「血が!血が足りない!もっと!もっと臓物を!!」

その男は、口から臓物のカスを散らしながら、
ガツガツと臓物の山に手を伸ばしていた。
彼にとってその行動は本能。
生きる上で至極最高のひとときでもある。

「・・・・・・」

一人の盗賊がそれを悲しい目で見つめていた。
そして言う。


「・・・・アレックス。レバーくらい普通に食え」











S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<砦と珠と魔道ギルド>>















酒場Queen B

開店してばかりというのにこの盛況ぶりはなんだろうか。
みんなヒマなんだろうか。
ともかく間違いなくヒマな男が二人。
奥のテーブルに腰掛けていた。

「気っ持ち悪い食べ方するなよなアレックス。悪趣味にもほどがあるぜ」
「分かってないですねドジャーさん。食事をするときには"雰囲気"ってものが時には必要なんです
 例えばカレー食べてる時にウンコの話とかされたらイヤでしょう?」

スプーンの落ちる音がする。
それはドジャーのスプーンだった。
そう
今まさに彼はカレーを食べていたのだ。

「今のはわざとか・・・」
「さぁどうでしょうね」

アレックスはヒネくれた笑顔と共にまたレバー定食に箸をつける。
そして口に食べ物を運ぶたび、満面の笑顔をした。
ドジャーは食べかけのカレーを横にどかした

「ったく・・・。分かんねぇなぁ。分かんねぇよお前の食べ物へのこだわり方の方向性がよ
 血とか臓物とか言いながらそれを食べるのも雰囲気作りなのか?」
「そうです。本来こーゆーものを食べる者の気持ちになって食べるんです」
「・・・・・なんか違うだろそれ」

違わない違わない。
ドジャーさんはまったく分かってない。
全ての動物に切って放せない食というもののありかたを分かってない。
あぁ、なんて悲しい人なんだ。
アレックスはそう思いながら箸をドンドン進める。
そんな中。
ドジャーのWISオーブにコール音が流れた。
面倒くさそうにドジャーを片手でWISをとった。

「あいあいもしもーし、おぉ?ロッキーか。めずらしいな
 ・・・・・あ?あっそう。・・・・・・え?俺?・・・・・・いや、めんどいっての。ん?何って?
 ・・・・だーかーらめんどいっての。・・・・・・無理無理。・・・・・イーーーヤーーーダ
 お前が牛乳飲んで頑張・・・あ?・・・・・・・・・・ほぉ。なるほどな。
 それならまぁいいけどよ。ん?・・・・・・・え?あぁ・・・・んじゃぁ明日でいいか?
 おう・・・・・・・・おう。おう。あいあい。あいよー。んじゃな」

ドジャーはピッと通信を切る。

「おっきーふんははんでふって?」
「アレックス・・・・・口に物を入れながらしゃべるのやめろって・・・」

アレックスはゴクンの食べ物を飲み込む。

「ロッキー君はなんですって?」
「まぁ・・・仕事だ仕事。カプリコ砦が狙われてて大変だ〜〜!・・・・だってよ」
「へぇ、それで助けてあげるんですか?」
「カッ!タダじゃねぇけどな。何がもらえるか知らないがカプリコにだってオツムはある。
 そんな悪かねぇもんくれるだろうよ。グロッドじゃぁねぇだろうがな」
「へぇ、僕はおいしいものがいいですけどね」

まだ見ぬ美食へとアレックスは胸たからせる。

「それは期待すんな」
「どうしてですか?」
「ロッキーとの味覚の違い覚えてねぇのか?」
「あ・・・」

そういえばなんかモスやらディドやらの料理の話をしていたなぁ
それにモス酒が大好物。
人とは味覚が違うのか・・・
でも・・・・

「別にそれでも食べてみたいですけどね」
「お前は食えりゃなんでもいいのか・・・」
「何を失礼な!まったく分かってないです!それだからドジャーさんはいつもお金お金
 頭が金頭なんです。いいですか、食べるという事はですね。人間として・・・・」
「あーあー分かった分かった。お前のその手の説教は長いからな」
「・・・・」

アレックスは不満そう・・・というか物足りなさそうだった。
これから食と素晴らしさというものを感じてもらおうと思ったのに。

「とにかく明日だ。朝一でいくぞ」
「朝からですか!?」
「朝からだ。お前は朝ごはんだっつってすぐ起きるからいいだろ」
「それはそうですけど・・・」

ドジャーさんはお金がらみの時だけ早起きなんだから・・・・

「で、明日は僕達だけで行くんですか?」
「誰を呼びたいんだ?」
「いえ・・・ただ僕らに助けを呼ぶくらいだから楽な状況じゃないんじゃないんですか?」
「まぁ、楽じゃなけりゃ楽じゃない時呼ぶさ。
 実際うちのギルドは連絡もとれない・忙しいってのばっか
 メッツは昨日から斧買いにいってるしレイズは院長になってばっかで忙しい。
 他は連絡とれねぇし、それにマリナは・・・・ほれ、御覧の有様」

マリナは忙しそうに食器を運んだり料理を作ったり。
店が繁盛しているがために嬉しい忙しさ。
まぁこういった酒場を一人で経営している自体凄いといえば凄い

「ま、そんなたいした仕事じゃないだろう。二人でなんとかなるさ」













-翌日-













「疲れたー・・・まだですか?」
「・・・・・・もうちょっとだ」

スオミの森の中。
見渡す限り同じ景色をアレックスとドジャーは黙々と歩いている。
朝に出発して、
今はもう昼。

半日ほど歩きとおしているのだ。

「もうちょっともうちょっとって!さっきももうちょっとだったじゃないですか!」
「うっせ!もうちょっとはもうちょっとだ!」
「直で飛べるゲートとかなかったんですかぁ?」
「あるわけねぇだろ。カプリコの隠れ里にゲートがあったら隠れてないだろが!」
「んじゃ書とか〜」
「俺もカプリコ砦には初めていくもんでな」
「も〜・・・・。お腹空きましたー。ドジャーさんのせいですよ」

ドジャーは返事をしない。
つっこまない。

「ねぇ〜ドジャーさんお腹が空きましたー!」
「うるせぇ!飯なんか持ってきてるわけねぇだろ!
 なんか食いたいならその辺の草でも食ってやがれ!」

アレックスは周りを見渡す。
地面に生えるどっから見ても食用とは思えない普通の草。
ただの草。
学名、草。
だが・・・・・もうこれでもいいかとも思えてくる。

「道草を食うって言葉もありますしね・・・・」

アレックスは地面へと手を伸ばす。
空腹は思考を狂わせるらしい。

「ちょ、冗談だってのアレックス!ほれ、着いたぜ」
「え?」
「ここが新カプリコ砦だ」

アレックスは目線をあげる。

小さな門。
分かりにくい。
知らずにここらを通りすがった人ならまず見逃すだろう門。

それをくぐると入り口のようだ。

「入るぞ」

アレックスとドジャーはそこへと入る。
そして広がる光景。

それは・・・砦というにはあまりにも小さな村。
木に囲まれて隠されたような村。
少数のカプリコ達が細々と暮らしていた。

少し気が引けた。

「応応!何者だ!!!!」

突然の声。
カプリコだった
だがそのカプリコは質問にも関わらず返事を待っていない。
何故なら・・・
突然斬りかかってきた。

「う、うわ!」

アレックスは咄嗟に槍を構える。
速すぎて目標を捕らえきれない。
だが、偶然にもその者の攻撃はガードできたようだ。
いや、できたのか?
アレックスは吹っ飛ばされて木へと叩き付けられる。

「うぅ・・・」
「てめぇ!何しやがるんだ!」

ドジャーがそのカプリコへと瞬足で突っ込む。
だがドジャーの目にも留まらぬような飛込みも、
そのカプリコはカプリコソードで簡単に見切ってしまった。

「俺はアジェトロ!カプリコ三騎士のアジェトロだ!
 いいか人間!人間がこの村に踏み込んだら出口はたった二つだってんだ!
 一つはそこの門からすぐに出て行く!
 もう一つはこの世から出て行く!首だけ置いてな!」

アジェトロ・・・・
これが伝説のカプリコ三騎士の一人・・・。
とんでもない戦闘力だ。
ケタが違う。

「待て!待てって!俺らはロッキーに連絡を受けて・・・・」

「アジェパパ〜〜!!」

叫んだのは聞き覚えのある声。
茶色のローブを引きずる小さな体。
ロッキーだった。
とたとらと小走りかつ一生懸命走ってくる。
何故か転ぶんじゃないかとヒヤヒヤした。

「この人達は〜僕の友達だよ〜」
「この頭の悪そうな人間がか?」

何が悪そうって?

「うん。ルアスに居たとき〜お世話になってた人達〜」
「そうか」

アジェトロは背中にカプリコソードを収めた。

「すまない客人。そうとも知らずに真っ二つにするところだった」

アレックスはゾッとする。
もし自分がガードしてなかったら・・・
アジェトロのセリフはこう変わっていただろう
"すまない客人。そうとも知らずに真っ二つにしてしまった"
すまないじゃすまない。

「案内してやるよ。小さな砦だがロッキーの友とあれば優遇してやる」











そこそこ大きなテントのような家に着いた。
と言っても他のカプリコの家と比べての話だ。
まぁ歩いているとカプリコ達がジロジロ見るので、
あまり余所見をしづらかったが、
どの家も小ぶりだ。
まぁカプリコの小さな体を考えれば当然といえば当然か。

家のドアを開けて入る。
そこには一人のカプリコが腕を組んで立っていた。
見た目でアジェトロと同じ三騎士だと分かった。
雰囲気が違う。

「応、フサム」
「・・・・・・・・アジェトロ。誰だそいつらは」
「ロッキーの面倒を見てた奴ららしい。
 今回の応援にきてくれたらしいが・・・・頼りになるかは分かんねぇぜ」
「・・・・・・・・ふん。それぐらいは承知」

さらに家の奥へと向かっていく。
そして一番奥の部屋。

そこのドアを押し開いた。

「エイアグ。客じ・・・・」

そこで見た光景。
まぁなんと感想を言ったらいいか。
そこにいたのは三騎士の最後の一人。

他とは違う威圧感・・・・・・・をかもし出していなかった。

部屋の赤ちゃん用ベッドに向かって一生懸命赤ちゃんをあやしているのだ。
その赤ちゃんは以前アレックス達が助けたコロラド。
そしてあやしているのは三騎士のエイアグだろう。
エイアグは顔を極限まで緩ませ、もう自分の子に首っ丈といった感じだ。

「ベロベロバー・・・・あっ」

エイアグはこちらに気付く。
そして手に持つガラガラを後ろに隠し、
コホンと咳き込んだあと、
真面目な顔を作り上げた。

「おぉ、君たちがロッキーの客人か。待っていた」

もう威厳もなにもない。
アジェトロとフサムが手を顔に当てる。
いや、まぁ他人のアレックスとドジャーでさえ
三騎士のこんな姿は見てられなかった。

「・・・・・・・・エイアグのやつ・・・・溺愛っぷりが進みすぎだ」
「応・・、ロッキーの時でさえこれほどじゃなかったが・・・まぁ実子ともありゃしょうがないか」
「う、うるさいぞアジェトロ、フサム!
 あぁコホン。ん。ん。・・・・・・・・で、お客人。あんたらがロッキーの連れてきた援軍って奴だな」

とにかく話をそらしたいようだ。
いや、まぁこちらとしてもその方が助かるが・・・・。

「えぇそうです」
「俺がドジャー。んでこっちがアレックスだ」

「ドジャーとやら、あんたの話はロッキーからよく聞く。
 街にいる時は世話になったようだな感謝している。
 そしてお前らの腕の方の話も聞いてる。だが、そっちの騎士についてはよく知らない。
 信用ならない者の助力は受けたくないんだが・・・・・」

「あぁ、こいつはな。最近仲間入ってばっかなんだ
 まぁだが力に関しては折り紙つきだ。攻守ともに役立つやつだぜ?
 なにせ元王国騎士団の医療部隊の部隊ちょ・・・・」

突然
空気が変わったのがアレックスに感じた。
まるで真冬のような凍えそうな寒気。

気付くと、

三本のカプリコソードがアレックスに突きつけられていた。
何一つ気付くヒマなく。

「王国騎士団だとっ!」
「・・・・・・承知か?」
「応応てめぇ!よくも俺達のカプリコ砦をっ!!!!」






                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送