レイズ15歳
この年で医者と言うのは凄いことらしい

だが
命の価値は平等・・・・・・・
と言われてもまだピンこなかった
自分はずっと人に値札を付けて生きてきた
人の命というのは全て自分にとってどれだけの利益になるか
それ以外にない
人なんてみんな餌のようなものだ

「よ、レイズ!医者業はどうだ?儲かってんのか?カっ!儲かってんだろ?」
「ガハハ!おごれおごれ!」

こういう餌にならない輩もいるが

「・・・・・・・・・ドジャー・・・・・メッツ・・・・・・・お前らはカツアゲで十分儲かってるだろ・・・・・・」
「いいじゃねぇか!命を愛するお医者様になったんだしな!」
「お医者さんは人を大切にするもんだぜぇ?」
「・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・・」

正直こいつらには値札を付け難かった
それがなんでかはよく分からない
損得で動いていた俺だが
なんとも損得の難しい奴らだ

だが今までの理論が通じないのだとすると
こういう感情が光の部分なのかもしれない
闇の感情しかなかった自分にない部分
もしかすると自分にもヴァレンタイン院長のような
素晴らしい聖なる心の破片があるのかもしれない
そう思うと何か得体の知れない嬉しい気持ちが微かに手に入ったが
それも今までの闇の自分自身を否定するようで受け入れ難かった
そう思うたび
自分に死ねばいいのにと言いたい気持ちになった

どうしても自分は世間論的には闇と言われる感情を持っていた
いろいろ命の価値について考えたが
それでもやっぱり分からない
他人の命に興味を持てない
皆死ねばいいのにと思う
これはもうしょうがないことだ

だがヴァレンタイン院長は言う。

「Dr.レイズ。僕は一つでも多くの命を助けたい。皆命は平等なんだから。
 神様は命をたった一つしかくれなかった。だから皆の命の価値は平等なんだ
 その命(一つ)の価値を比べるなんて凄く虚しい事だレイズ」

虚しいか
そうかもしれない
自分は虚しい人間なのかもしれない





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アレックスが先頭となって槍をなぎ払いながら進む
レイズとアレックスは廊下を走っていた
もちろん多くのGUNSのメンバーが立ちはだかる
医者の格好をした奴から私服の奴まで
それをアレックスは槍で払い、突く。
ついでに二人は会話をしながら走って進んでいた
お互いの顔を見ることのない会話だった
走りながらアレックスは言う。

「レイズさん。僕はさっき一瞬ディアンさんをやられてカッとなりました。
 だけど僕は今逆に人を傷つけています。そんな僕をどう思います?」
「・・・・・・・・俺達は聖職者と呼ばれているが・・・・・・・・・・・・聖人じゃない・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・やらなきゃやられる・・・・・・・・・・・じゃぁやるしかないだろ・・・・・・・・・」
「《MD》には聖職者がレイズさんしかいない。だから前から相談したいと思っていました
 助ける命は助けてその逆の事もする。僕はそんな自分がたまに悪魔のように思えてくるんです」
「・・・・・・・・・・悪魔か・・・・・・・それなら俺がそうだ・・・・・・・・・・」
「なんたって『隣人を愛する悪魔』って呼ばれてますしね」
「・・・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・だが・・・・・・・・・・・・"汝の隣人を愛せよ"・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・その言葉の意味がまだ分からない・・・・・・・・・・・・・・」
「僕だって人から見られているほど出来た人間じゃありません
 身近な人間ならともかく、赤の他人の命にまで命を張るかと言われたら・・・・・無理です」
「・・・・・・・・・・・・だが誰にでも平等に・・・・・・・命を扱える人を・・・・・俺は知っていた・・・・・・・・」
「・・・・・ヴァレンタインさんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

そう話している間に
一つ階段を下りた
先ほどまでいた階の一個下の階
5階だ
まぁ階の数なんてたいした問題じゃない
大事なのはここにヴァレンタインがいるかどうかという事だ

「上の階に敵が固まっている分ここは敵が少ないですね」
「・・・・・・・・すぐそこの角を曲がるって長い廊下を越えると・・・・・・・・・・・放送室だ・・・・・・」

レイズが示した"そこの角"
ふと違和感に気付く。
とりあえずそこの角には一人の怪我人が倒れていた
いや、死体かもしれない。
それは《GUN'S Revolver》の下っ端とかそういうものじゃない
それは見たことのある剣士。
リヨンだった。

「リヨンさん!」

アレックスがかけよる。
そしてリヨンに手を伸ばしたが、
もう遅かった。
彼は事切れていた。
アレックスがすぐさま十字を切り、
そして両手の指を組んで祈った。
魔方陣がリヨンを包む。
光の柱が立ち上る。
リバースだ。
だが・・・

「間に合いませんでした・・・・約30分を超えています
 魂はもう人間のスペルなんかじゃ手の届かない所に・・・・」
「・・・・・・・・」
「リヨンさんほどの腕の持ち主がこんなやられ方をするなんて・・・」
「・・・・・・・・あぁ・・・・・・・・・・・・・衝撃が体の内側までいっている・・・・・・・・
 ・・・・・・プレイアだろうが・・・・・・・これほどの威力のプレイアは・・・信じられない・・・・・・・・・」

アレックスはリヨンの後の壁を見る。
そこはコンクリートだというのにヒビ入り、砕けていた。

「・・・・・・・・・・・リヨンは・・・・・・・・ここに叩きつけられたようだな・・・・・・・・・・」
「コンクリートをえぐるほどのプレイアですか・・・・聖職者の力を逸し・・・・・・」

アレックスが壁を見ながら話している時だった。
突然アレックスがその壁へとぶつかった。
いや何かの衝撃をうけて弾きとばされたのだ。

「ぐ・・・・」

頭を思いっきり壁に打ち付けたアレックスは
血を垂らしながら振り向く。
その先。
廊下の長い長い先。
30mはあるんじゃないだろうか。
そこでヴァレンタインは手を突き出していた。

「やぁ、騎士君とDr.レイズ。また会ったね」

アレックスは頭から流れる血を拭い、
軽くヒールをかけた。

「・・・・・・・・・・・・・・大丈夫か・・・・・・・アレックス・・・・・・・・・・・・」
「あ、はい。ほんと頭をぶつけた程度です。
 距離があったからプレイアの衝撃も弱かったのでしょう。でも・・・・」
「・・・・・・・・あぁ・・・・あの距離でプレイアが届くなんて・・・・・聞いたこともない・・・・・・・」
「ですよね。それほど強力なプレイアという事ですか・・・」
「・・・・・・・・・この実力・・・・・・《GUN'S Revolver》の・・・・・・・・・・六銃士の一人ってのは・・・・・
 ・・・・・・・・・やはり嘘じゃなかったのか・・・・・・・・・・・」

それは嘘であってほしいというレイズの心が反映された言葉だった

「すげぇぜ!さすがヴァレンタイン様!六銃士(リヴォルバー)No.4の力はさすがだ!」

ヴァレンタインの後ろに一人の医者がいた
GUNSのメンバーなのだろう
虎の威を狩る狐とでもいうのか
ヴァレンタインの後ろで偉そうに大口を叩く

「やいてめぇら!ヴァレンタイン様に恐れおおのけよ!
 ヴァレンタイン様はギルドでは『ONEプレイヤー』って呼ばれてるんだ!
 もちろん得意技のプレイアとかけてあってな!
 そんでONE!一つしかないもの!それは命!そしてプレイヤー!
 つまり"命で遊ぶ者"という意・・・・」

ヴァレンタインはしゃべっていた自分の部下を地面に叩き付けた

「何をするんですかヴァレンタインさ・・・ゴガァ」

ヴァレンタインはその部下の顔を踏みつけた

「僕がそのあだ名が気に入っていないのを知らないのか?
 僕はいつでも命は平等に扱っている。
 "命で遊んでいる"なんてふざけた呼び名で呼ぶんじゃない!!」

ヴァレンタインは右手で十字を切った
そして真下へ向けた
自分の足の下敷きになっている部下へと・・・・・。
見えはしないが衝撃が数回。
結果は目に見えている
壁をえぐるほどのプレイア
それを至近距離で連発
しかも吹っ飛ばされることなく床へと叩きつけられるのだ
その医者は簡単に血浸しになった
そして地面にひびが入り、
死んだ医者はめり込んでいた

「ひひ・・・・・・Dr.レイズ。騎士君。僕の力は分かったかい?」

「「・・・・・・・・・・」」

ただ部下をプレイアで殺しただけの事。
それで片付けられる出来事ではなかった。
それはヴァレンタインの言うと通り、実力を見せ付けられる思いだった。
同じ聖職者であるアレックスとレイズにはそのプレイア凄さが分かる。
威力。
これはもう話すべくなく物凄いものである。
そしてそれ以上に特筆すべきは・・・・・・・・連射。
プレイアの連射など聞いたことも無い。
だがヴァレンタインはやっていたのだ。
あの化け物じみた攻撃力のプレイアを・・・・・数発連射するという事を・・・・

「・・・・・・・・・ひひ・・・・・・・・Dr.レイズ。僕としては出切れば君にはここで退いてほしい。
 僕の手で君を殺したくは無いんだよ。分かるだろ?
 君はきっといつか僕の考えが分かってくれるだろうと期待してたんだから」

「・・・・・・・・・・」
「戸惑ってるヒマはありませんよレイズさん」

やるしかなかった。
明らかに強い相手だったが、
シンボルオブジェクトを狙っている限り、いつか戦わなくてはならない存在。
ならばむしろ一人でいる今が好機。
そしてヴァレンタインを逃せばオブジェの所持が大々的にバレる。
《GUN'S Revolver》に団体で責められたらひとたまりも無い。

アレックスは右手で十字を描いた
この長い廊下では近づく前にプレイアを食らってしまうだろう
ならばこっちも遠距離攻撃
パージフレアだ。
パージは遠距離スペル。
ヴァレンタインが凄いとはいえプレイアはもともと近距離型スペル
この距離でなら対抗できるはずだ
・・・・そうアレックスは読んでいた。
だが、

「くだらん・・・・・・・ひひ」

それよりも先にヴァレンタインが十字を描く
速い
スペル発動までの動作が。
そしてヴァレンタインの手の平が前に突き出される

「うわっ!」

アレックスにプレイアの衝撃がぶつかる。
先ほどより強い。
この遠距離においても
中級者級のプレイアの威力があった。
アレックスはまた吹っ飛んで壁にぶつかる

「くっ・・・・・速射も可能ですか」

完璧・・・・という他ないプレイアだった。
"威力"、"連射"、"発射速度"。
さらにナース達にプレイアを放った時の事を思い出せば
"両手撃ち"もできるのだ。
やろうと思えば、
アレックスとレイズ両方を相手する事なんて他愛もない事だろう

「ひひ・・・・命を大事にしろよお前。命はたった一つしかない
 せっかく平等に命を授かったのにこんな所で落とす気かい?
 逃がしてやると言っているんだ。命を粗末にするなよ・・・・・」

命を粗末にするな?

「その割にはポンポンと人を殺していますねヴァレンタインさん」
「・・・・・・・・・・院長・・・・・・あなたは・・・・・俺なんかとは違い・・・・・
 ・・・・・・命を大事にする人だと・・・・・・・・・そうずっと思っていたのに・・・・・・・・・・」

レイズのその言葉に対し
ヴァレンタインは少し「ひひ」と笑った後
言葉を返した

「命。そうさ。命は大事さ。Dr.レイズ。僕はそれはよく分かっている
 そして僕は今でも多くの命を助けようと努力しているよ」

「そうは見えませんが」

「・・・・ひひ・・・・心外だな。僕の功績を知らないのかい?僕は数々の奇跡を起こしている
 原因不明の難病。不治の病。身体障害者
 助からないはずだったのに僕のお陰で助かった多くの人々!
 命は価値は平等だ!一つでも多くの命が助かるために僕はなんでもした!
 だが他の人々にはできないのに僕にはそんな事ができたか・・・・わかるかい?」

アレックスとレイズは言葉を返さなかった。
ヴァレンタインがニヤニヤしている中、
少しの沈黙が流れた後
レイズがボソりと言った。

「・・・・・・まさか・・・・・・・・・・・・人を・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「さすがDr.レイズ!!正解。やはり君は僕の気持ちを分かってくれるのだね!
 そう、人体実験だよ。時には死体を。時には・・・・・生きた人をってね」

「・・・・・・・・・・・・」

「失望した目で見ないでくれって言ってるだろDr.レイズ
 僕はこれから"正論"を言う。誰にも曲げられない"正論"をね」

「・・・・・・・・・」
「あなたから正論?信じられないですね」

「黙って聞いてろ!!・・・・・・・・・重要な話だ。
 まず患者の健康体を目指すなら健康体を知らなければならない
 だがネズミや死体の研究じゃ限界ってもんがある。
 つまりどうしても健康体での研究が一番なんだ
 分かるか?分かるだろう?
 人は皆それを分かっているに決まってる。
 だがやらない。やれない。最善の方法なのに・・・・・・だから僕がやっているわけだ」

「最善・・・・ですか?」

「そうだ!最善だ!一つの命で実験するだけでより多くの人を助けられるかもしれないんだ!」

「あなたが『ONEプレイヤー』と呼ばれるわけがよく分かりますね」
「・・・・・・・院長・・・・・・・・・ディアンの体も・・・・・・・実験に使ったってわけですか・・・・・・・」

「あのクソ騎士の体?調べたのか。まぁあれは実験じゃない。
 理由は一つ。彼はあまりにも生き生きとした体をお持ちだったからだ
 簡単に言おう。彼の内臓をあげたんだよ。いろんな人にね
 病院にはいろんな人がいる。
 肝臓さえあれば・・・・胃さえ交換できれば・・・・
 健康な内臓が欲しい・・・・この体の欠陥さえ治れば・・・・ってな具合にね
 そんな人達のために彼には死んでもらった」

「・・・・院長・・・・・・・・ディアンを・・・・・・・犠牲にしたって事ですか・・・・・・・・」
「あ・・・あなたそれでも医者ですか?!」

「医者ですかだって?・・・・ひひ・・・・・何を言ってるんだ。
 僕ほど人の命を助けるために最善を尽くしているものはいないよ?
 もし1人の犠牲で5人が助かるなら
 もし10人の犠牲で100人が助かるなら
 もし100人の犠牲で数千人が助かるなら・・・・・やらないわけにはいかないだろ?
 命は皆平等だ。より多くの命が助かった方がいいに決まってる
 正論だろ?
 一人の体がより多くの人生きている人の糧となるなら・・・・・・・
 それは尊い犠牲だと思わないか?
 実際あのクソ騎士一人の体で4人の尊い命がが助かったんだ」

「・・・・・・・」

「反論できないだろう。それは僕がいう事が正論だからだ
 僕が世界の聖職者の・・・・医者の・・・・・いや、命を扱う者の中で一番正しい!
 命は全てに平等!すべての命には同じ価値がある!
 それを悟り!実際により多くの命を助けている僕に誰が文句を言えよう!
 お前らは二人とも聖職者だから分かるだろう!?この尊く!そして正しい考えを!
 そして僕は言う!いや!僕にしか言えない!それは医者として最上級の言葉!
 "一人でも多くの人の命を救う"という事を!!」

レイズは黙った。
もう頭の中がごちゃごちゃだといった感じだ。
尊敬していたヴァレンタンの本音を聞いた、
だが、それは今までと違う考え方ではない。
命を平等に考え、ひいき目無しで多くの命を助けようとした結果。
そう、実際結果が出ている。
ヴァレンタインの行動で多くの命が助かっているのだ。
だが・・・・
レイズにはもうどれが正しい事なのか分からなかった。
いや、間違いなくヴァレンタインの言う事が正論で間違いなかった。

そんな中
・・・・・・アレックスが一言返した。


「"人の命は平等"・・・・ですか。ありえないですね」


















                 






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