-ミルレス-












「なんなのよっ!!なんなのよこいつらわっ!!!!」

マリナが叫ぶ。
叫ぶしかなかった。
動けもしない。
囲まれている。
夜のミルレスの暗闇の中が、炎と殺気で明るく輝く。
どれだけの数がいるのだろうか。
分からない。
無数。
そういうしかない・・・・

「ぎゃぁーー!!!」
「たすっ・・・・・・・たすけっ!!!」
「う、うわぁぁああ!!」

GUN'Sの残兵達が飲み込まれていく。
食われていく。
殺されていく。

人・・・
魔物・・・
いや、ほとんどが魔物だ。
雄叫びと鳴き声がミルレス中に響き渡る。

「どこから沸いて出・・・ぐわぁああ!!!」
「くそっ!くそっ!」
「痛ぇええ!!痛ぇよぉおおお!!!」

また一人の男の体がティラノに食いちぎられた。
向こうではキャメル船長に串刺しにされている。
人の肉を切り裂くブロニン。
屈強な鎧で突き進むソードウェンディゴとランスウェンディゴ。
チャウの餌になっている死体。
首を駆るケティハンター。
テュニに焼き払われる者。
数人の人間を相手でも物ともしないフランゲリオン。
マーダーパンプキンになす術もなく殺される人間。

「死にたくねぇええ!!」
「どうなってんだよぉおお!・・・・ぐぇええ!!」
「かあちゃぁああああん!」

それは・・・・

地獄絵図としか言いようがなかった。

闇の中。
餌になっていく人間達。
もはやGUN'Sも何も関係なかった。。
ミルレスの町人。
たまたま居た者。
そして戦争に参加していた者。
すべてを謎の軍団が飲み込んでいく。
殺戮が行われている。

「マリナ殿っ!!無事か!!!」

バギを両断しながらイスカが叫ぶ。
剣が血だらけだ。
どれだけの敵を斬ったのだろうか。

「ぶ、無事に決まってるでしょ!」
「それは良かった」

イスカはまた目の前のモンスターを斬る。
マリナに攻め寄るモンスターをとにかく斬る。
斬る。
斬る。
ただただ斬る。
マリナを守るために血しぶきをあげる。

「もう!!!」

マリナもギターを構える。

「何がどうなってどうしてどこでどうやってどうなったのよぉおおおおお!!!」

マリナが叫びながらギターからマシンガンの弾を発射する。
無数の弾丸は無数の魔物にぶち当たっていく。
止まらぬ銃声音。
だが、
止まらぬ敵。
倒しても倒しても沸いてくる。
さながら百鬼夜行。
モンスターの大群。
どれだけいるのだろうか・・・
ミルレス全体を飲み込むほど?
それはどれだけの数なのだろうか・・・・・

「イスカ!!エクスポ達は!?」

イスカは敵を一通り斬ってから答える。

「知らぬ!はぐれおったわ!」
「メッツは適当な家に寝かせたままよね!」
「嗚呼!だがこうなってはメッツのいるところなぞ・・・ぬっ!」

また襲ってくるモンスター。
イスカはそれを一刀両断する。
汗の量が凄い。
それも当然。
休み無しにどれだけ斬ったか・・・・。

「マリナ殿!!もうきりがない!!」
「見れば分かるわ!!おーりゃ!!死ね死ね!!死んでよぉおおお!!!」
「どれだけ倒しても無駄ということだと!」
「じゃぁどうするのよ!!」
「に、逃げてくだされ!」

魔物を斬りまくるイスカはそう言う。
だが、イスカは自分に襲ってくる魔物より、
マリナを狙う魔物を優先している。
そのため軽症が増えてきていた。
このままだと・・・・
だが・・・・

「私だけ逃げろっていうの!?できるわけないでしょ!!」
「拙者一人じゃ守りきれぬ!」
「言ったでしょ!!」

マリナがギターの先に魔力を集中する。
大きな大きなマジックボール。
MB1600mmバズーカ。

「あんたが死にそうなら私があんたを守るって!!」

発射された巨大なマジックボール。
それは通り道の敵を全て巻き込みながら吹っ飛んでいった。

「はぁはぁ・・・・」

だが減らない敵。
減りようがない。
一生出てくるのではないだろうか。

「クソッ!でもマリナさんは諦めが悪いのよっ!」

マリナが並み居るモンスターに向け、
もう一度ギターを構える。
だが・・・・

「え・・・・」

ギターはなんの反応も起こさなかった。
弾丸が発射されない。

「うそ・・・・魔力切れ・・・・・」

動揺するマリナ。
そんなマリナに・・・・

「マリナ殿っ!!危なぃ!!!」

遅かった。
すでに一匹のツェピラが、大きなツノを突き出しながら突進してきていた。
猪突で猛進。
動揺するマリナ。
油断の隙。
ツェピラのツノのタックルがマリナの腹に深くめり込む。
そして・・・・・

マリナがうめき声をあげる事もなく血しぶきをあげながら吹っ飛んでいった。
炎で燃える一件の家の中に吹き飛ばされる。
そして・・・・
なんの反応もなくなった。

「マ、マリナ殿ぉおおおおお!!!!」

イスカの目の色が変わる。
マリナが吹っ飛ばされた家の方へと走る。
だが、
立ちふさがる無数のモンスター。

「邪魔だ!!どけぇえ!!!!」

イスカが剣をぶん回しながら走る。
技も何もない。
一心で突っ込む。
敵を刀で斬り裂いてかきわけ、
マリナの安否を・・・・

「マリナ殿っ!!!」

家のドアを斬り破って燃える家に飛び込む。
だが、
一面燃えている。
燃え広がって炎ばかり。
何も、何も見えない。
というよりこの中で人間が生きていられるわけが・・・・

「マリナ殿!マリナ殿っ!!!」

それでも必死に探すイスカ。
炎を中をかきむしるように。
家ごと斬り刻むように。
ただ必死に、
水の中のマリナを探すように、
炎の家の中を掻き分けた。
だが・・・・・・

「マリナ殿ぉおおおおおおおおお!!!!!」

夜空にこだまするイスカの叫び声。

そして、イスカのいる燃える家。
そこはもう完全にモンスターに囲まれていた。





























「冗談だろ・・・・・」

ミルレスのはずれ・・・・
ツィンは小声で言った。
不幸中の幸いとでも言えるのか。
ツィンが戦っていた場所はGUN'Sの本拠地の近く。
つまりミルレスのはずれだった。
敵も少ないとはいえないが、多くはなく、
なんとか敵のいないところまで逃げてこれた。

「なんなんだあいつらは・・・話に聞いてないぞ・・・・」

ツィンはズルズルと歩く。
引きずりながら。
何を引きずっているかというと・・・・

「ツィン・・・・もういいですよ・・・・・とぉ。俺はもう駄目だ・・・・・」

ヤンキだった。
ツィンはヤンキの片手を肩に担ぎ、
引きずりながらただ遠くに遠くに逃げようとしていた。

「諦めるなっ!少し安全なところまで来たんだぞヤンキ!!!」
「安全なところなんてねぇさ・・・・」

ヤンキは引きずられたまま、
頭を下に垂らしたまま、
ボソリ、ボソリと言った。
それでもツィンはヤンキの片手を自分の肩にかけ、
必死に引きずった。

「ヤンキ・・・死ぬなよ!絶対生かしてやるからな!」
「・・・・・ひたむきな事ですね・・・とぉ」

ヤンキは引きずられ、首を下に垂らしながら小さく笑った。

「俺なんてこんなもんですよ・・・・とぉ・・・・
 99番街に生まれ・・・暗い闇の中に生きてきた・・・・
 師範と出会って・・・そこから這い出れたつもりだった・・・・・」
「這い出たさ!お前はうちの道場の看板だぞ!」

ツィンは強く言い、
歯を食いしばってヤンキを引きずる。
二人の通ったあとは、
引きずった跡と、
血の道が出来上がっていた。
ヤンキの重症。
それもあるがツィンの傷も軽くはない。
全身血だらけ。

「ツィン・・・・俺を置いて逃げろよ・・・・とぉ」
「誰がそんな事するか!"騎四剣"は4本で騎四剣なんだ!
 もうリヨンを失ったんだぞ!もう一本失ってたまるかよ!!」
「二兎追うものは・・・とぉ・・・・言うぜ?」
「二兎追ってるから『両手に花』なんて言われてる!!」
「・・・・ハハ・・・・そうだったな・・・・・」

ヤンキがどんどん軽くなっていってる気がする。
気のせいか?とツィンは思ったが、
気のせいだと思う事にした。
それ以上にまず必死だった。
ヤンキを助けようと。

「夜って嫌いですよ・・・・とぉ・・・・暗いもんなぁ・・・・暗闇だ・・・・
 夜を飛ぶカラスには戻りたくないんだ・・・・・光を・・・光を求めたい・・・・・」
「しゃべるなヤンキ!!!傷が広がる!!」
「光・・・・師範はどこに・・・・師範・・・・・俺に光を・・・・・・」
「ヤンキ!!しっかりしろ!!」
「リヨン・・・・・師範・・・・・・」
「待ってろヤンキ!絶対!絶対助けてやる!」
「・・・・・光・・・・・・」
「あぁ!光だな!見せてやる!絶対に見せてやる!!」
「・・・・・・暗い・・・・・・・夜の暗闇だ・・・・・・・・イヤだ・・・・・暗闇はもう・・・・・・・・」
「大丈夫だ!大丈夫だヤンキ!!!」
「・・・・・・・・・見えない・・・・・・・・・真っ暗だ・・・・・・・」
「すぐに!すぐに光を見せてやる!」
「・・・・・・・・・・・・・・何も・・・・・・・・・・・・・・・・・見えない・・・・・・・・・・」
「しっかりしろよヤンキ!絶対助けてやる!絶対にだ!
 師範もリヨンももういないんだ!俺達でまた道場を・・・・」
「・・・・・・・・」

ツィンは夜の暗闇の中、
必死に・・・
ただ必死にヤンキを引きずった。
どこに向かっているのかも分からない。
ただただ必死にひきずった。
そして必死に、
ただ必死にヤンキに呼びかけながら。
ただヤンキを失う事が怖くて、
それでただただ必死に引きずり、
必死に声をかけていた。

・・・・だから
もうヤンキが返事をしていない事にも気付かなかった。

だが・・・・
一つの花は、
ただただヤンキを生かそうと必死で暗闇の中を歩き続けた。


















「どっかぁあああああああああん!!!!!」

チェスターの拳が突き出されると、
イミットゲイザーは放たれる。
それはマイティチャンプスミルを一撃で吹っ飛ばした。

「はぁ・・・はぁ・・・・どんなもんだい・・・・」

腕を振り切った状態で、
いや、疲れで腕をぶらんと垂らしながらチェスターは言う。
だが、
目の前にはまだ無数のモンスター。
倒しても倒しても湧き出てくるモンスター。
あまり頭のよくないチェスターにも疑問に思う。
この抵抗は・・・・・意味あるものなのかと・・・・・・。

「ダメだ・・・もう疲れたよ・・・・」

チェスターはその場に座り込んだ。
メッツと戦った時のダメージと疲労が残りすぎている。
ずっと満身創痍状態だった。
気力もあまり残っていない。
メッツを除けば一番消耗の激しいチェスター。
だが必死で戦ってきた。
何十匹魔物を倒しただろう。
そして思う。

「チェチェ・・・・・もうダメかなオイラ・・・・・」

多すぎる敵に囲まれ、
チェスターはガラにもなく諦めモードになっていた。
だがそれも無理はない。
多すぎる敵。
勝てる見込みもない。
勝ちという終点が見えないのだから。

「ウキッ!!ウキキッ!!」
「分かってるよチェチェ・・・でもさ・・・・」

チェチェの意気付けにもあまり生気が戻らない。
とにかく疲れているのだ。
いつ気を失ってをおかしくない。
それがチェスターの活気をも奪っている。

                   また・・・・また諦めるのか?

どこからか声が聞こえた。

「またあの声!?メッツと戦ってた時にも聞こえた声ジャン!」

チェスターは咄嗟に周りを見渡した。
だが周りには無数のモンスターがいるだけ。

「チェチェにも聞こえたよなっ!!」
「ウキッ!!」
「だよなっ!!」

よく分からなかったが、
チェスターは体に力を感じた。
それはただの勢いの問題であっただろうが、
そう感じた。
心の変化によるものだ。

「そうだよなっ・・・・諦めるなんておかしいよなっ!!」

チェスターは立ち上がる。

「オイラはスーパーヒーローだもんなっ!!!
 こんな逆境がなんだっ!ヒーローは諦めないっ!
 どんな時だってヒーローはピンチを乗り越えるもんジャン!!!」

チェスターに戦意が戻る。
体に力がみなぎる。
まずは目の前の魔物をやっつけてやろう。
そう思っていた。
だがその矢先・・・・・

「諦めるッスよチェスター」

目の前に一人の男がいた。
背格好は自分と同じくらい。
忘れるわけもない。

「・・・・ナックル!!」

「・・・・・・・・・チェスター・・・悪いッスね」

ナックルは静かにそう言った。
両手にディスグローブ。
変わりない。
あのナックル。
だが、
その背後にも何人が人がいる。
スネイルジャベリンを持った修道士。
棺桶を背負った戦士。
黒くゴシックな格好をした魔術師。
両腕にドリルを付けたスキンヘッドの修道士。
見たことがある。
・・・・・・・・・44部隊の奴らだ。

「チェスターには死んでもらうしかないっス・・・・・」

ナックルは悲しそうにそう言った。
そして同時に、
44部隊の者達が一斉に攻撃の構えをとった。

チェスターは・・・
それを見るとまた疲れが襲ってきた。

「・・・・かか・・・って・・・・こいよ・・・・・」

今にも目を瞑ってしまいそうだ。
今にも倒れこんでしまいそうだ。
そして・・・・
死並びの部隊と呼ばれる者達が向かってくるのだけが見えた。





















「ギャー!!!もう!!動いて!動いてよっ!!!!」

マリ=ロイヤルはゴンゴンッと自分の下の鉄の塊を殴る。
それは量産型スマイルマン。
・・・・・・だったもの。

「あんたが最後の一体なのよ!動いてってば!!!ねぇ!!!」

マリは自分の下のスマイルマンをガンッと足の裏で蹴飛ばす。
だが反応はない。
完全に沈黙。
最後のスマイルマンは機能停止していた。

「はぁ・・・・・もうダメね・・・・・」

マリはへたりこんだ。
もう動かない巨大な鉄の塊の上に。
その周りを見る。
もちろん地獄絵図。
周りにはかなりの数のGUN'Sメンバーがいたはずだが、
それ以上。
2倍、3倍。いやもっと?
それだけのモンスターが仲間達の命を奪っていく。
奮闘する仲間。
逃げる仲間。
なすすべもなく死んでいく仲間。
巨大なスマイルマンの下では、
虫がうごめいているようにも見えた。
人間という餌を飲み込んでいく虫。
魔物がそう見えた。

「絶景ね・・・・」

どうしようもない。
小さな無人島に取り残されたようなもの。
スマイルマンの下に降りるわけにもいかないし、
このままスマイルマンの上にいても時間の問題。

「GUN'Sなんかに入るんじゃなかったわ・・・・
 素直にお姉ちゃんとスシアに会いに行けばよかった・・・・」

その後悔も遅い。
後悔とは後悔する時期になってはじめて後悔になるのだ。
そして後戻りはできない。

「ま、GUN'Sも何も関係ないか・・・・
 ミルレスで商売してたらどっちにしろ巻き込まれてるわけだしね・・・・」

そう。
ミルレス中が大惨事なのだ。
ミルレスで素直に商売をしていても、
GUN'Sに入ったとしても、
どうせ巻き込まれていたのだ。
・・・・・・・・・この地獄絵図に。

「ルエンお姉ちゃん・・・・スシア・・・・・・・・お母さん・・・・・・・」

GUN'Sの六銃士再装填メンバーとはいえ、
・・・・ただの女。
その目には涙がこぼれていた。
そしてただ・・・・
ただ死を覚悟するしかなかった。

「一人ぼっちで死ぬのはイヤ・・・・・・あの暖かい家に帰りたい・・・・・」

昔の・・・・
仲の良かったロイヤル家を想像した。
母エリス。
姉ルエン。
妹スシア。
皆が笑いながら囲んだ食卓。
もう、
マリの目に現実が映らなくなってきていた。
一人という事が壮絶に悲しくなってきた。
が・・・・

「お前ら!逃げるな!」
「再装填メンバーのマリさんを守れ!!」

名を呼ばれてハッと気付いた。
そして見下ろす。
鉄くずになったスマイルマンの下を。
そこには・・・・・・・・・GUN'Sの部下達がいた。
マリの乗っているスマイルマンを囲んでいる。
守るように・・・・

「あ、あんた達!なんで!!」

マリは思考回路がパンクしそうになりながら叫んだ。
分からない。
《GUN'S Revover》など所詮烏合の衆。
吸収合併で無理矢理デカくなったギルド。
協調性などという言葉とは無縁のはず・・・・。

「へっ!勘違いすんなよマリさんよぉ!」
「別にあんたなんかどうでもいいんだぜ!」
「でもどうせ死ぬならなんかしなきゃな!」
「もしうまく守れたら昇格狙えるしな!」
「ちげぇねぇちげぇねぇ!」
「六銃士も再装填メンバーもマリさん残して死んじまったからな!」
「チャンスチャンス!!」
「今度は俺が六銃士だ!」
「いや俺だ!」
「俺だっての!!!」

スマイルマンの下で、
モンスターに囲まれながらそんな事を言うGUN'Sメンバー達。

「あんた達は・・・・」

マリの目には涙。
だが先ほど出てきた悲しい涙ではなく。
なにか・・・・嬉しさのようなものが理由な気がする。
マリはその涙を振り払い、
スマイルマンの上に立つ。

「ほんと馬鹿ねあんた達は!こんな時にも昇格昇格!欲の化身にもほどがあるわ!」

「あんたに言われたくないな!」
「金欲と地位欲しさにGUN'S入ったあんたにゃぁよぉ!」

「アハハ!そうね。ま、私達みんな最悪人間仲間って事ね」

マリは最後の強い意志を持ち、
ニヤりと笑って叫ぶ。

「行くわよあんた達!派手に散ってやろうじゃないの!
 最強ギルド《GUN'S Revolver》の力を見せ付けてやりましょう!!!」

あがる歓声。
士気あがる者々。
それぞれが武器を抜き、
数え切れない魔物を相対した。


そして散っていった。


























「はぁ・・・・はぁ・・・・美しくない!!美しくないよ!!!!」

エクスポは走る。
ただ走る。
ミルレスの町からとにかく離れようと。

「なんなんだあの魔物達は!美しくない!無差別に人を殺して!
 残虐極まりない!美しさのカケラもない!!なんなんだ!!一体なんなんだよ!」

走るエクスポ。
そして、
その背後にはエクスポを追いかける大勢の魔物たち。

「美しくないって言ってるんだよっ!!!」

エクスポは走りながら、
背後に爆弾を転がした。
コロンコロンと転がる3個の爆弾。
それは追いかけてくる魔物達を待っていたかのようなタイミングで爆発した。

「ハハッ!寸分のくるいもなし!これぞ芸術だよね!」

だが、数匹吹き飛ばしただけじゃぁ関係ない。
まだまだいくらでもモンスターは無数にいる。
無数に無限に追いかけてくる。

「・・・・だから美しくないんだ」

エクスポは顔をしかめながらそう言うと、
ふと前方を確認しなおす。

「うわっ!!!!!」

エクスポは急停止する。
足にブレーキをかける。
そして・・・・
カラカラ・・・と小石が落ちる音。

「ハハ・・・・行き止まりか・・・・万事休すだね・・・」

ミルレスの端まで来てしまったようだ。
そう。
そこはミルレスの絶壁。
崖。
下も見えない深い深い崖。

エクスポは振り向く。
もちろん向かってくるモンスター達。

「一体なんなんだあのモンスター達は!・・・クッ・・・・けど違和感は感じてたんだ・・・
 これだったんだな。44部隊の裏切り・・・・おかしいとは思ってたんだけどさ・・・・」

そう愚痴を言ってる間にも魔物が迫ってくる。

「ダメだ!仲間を置いて脱出なんて美しくないことだけはしまいと思ってたけど、
 死んだらどうしようもない!悪いけど先に脱出させてもらうよ皆!!」

エクスポは懐からゲートを取り出す。
そしてゲートの紐をほどこうとした時だった。

「なんだ・・・・」

ふと見上げた。
夜空。
綺麗な夜空だった。
その夜空に・・・・・・・。

「ゲートの光?」

その夜空に、
無数のゲートの転送エネルギーは飛んでいっていた。
ミルレス中からだ。
当然だ。
こんな地獄。
普通ならそうする。
誰だって逃げようとする。
まるで流星が空へ飛んでいくかのよう。
夜空のその光景は、
こんな窮地でもエクスポに"美しい風景"だと思わせた。

ともかくそんな者達のゲートの光。
天に昇っていく。
だが・・・・

「!?」

ゲートの転送の光達は、
夜空に昇ったと思うと・・・・・・・・バチンと弾けた。
全て。
全ての光がだ。

「ゲート転送の失敗?馬鹿な?なんで?!」

だが良く見ると、
夜空に無数の何かが見える。
・・・・人?
いや、落ちていってる。
あれは転送に失敗した人達だ。
じゃぁあれは・・・・

「あれはストーンバット・・・いや、それは少数だ。
 モンスターに紛れて何か人のような星のような者が大勢・・・・」

目を凝らした。
夜空に、
ミルレスの上に浮かぶ無数の星のようなものに。

「・・・・あれは・・・・・」

・・・見えた。
見えたがあまり信じられなかった。

「羽の生えた・・・・人?・・・・天使?・・・・神・・・・・・」

分からなかった。
その正体も何もかも。
だがそれらがゲート転送を妨害していることだけはたしかだった。
ゲートで飛んで逃げる者を全て打ち落としている。

「・・・・・・・はは・・・・夜空に天使か・・・・美しいな・・・・」

エクスポは無理矢理な笑いを作った。
笑う。
小さく笑い続ける。
そしてエクスポの手からゲートのスクロールは滑り落ち、
そのままミルレスの崖の下へと落ちていった。

「脱出も不可能なのか・・・・美しいハッピーエンドってのはないのかな・・・・」

目の前に迫り来るモンスターの大群。
背後には・・・・ミルレスの絶壁。

「・・・・まったく・・・・美しくないな・・・・」

エクスポは何も出来ないまま、
ただ星の浮かぶ美しい夜空を見上げた。























                 






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