「さぁさぁ、俺の相手は誰ですか・・・・っとぉ」

ヤンキは道場の中心に立ち、
黒い剣。モノソードを肩に担ぎ
ドジャー達をなめるような目で見ていた。

「剣士か、今度こそ拙者がゆくか・・・・」

道場の壁にもたれていたイスカだが、
体を起こし、道場の中心へと歩いていった。

「『人斬りオロチ』・・・・・シシドウ・イスカか・・・っとぉ」
「ほぉ、通り名はともかく拙者の名まで知っておるとは」
「そりゃぁ知ってるぜ、有名だからな。逆に俺の事は知ってるか?・・・・・・イスカさんよぉ」
「ふん、御免だがな、拙者はお主の事など何一つ知らぬ」
「お・・・っとぉ。そりゃぁ残念。じゃぁ自己紹介だ
 俺の名はヤンキ。《騎士の心道場》の"騎四剣"が一人。ヨーキ=ヤンキですよ・・・・っとぉ
 世間じゃ『千刃烏(せんばがらす)』と呼ばれてる。イカすだろ?」
「・・・・・・・・面白い名であるな」
「だろぉ?カラスってぇのは黒いモノソードを使う俺にピッタリ・・・・」
「否、そこではない」
「あ?」
「お主の名前・・・・名が後だな・・・・。99番街の出か」

そのイスカの言葉を聞き、
ヤンキは口元をニヤつかせた。

「正解ですよ・・・・っとぉ。あざといな、説明する必要もなかったみてぇだ
 俺はぁ99番街で育った。だから同じ剣士として有名なあんたの事はご存知ですよ・・・っとぉ」
「99番街に生きていた者が道場・・・・・・おかしな話だな
 無法地帯で生きてきた者が型にはまるなど」
「疲れたんだよ・・・・っとぉ」
「・・・・?」
「いつまでもカラスみてぇにゴミをつつく生活がな
 だが気付くと俺には剣の才があった。そしてそれを必要としてくれる場所もな
 ここはぁ居心地がいいんだよ。カラスが白い世界を望んじゃ悪いですか・・・・っとぉ」
「・・・・・・カラスは死ぬまで黒い鳥だ」
「塗れば白くなれる事に気付いたんだよ・・・・・っとぉ
 さぁおしゃべりは終いだ。あとは剣で語りますかね
 それがこの道場の流儀だ・・・・・・ですよね師範?」

「HAHAHA!あぁそうだ」
「頑張ってくださぃいいい!!ヤンキ先輩ぃいいい!」

ディアンが手を前に出した。
ヤンキが剣を構える。
イスカは鞘に刀身を納めたまま手を添えた。

「始め!」

ディアンの声が言い終わるのよりも
早く、そして速く。
イスカの剣が超速で抜かれ、ヤンキを襲った。
振りぬかれた剣。
一閃。
響く金属音。
イスカの剣はヤンキの剣によって防がれた。

「見抜ける・・・か。お主やりおるな」
「鞘に納めたまま放ってくるのは居合い斬りしかねぇ
 横振りの斬撃がくると分かってれば対応できるわけだ・・・っとぉ」
「知を使うか・・・・・。ゴロツキの武ではない。この道場で学んだようだな」
「お褒めの言葉としてもらっとくぜ・・・っとぉ
 ・・・・・それよりその剣・・・・まさか・・・」

「それはぁぁああ!あぁそれはぁぁセイキマツですヤンキ先輩ぃいいいい!」

「うるせぇぞリヨン!分かってるってんだ!黙って見てろ!・・・・・っとぉ。失礼イスカさんよぉ。
 剣士なら誰もが知ってるその100年に1つの名剣をあんたが持ってるとはな
 だが・・・・・剣道は道具より腕・・・・そうだろ?」
「あぁ、その通りだ」
「ふ、腕にも自信がお有りですか・・・・っとぉ。じゃぁ見せてもらおうか!」

ヤンキがイスカの剣を弾いた。
そして両者に同時に生まれる隙。
それは"うって来い"といってるものだった。

「お主勝負を楽しむ系統の者か・・・・・面白い」

イスカは剣を斜めに振りかぶる。

「半月斬!」

繰り出された斬撃は
振り落とされたと思うと
美しい曲線を描き
そのまま振り上げられる。

「さすが『人斬りオロチ』の腕ってところですか・・・・・っとぉ!!!」

言いながらもヤンキはその太刀筋を剣で受け止めた。
また剣と剣が押し合う鍔迫り合いの形となる。

「ドジャーさん。イスカさんは「半月斬!」・・・・とか言ってましたけど
 あれってルナスラッシュですよね?」
「ん?あぁ。だが世間的にはルナスラッシュっつぅだけだな」
「どういう事ですか?」
「ガハハ!イスカの野郎全部我流なんだよ!」
「つまりスキルブックとか読まずに自分で開発したってこった」

え、そんな・・・
スキルブックは古来からの先人が考え出し吟味された技を示したものだ
なのにイスカさんはそれを自ら編み出したって事か・・・
凄い・・・

「もう一太刀ゆくぞ」

押し合う剣と剣。
イスカは急に刃を寝かせた。
そのままヤンキの剣を沿っていくように剣をずらし、
そして

「半月斬(ルナスラッシュ)!」

今度は逆向きのルナスラッシュ
さすがにヤンキは避けきれず、肩に剣撃を受けた。

「くっ!」

上方に飛ぶ血
しかしヤンキはダメージを受けたからといってそこで退かず。
逆に好機と今度は自分の剣を振り上げる。

「今度はこっちの腕の見せ所ですよ・・・とぉ!」

急速に振り落とされる剣撃。
ただの一撃だがヤンキの腕を見せるには申し分のない一撃だった。
だがイスカは冷静に片足だけ一歩下がり、
体スレスレでその斬撃を交わす。
そしてそのまま攻撃に・・・・

普通はいく。
だがイスカは見逃していなかった。
ヤンキの振り落とされた剣。
その刃が寝かされているのだ。

「ツバメ返しか」

ツバメ返しはV字の2連撃。
先程上から下に振り落とされたヤンキの剣が
休む暇なく今度は上へと斬りかえされた。
イスカは上半身だけを反らす。
それも完全に剣筋を見極めているかのように最小の動きだけ。
ヤンキの剣がイスカの体を沿るように空を斬った。
イスカの避けは完璧だった

「今度は拙者の・・・・」

いつの間にかの一瞬だった。
イスカの腰に切り傷がつけられ、
そして血が吹き出た。
イスカは已む無く後ろへと下がる。

「馬鹿な・・・・2度目の斬りかえしだと?」

腰を押さえながらイスカはヤンキに言った。
ツバメ返しで上に振り上げられたはずのヤンキの剣は
今は下に振り降ろされていた。

「V字の斬撃で終わり・・・・それはツバメ返しですよ・・・・っとぉ」
「ツバメ返し・・・・ではないと言うのか?」
「そうだ・・・っとぉ。これはツバメ返しに俺が改良を加えた剣技だ
 名は"カラス返し"と名づけた。いつかスキルブックに載せたいものだな・・・・・っとぉ」
「1度ではなく2度の斬り返しか・・・・・・・」
「いや・・・・・・」

突然ヤンキはその場で剣を空を斬った。
そして切り返す。
そしてまた切り返す。
そしてまた
そしてまた・・・・・
何度も何度も切り返す。
ノンストップで行われる剣の斬り返し。
そして斬り返しが2桁に入った所でヤンキを剣を止めた。
剣を振り切った状態のままヤンキは言う。

「ツバメとは違う・・・・・俺のカラスは千度飛ぶ」

ヤンキはニヤリと笑い、ゆっくりと剣を構えなおした。
イスカも構えなおす。

「それで『千刃烏』か・・・・美しい剣技だ」
「美しい・・・・か。『人斬りオロチ』にそれを言われると嬉しい限りだ・・・・とぉ
 ・・・・・・・・・・・・・・・斬れるとなるとさらにな!」

ヤンキは瞬時に3歩踏み込み
そして剣を振り落としてきた。

「いち〜に!」

イスカがまたも際どくそれを避ける
それを予測していたかのようにヤンキはまた剣を返し
斬りかえす。
ここまでは通常のツバメ返しと同じ
イスカが見切るのに難はなかった。

「さん!」

三度目の斬撃
先程一度目にしているため
イスカはそれも避けた。

「よん〜ごぉ〜ろっく・・・・っとぉ!」

続く斬り返し
ヤンキは何度も何度も剣を斬り返す。
避けても避けても・・・・
はたから見るとまるで本の同じページを何回も読んでいるようだ。

「凄いですね・・・・」
「あん?」
「あれほどの斬り返しができるヤンキさんもですけど
 それを全部見切るイスカさんも・・・・」
「"見切り"は戦士の必須科目だからな。できねぇバカゴリラがここにいるけどな」
「あぁんドジャー!?俺の事かコラァ!!」
「カカカッ!さ〜ぁな」

「さんじゅう〜!いっち!に!」

「無限に続くんでしょうか・・・あのカラス返しという技は・・・・」
「さぁてな。だが普通に考えれば行く末は分かるぜ」
「・・・・・見切る方の集中力が切れる方が早い・・・・・でしょうね」
「まぁな。・・・・・・あそこにいるのがイスカじゃなけりゃな」

「はっち!きゅう〜!ごじゅう!・・・・っとぉ!」

未だ続く斬撃
上から斬り落としたと思うと
次の瞬間斬り上げられている。
・・・と思っているともう横に斬り払われていて
そこからさらに・・・・
目にも留まらぬヤンキのカラス返し
黒いモノソードによって行われるソレは
まるで本当にカラスが飛び回っているようだった

イスカはそれを上半身だけでかわしたり、
体を半歩ズラしてかわしたり、
それでも避けれないと見切ったら
一歩後ろに下がる。
結果的にもう何歩下がっているのか分からない。

「カッ!やべぇな」
「へ?」
「生き止まり(デッドエンド)だ」

「・・・・む」

イスカの背が道場の壁にぶつかった。
壁に追い込まれたのだ。
その壁の上では大きなディアンの肖像画が笑っていた。

大きな金属音が鳴り響く。
74回目の斬りかえしで
やっとカラスの飛行は止められた。
そしてまたも鍔迫り合いになったが、
壁を背にしているイスカが圧倒的に不利だった。

「ここまでカラス返しを見切った奴は師範以来だ・・・・っとぉ」
「師範とはあそこに立ってる奴であろう?光栄には思えんな・・・・」
「師範の強さを知らないとはな・・・・見せてやりたい所だが
 あんたはここで死ぬんだ・・・・・・残念だな。俺の勝ちだ。
 剣道は隙を与えず、そして相手の隙を作るものと見つけたり・・・・っとぉ
 それの集大成がこの"カラス返し"だ。美しい・・・ともう一度言ってくれよ」
「ふっ・・・・・前言撤回だ」
「なんだ・・・とぉ?」
「名前の通りだな。お主の剣技はカラスのようにしつこいだけの泥まみれの剣技だった
 カラスいつも夕焼けを背に夜の暗闇を目指す。白い世界は遠かったな黒いカラスよ」
「黙れ・・・・負けるお前に何も言われたくねぇよ・・・・とぉ」
「負けておらん」

鍔迫り合いになっている剣と剣。
イスカは自分の剣に力をこめ、
ヤンキの剣ごと自分の剣を力ずくで叩き落した。

「二戦撃!」

そして次の瞬間ヤンキの腹に蹴りを食らわす。
ジャストミートで直撃したその前蹴りでヤンキは吹っ飛んだ。
ヤンキは吹っ飛んだ先でなんとか着地したが、
片膝をついて手で腹を抱えた。

「ゲホっゲホっ!・・・・・・・くっ・・・・ウォーリアーダブルアタック・・・・か・・・とぉ
 我流は斧技でもなんでもあり・・・か」
「なんでもありなのではない・・・・・自分に有るべき技を編み出してきただけだ」
「いい事いうねぇ・・・とぉ。だがそれは俺も同じだ」

ヤンキは立ち上がり、そして剣を軽く構えなおす。

「お主に教えてやろう。先程お主は隙を作らず、そして相手の隙を突くと言っておったが
 今のお主はどうだ?この距離ではカラス返しも使えず、そして隙だらけではないか?」
「完全に攻撃範囲外だ。見極めは重要ですよ・・・・とぉ。
 剣は近距離武具。だからこの距離なら瞬発力に重点を置くのが当然だ」
「理論はそれでいい。が、一見技が無だと思う状況であろうと
 探求すれば技はある。それが先程言った"有るべき技"を編み出すという事だ」
「話が難しいんだ!・・・・・とぉ。修行・勉強なら別でやる。今は試合・斬り合いだ」
「百聞は一見にしかず・・・・とはよく言ったものだ。・・・・・その眼で捕らえるがいい」

イスカは剣を鞘に納める。
体勢を低くし、
そして右手を鞘に添えた。

「居合い斬り?・・・・この距離で?それが"有るべき技"なのか・・・・とぉ
 盲目になってるだけじゃねぇか。その剣があと10m長けりゃ届くかもしれないけどな」
「御託はいらん・・・・耳を澄ませ。そして聞け風の音を。
 そして肌で感じろ・・・・風の吐息を・・・・これからお主に"カミカゼ"が吹き抜ける」

イスカが二・三歩踏み込んだ。
・・・・・所までは誰もが見た。
が、
・・・
消えたというのが適切な表現だろうか
見失った。
まるで風が吹き抜けたように
あまりに自然にフゥっと消えた。

気付くと
ヤンキから体から鮮血が噴出していた。
噴水のような大量の血だった。

イスカはヤンキを通り過ぎた所で
剣を振り切った状態で立っていた。

「これが"カミカゼ"だ。身に染みたであろう。
 剣を身に受け、風にひれ伏されたカラスよ。
 お主の飛んだ空は餌を求めるだけの小さな夕焼けだった事を知ったであろう
 (イスカ)という鳥がいる。他の鳥と違い冬に生き、冬を越える渡り鳥だ。
 血にまみれた赤い鳥は冬の空を越えてきた。拙者は大空を知っている」

イスカはヒュン!と剣の血を払い
ゆっくり剣を鞘に納めていった。
そして収め終わり、剣の鍔がと鞘がカチリと音が鳴った瞬間。
ヤンキの体は倒れ去った。
勝負はあった

「ヤンキ先輩ぃいいいいい!」

リヨンが地面に伏せるヤンキに駆け寄る。
そしてヤンキの体を起こし、揺すった。
だがヤンキは今の一撃で気を失ってしまっているようだ。
いや・・・・
気を失っているのではなく・・・・

アレックスも駆け寄る。
そしてヒールを流し込みながら
ヤンキの体を触れ、診察する。

「際どいですね・・・・すぐに病院に」

リヨンは焦ったようにWISオーブをいじり、
カレワラWIS局に病院までのタクシーを依頼した。

「ヤンキ先輩はぁぁああ!ヤンキ先輩は助かるんだろうなぁああああ!?」
「もう一度言います・・・際どいです」
「そ、それはどういう意味だぁああああ!」
「僕は・・・・・大丈夫なら大丈夫と言います」
「・・・・・・ヤ、ヤンキ先輩ぃいいいいい!」

イスカはドジャー達の方へ歩き。
そしてドスンと地面であぐらをかいた。
そして真っ直ぐ前を・・・・倒れたヤンキを見据えたままドジャーに言った。

「人前での斬り合いは・・・・後味が悪い故に好かんな」
「カッ、殺しの後味がよくなってたまるか」
「だがドジャー。お主もだろうが99番街にいると・・・・」
「慣れ・・・・ってのはあるな。それこそ気分悪ぃがな」

「おい女侍。お前は善か?悪か?」

言い放ったのはディアン
いつの間にかドジャー達の目の前に立ちはだかっていた。

「・・・・この状況では拙者は悪・・・と言わせたいのか?
 ただ力ある拙者が死合に勝ち、あの剣士があぁなったのはその結果であろう」

「HAHAHA!ヤンキはあれぐらいくたばるような育て方はしてない
 ただ、後でヤンキが自分がどうやって敗れたか知りたいだろうからな
 お前が先程の"カミカゼ"とよんでいた技。我流なのだろうがスキルブックにもある技だ
 だが、世間では善悪で呼び名が違うのだ。だから聞いたわけだ!ヤンキに伝えるためにな!
 あの技。善なら"チャージスマッシュ"。悪なら"サベージバッシュ"という
 お前が悪が嫌とあればチャージスマッシュだな。HAHAHA!」

「ふん。好きに呼べ」

「HAHA!あぁ好きにするぜ。なんつっても俺様は五体満足でそれを伝えに行くわけだからな
 ・・・・・・・・・・・・・・次は俺様の番だ。ツィンが遅刻してやがるからな。トリが好きだったんだがな。
 盗賊!テメェはツィンの獲物だ。ギルマス同士で・・・といきたかったが無しだな
 って事でそっちの余りもんの斧持った馬鹿頭!お前がこのディアン様の相手だ!」

メッツは「やっときたか!」と叫んで火の付いた煙草を落とし
そして道場の畳の上で踏み消した。

「ガハハ!退屈で死にそうだったぜ!派手にいかせてもらうぜ?」







                 






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