「我呼びし炎の嵐、その獄炎枯らすは目前の者の限りある命。汝災い・・・・・っておわぁぁ!?」

フレアシールドの呪文を詠唱していた男。
その男の首は・・・・飛んだ。
男の頭は地面に転がる。

その男の首を飛ばした者・・・・・・・・アジェトロだった。

「応っしゃぁ!魔術師は即効で叩っ斬るのが一番だぜ!」

アジェトロが振り向く。
そこには他の三騎士。エイアグ・フサム。
アジェトロが振り向く動作の間にも、
エイアグ・フサムの二匹によって魔術師の死体が二体作成されていた。
フサムがカプリコソードを振り切った状態で言う。

「・・・・・・・・・承知している」
「人間というのは愚かだな。少し高位の呪文が使えるからといってそればかりに頼る。
 MP(魔力)と詠唱時間の高スペックさが"あだ"になっているとも分かってない」
「ま、それがあだになるのは俺達三騎士と戦う時くらいだろうがな」
「いや、あそこにもう一人いるじゃないか」

「やぁ〜〜!」

横に振り切られるカプリコハンマー
まるで野球のバッティングフォーム。
ロッキーのカプハンの餌食になったひとりの魔術師は、
まるでカタパルトから発射されたロケットのように吹っ飛んでいった。
数十メートルは飛んだだろうか・
そしてスオミの森名物の美しいニミュ湖にポチャンと落ちた。
ホームランだ。

「・・・・・・・・爽快だな」
「あぁ、でもこれでここはあらかた片付いたな」

スオミの森の一角。
横たわっているのは《メイジプール》の魔術師達30人ほど。
経過時間はものの三分といったところだ。

「こいつらはまだ主力じゃないな」

「よわっちぃねぇ〜〜」

ロッキーがズルズルとハンマーを引きずりながらパパ達のもとへ歩み寄る。
引きずっている間、一人・・いや、一匹苦しむ者がいた。

「ウノノノノノノ!」

声はロッキーのカプリコハンマーから。
それはロッキーのカプハンにハマり込んでしまったフェイスオ−ブのオリオール。
悲鳴のような声をあげている。

「貴重な生きたフェイスオーブもロッキーにかかっちゃ"カタナシ"だな」
「・・・・・」
「ま、ロッキーには悪いが、"猫に小判"とはよく言ったものだ」

たしかにロッキーは名目上魔術師だが、
魔術といったものを全く使わない。いや、使えない。
高性能オーブを持っているメリットなどないのだ。
まぁ・・・持ちたくて持っているわけでもないのだが。

「ネウ!ニナムイイウネロー」

「オリオールは何だってロッキー?」

「えぇ〜と。「その通り〜。こんなのが俺のマスターなんて〜」みたいな事言ってるよ〜」

「・・・・・ふむ」
「まぁ最強のオーブには最強のオーブなりのプライドみたいなものがあるんだろうな」
「・・・まぁ分からんでもないが、ロッキーはロッキーでなかなかの素質だぞ?
 精神年齢が5歳ほどの今ではまだ魔法を理解するのは難しいようだが・・・・
 産まれた家がスオミの名門だったのだろう。体の内に秘められた魔力は膨大だ」
「つまりロッキーは莫大な燃料を持ってるがアクセルもブレーキもハンドルもないってことだな」
「・・・・・ハンマーでの戦いを見れば分かるがな」

たしかにロッキーは武・魔両方において体の底に才能の片鱗を感じられるが、
その精神年齢のせいか荒っぽい戦いとしか言いいようがなかった。
 
「ウノ。ワナナノネニルナレ」
「「なら、俺がその力を使ってやる」って言ってるよ〜」

「・・・・?」
「オリオールがロッキーの魔力を使う?」

「レナニエウノノナノー」
「「俺をハンマーごと思いっきり叩きつけてみろ」だって〜。よく分かんないけどやってみるね〜」

ロッキーは小さな体で思いっきりハンマーを振りかぶった。
ハンマーの腹にはオリオールがハマっている。
そしてロッキーは小さくジャンプしながら、
そのカプリコハンマーを思いっきり地面に叩きつけた。

すると・・・・・
カプリコ三騎士が手を覆うほどの衝撃
そして鳴り響く・・・・爆音。
そう、爆発だ。
地面に叩きつけられたハンマー・・・いや、オリオールを中心に
爆発が起こったのだ。

「・・・・・な、何が起こった」
「今のは・・・・"バーストウェーブ"だ・・・・・」
「なんだってエイアグ!?スペルだってのか?」
「・・・・まさか。オリオールが使ったのか。ロッキーの魔力を使って・・・・」
「んだとぉ?自分で魔法を使うオーブなんて聞いたことないぞ!?」
「・・・・・・・こんな事ができるとは。最強のオーブとして伝わってくるはずだな」

三騎士の驚きとは反面。
ロッキーは違う意味で驚き、喜んでいた。
面白いという意味でだ。
ロッキーは「おぉ〜!」と楽しみ跳ね回る。
そしてそこら中にハンマーをボコんボコんと叩きつけた。
いや、ボゴンボゴンか。

「たっのしぃ〜〜!!!」

バーストウェーブの爆発が連発する。
無邪気な少年ロッキーは爆撃ハンマーに首っ丈。
そこら中でハンマーを振り下ろし、爆発させている。
ある意味最強に怖い。
ミサイルを振り回しているようなものだ。

「・・・・・・・・」
「楽しそうに・・・・飛び回ってるな」
「・・・・・・あか」
「・・・・アジェトロ。フサム。・・・・我らの子は核兵器に進化したぞ」














S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<魔法とMDと魔道ギルド>>














-Queen B-





「そう・・・・マリンと・・・・・」

昼過ぎ。
といっても酒場は開店前。
アレックスとドジャーはマリナに事情を説明した。
まぁ事情を説明するといっても
ちょいと遅すぎた。

なんと言っても二人は寝坊してもう昼を回っていたのだから。
カプリコ達が真剣に戦っている中、
この二人は寝ていたのだ。
なんたる不覚。
いや、アレックスにとって不覚なのは朝ごはんを食べ損ねた事だった。
こんな事なら夜更かしすべきではなかった。
一方ドジャーは
は?寝坊がなんぼのもんじゃい
といった様子で何事もなかったかのように話を進めていた

「妹との戦いは不毛かと思ってよ。黙っとくつもりだったんだが・・・それはそれでナンかと思ってな
 ま、戦うかどうかはお前が決めろ。いや・・・・殺すかどうかだな。
 マリンを殺すことが仕事なもんでな。それに《メイジプールは》オブジェを狙っている。
 つまり残念ながらお前の妹には死んでもらわなければならない。
 それをおまえ自身の手で下すか、それとも俺やアレックスがやるか。それだけ決めろって事だ」
「ドジャーさん・・・・それはあまりにも・・・・」
「いいわ」

マリナが決心したような目で返事をした。

「私がやる。・・・・・・・・いつかは家柄・・・いや、過去と決着をつけなきゃと思ってたのよ
 私は逃げて今ここにいるんじゃないという事を証明するために・・・・」

姉と妹の間柄。
そしてこんなスラム街であるルアス99番街にいるのだ。
いろいろあるのだろう。
マリナとしては珍しいほど真剣だった。
手に持っているのがフライパンでなければもっとキマッていたが。

「あ、でもマリナさん」
「なに?」
「お店の方はいいんですか?」
「あぁ・・・・・そうねぇ・・・・・」

マリナは少し考えたが、
何か思いついたように手を叩き。
そして指をくわえて大きな口笛を鳴らした。
店外・・・いや、半径50mに響きそうな口笛を。

そして
たった10秒ほど後。

一人が店のドアを開け放って入ってきた。
物凄い勢いだ。

「マリナ殿!お呼びか!」

イスカだった。
どこにいたのか。
メチャメチャ遠くから口笛を聞きつけて飛んできたのだろうか。
鷹や猿じゃないんだから・・・・
それとももしかしてずっとすぐ近くに居たのだろうか。
それはもう・・・・ストーカーの域だ。

「ちょっと戦闘に行ってくるわ」
「戦(いくさ)!!??マリナ殿が危険ではないか!なるほど・・・それで拙者を・・・・
 承知した!拙者!全身全霊をもってマリナ殿をお守りします!
 たとえこの身が引き裂かれようとも!いや死のうとも戦いきる所存!
 マリナ殿に害する者などすべてこの名刀セイキマツで切り伏せて見せましょう!」
「じゃなくてお留守番しといてくれる?」
「えぇ承知してます!!害虫の首という首を斬り飛ばして・・・・・・・へ?」
「だから・・・・お留守番♪」

マリナはフライパンを「はいっ」とイスカに渡す。
イスカは呆然としながらフライパンを受け取った。

「大丈夫大丈夫。メニューは減らしておくし、ムカツク客は殴っちゃっていいから!」

いや、殴っちゃだめだろう・・・・
というかむしろイスカさんだと客を斬り飛ばしてしまいそうな気も・・・・

アレックスのそんな心配。
だがさらに不安な表情をしていたのはイスカだった。

「マ・・・マリナ殿。拙者・・・・剣を握るしか能がないのであって・・・・・」
「大丈夫だって!剣もフライパンも握り方は一緒よ」

アレックスとドジャーは「うそつけ」といった表情で眺めていた。
だがある意味納得した。
マリナはギターで人を殴るときもフライパンで人を殴るときもフォームが同じだからだ。
・・・・・まぁそれらを武器にする事自体がおかしいのだが・・・・・

「・・・・・だがマリナ殿・・・拙者はマリナ殿のお傍で・・・・」
「帰ってきたら特製料理をご馳走してあげるから!もちろん二人っきりでね♪」
「そ、それは誠(まこと)か!」

イスカの目が大きく見開いた。
嬉しさの余り目が輝きを放っている。
それはいつもの剣豪としての鋭い鷹のような目ではなく、
ひとつの恋する乙女の目のようであった。
まぁ無理もない。
イスカにとってこれ以上のご褒美はないかもしれないのだから。
イスカはフライパンを掲げる。

「拙者!このシシドウ・イスカは!全身全霊をもってこの店を任されたもう!
 マリナ殿の大事なこの店を守りぬきいてみせる也!
 嗚呼!拙者の幾多の修行はきっとこの日のためにあったのであろう!
 木を斬り!岩を斬り!水を斬り!人を斬ってきた鍛錬の結晶は!
 今日!このマリナ殿の店で大根を斬るためにあったのだ!そして・・・・・・」

「いくわよドジャー、アレックス君」

マリナはドジャーとアレックスにそう言う。
イスカが自分の世界に入り込んで熱弁しているが、
三人はほっといて普通に店から出て行った。

「・・・・であるからそう!そしてこの店の机によごれなどを付ける者を微塵切りにし!
 床に唾をつけよう者がいたなら首を跳ね飛ばし!
 そして証明するのだ!拙者の・・・あ・・・・あ・・・・愛というもの・・・・てあれ?マリナ殿?」

一人で店に佇む女侍はキョロキョロと周りを見回した。

「マリナ殿!?マリナ殿〜!!??」


開店前の店に一人の声だけが児玉した




                 






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