「分かるよ〜〜」

「ロッキーは先天的に生物の言いたいことが分かるらしい
 ノカンやカプリコ、ネクロや魔女なんかは人語を話すが、
 ロッキーはディドやキキの言葉も理解する事が出来る。
 カプリコ砦に育ったからには他のモンスターとの接点も多い
 その時に身についた能力かもしれないな」

エイアグが赤ちゃんのコロラドを抱っこしながら言った。
シリアスな話を真面目な顔をしながら話しているが、
手に抱えるコロラドをゆりかごのように揺らしてやる事をおろそかにしない様はさすがである。

それはそうとアレックスはエイアグの話で思い出す。
そういえばロッキーはあの赤ちゃんのコロラドともまるで話すようにしゃべっていた。
それもこの能力があってのことかもしれないと

「まぁいいや。あんま関係ねぇや」

ドジャーが言った。

「アレックスはともかく俺は脇道話に興味はないんだ。
 とにかく《メイジプール》の頭を倒して、報酬がもらえる。
 それ以外の知識はまるでいらない。欲しくもないし知りたくもねぇ
 ロッキーが動物やモンスターと話が出来ようが出来まいが、俺達と会話できりゃぁ問題ねぇんだ
 ・・・・・・・・っと。そうだ。報酬の話をしてもらってなかったな。そこ。そこが一番大事だって話だよ」

まったく・・・
世話好きなようで回り道の嫌いな人なんだから・・・

「・・・・・・・報酬か」
「応応、ガメついな人間」
「まぁ報酬に関してはもう紹介し終わってるといってもいい」

「は?」

ドジャーは今までの話を思い起こそうと上目遣いになった
そして小時間考えた後、
ハッと思ってあるモノを見た。
ソレはドジャーの視線を感じて言葉を発した

「ウヌノレレラー」

「まさか・・・・・この気持ち悪いオーブが報酬かよ・・・・」

ドジャーは露骨に嫌そうな顔をした。
それを見取ったのか、エイアグは言葉を付け足した

「お前の感じ方はともかくこのオーブの価値は相当だ
 人間の金・・・・グロッドに換算しても人生にツリが来るだろう」

ドジャーは露骨に嬉しそうな顔をした。
ニヤァーと口元を緩ませ、
金額への夢が膨らみ、"ゴキゲンのフンイキ"をビンビン発した。

「やけに気前がいいなぁおい!」

「いらない・・・・というよりはもっていたくないのだ。
 気持ち悪いとかそういう意味ではない。
 これを持っていると今回のように狙われる理由になる。
 我々はもうカプリコ砦を戦いに巻き込みたくないのだ」

「やっかい払いか。それまた調子のいいことで。
 だがまぁ・・・こっちとしても価格的には納得だぜ。ありがたくちょーだいする・・・ぜ」

ドジャーがフェイスオーブ"オリオール"に触れようとした時だった

「オネノヌヌナナナナナ!!!!」

突然フェイスオーブが宙に浮いたまま移動した。
そしてそのまま家のドアから外へ飛んでいってしまった。

「・・・・・なんだってんだ」
「散歩じゃないですか?」
「チクショウ!報酬が散歩するんじゃねぇってんだ!」

・・・・アレックスは気楽に散歩と言ってみたが、
あれはどちらかというと・・・・
見えない何かで引っ張られているようにも見えた。

何はともあれあのオーブは
ドジャーにとっては金の塊。
アレックスにとっては食費の塊。
追いかけないわけにはいかない

ドジャーとアレックスは走って外に出た。

三騎士の家のドアを開ける。

広がるカプリコ砦の光景。
きた時のままの光景。
平穏なカプリコ砦の風景。

少し見渡すと
そこにはオリオールがいた。

が、誰かに掴まれていた。
それは・・・・・・人間。

女だった。

「これがオリオール?マジキモいC〜〜
 もっとE〜モンだと思ってたC〜。デリコ幻滅〜〜」

一目で魔術師と分かる格好。
そして頭にかぶるジャグルヘダー。
その女はアレックスとドジャーに気付いたようだ

「チョベリバ〜。なんでカプリコの村に人間がいるの〜?マジ謎だC〜〜」

「それはこっちのセリフだってんだ!」
「誰ですかあなた」

「あたC〜?私はデリコ〜。『サイコ・ジャグル』のデリコみたいな〜?」

そのジャグルヘダーをかぶった女魔術師はクネクネとしながら言った。

「なんだぁそのしゃべり方。ったく。ふざけた野郎だぜ」
「もしかしてあなた《メイジプール》のメンバーですか?」

「ピンポーン。当たりだC〜。先駆けてこっそりオリオールをパクりに来たみたいな〜?」

よくもまぁ"こっそり"を堂々と言えたものである

「そうか・・・・だがそれは俺の獲物だぜ?俺のものは俺のもの!
 だが可哀想だからお前には代わりのごちそうをくれてやるぜ!」

ドジャーの一本のダガー。
アレックスにもいつ投げる動作をしたのか分からなかった。
そして飛んでいく軌道もかろうじてしか確認できなかった。
そのダガーはデリコという魔術師の手をカスる。
その拍子にデリコはオリオールを手から離してしまった。

「チョベリバ!」

宙を飛びながら逃げるフェイスオーブのオリオール。
気持ち悪いフェイスが必死の形相。
さらに気持ち悪い

だが、オリオールが急にピタリと止まる。

そしてデリコの方へ飛んで戻っていってしまった。
いや・・・・・まるで引き戻されたかのように。
そしてまたデリコの手の中へと戻った

「デリコから逃げようなんてナウくないC〜?
 でも怪我痛いC〜。マジ最悪〜。あんた達サイテ〜。死ねばいいみたいな〜!!」

突然ヒュンッ!と何かが飛んできた。
アレックスはそれを瞬時に避ける。
そしてその飛んできたものは三騎士の家のドアにスコンっ!と刺さる。
その物体が何か。
見てみると・・・

「ドジャーさんのダガー?どこから・・・・」
「知るか!とりあえずさっさとあの女を片付けるぞ!」

ドジャーは両手に4本づつ。計8本のダガーを構える。

「ごちそうをくれてやらぁ!」

そしてそれをデリコに向けて投げ放った。
8本の軌跡を描き、ダガーはデリコに・・・・

「は?」

ダガーは・・・・
止まった。
宙で。
デリコの前で八本のダガーが急に静止したのだ。

「何が起こってんだ?」

「何がも何も〜見たまんまだC〜!」

宙に浮かぶ8本のダガー。
それはデリコの目の前で静止している。
空中で・・・。
見たまんまといえば見たまんまだが・・・
意味が分からなかった。

「お返しみたいな〜?」

今度はそれが突然クルリと向きを回転した。
そして・・・・・
ヒュンという音と共に

今度は8本のダガーが、いきなりこっちへ飛んできた。

「なっ!!??」

ドジャーとアレックスに迫ってくるダガー。
原理もなにも分からない。
だがダガーは確実に二人に飛んできた。

不意をつかれて避けきれない

響く金属音。

だが、、そのダガーは二人に届くことはなかった。
何かによって叩き落された。
落としたのは三本のカプリコソード。
三騎士が家から出てきたのだった。

「《メイジプール》か」
「もう来ていたとはな・・・・・さっさと殺るぞ」
「・・・・・・・・・承知」

三騎士が同時に踏み切る。

「ちょ、ちょ、三騎士!?チョベリバ!」

言うなりデリコは突然。

グンッ・・・・と
・・・・・・・・・・・宙へ舞い上がった。

「飛んだ?!」

そしてデリコは空中でピタリと静止した
フワフワと浮いているような、
それでいて空中でピタリと静止しているような。

「アハハー!マジダサー!驚き方マジナウくないC〜!バカウケだC〜!」

「飛ぶ人間ですか・・・・アンジェロを思い出しますね」
「カッ!どんな事にも種があんぜ。アンジェロの時もそうだった」

「種とかどうでもいいC〜。オリオール手に入れたC〜
 任務完了みたいな〜?だからあたC〜帰るみたいな〜?」

デリコは何かを詠唱しだした。
呪文だ。
魔術師ではないアレックスにもその呪文が何か分かる。
酷く一般的な魔法だからだ。
・・・・・ウィザードゲート

「逃げる気です!」

だがもうデリコはウィザードゲートの光に包まれ始めていた。
あとはもう飛ぶだけ。

「くそったれが!俺の金だけでも置いてきやがれ!」

ドジャーが腕を振る。
デリコには何をしたか分からなかった。
それが少々の運のツキ。
ドジャーはインビジダガーを発したのだ。
知らなければ初見では見切ることはまず不可能だろう
先ほどと同じようにデリコの手にヒットし、
デリコはギリギリでオリオールを手から離した。

「・・・・チョベリバ」

デリコはオリオールを置いた状態だが、
ウィザードゲートがもう発動していたためそのまま飛んでいった。


そしてまたカプリコ砦に静寂が戻った


「・・・・なんとかオリオールだけは守れましたね」
「やっかいな奴だ」

「魔術師ってのはやっかいなのが多い」
「その魔術師のエリートの集まりが《メイジプール》だってんだ」
「・・・・・・・これほどまでとはな。手がかかりそうだ」

「どうしたの〜〜??」

遅れながらロッキーがピョコピョコと家から出てきた。
手にはカプリコハンマー。
ズルズルと引きずってきた。
一応こんな暮らしに慣れているせいか、
なにかトラブルかもと感づいて出てきたのだろう。
登場はあまりに遅れたが・・・・。

「ロッキー。調度いい」

エイアグが言う。
ロッキーには何が調度よかったのか分からず、
「?」を頭の上に浮かべながら小さな首をかしげた。

「そのカプリコハンマーでこのオリオールを叩き割ってくれ」

「は?!」
「えぇ!?」

「ウヌノノナ!?!?!?」

エイアグの言葉におのおのが驚く。
一番驚いているのはオリオール自身だった。
当然だ。
突然自身の破壊命令が下されたのだから。

「どうしたんだエイアグ?なんで破壊なんか・・・」
「・・・・・・俺は承知した」
「やはりフサムは少し回転が速いな」

エイアグは顔色を変えずに話しを続けた

「先ほど言ったようにこのオリオールを求めてくる者は多い。
 故に先ほどの輩のような者が襲ってくる。
 この人間に与えて厄介払い・・・・と先ほどまで考えていたが、
 それも止めだ。もしオリオールが相手の力になったらと思うと恐怖を感じる
 これはここで壊してしまったほうが・・・・・・一番無難だ」

カプリコの危険を考えてのエイアグの提案だった。

「ちょ、ちょ待ってくださいよ!」
「そりゃぁ俺達にくれるって言ったじゃねぇか!話が違うぜ!」
「ずるいですよ!」
「あぁずりぃ!」
「ずるい!」
「ずりぃ!」
「ウヌリィ!」

アレックスとドジャーは必死だ。
当然。
金と食費がかかってるのだ。
そしてオリオール。
形はどうあれ、アレックスとドジャーを味方と判断し、
二人の後ろからフェイスいっぱいに怒った。

「心配するな人間達、報酬は別に用意する」

「あん。ならいいか」
「問題ないですね」

「ウノネラヌネ!?!?!?」

オリオールはまた恐怖を感じる。
そして空中で後ずさりした・・・
が、何かとぶつかる。
オリオールがクルリと球体を反転させると。
そこにはロッキーがカプリコハンマーを振り上げて立っていた。

「ごめんね〜オリオ〜ル〜・・・・・ せ〜ぃば〜ぃ!」

「オネネネネネネネ!?!?」

オリオールは逃げようとするが・・・・無情

ガゴスン!・・・と音が鳴り響いた。
地面。
決して柔らかくないその地面にカプリコハンマーがめり込んだ。
ハンマーの5分の1が埋まっている。
っそいてその軌道。
誰もが見ていた。
オリオールにクリティカルヒットしたのを。

アレックスは胸の前で「アーメン」と十字を切った。

「ん〜〜〜!!」

ロッキーはめり込んだハンマーを一生懸命引っこ抜こうとしていた。
小さな体が一生懸命ハンマーを引っ張る。
自分でも抜けないような力を
どうやってあの小さな体で出したんだとアレックスは不思議だった。

「うわぁ〜!」

ハンマーが引っこ抜けた。
が、ロッキーも勢い余って後ろに転び、
尻餅をついた。
「いててて・・・」とロッキーがお尻をさすりながら立ち上がる。

その時、誰もが目を疑った。

「うわ・・・キモ・・・・」

オリオールが・・・・・・・・カプリコハンマーにめり込んでいた。

傷一つ無い状態でだ。
まるでハンマーに顔が生えているかのようだ。
ハンマーから顔を出したまま
オリオールは「ウノネン」と言った。
相変わらず何を言ってるか意味分からん。

「えぇ〜っとぉ〜。「抜けん」って言ってるよぉ〜」

「「「・・・・・・・」」」

ハンマーから顔が出た状態。
だが、
抜けないなら・・・・・・もうどうしようもない。
ハンマーで叩いても壊れないのだ。

「・・・・破壊は諦めよう。こんなハンマーから生えたオーブじゃ奪いに来た輩も見て冷めるだろう」
「・・・・・・・承知」
「応・・・・ロッキー・・・面倒みろよ」

「えぇ〜?ぼく〜?ん〜・・・・・・ま、いっかぁ」

ロッキーは気楽な立場である。
エイアグはもうこの件は放っておく事に決め、
そしてアレックスとドジャーに話をした。

「まぁ・・・、先ほどの輩はともかく《メイジプール》が攻めてくるのは明日だ
 砦に泊まっていくなり帰るなり自由にしてくれ。明朝またここに来てくれさえすればいい」

エイアグがそう言うと、
三騎士は三匹とも家の中に入っていった。
ロッキーも「ドジャ〜!アレックス〜!ばいば〜い!」と言って家に入っていった。
もちろんぶかぶかのローブをひきずり、
カプリコハンマーを引きずって。
・・・・つまりハンマーから顔を出しているオリオールは地面にズリズリと引きずられていた。

「・・・・なんだかなぁ・・・」
「ま、ともかく明日までヒマですね。ご飯おいしくなさそうだし帰りますか?」
「だな。それに少しメンバーを補給したい」
「あれ?いきなり弱気ですね。どうしたんですか?」

ドジャーは落ちたダガーを拾いながら話をする。

「相手が《メイジプール》とあっちゃぁな。戦力(メッツ)はいないよりゃ居たほうがいい
 ついでに言うとメッツは戦闘に呼ばなきゃ怒るだろうからな」
「新しい斧買いに行ってるんじゃ?」
「買い物に何日もかかるかよ。
 それに・・・・マリナを呼ばなきゃなんねぇ。いや、むしろ呼ばない方がいいんかな」

ドジャーは地面に落ちていた最後のダガーをクルクルと回転させて腰におさめる。

「?・・・なんでですか?」
「騎士団の終焉戦争。あの日《メイジプール》も参加してたろ?」
「あ、はい。GMの魔道リッドを中心に内門への広範囲メテオ。壮絶なものだったらしいですね」
「だが、あの戦争中そのGM魔道リッドを含めた上層部を中心にメンバーの半分は戦死したらしい
 ま、勝負で魔術師が狙われやすいのは当然っちゃ当然。
 《メイジプール》が集中攻撃を受けるのは必然ってわけだ」
「で、《メイジプール》は今、かなり弱体化していますね」
「そそ、んで《メイジプール》は上層部をほとんど欠き、若手中心の中規模ギルドまで下がった。
 言いたいのはここだ。"GM"。
 魔道リッドの代わりに下の下から下克上のように繰り上がりでな、ある人物が就任した」

ドジャーが真剣な顔で言う。
アレックスは「誰ですか?」と聞いた。
ドジャーは少し間を置いたあと、
地面に名を書いた。

その名前・・・・

「新しいGMの名はマリン。世間では『クーラ・シェイカー』って呼ばれている奴だ。
 フルネームは・・・・・・"マリン=シャル"。・・・・・・・・・・マリナの妹だ」














知も魔もないカラスがカァカァと夕暮れを知らせる。

それは翌日の戦いを知らせているような、

または愚かな戦いを馬鹿にしているような。

ともかく翌日

カプリコ&《MD》 VS 《メイジプール》

翌日この戦い幕を開けるため、


太陽は一時暗闇へと幕を落とした。










                 






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