命の価値は平等

俺には人の命がイコールなんて考え方は分からない
他人なんてクソ食らえ
死ねばいいのに
だがそれは俺が異常なだけ

世間では命を平等に扱うべきなのだろう
ヴァレンタイン院長がそう言うのだから間違いない。

俺が99番外(ゴミ箱)で生まれたゴミのような人間であるなら
院長はその逆。
正論を知る素晴らしい人

正論
つまりそれは命の価値は平等であるということ
99番外では聞いたことのないその言葉の美しい響き
自分にはその考え方はできないとしても
俺はその言葉を宝物のように心の底に忘れず閉まっていたんだ


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「もう一度言います。人の命が平等なんてありえないです」

アレックスは迷いなく言い放つ。
その瞬間レイズの頭の中が熱くなる。
思考の中の唯一の小さな光がボヤけた。

「・・・・・騎士。このクソ騎士!!なんて事を言いやがる!
 僕が人の命へと正論を説いてやったというのに聞いてなかったのか!?」

ヴァレンタインが怒る。
そして轟音
真上にプレイアを撃ち放ったのだ。
そのプレイアは強力。
天井が崩れ落ち、穴が開いた。
上の階がポッカリと見えるほどの穴が空き、
崩れカスがパラパラと落ちるまま、
ヴァレンタインの怒りは収まらない。

「これでも僕は騎士団で医療部隊だったんですよヴァレンタインさん
 そして残念ながら僕もその頃はそれと近い気持ちを持っていました」

「ならば僕の気持ちと考え分かるはずだろう!」

「分かりますよ。命を助けたい。それが生き甲斐。僕もでした。
 でもそれもある日まで。その日を境に僕の考えは変わります。
 僕はその日。大事な人を失いました。・・・・・・・仕事でした。
 僕がいないと死んでしまう目の前の100人
 僕がいかないと死んでしまうたった一人のその人
 僕は100をとりました。仕事と正論。それが僕を無理矢理納得させました
 だけどその人が死んで気づいたんです。
 赤の他人100人なんかより僕はその人の方を助けたかったと」

アレックスの言葉。
およそ聖騎士とは思えない考え方。
だがレイズは納得する。
それは自分と同じ考えだからだ。
いや、とても《MD》らしい考え方とも言える。
ドジャーがアレックスを気に入ったのもこの辺りなのかもしれない

「人の価値なんて人それぞれで変わりますって事が言いたいんです
 ヴァレンタインさん。あなたの考えは理想です。正論です
 でもそれは神がゲームで算数をするような感覚です
 それは世の理の中ではとても正論ですが・・・・・・・・・人間らしき考えじゃありません」

人間らしい・・・・か

「初めてあなたに会ったときどうしようもなくイライラしました。
 それはきっと昔の僕を思い出してしまったからかもしれません」

「もういい・・・・・・・お前の話なんてどうでもいい
 ・・・・ひひ・・・・分かった事はもう話しても無駄だと言う事だ!」

ヴァレンタインが両手で十字を切ったと思うと
その両手をアレックスとレイズに突き出した。
プレイア。
アレックスとレイズが思い切り吹き飛ぶ。
そして壁に叩きつけられた。
打ちつけた背中をさすりながらレイズは言う

「・・・・・・・・この距離でも・・・・・プレイアを受け続けると・・・・・ヤバい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「えぇ・・・・・強い。このままでは僕達はヴァレンタインさんに近づけもしない
 この長い廊下が不利というのもありますが、実力の無さが悔やまれます」

そう言うなりアレックスはWISのコールを始めた。

「・・・・・・・・・・・なんだ?・・・・・・・・誰へのWISだ?・・・・・・・・」
「残念ですが僕はギヴです。僕らで倒せないなら倒せる人を呼ぶまでです」
「・・・・・・・・・・・メッツか・・・・・・・・・たしかに俺らの中では・・・・一番強い手札だ・・・・」
「ジャック(出した手札)で倒せないならキング(もっと強い手札)を出せってとこですね」

メッツにWISが繋がる。
が、

[わりぃ!今手が離せねぇ!]

ツーツー・・・・

すぐに通信は切れてしまった。

「あらら・・・・」
「・・・・・・・・・・・・こんな時に役に立たないなんて・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・」
「でも今死にそうなのは僕達ですけどね」
「・・・・・・・・・・万事休す・・・・・・・・か・・・・・・・」

レイズは苦い顔をする。
強い敵を前に打つ手なし。
その状況が作った顔だ。
それを見てアレックスが言う。

「今日はレイズさんらしくないですね?」
「・・・・・・・・・・・・・は?・・・・」
「なんていうか暗いですよレイズさん」
「・・・・・・は?・・・・・・・何言ってんだ・・・・・・・・・俺はいつも暗いだろ・・・・・・・・・」
「ハハ、自覚はあるんですね。」
「・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・」
「何ていうかやっぱいつものレイズさんらしくないです
 いつもは雰囲気が暗いんですよ。でも今日は気持ちの底まで暗くなってる感じがします
 まぁヴァレンタインさんの事もありますから当然かもしれませんけどね」
「・・・・・・・・・・」

レイズは少しポカンとした
この男は何をこんな時に・・・・・
だが・・・・

レイズはクックックと笑った

たしかにそうかもしれない
今日はいろいろと考えすぎた
そしてその事に関しても先ほどアレックスが言ったとおりなのだ
難しいコトはない。
人間、自分に大切なものの方が価値があるに決まっている
俺は俺が大事で、無関係な奴の面倒まで無料で見ようとは思わない。
それはごく当然で、それ以上のことはない。

「・・・・・・・・アレックス・・・・・・・」
「はい?」
「・・・・・・・・・・お前ホント死ねばいいのに・・・・・・・」
「イヤですよ。僕はおせっかいが好きなんです」

レイズはクックと笑う。
その笑い顔を見てアレックスも笑った。

「レイズさんらしくなってきましたね」
「・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・俺らしく・・・・・・いくとするよ・・・・・・・」

レイズは一歩、足を踏み出した
また一歩とヴァレンタインへとゆっくり歩み寄っていった。

「・・・・・・・院長・・・・・・・・いろいろと勉強になる話・・・・・・・・・ありがとうございます・・・・・」

「おぉ!Dr.レイズ!やっと僕の気持ちが分かってくれたか!?」

「・・・・・・・・・いいえ・・・・・・・・やはり俺には・・・・・俺の考えしかありません・・・・・・・・
 ・・・・・・赤の他人の命なんて・・・・・・・・・クソ食らえです・・・・・・・勝手に死ねばいいのに・・・・・・・
 ・・・・・・・すべての命の価値が平等・・・・・・おこりえない話だ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・結局・・・・・・自分にとってそいつが・・・・・・・どれだけの価値があるかです・・・・・」

「・・・・・・失望したよDr.レイズ」

ヴァレンタインがプレイアを放つ。
そのプレイアはわざと外したのだろう。
直撃はせず、レイズの肩をえぐった。
だがレイズはそのまま歩き続ける。
肩の傷はブレシングヘルスによって見る見る回復していった

「・・・・・・・・・院長・・・・・・・あなたは今・・・・・俺の敵だ・・・・・
 ・・・・・・・・・・・価値としてはマイナス・・・・・つまり・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・」

「・・・・・ひひ・・・・それはひどいなDr.レイズ
 だがその回復量。とても興味深いよ。
 いろいろ実験したくなる・・・・・ひひ・・・・・例えばこうなったらどうなのかな?」

ヴァレンタインのプレイアが、
また十字を描いた後に放たれた。
今度のプレイアはレイズの右手に向いていた。
そして
直撃した。

「レイズさん!!」

レイズの右手がちぎれ、吹っ飛ぶ。
右手は深刻なダメージを受けたまま転がった。
地面に落ちたレイズの右腕は、原型を留めていなかった。
だがレイズは歩みを止めない。
まるで右手なんてただハンカチを落とした程度の反応。
そして距離はすでに走ればすぐそこといった所まできている。

「ひるまないか・・・・・でもその右手はもう使い物にならないだろうね
 僕のプレイアでグチャグチャだ。再生も不可能だろう。
 だがやはり君の体質は興味深い。実験の価値がある。殺してそうしよう。
 本当に残念だよDr.レイズ。これでお別れ・・・・・・・・・・トドメだ」

ヴァレンタインが右手で十字をかき、構える。
その右手の向く先は・・・・レイズの頭だった。
直撃したら間違いなくレイズの頭はポップコーンのように破裂する

「医学のために死んでくれDr.レイズ」

プレイアが発射されるその瞬間だった。
ヴァレンタインのその右手。
肩から下。

いつの間にか・・・・・・・・・・・・・無かった

「あぁ!?僕の右腕は?!」

「俺のいないとこで話盛り上げてんじゃねぇよ・・・ったく」

ドジャーだった。
ヴァレンタインが開けた天井の穴。
そこから落ちてきてヴァレンタインの右腕をダガーで切り落としたのだ。

「・・・・とと」

だがドジャーはやはり貧血の事もあり、フラフラとすぐそこの壁へともたれかかった。

「カッ、シマらねぇな・・・ったく。パーティのトリは俺が務めるベキ大役なんだけどな
 今回パーティへは病欠でダンスも踊れねぇ。シマらねぇ。シマらねぇなぁ俺。
 だが、やっぱこの正念場で活躍するのがこのドジャー様だねぇ
 残念だったなヴァレンタイン。これから便所も大変だぜぇ?」

「貴様!このクソ盗賊が!僕の大事な右腕を!!!これじゃぁもう手術ができな・・・・」

ヴァレンタインはそこでハッとして振り向く。
もう眼前にレイズが迫っていたのだ。
咄嗟に左手で十字を画こうとする、
が、遅かった。
すでにレイズはプレイアの動作を終えていた。

偶然が重なった
普段のヴァレンタインのプレイアのスピードなら
この時、不意打ちでもレイズの攻撃に反応できた。
だがその時ヴァレンタインの体がキシんだ。
リヨンからもらった一撃がこの時になって響いたのだった。

「あっのザコ騎・・・・」

レイズの左手がヴァレンタインに向けられた

「・・・・・・・・・・・・痛いと思いますよ・・・・・・・・院長・・・・・・・・・・」

0距離でプレイアが発射された。

「ウガァア!!」

ヴァレンタインの左手が吹っ飛ぶ。
寸前の所でなんとかレイズのプレイアの直撃は避けたが左手に当たったのだ。

だが、ドジャーに落とされた右手
レイズのプレイアで吹っ飛んだ左手
ヴァレンタインは手無しになり、
腕から大量の血を吐き出していた。

「く・・・・そ・・・・」

ヴァレンタインはそのまま地面へとへたりこむ。
腕のない状態。
もうチェックメイトだった。

「・・・・・・・ひひ・・・・・・・・・《GUN'S Revover》の六銃士の一人である僕が・・・
 リヴォルバーNo.4の僕が・・・・・世界一偉大な医者である僕がこんな所で・・・・
 ・・・・・ひひ・・・・・まあいいか。僕の命もまた平等に死が訪れただけの事だな
 ・・・・・・・・Dr.レイズ。・・・・・・・・・・・殺せよ」

「・・・・・・・・・・・はい・・・・・殺します・・・・・・・・」

レイズはヴァレンタインに向かってトドメを刺そうとした。
だがアレックスがそれを手で止める。
そしてアレックスの目線がヴァレンタインに向いた。

「その前に聞かせてくださいヴァレンタインさん」

「・・・・・・・・・・・・なんだ」

アレックスが話しかけたのだが、
アレックスが問おうとする前にドジャーが割り込んだ。
ドジャーは貧血で壁にもたれかかったまま口を開いた。

「あんのクソ生意気なガキ。リコスはどうしたんだ
 状況からいってただ退職したとは考えられねぇ」

「あぁ、あのクソ生意気なガキか」

両手のないヴァレンタイン。
血を延々と垂れ流しながらも
不気味に笑って言った。

「殺したよ・・・・・・ひひ・・・・・・・口封じ・・・・ってのはまぁ名目かな
 本当の理由はね。四肢や内臓を欲しがってる子供の患者がいたんだ
 子供の患者には子供の体をあげないとね。口封じ兼3人の子供患者のために死んでもらった」

「てめっ・・・・・リコスはまだガキだぞ!」

「ガキ?・・・・あぁガキだね。年齢が幼いという意味だ。だがそれになんの意味がある
 "命の価値"は皆に平等。何年生きたかなんて関係ない。子供だからって特別扱いはしない
 ・・・ひひ・・・・僕は全ての命を平等に扱うよ。一人でも多くの人が生きれるように」

アレックスが走って駆け寄り。
そしてヴァレンタインの胸倉を掴む

「違う・・・・・あなたは昔の僕のようだと思った!けどあなたはただの無差別殺人者だ!」
「・・・・・・・・・・アレックス・・・・・・・」

レイズはソっとアレックスの肩に手をかけ、なだめた。
アレックスの手はヴァレンタインを離した。
両手のないヴァレンタインはドサッと地面に落ちた。

「・・・・・・ここからは・・・・・・・・俺に話しをさせてくれ・・・・・」
「・・・・・・・・・」

アレックスは無言で頷くと
貧血でもたれかかっているドジャーに肩を貸し、
その場を離れた。
アレックスとドジャーが見えないところに行ったのを確認し、
ヴァレンタインが口を開いた。

「Dr.レイズ。君は僕が最悪だと思うかい」

「・・・・・・・・・・・はい・・・・・・・・・・・・・」

「そうか。残念だ」

「・・・・・・・あなたはたしかに・・・・・・世界の誰よりも・・・・・・命を平等に見ていた・・・・・・
 ・・・・・・・・・だがその分・・・・・・・・・・ひとつひとつの命を・・・・・軽く見ていた・・・・・・・・」

「ひひ・・・・・・・・そうかもしれないな。だがDr.レイズ。君は違うのかい?」

「・・・・・・・俺は・・・・・・・医者はあくまで仕事です・・・・・・・・金のための・・・・」
 
「・・・・ひひ・・・そうか。医者として、僕はもう少し医学の研究をしたかったが残念だ。
 もうすぐ息もできなくなるだろうね。僕は医学史に名を残す医者になりたかった
 ・・・・なぁ、Dr.レイズ。僕のやってきた事は悪だろうが間違いだろうがどうでもいいんだ
 結果的に、統計的に、僕は誰よりも多くの患者を救った。
 もちろん誰よりも多くの患者を殺した医者でもあるが・・・・・・
 でも、やはりそれでも僕の"一人でも多くの命を救いたい"という気持ちは・・・・失敗かな」

「・・・・・・・・・失敗ですね・・・・・・・
 ・・・・・・・・・あなたは"こう"思う事ができれば・・・・・立派な医者になれたに違いない・・・・・」

「"こう"とは?」

「・・・・・・・・"すべての命を救いたい"・・・・・・・・・」

ヴァレンタインはそれを聞いて、少し無表情になった。
が、また「ひひ」と笑って話を続けた。

「そうかもしれないな・・・・・ひひ・・・・そうかも・・・・あぁそうかもな
 だがまぁもう遅い。もう血の出すぎで意識もモウロウとしてきた
 このまま"世界一偉大な悪行医"として眠る事にするよ
 だけど最後にひとつ頼まれてくれないかDr.レイズ
 最後の最後まで間違いだろうと僕が僕の正論を貫き通すために」

「・・・・・・・・・・なんですか・・・・・・・」

「死んだら・・・・僕の体を患者達に・・・・・・
 カルテNo,14563と34862と66772の患者に僕の体が使えるはずだ
 そして僕の右腕・・・・・ひひ・・・・これは君が使ってくれ。吹き飛ばしてしまって悪かったね」

「・・・・・・・院長・・・・・・」

「"人の命は皆平等"これだけは最後まで僕は曲げない。
 もちろん"皆"とは僕の命も入るさ。僕の命で数人の命が助かるなら・・・・・
 ・・・・・・・・・なぁDr.レイズ。やっぱり僕は立派だろう?」

レイズは目を閉じていくヴァレンタインを見下ろし
少し黙り、
言った

「・・・・・・・・いいえ・・・・・やっぱりあなたのような人は・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・」

ヴァレンタインはそれを聞くと「ひひ」と笑った。

「・・・・じゃぁいつかあの世で討論しようか・・ひひ・・・・・人は誰もがいつか死ぬから平等なのさ
 そう・・・・命はひとつ・・・・・・・・・だから・・・・・・・・・命は・・・・・・・びょう・・・・・」

レイズにとっての唯一の光が・・・・・・・・息を引き取った。














-Queen B-



「で、その右腕がヴァレンタインの右腕だってのか?」

ドジャーは酒を右手に聞く。
テーブルを囲むアレックス・ドジャー・メッツ。そしてレイズ。
レイズは小さく返事をした。
右手は手術によって移植した。
そしてヴァレンタインの右腕はレイズの体に驚くほど馴染んだ。

「人と人の体がそんな簡単にくっつくもんかねぇ?」
「・・・・・・院長と俺の体・・・・・・・血液から骨格までかなり一致していた・・・・・・・
 ・・・・・・・それだけじゃない・・・・・・魔力も右腕だけあふれるように・・・・・・・・・・・」
「本当はヴァレンタインさんはレイズさんの体を移植するために近づいたのかもしれませんね
 そして自分に近い体を探して、近くに置いた」

「カッ!気色悪い事この上ないぜ。やめたやめた!こういう話は酒がマズくなんぜ!」

ドジャーはそう言って酒を流し込んだ。
その横でメッツはすでに酔いつぶれ気味で、テーブルに倒れ掛かっていた。

「ったくだらしねぇなこいつはよぉ」
「でもメッツさんが院内のほとんどの敵を倒したんですよ?」
「・・・・・・・大事な場面で呼んでも・・・・・来なかったけどな・・・・・・」
「メッツさんメッツさん。僕がWISした時何してたんですか?
 戦闘の真っ最中だったんですか?」
「・・・・ぁあ?」

メッツは酔いつぶれた体でなんとか返事をした。

「ガハハ・・・アレックスからWIS来た時か
 ・・・・・クソしてたんだよクソ。ガハハ・・・・・どうしても我慢できなくてな・・・・・」

そう言うなりメッツは酔いつぶれて寝てしまった。
まるでスイッチを入れたように豪快なイビキが始まる。

「戦闘中にクソしてんじゃねぇ!」

そんなメッツをドジャーが殴る。
だがメッツはすでにドジャーの拳の届かぬ夢の世界へ旅立っていた。

「・・・・・・・・・ったく・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・」

レイズがクックックと笑いながらテーブルを立った。

「どこ行くんだレイズ?」
「・・・・・・・・・・・・仕事だ仕事・・・・・・・・・・お前らみたいに・・・・・ヒマじゃないんだよ・・・・・・・・」
「まぁ忙しくて当然ですよね」
「カッ!・・・・ったく信じらんねぇよなぁお前がねぇ」
「じゃぁお仕事頑張って下さいね。"レイズ院長"」
「・・・・・・・・・・・」
「次はレイズの奢りだな」
「・・・・・・・・・・・・・自分で払え・・・・・・・・・」
「カッ!いいじゃねぇか!儲かるんだろ?な?」

レイズが荷物を持って帰ろうとする。
そして最後に言う。

「・・・・・・・・・・次会うまでに死ねばいいのに・・・・・・・・」
「んだとぉ!!」

レイズはクックックと笑い。酒場のドアから出て行った。






面白い奴らだ。
こいつらには値札をつけ難い。
最初から大切なものを数字で表すのは無理なのだという事か
まぁこんなこっ恥ずかしい事考えてるとあいつらに悟られたら死にたくなる
こんな事はもうこれっきりだ
悪魔と呼ばれる人生を再開するとする。
だが・・・・・

「・・・・・・・・・・こんな俺が・・・・・・・・・病院の院長か・・・・・・・・・」

レイズは酒場の前で空を見上げた。

「・・・・・・・・ヴァレンタイン院長・・・・・・
 ・・・・・・結局・・・・・人の命は・・・・・手の届く範囲だけしか・・・・守れないもんだ・・・・・・・・
 ・・・・・・・その中で院長は・・・・・歪んだ救命心が・・・・・・行き過ぎた・・・・・・それだけです・・・・
 ・・・・でも・・・・・他人の命に・・・・興味のない俺なんかより・・・・・どれだけマシか・・・・・」

レイズは"右手"を握り締める。
そしてひとつの決心をした。

「・・・・・・・・・・・・院長・・・・・・・俺はどうしても・・・・・・他人の命なんてクソ食らえですが・・・・・
 ・・・・病院に・・・・・金を払って命を請う人ぐらいは・・・・救ってやろうと思います・・・・・
 ・・・・・あんたの右腕は・・・・・俺のじゃない・・・・・・・だからこの右腕くらいは・・・
 ・・・・・・手の届く命を・・・・・・・・・・隣人を愛してみようかと・・・・・・・・・・・・・・・」



レイズの中で明らかになにかが変わった。

この夜空。
まるでレイズ本人の闇を映し出したような夜空。

その中でたったひとつ輝くヴァレンタインという綺麗な星。
尊敬していたその星は近くで見ると汚い物だったが、

闇夜の心を照らし、

暗闇の中でレイズに方向を定めてくれた星に違いなかった。







                 






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