそれを見て喜んだ。
それに対してデリコは「これマジでナウでヤングな魔法だC〜」と自慢げに返していた
それよりメッツは周りの魔法使い達を見て思う。

「チッ、メンドくさそうだな」
「ん〜・・・・そうだね〜・・・ざっと見40人くらいかな〜?
 どの人も強そうだし大変かも〜・・・・マリナの妹もいないみたいだしね〜」
「って事でロッキー。さっさとテレポートで飛んじまおうぜ?」
「うん〜」

ロッキーがカプハンを振り上げる。
ドジャー達にやったように、メッツにもテレポートランダムを使おうとしているのだ。
たしかに戦っていたらキリがない。
カプハンはメッツに向かって振り切られた。

「悪ぃなロッキー」
「え?」

メッツは突然カプハンを持つロッキーの手を掴む。
振りきっている途中でだ。
そしてメッツは無理矢理その手首を返し・・・
・・つまり結果としては
カプハンはメッツではなく、ロッキー自身にゴツンと当たった。
テレポートランダムはメッツでなくロッキー自身にかかり、
ロッキーはどこかへ消えてしまった。

その場には
メッツと40名ほどの魔術師達が残る。

「なんだ貴様。お前だけ残ってどうする気だ?」
「この数の差がわかってないのか?」
「マジ馬鹿だC〜」

魔術師達のその言葉に、
メッツのドレッドヘアーの下の目と口が笑った。

「ガハハハハハ!魔術師とこんな一辺にヤれるチャンスを俺が逃すわけねぇだろオラァ!
 メンドぃっつったけど残念ながら俺ぁドジャーと違って面倒ってもんが好きでよ!
 面倒なら面倒な方がいいんだよ!ま、それも戦いに関してだけの話だがな。
 やっぱ戦闘は楽しまなくちゃな!純粋によぉ!
 だが俺ぁ周りに気ぃ使って戦うのが苦手でよ。やっぱ暴れにくいべ?
 それでロッキーには悪いが退場してもらった。俺だけ残った理由はそれだけだ」

メッツは懐からタバコを一本取り出し、
口に銜えて火をつけた。
そしてフゥー・・と吐き出す。

「同情するぜお前ら。出会ったのが俺じゃなけりゃぁ今日もおいしい夕飯が食えたんだろうがな!
 これから俺の道楽に付き合ってもらうぜ?俺以外生きて帰れない楽しい道楽だ!
 お前らは倒されるの待ってるだけ!ただの40本のボーリングのピンだコラァ!
 分かったか?まぁ分からなくても結果は同じだけどな!・・・・・・・・・・・・・・さぁ遊ぼうぜ!」









                 






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