アレックスは三騎士に三つの刃を向けられていた。

三つの伝説がアレックスひとりに向けられる。
世界でもこれほど最悪の状況は相当ない。

「おいテメェら!俺とアレックスはお前らを助けに来たんだぞ!
 刃を向けられるために来たんじゃねぇ!」

「・・・・・・黙れ人間」
「こいつが仲間達を殺したとあっちゃぁ助けもクソもねぇぜ!」

「パ、パパ達やめてよぉ〜!アレックスはいい人だよ〜!」

ロッキーはピョコピョコと走り寄り、エイアグの体にしがみついた。
だが、エイアグは殺気立った目でロッキーを睨み、言った。

「こいつがいい人かどうとかなんて関係ない!
 こいつら王国騎士団が我が同胞達を帰らぬものとしたんだぞロッキー!
 お前の友達を!仲の良かった隣のおばさんを!おじさんを!家族を!」

「でもアレックスは〜!コロラドを助けてくれたんだよぉ〜!」

「クッ・・・・」

エイアグの剣に迷いが走る。
だが、それでも突きつけた剣を下ろさなかった。
話を切ったのはドジャーだった

「カッ!やめだやめだ!この話はキャンセルだ!
 アレックスが三騎士に殺されるくらいなら話はパスだってんだ。
 悪いなロッキー。そっちが悪いんだぜ?・・・・・・帰るぞアレックス」
「いいんですドジャーさん」

三騎士の剣に囲まれたまま
アレックスは言った。

「アレックス。おめぇ自殺願望でもあんのか?知らなかったぜ
 今度ルアス川の橋にでも連れてってやろうか?
 懺悔を書いた紙切れと丁寧に並んだ靴がよく落ちてる」
「死にたいわけじゃないですよ。ご飯が食べれなくなっちゃうじゃないですか
 まぁつまりですね。僕は三騎士さん達の気持ちがよく分かるんですよ」
「んあ?」
「僕も騎士団の仲間が皆他界しました。全滅という言葉の悲しさを知っています。
 だからぶつけようの無い感情というものが分かるんですよ」

だがやはり三騎士は剣を緩めない。
三つの剣はアレックスに突きつけられたままだ

「人間同士の愚かなイザコザなど知るかってんだ」
「・・・・・・"僕も可哀想でしょう"・・・・っとでも言いたいのか?
 お前が可哀想だからといって我が同胞を殺してきた事実が消えるとでも?」

そこでロッキーが話に割って入った。

「パパ達!アレックスはね〜。あの日の戦争には出てないんだよぉ〜」

そう。
アレックスはノカン・カプリコ討伐戦に参加はしていなかった。
だがアレックスはそれを言わなかった

「・・・・・・・・何故黙っていた・・・。人間」

「出てなかったから・・・というのは言い訳になりませんから。
 だって「出陣しろ」と言われていたら僕は参加していました。同罪です」

「・・・・・・・・同罪と認めるなら」
「ここで死ね!」

本気で殺そうとする三騎士。
だがロッキーはエイアグにしがみついて止めようとする。
そして言う。

「アレックス達がいないと〜〜《メイジプール》っていう人達に対抗できないんでしょ〜〜?
 そうしたら〜〜この新しいカプリコ砦の人達も守りきれないよぉ〜?」

「「「・・・・・・」」」

三騎士達は黙る。
その通りなのだろう。

続いてドジャーが言う。

「ロッキーの言うとおりだぜ?
 "帰ってこない失ったモノ"より"今もっているモノを失くさないために"
 どうだカッコイイ言葉だろ?。つまりは過去と今。どちらを失くしたくないかだ」

「人間。黙ってな」
「・・・・・・」
「アレックスと言ったな。お前は王国騎士団である限り小さかれ討伐の仕事があっただろう
 お前は今までどれだけのカプリコを殺した」

アレックスに真っ直ぐ目を向けるエイアグ。
逆にアレックスも真っ直ぐ目を向けて言った。

「・・・数十でしょうか。仕事という名の偽善を抱えてですね」

「俺は1000を超える人間を殺した」
「・・・・・・・・・三人ではもっとだ」
「それに免じて俺達はお前を殺さない。そして、この砦の数百のカプリコのために。
 だからお前は今回カプリコのために命をかけろ。許しはしないが免じてやる」

「・・・・はい」

三騎士が剣を下ろす。
そしてアレックスから離れた。

ロッキーが一番ホッとしたようだ。
小さく幼い顔は安堵の表情を表した。

「で、本題を話してもらおうか」

ドジャーが切り出した。
ダガーをカリカリと手入れしながら。

「そうだったな。よし・・・・」

エイアグが話をしようとした瞬間だった。
突然の泣き声。
それはカプリコの赤ちゃんコロラドが泣き出したのだ
ずぅーっとシリアスにしてきたエイアグだったが、
エイアグはすぐさま
「よしよ〜し。どうしたんだいコロちゃぁん」
とか言いながらベビーベッドに駆け寄る。
さっきまでの殺気はなんだったんだと全員は顔を手で覆う。

「お腹がすいたのかなぁ〜?あ、オムツの方か・・・・・・
 あ、おいフサム、アジェトロ。話を進めといてくれ」
「・・・・・・・・承知」
「ったく。なんとかなんねぇもんかな。この溺愛っぷり」

アジェトロは頭をポリポリとかきながら話を始めた。

「まぁ単純に俺から話させてもらうか。
 明日《メイジプール》って人間のギルドがここを攻めてくる
 お前ら人間の中じゃぁ有名なギルドなんだろ?」

「《メイジプール》ねぇ」
「あの魔術師だけの魔道ギルドですね」

「魔術師ってのがやっかいなんだ。単体で強力な力をもつ。それに遠距離攻撃」
「・・・・・まぁ我ら三騎士の前には赤子も同然だが」
「それでも手が掛かる。俺らの目的は勝ち負けじゃねぇ。カプリコ砦を守る事だ。
 ボヤボヤしてるとすぐにアウト。何せこっちにはカプリコ兵が2ケタほどしかいない」
「・・・・・我らが戦っている間・・・砦は丸裸」

「そこを俺らに守れってか?」

ドジャーが話しを聞きながらダガーでお手玉を始めた。
三本のダガーが宙で円を描く。
と思った次の瞬間。
一本のダガーだけキャッチし、
他のダガーはドジャーの腰へスポンと収まった。
ドジャーはアレックスに「今の芸どーだ?」と聞くと
アレックスは「まぁまぁです」と答えた。

アジェトロは緊張感の無さに呆れながら話を進める。

「守るんじゃない。逆にお前ら二人には攻めてもらう。いや、ロッキーを含めて三人でだ」
「・・・・・・・・・我らを含めたカプリコ全員は《メイジプール》本体に当たる」
「簡単に言えば俺達カプリコと三騎士は囮だ。俺達が奴らの目の見える所にいれば油断する。
 そこをお前らが一気に叩け。・・・・・・・・向こうの頭をな。だからお前らの助けが必要ってわけだ」
「・・・・・・・・・できないとは言わせない」

「できないとは言わせないだぁ?もちろん俺もできないとは言わないぜ
 それよりも頭を倒しさえすればすぐに仕事が終わるってことだろ?
 楽でいいっての。短期型の仕事が俺ぁ大好きでな。マジ上等ってとこだ」
「でもなんでそんなギルドがカプリコ砦を?
 もしかしてオブジェ狙いで《MD》であるロッキー君を?」

「・・・・・・・・・その話はよく知らんが理由は多々ある」
「ロッキーやコロラド狙いっつーのもあるだろう。どちらも将来有望だ。
 それに事前にきた声明によると"降伏して従え"だとよ。俺らの力も欲しいんだろう」
「・・・・・・・・降伏こそ幸福・・・か。愚かだ。そんな選択肢我らにはない」
「そして目的はもう一つ。魔術師なら誰もが欲しがる至高の珠
 ・・・・・・・"オリオール"を狙っているんだろう」

「「オリオール?」」

「世界一のオーブだ。ロードカプリコ達の総力の結晶なのだが・・・・・物凄い魔力を秘めている。
 その理由は・・・・・まぁ聞くより見た方が早いだろう。フサム。そこのボックスをとってくれ」
「・・・・・・・・・承知」

フサムは部屋の端に行き、
そしてそこに飾り付けてあった宝箱のような箱を手に持ってきた。
そしてその箱を・・・・・開けた。
と同時に・・・・・

「うわ!」

アレックスとドジャーは驚く。
いや、当然だった。
何故ならそのオーブが・・・・・

飛び出したからだ。

宙にフワフワと浮かぶ赤い・赤い・フェイスオーブ。
人の顔をした奇妙なそのオーブ。
存在自体はそこまで珍しくない。
だが驚くべきことはもう一つ

「ウヌヌノナヌヌヌニ」

「「しゃ、しゃべったぁ?!」」

しゃべった。
何を言ってるのか分からないが
そのオリオールというフェイスオーブは・・・言葉を発した。
そんなオーブ聞いたことも無い。
いや、まず自分の意志で動いている。
宝箱から飛び出すくらいだ。
今もキョロキョロと回りを見回している。
フェイスオーブが自分でだ。
このフェイスオーブは間違いなく・・・・・・・生きている

「これが世界でたった一つの生きたフェイスオーブ。"オリオール"だ」
「どう〜?アレックス〜ドジャ〜〜。おどろいた〜〜??」

ロッキーが嬉しそうに話す。

「いや・・・・おどろいたというかなんというか・・・・」
「第一印象としては・・・・」

「ウノネナニーヌヌ?ネネノヌナ?」

「「気持ち悪い」」
「こんなもん欲しがる奴の気がしれないな?キモカワイイってか?
 欲しがるのは頭打ったようなやつだけじゃねぇのか?」
「さっさとたこ焼きにでもしてしまうのが賢明ですね」

「・・・・・・幾万の人が欲しがる宝になんて事を言う」

「ネラノヌネネヌイノー」

「何言ってるか分からねぇ・・・・」
「そこの盗賊の頭イカれてなぁい?って言ってますよ」
「うそつけ」

「でも大体〜。あってるよぉ〜〜」

最初は「ん?」と思った。
が、ドジャーはロッキーに聞いた。

「ロッキー。お前そのオーブの言葉分かるのか?」










                 






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