「退院するっていうのに全然荷物ないんですね」
「ガハハ!余分な物は持たねぇ主義だからな!」
「主義っていうか持つ必要のあるもんがないだけじゃねぇか」
「衣類よりもタバコの方が多いなんて・・・・・」
「ばっかアレックス!いいこと教えてやるぜオラァ!
 昔の人は煙草を服の量ほど持ってたから"一服"っていうらしいぜ?」
「うそでしょ」
「知らねー!ガハハ!!」

ミルレス白十字病院の一室。
長らくメッツの個室であったその部屋にアレックスとドジャーとメッツは居た。
アレックスはドアを開け、
メッツのプレートを外しておいた。

「近所の病室に挨拶とかいいのかよ?」
「いらねーいらねー!」
「まぁ個室でしたしお世話になった病院の方だけでいいでしょ」
「いらねーいらねー!」
「え・・・それくらいの挨拶くらいはした方が・・・・・」
「カッ、いらねーっつってるからいいじゃなねぇかアレックス
 だってこっちは金払ってんだぜ。カ・ネ。むしろ感謝される側だろぅよ」

・・・・
僕だったらドジャーさんやメッツさんのような患者は御免だけどね

「書で帰ろうぜ〜」
「石代高ぇじゃねぇか。ルアスゲートで帰るぞ」
「ドジャーさんそんなケチケチしなくていーじゃないですか〜」
「あん?ゲートで帰れば3人分の食事代が丸一日分浮くんだぜ?」
「じゃぁゲートで帰りましょう!最初から僕は食べ物以外のお金は削ってもいいと思ってました」
「・・・・・・・あっそ」

アレックスの変わり身の早さにドジャーはため息を吐く。
メッツは人事のようにガハハと笑っていた。
まぁそんなこんなで三人は窓際に立つ。
そして窓を開きゲートを開こうとした時だった。

「たぁ〜のもぉ〜〜!!!」







S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<道場と試合と騎四剣>>








ガコンっと蹴り開けられた病室のドアは180度回転して部屋の壁へとぶつかった。

「HAHAHAHA!いたぜ。盗賊と元王国騎士だな」

入ってきたガタイのいい鎧の男。
その男は図々しくもズカズカと病室に入ってきた。

「誰だぁ?」
「誰だっけか」
「あれですよドジャーさん。た《騎士の心道場》の師範の・・・・」
「あぁ〜・・・・っと『ナイトマスター』の・・・・・あぁ〜っと・・・・」

「ディアン様だ!HA〜HAHA!」

名前を聞いてドジャーとアレックスは「あぁそれそれ」とお互いを指差した。
メッツはよく分からないから適当に笑いながら眺めていた。

「で、ディアン"様"。なんの用でございますかね?」
「まさかお見舞いってわけじゃないですよね?」

「てめぇらの容態なんか知ったことか!むしろ見舞いの逆だ!
 早い話・・・・・・・・・・・・・うちと試合をしろ!」

「試合?《騎士の心道場》と?」
「剣道でもやれってのか?くっだらねぇ」

「いや、真剣勝負だ。言葉の通り・・・・・"真剣"でな」

ディアンはニヤリと笑う。
本気なのだろう。

「死合・・・・・ってことですか」
「メンドくせぇな。なんでてめぇらと死合やんなきゃなんねぇんだよ
 やりてぇなら道場内で勝手に殺しあってろ」

「HAHAHAHA!とぼけたって無駄だ!
 この俺様はちゃんと見抜いてんだよぉ!テメェらがあの《MD》なんだろ!
 そして元王国騎士・・・・お前がオブジェを持ってる事も分かってるんだ!」

「知らないなぁアレックス」
「ですね。人違いですね」

「あ、あれ・・・・」

ディアンは困惑した。
かなり自信を持っていたようだ。
額に手を当てながら「?」を浮かべていた。
そこで部外者っぽく見ていたメッツがポロリとこぼす。

「あん?アレックス持ってなかったっけか?そんなようなやつよぉ」
「バっ!・・・・メッツ!アホ!」
「メッツさん・・・・・」

メッツのこぼした言葉を拾うようにディアンはニヤリと笑った。

「HAHAHAHA!やっぱ持ってるんじゃないか!
 ツィンがお前らの事が《MD》だとかなんとか言ってたからな!間違いないはずなんだ!」

「チッ、前にメッツの見舞いに来たときか」
「メンドぃですね」
「あぁメンドぃな」

「楽して死なせてやってもいいがな!HA〜HAHA!
 それにツィンがそっちの盗賊とリベンジしたいそうだしな!」

「あ、そういえばディアンさんが入院したのって結構前ですよね
 なんでまだ病院にいるんですか?」

「HAHAHAHA!そりゃオメェ居心地がいいからよ!」

「「・・・・・・」」

つまりあれか・・・・
もう全快だけどナンダカンダと言って無理矢理入院してるのか・・・・
ちゃんとした一つの団体の長のくせになんて自己中な人だ

「まぁ〜いいじゃねぇか!!!!」

いきなりメッツが叫んだ。
さきほどから話しの蚊帳の外だったのが退屈だったのだろう。
だが話の要点のみをなんとなく耳に入れていたようで、
メッツは嬉しそうに話を続けた。

「試合って事は戦闘だろ?ガハハ!入院開けの準備運動にはもってこいだ!
 やっちまおうぜ!俺ぁ暴れたくてたまんねぇんだオラァ!」
「ちょ、メッツさん・・・・」
「ったくこいつはよぉ・・・・」

「しはぁぁああああん!試合が!試合が決まったんですねぇえぇえええ!」

突然ディアンの後ろからの叫び声。
それは見覚えのある戦士だった。

「たしかリヨンとかいう戦士ですね・・・・・」
「そういう繋がりか・・・・」

「しはぁぁぁあん!自分はぁぁあ!自分は剣と命を持って戦いますぅううう!
 この悪達をぉおおお!悪を滅するためにぃいいい!」
「HAHAHA!そうか!それでこそ我が弟子よ!
 お前ら!明日道場に4人連れてこい!強いやつ4人だ!
 我が道場の目玉・・・・"騎四剣"が相手するからな!
 一番強い奴は俺とあてるがいいさ。HAHAHA!」

ディアンは腰に手を当てて偉そうに笑った。

「カッ!のこのこ行くと思ってるのか?」

「HAHAHA!あの直ってばかりの酒場がもう一度壊れてもいいならな!」

それは脅しの意味で言っているのだろう

「げ・・・・そりゃ面倒くせぇな・・・・」
「マリナさんに蜂の巣にされますよ・・・・」
「ガハハ!いきゃぁいいんだいきゃぁ!」

「そういう事だ。HAHAHA!では明日な!」
「しはぁぁぁん!かっこいいですよぉしはぁぁあああん!」

ディアンが振り向き、開け放ったままのドアから廊下へと出た。
それにリヨンがついていく。
"HAHAHA"という笑い声と"しはぁあああん"という声が廊下の奥へと小さくなっていった。

「はぁ・・・・」
「ガハハ!酒場を人質とは一番痛いとこだな!」
「ったく"騎士の心"のカケラもねぇやつだぜ・・・・」
「いえ、騎士を多く知ってる自分としての意見ですけど
『ナイトマスター』ディアンさんは完全に騎士の資質です」
「あぁん?」
「騎士っていうのはすべからく"ココ"が固いんですよ」

アレックスは自分の頭をツンツンと指差した。
そしてニッと笑った。

「ガハハ!石頭って事か!」
「メッツの考えてる石頭は多分違うっがな・・・・・」
「あと、自分の目的に真っ直ぐっていうのも騎士的な・・・・・」

アレックスはそこで言葉を止める。
じゃぁ最後までまっすぐ戦い抜かなかった自分は騎士として・・・・・

「まぁとにかく行って勝てばいい。メッツ的な理論だがな」
「ガハハ!それ以上も以下もねぇだろ!」
「面倒ですね・・・・そういえば4人て言ってましたけど・・・・・
 メンバーはどうするんですか?」
「まぁツィンに名指しされてたし俺は決まりだろ
 っていうかここにいる三人は決まりだな」
「俺ぁ決まらなくてもいくけどな!」
「えぇ〜・・・・僕はめんどくさいですよ・・・・」
「アホか!ただ飯食ってる分をこういう時に返せ!
 それに半分はオブジェ絡みなんだからお前は戦うのが道理じゃねぇかよ!」

まぁ・・・そりゃそうか・・・・
じゃぁ基本的にこれからは皆勤賞で頑張らないといけないのか
面倒だな・・・

「それで4人目はどうするんですか?」
「変態侍だ」
「イスカかぁ?来るかぁ?あいつ」
「来る来る。一言言ってやるだけでいい」
「なんてですか?」
「"マリナの店が危ない!"・・・・ってな。カカカッ!
 それだけでイスカのやつ「許せん!」とか行ってついてくるぜ?」
「そんな単純ですかねぇ・・・・・」















-翌日  騎士の心道場前-





「許せん!」

イスカは歯をカタカタと鳴らしながら言った。

「マリナ殿に迷惑をかけようとする輩なぞ拙者が微塵切りにしてくれる!」
「・・・・・・・・・単純なもんですね・・・・」
「だろ?」
「ガハハ!なんたらとなんたらは使いようっていうからな!」
「バカとハサミは・・・・ですよメッツさん・・・」
「カッ!言うやつも馬鹿ってどうなんだよ」
「うっせ!」

アレックスはやれやれと思いながら道場の方を見た。
これからここで試合があるというのにのん気な人達だ
試合といっても命のかかった死合だ
だというのにこの人達は・・・・
まぁ99番街で生きてきたこの人達にとっては
命がけの時なんて日常茶飯事なのかもしれないけど・・・・

「っとまぁこう見るとよ」
「ですね・・・・・この道場・・・・・」
「おもむきがあるというか・・・・」
「ボロいな!」

うん。ボロい。
正直ボロい。
かなり大きな物置とも言える。
こりゃぁ騎士団が滅んだから入門者が減ったとか
そういう以前の問題な気もする。
まぁそれでも名のある戦士や
選りすぐりの騎士を輩出している道場なのだから
外見より内面とでもいうべきなのかもしれない。

「ま、入るか」

アレックス・ドジャー・メッツ・イスカの4人は扉の前に立ち、
ドジャーが片手で扉を押し開いた。
そして開け放たれた空間。
敷き詰められた畳と木造りの道場内。
外見より大きく感じられる。
そして目を見張るのはやはり・・・・・
でかでかと飾られた『ナイトマスター』ディアンの肖像画。

「・・・・趣味がよくないようだな」
「あんなもんに見られたままなんて気持ち悪くて修行できねぇだろうよ」

ふと肖像画の下へ目をやる。
それは道場の一番奥。
そこには男達が立っていた。
一人はお馴染み鎧にまみれた『ナイトマスター』ディアン
病院で会った暑苦しい男リヨン。
そして黒髪で黒いソードを持った見知らぬ剣士。

「ん・・・・・3人しかいなくないか?」









                 






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