ルアス99番街

この街じゃぁ人を殺すのなんて当然だ

だって殺さないと生きていけないから
何かを手に入れるためには何かを奪わなければならない。

レイズ12歳
すでに殺しが仕事になっていた
奪うにしろ
頼まれるにしろ
殺しは金になる

命には価値がある事にも気付いていた
簡単な問題だ
全ての人間には値札を付ける事ができる

例えば昨日殺したオッサンは
パンと水と4000グロッドを持っていた。
つまりそいつの命の値段は4100グロッドってところか

命の価値とはそういうもんだろう
人の命を勘定していけないだと?
死ねばいいのに
売ると500グロッドになるウサギ
それを狩るのと何が違うんだ

いつもどおりのある晴れた日
一人の男を追い詰めた
だがこの男は何一つ持ってやしなかった
金もなければ食料もない
あるのは気に食わないツラだけだ
俺がこいつに右手を振り落として殺すには
約1グロッド分ほどのカロリーを消費するだろう
つまりこいつの命の価値は-1グロッドだ
まぁいいと思って右手を振り落とそうとした時だ
その価値無し男はこう言った

「助けてくれ!命だけは!金ならどれだけでも払う!今は払えないが稼いで必ず払うから!!!」

俺はその時始めて気付く


"命は奪うより救う方が儲かる"


それからはまぁ

死にかけを探すか
死にかけを自分で作るか

そんな生活が続いた

どちらにしろ99番街では楽な仕事

そしてやけに金になる仕事だった





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S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<医者とNo.4と命の価値>>






「絶対俺の勝ちだったっての!」
「まだ言ってるんですか?」

アレックスとドジャーはミルレス白十字病院に居た。
薬品くさい廊下を歩きながらしゃべる二人。
ドジャーは少しムキになりながら、
アレックスの方は呆れながらしゃべっていた。

「まぁ"唯一"自分だけ負けたのを認めちゃえばいいのに」
「そこを強調すんじゃねぇ!それに俺は負けに納得いってねぇからな!」
「・・・・・」

強情な人だ・・・・
まぁたしかに実際の戦闘なら死ぬか生きるかだろうからいろいろあるだろうけど
あれは試合だ
負けは負けと認めればいいのに・・・・。

「もう終わった事はいいじゃないですか。食べて忘れる。ね?それでいいでしょ?」
「俺はそんな単純馬鹿じゃねぇんだよ!プライドって奴があんだよ!プ・ラ・イ・ド!」

それは僕にプライドがないって事か・・・
まぁたしかにこだわったりする気持ちとかはないけどね
プライドなんて重っくるしいものが無くてもご飯はおいしいし

「大体心が全壊もなにも、向こうは道場が火事で半壊ですよ?
 向こうの損害のが断然大きいんですからもう忘れちゃえばいいじゃないですか」
「ケッ」

昨日の火事はルアスの自治体が総出で出動する大騒ぎになった。
もちろん新聞にはデカデカと載った。
アレックス達はその前に逃げたが、
まぁ少し悪い気もしないでもない。
それでまぁ軽い見舞いがてら病院にも来ているわけだ

「で、まぁ"コレ"の持ち主だけ適当に洗ってみるか
 気がかりってのは片付けとかねぇと酒もまじぃ」
「そうですね。まあ僕はいつ何を食べてもおいしいですけどね」

ドジャーが"コレ"と言った物
ドジャーの手の上に転がるのは黒こげのWISオーブだった。
実はこれ
昨日火事の前に逃げられた怪しい男の白衣のポケットに入っていたものだった。
白衣とその他は焼けてしまったのだがこれだけはかろうじて残っていた
そして今日このオーブを手がかりに昨日の怪しい男を探すべく病院に来たのだった
・・・・とまぁそうは言っても
別に昨日のその男が自分らに危害を与えたわけでもなく、
怪しいので念のためといったところだ
見つからないなら見つからないでいい
実際こんなオーブだけで見つけようもないだろうし、
二人はかなり軽い気分で探していた

「そういえばメッツさんは?」
「あぁ、なんかまだ入院してたときの個室がまだ空いてるからっつって寝に行った」
「まぁメッツさんは人探しなんか興味ないでしょうからね」
「カッ!俺だってそこまで興味ねぇ。適当にさっさと探すぞ」

ドジャーがふぁーっとアクビをするように手を挙げた。
ふと
そこを一人の男・・・・医者が横切っていった。
その男はいかにも怪しい・・・
まるで何か死を予感させるような雰囲気を漂わせていた。
闇を漂わす男・・・・
・・・・
だがまぁその男は関係ないだろう
何故なら

「おいレイズ。何黙って通り過ぎてんだよ!」

そこで横切ったレイズは足を止めた。
フッ・・・と振り返る姿はまるで幽霊のようだ。
その姿
アレックスはまだ見慣れない

「・・・・・・・・・・・・病院に用もないのに・・・・・・・お前らがいる時点で・・・・・・
 ・・・・・・・・・面倒事にきまってるだろ・・・・・・・・・俺は仕事中だ・・・・・・」
「用がないだぁ?俺らをヒマ人みてぇによぉ
 用がなけりゃこんな薬くせぇ所こるわけねぇだろが」
「・・・・・・・・その用が・・・・・面倒事なんだろ・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・」

レイズは白衣に身を包んだ手を小さく広げてため息を吐いた。
仕事で疲れているのかいつもの怖い笑い声はない

「ま、まぁ聞いてくださいレイズさん。昨日はWISで言いそびれたんですが
 昨日ここの医者らしき怪しい人がいましてね。探してるんです」
「・・・・・・・・・・この大病院に・・・・・・・・・どれだけ医者がいると思ってるんだ・・・・・・・・・・」
「手がかりはこれだけなんです」

そう言ってアレックスはドジャーから黒焦げのWISオーブを奪い取り
レイズに差し出した。

「・・・・・・・・・なんか個人情報・・・・・・・・入ってなかったのか・・・・・・・」
「半分壊れててよぉ。メモ箱のデータは吹っ飛んでるし。大概文字化けしてやがる」
「通信もできないんですよ」
「・・・・・・・・・面倒だな・・・・・・・」

レイズは適当にWISオーブをいじってみた
そこで何かを起動させた音がした。

「あ、レイズさん。ギルドリストを見ようとしても無駄でしたよ
 やっぱり文字化けしてて何もわからなかったんです」
「・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・」
「へ?」
「・・・・・・アレックスなら・・・・・これくらいは気付きそうなものを・・・・・・・・・」
「どういうこった?」
「・・・・・・・・・・文字化けしてても・・・・・・・リストの人数見て・・・・・・・何も思わなかったのか・・・・・・・・」

そう言ってレイズはWISオーブをアレックスに放り投げた。
受け取ったアレックスはなんだろうとWISオーブを眺める。
そこには名前は読み取れなくとも
莫大な数のメンバーリストが表示されていた

「あ・・・・・なるほど」
「なんなんだよ?」
「スクロールしてなかったから分からなかったけど
 このギルドの人数の総計・・・・・・・・・・・ざっと6・700います」
「・・・・・で?」
「・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・・・・そんなギルド・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・・・・マイソシアにはひとつしかないだろ・・・・・・・・・・」

ドジャーは「あぁ」と言って手をポンと叩いた。

「《GUN'S Revolver》か」

《 GUN'S Revolver(ガンズ リヴォルヴァー) 》
現在のマイソシアで世界最高・最強のギルドである。
数・質どちらをもってもとびぬけて最強のこのギルドは
騎士団の終焉戦争でも攻城側の主力であり
王国騎士団亡き今、さらに勢力を広げている

「・・・・このオーブの持ち主がGUNSのメンバーだとしたら・・・・・やっかいですね」
「あぁ、もし昨日の一件で俺らがオブジェを所持している事がGUNSにバレたら・・・・」

はっきりいって一溜まりもないだろう
なにせ《GUN's Revolver》は傘下のギルドも加えると
数の合計は4ケタを軽く超えると言われている。

「・・・・・・・・・・まぁ・・・・・・・・・・・すぐには大丈夫だろ・・・・・・・・・・・」
「あぁん?なんでだ」
「大ギルドだから上層部まで連絡を回すのは簡単じゃないって事です
 WISオーブはこの通り壊れて僕達の手元にありますからギルド連絡もできないでしょう
 それに最近オブジェに関するデマが流出しまわっていますから真偽確認も大変でしょう」
「・・・・・・・・何にしろ危ねぇっちゃ危ねぇな。それも時間の問題だ」
「本気で昨日の医者を探さないと行けませんね」
「・・・・・・・・・面倒事になる前に・・・・・・・・・・・俺も手伝ってやるよ・・・・・・」
「助かります。何かこの医者を探す手がかりとかないですか?」
「・・・・・・・・・ひとつ・・・・・・・・気になる事はある・・・・・・・・・」
「なんだ?」
「・・・・・・・・・・Dr.リコスが・・・・・・・・・・昨日漬けで退職した・・・・・・・・」

アレックスとドジャーは顔を見合わせた

「クサいですね」
「あぁ、あのガキが自分の自信の象徴でもある医者業を簡単に辞めるとは思えねぇ」
「・・・・・・・・まぁ・・・・・・・他にも怪しい事はたくさんあるけど・・・・・・・・
 ・・・・・・・・・・・病院ってのは・・・・・・・・・元から怪しいもんだし・・・・・・・・・・・」

「何の話をしてるんだいDr.レイズ」

廊下の真ん中で立ち話をしていたアレックスとドジャーとレイズ
そこに一人の男が話しかけてきた。
その男は偉そうな白衣に身を纏った医者だった。
両サイドに茶髪のナースと黒髪のナースを引き連れている。

「・・・・・・・いえ・・・・・・・・・・・なんでもないですヴァレンタイン院長・・・・・・・・」

院長?
この人がこのミルレス白十字病院の院長なのか。
医者気質な爽やかそうな顔をしている。
年は40そこそこといったところか。

「病院で患者が不安になるような話は感心せんよ」

「・・・・・・すいません・・・・・・」

「分かってくれればいいんだDr.レイズ。君には期待してるんだからね
 いつも言っているが命ってのは皆に平等だ。皆に同じ価値がある。
 僕達医者がそこさえ分かっていれば皆が価値ある命を持てるものだよ」

そうニコリとヴァレンタイン院長は笑った。

「ヴァレンタイン院長。救急患者の様子を見にいかないと」
「夕方にはオペもありますし急がれたほうが」
「おぉそうだった。ではDr.レイズ。これで失礼させてもらうよ」

両脇の茶髪と黒髪のナースに急かされ
ヴァレンタイン院長はそこを後にした。

「なんかむかつく野郎だな。皆の命の価値は平等だぁ?
 あぁいう戯言吐く奴が一番嫌いだぜ。自分はその命で稼いでるくせによぉ」
「・・・・・・・・院長の事を悪く言うな・・・・・・・・・・」
「あいあい」
「でも・・・・・・」

アレックスが言葉を挟んだ

「でも・・・・・あの人はたしかに胡散臭い」
「あん?俺はそこまでは言ってねぇぞ」
「いや、なんとなくなんですが・・・・・これでも僕は王国騎士団で医者業を行ってました
 だから何かひっかかるんですあの人。何か・・・・・・・・
 言ってることも雰囲気も素晴らしい人に思えるんですが・・・・・・・」
「・・・・・・・・院長を・・・・・・・・・・疑ってるのか・・・・・・・」
「別に昨日の医者があのヴァレンタインさんだとは言ってません
 ですが少し彼にあたってみていいですか?」
「・・・・・・・・・・・」
「そんな顔をすんなレイズ。なんだかんだで手がかりがねぇんだ
 そういう時に病院をよく知る院長にあたるのは普通だろ?」
「・・・・・・・分かった・・・・・・・・・・・・・・だが失礼があるようなら・・・・・・・・・・」
「わぁーったわぁーった」

そうしてアレックス・ドジャー・レイズの三人は院長の後を追った












                 






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