「いいか?ドジャー、メッツ」

その日も、
ジャスティンはいつも通り偉そうに話していた。
何気ない99番街の風景。
貧しいスラム街の中。
誰かが呼んだでも、
誰かが馴れ合おうとしたでもなく。
今日も三人は一緒だった。

「なんでお前らがモテないか教えてやろうか?」

ジャスティンはフとした笑顔で言う。
たしかにジャスティンは美麗な顔立ちをしており、
そこらを探してもジャスティンよりイイ男はいない。
それを一言で言うとカッコイイ。
単純な言葉だが、ジャスティンはそういう男だった。

「カッ、うっせぇよジャスティン」
「えらそうにすんじゃねぇぞコラァ!」

そしてドジャーとメッツの親友だった。

「じゃぁ女の子にモテなくてもいいのかい?」

「メッツはともかく俺はモテないわけじゃねぇ!」
「あ?んだとドジャー!」

「メッツだってマリナに振り向かれたいだろ?」

「ゔ・・・・・」
「おいおいメッツ・・・・」

軽口も簡単に言える仲で、
なんだかんだでお互いを想っていて、
いつもケンカしてるほど仲が良かった。

「このモテ男ジャスティン君が女の口説き方や扱い方を教えてしんぜようじゃないか」

いつも三人で、
いつも同じような会話。
そんな毎日だった。
それが当たり前だった。

「えっらそうに・・・」
「結局つまりは言いたいんだろ?じゃぁさっさと話せエロガッパ」

「まぁ簡単な理屈さ。コツって奴だね」

「理屈だぁ?コツだぁ?カッ、くだらねぇ。恋も100通り。女も100通りってね
 なのに決まったコツがあるなんて俺は納得いかねぇな」

「そこだね」

ジャスティンは細く綺麗に伸びた人差し指を伸ばして言う。

「"納得"。そう・・・・・・ま、世間的には男は理系で女は文系な考え方をするさ」

「俺は理系じゃねぇ」
「俺もだ」

「最後まで聞けって。ったくお前らは我慢の足らない奴らなんだからな。
 いいか?男ってのはそうさ。いつも理由を欲しがる。納得の行く理由をね。
 とりあえずでもいいから納得のいく理屈を男は欲しがるもんなんだ」

「・・・・・・そうかぁ?」
「例えばどんなだよ」

「今のドジャーとメッツがまさにそうじゃないか。
 俺が理由を言わないから納得してないし、理屈を求めている」

「ゲッ、ハメられた・・・・」
「ガハハ!本当だな!」

いつもの事だった。
ジャスティンはいつもドジャーとメッツに何かしら自身の理論を話す。
ドジャーとメッツがそれを聞くのをイヤがるのはいつもの事で、
途中からはなんだかんだで聞いている。
いつもの事。
三人が通じ合うのはいつもの事。

「女は逆さ。2時間ドラマのようなもんでね。理屈を排除したがるのさ。
 "そんな事はどうでもいい!ただお前が欲しいだけなんだ!"
 "どこが好きとかじゃなく、お前という存在好きなんだ"
 こういったのに弱い。本当に弱い。ってかむしろ望んでるのさ」

「ほぉーう」
「まぁ・・・一理くらいはあるけどよ」

「男は納得できなきゃ動かないが、女は逆。そこで一番のキーワードがあるのさ。
 このキーワードがあれば大抵の女はどんな状況も納得する」

「なんじゃそりゃ」
「魔法みたいなキーワードだな」

「そう。そんな魔法みたいな言葉があるんだ。
 本当に大概の女はこのキーワードだけで大体の事にはウットリってなもんだ。」

「もったいぶんなよ!」
「はよ言えよ!」

「"運命"さ。この言葉で全ての事はショートカットできる」

「カッ・・・・運命ねぇ。イケすかねぇ言葉だ」

「そりゃドジャーが男だからさ」

「うっせぇ!それはもういいジャスティン!」












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「ジャスティぃいン!!!!!」


ドジャーがダガーを握り締め、
突っ込む。
真っ直ぐ。
ただ真っ直ぐ。
親友の下へ。

「さすがの速さだドジャー!」

ジャスティンは肩に抱いていた彼女を咄嗟に突き放し、
鎌を構える。
そしてドジャーのダガーと、
ジャスティンの鎌。
それがぶつかった。

「力で押し合えるようにもなったんだなドジャー」
「ジャスティン・・・・・」

ドジャーは体いっぱいに力を込め、
ジャスティンの鎌を押す。
ダガーがギリギリと軋み、
鎌の刃もギリギリと軋む。
力を込めすぎてドジャーの体が震える。
いや、
力のせいで震えているのだろうか・・・・

「ジャスティン!これがお前がいつも言ってた"運命"か!?
 ぁあ!?そうなのか!?言ってみろこのエロガッパ!」
「なつかしい話だなドジャー」

ジャスティンは押し合いながら笑う。

「だけどその運命って言葉で納得するなら"女々しい"って事だぜ?」
「うるせぇ!!!」
「そしてお前はそれに対しても理屈を欲しがってる。男だからだ。俺の意見、当たってたろ?」
「うるせぇっての!!!」

ドジャーがダガーを一度振り払い、
そしてダガーを今度は突き出す。
が、それも鎌で防がれる。

「わぁーってらぁ!俺はその運命なんてもんに納得しねぇ!
 昔お前が言ってた通りだ!俺はそんなもんクソ食らえとしか思わねぇ!
 俺ぁちゃんと理屈が通ってなきゃ納得できねぇんだよ!」
「だろうな」
「あぁそうだこの野郎!」
「だけど・・・・・・・どんな理由を持ってきてもお前は納得してくれないさ。
 お前にとっちゃぁ"仲間同士で戦う理屈なんてどこにもない"。
 どんな理由をもってしてもお前を納得させる事なんてできないんだ」
「だからお前が折れろよっ!」
「まったまた。お前はいつもそうやってわがままばかり・・・・・・おっとっ!!!!!」

ジャスティンは鎌を振り払う。
そしてドジャーと距離をとるようにバックステップ。

と、同時。
ジャスティンがさっき居た場所から、
蒼白い、聖なる炎が吹き上がった。
パージフレアだ。

「危ない危ない・・・・」

ジャスティンは軽く首を振った後、
スカした目でアレックスを見る。

「油断も隙もあったもんじゃないぜアレックス君」

「それはどうもです」
「おいっ!アレックスっ!!!」

ドジャーもアレックスの方を向く。
そしてアレックスの方へ、
怒りを足音に表しながらズカズカと近づいて行く。

「ふざけるなよアレックス!」

「お、おい・・・ドジャー。敵である俺に背を向けるなよ」

「うっせジャスティン!ちょっとタンマだっ!」

「は?」

「ターンーマっ!」

ドジャーはとにかくタンマをジャスティンに押し付ける。
敵。
敵に向かって背を向ける。
それはある意味・・・・・
敵ながらかつての仲間だからこその信頼。
ジャスティンはこういった場面で背後からドジャーを狙うような事はしない。
そう、ドジャーは心の底から思っており、
ジャスティンを信じている。
いや、分かっている。
ジャスティンの事を知っているのだ。
だから敵であるのに背を向けた。

そしてジャスティンはやれやれとため息をついた。

「やいやいやいアレックス!」

ドジャーは怒り心頭でアレックスに近づいていく。
そしてアレックスの目の前まで来て人差し指を突き出す。

「お前なっ!空気読めねぇのかこのスカポンタンがよぉ!
 なんとなく分かるべ?あん?ここは俺とジャスティンの一騎討ちだろ!」
「さぁ。僕はそんな事聞いてませんよ?」
「そういう空気でそういう流れだったろうがアホッ!!」
「知りませーん」
「だぁクソッ!」

ドジャーは腕を突き出す。
そしてアレックスの胸に拳をゴンっと当てる。

「ジャスティンとは俺が決着をつける。
 お前の言ってた覚悟もできてる。だから俺がやる。
 いや・・・・・俺がやらなきゃいけねぇんだ。分かるか?分かるだろ?」
「それはドジャーさんが勝手に決めたんじゃないですか」

アレックスがむくれた表情で返す。
ドジャーは真剣かつ、キレ気味の表情で言う。

「もう一度言うぜ。ジャスティンは俺がやる。俺が倒す」
「そして"後悔する"・・・・・・・ですか?」
「・・・・・あん?」

アレックスはドジャーの腕を払いのける。
そして真剣な表情でドジャーを睨む。

「覚悟は出来てるというのなら信じましょう。
 ですけど、ドジャーさんがジャスティンさんを殺したら・・・・
 ドジャーさんは後悔します。理屈も理由もあっても。
 一生ドジャーさんはその事を引きずります」
「だからお前が代わりにやるってのか?!」
「それなら僕を恨むだけでいいじゃないですか」
「ふざけんなっ!」
「やなら二人でやりましょう」
「だと?」
「ジャスティンさんの死はドジャーさんにとって重荷すぎます。
 一生引きずって引きずって・・・最後には重くてドジャーさんは立ち止まってしまうでしょう。
 でも・・・・・・・・・・・・・・僕も一緒に引きずります。僕も重荷を請け負います。
 ドジャーさんが止まっても、僕が無理矢理ドジャーさんごとひきずります」
「・・・・・・・・」
「磨り減って無くなるまで引きずってあげますよ」
「・・・・・・・・カッ!」

ドジャーはポリポリと頭をかいた後、
照れくさそうに振り向いた。
アレックスはいつもの通り、
それがおかしくて笑った。

「おいおいおい」

ジャスティンが困ったように両手を広げて言う。

「俺が死ぬ前提で話すんじゃねぇよ」

ジャスティンはスカした笑顔で首を振った。
綺麗なロン毛が鮮やかに揺れる。
そしてジャスティンはドジャーに笑顔を送って言う。

「でも、ドジャー。お前は本当にいい仲間を持ったよ」

「カッ!欲しいっつってもやらねぇぜ?」

「それは残念。でもいいさ」

ジャスティンは一度目を瞑って笑った。

「俺には彼女がいる」

そう言って、
ジャスティンは近寄ってきた彼女を片手で抱きしめた。

「2対1じゃそっちとしてもやりにくいだろ?だからこっちも二人で行くよ」

ジャスティンは彼女の頭を優しく撫でる。
彼女は照れくさそうにしていた。

「あん?その女と二人だと?」
「彼女も戦えるんですか?」

「あっ紹介しとくよ。俺のガールフレンドのラスティルだ」

ジャスティンが紹介すると、
ラスティルはお辞儀した。

「彼女の名前を人に教えるのは初めてさ。いい名前だろ?俺が付けたんだ」

「え?」
「お前が付けた?」

「そうさ」

ジャスティンはラスティルを優しく抱きかかえながら、
自慢げに話す。

「ドジャー。俺の理想の女性像がティル姉だって事。お前は知ってるよな?」

「・・・・・・あぁ」

アレックスの知らない名だったが、
それは当然だ。
ドジャーとジャスティンには長い年月を共にした時間があるのだから。
それはもう、本当に家族より長い時間。

「だから彼女にもその名も含んでもらった。
 ラスティルはな。99番街でさ迷ってたんだ。
 名前も無かった。ふと、下心で俺は彼女を助けた」

「エロガッパが」

「フフッ。でも助けてみたらどうだ。
 容姿美麗なのは当然。それ以上に・・・・彼女はステキだった。
 俺には無いものばかり持ってた。弱さと静かさと優しさ。
 それは俺の隙間を全て埋めてくれた。彼女は俺の・・・・"運命"の人だったのさ」

「・・・・・出やがった"運命"」

「本当に運命ってのを感じたんだ。
 そして・・・・俺は決めた。彼女を生涯最後の彼女にしようと。
 だから名前も"ラスティル(最後の女)"って付けたよ」

言いつつ、
ジャスティンはラスティルを抱きしめた。

「そう。君が僕の運命だよハニー」

戦闘の中で抱き合う男女。
それは少し異様だった。

「お熱いところ悪いんですけど・・・彼女は戦えるのかって質問どうなったんですか?」

「見れば分かるさ。アレックス君。だからとりあえずは俺らに妬くといいよ。
 さぁハニー。ドジャーとアレックス君の度肝を抜かせてやろうぜ」

ラスティルはコクンと頷いた後、
・・・・一人。
単身。
彼女は単身で歩き出した。

「え?」
「お、おい・・・・」

ラスティルがこちらへ歩いてくる。
トコトコと。
あまりにも・・・・普通だ。
ただの女性の徒歩だ。
危なっかしさまで感じる。
人よりも歩くスピードさえ遅いんじゃないだろうか。

「ドジャー、アレックス君。気をつけろよ。もう戦闘は再開してるんだ」

ジャスティンは言う。
もちろん、ドジャーとアレックスは警戒する。
ラスティルというただの女性に。

「ど・・・どう見るアレックス・・・」
「・・・・・・そ、そうですね・・・」

歩いてくるラスティル。
服装。
ただの女性の服装だ。
そう、
職業服ではないのだ。

「服装はフェイクか?」
「・・・でしょうね。だけど武器も防具も持ってません・・・」

アレックスの言うとおり、
彼女は武器らしき武器どころか、
道具の一つさえも持っているようには見えない。

「手ぶらってことは・・・修道士か!」
「いえ、魔術師や聖職者という可能性も・・・・」

ラスティルがどんどん歩み寄ってくる。
ただの女性がただただ歩いてくる。
どれだけ警戒しても・・・
どれだけ注意しても・・・
彼女に怪しい部分が見られない。

「・・・・・分からない」
「アレックス!フェイクだ!やっぱあの女はただの女だ!
 ジャスティンがよこしたオトリ!気をつけるべきはジャスティンだぜ!」

「フェイク?オトリ?ただの女?・・・・フフッ」

ジャスティンはおかしくて笑った。

「違うよ。彼女は違う。俺のハニーは運命の女さ。僕の"女神"なんだよ。
 彼女はたしかに弱い。だけど・・・・・・・・愛の力が戦闘力をも生む!」

ジャスティンがサバスロッドを振り上げる。
そしてラスティルはすでにドジャーとアレックスの目の前に・・・・

「ドジャーさんっ!もうとにかく攻撃をっ!」
「もうやって・・・・・」

アレックスとドジャーが、
咄嗟にラスティルに攻撃を加えようとする。
が、

「遅いっ!彼女の恐ろしさを思い知れ!」

ジャスティンは、
勢いよくサバスロッドの柄を地面に突きつける。
すると、
サバスロッドの柄がぶつかった地面に、光り輝く魔方陣が生成された。

「"リベレーション"!!!!!」

ジャスティンの叫び声と同時。
ラスティルの真下にも魔方陣が生成される。
そして魔方陣から発せられた光は彼女を包む。
包み込む。
光が彼女を包み込んだ。
・・・・・・と思うと・・・・・。
光の中から現れたのは・・・・・・・・・・・

神々しい女神。

「うわぁっ!!」
「ぐぁああああ!!」

女神ラスティルは、
時運を中心に、光の衝撃波のようなものを放った。
それは至近距離でアレックスとドジャーに直撃し、
アレックスとドジャーは物凄い勢いで吹っ飛んだ。

「・・・っ・・・・」
「くそぉ・・・・」

アレックスとドジャーはフラフラと立ち上がる。
吹き飛ばされただけのように感じたが、
体はそうではない。
強力なダメージを受けていた。
体全身に見えない怪我でもしているかのように、
全身に激痛が走る。

「見た目以上に痛いですよコレ・・・・」

アレックスは言いながら、もう一度フラリとバランスを崩した。
本当に見た目以上の威力。
吹き飛ばされただけかと思ったが、
違う。
大きすぎるダメージを受けている。

「これが愛の力だドジャー、アレックス君」

ジャスティンは誇らしげな笑顔を浮かべ、
こちらに近づいてくる。
ラスティルはというと、
もう元の姿に戻っていた。

「これが僕とハニーの連携技。リベレーションだ。
 味方一人を媒体にし、女神を光臨させて周囲に聖なる攻撃を与える。
 聖なる痛みはこたえるか?これでも超高等スペルだからな」

ジャスティンが近づいてくる。
アレックスとドジャーは、
なんとかそれぞれセルフヒールを行い、
動けるくらいには回復した。

「こたえるだろ?女神の天罰さ。もう一発食らったらアウトだろうな。
 ま・・・・・その前に俺自身で片付けてやることになるけどなっ!」

ジャスティンは突然走り出した。
鎌(サバスロッド)を振り上げて突っ込んでくる。

「チィッ!!!」

ドジャーが咄嗟に持っていたダガーを投げる。
ジャスティンに飛ぶダガー。
しかし、
ジャスティンはそれを読んでいたかのように軽く避け、
そしてドジャーの目の前まで走りこむと、

「らぁああ!!!!」

鎌を低く振る。
薙刀で足元を刈るようにドジャーの足元に鎌を振る。
ドジャーの足を刈り取ろうと・・・・。

「ざけんなよっ!!」

ドジャーが跳ぶ。
その鎌を縄跳びのように跳んで避ける。
自慢の瞬発力を生かした避け方。
だが、

「俺は誰よりもお前の事を知ってるんだぜっ!?」

ジャスティンは左手で十字を描く。
ササッと手早く。

「お前の身体能力もっ!お前の行動もっ!」

ジャスティンの左手の平が、
ドジャーを狙う。
プレイアだ。
プレイアの聖なる衝撃が、空中のドジャーを襲う。
空中。
避けようがない。
ジャスティンはこれを狙っていた。

「ぐぁぁああっ!!!」

ドジャーが吹っ飛ぶ。

「お前がどう思ってどうするか・・・・俺には分かっちまうんだよドジャー!」

ジャスティンはプレイアを放った体勢のまま、
ドジャーが吹っ飛んでいく様を見ていた。

「じゃぁ僕の事まで分かりますか!?」

「!?」

ジャスティンの真横。
そこには槍を構えたアレックスが居た。

「いやぁあっ!!!!」

ピアシングボディ。
右手での強烈な突きがジャスティンを襲う。
が、ジャスティンは間一髪でそれを横に避ける。
アレックスの槍の真横に回りこむような形で。

「甘いですよ」

アレックスはニヤりと笑う。
突き出した右手の槍。
その下。
その下には・・・・横に突き出された左手。

「僕もプレイアの二段構えです」

アレックスがプレイアを放つ。
聖なる衝撃。
至近距離で放たれるプレイアの衝撃。
それはジャスティンの腹に直撃する。

「・・・・・・・・・やるじゃないかアレックス君」

直撃した・・・・はずだと思ったが、
違った。
ジャスティンは咄嗟に鎌で衝撃をガードしていた。
至近距離でジャスティンは笑う。

「クッ!」

アレックスは咄嗟にバックステップで距離をとる。
プレイアを外した。
ガードされた。
そうなると、この至近距離は槍の距離ではない。
距離をとらないと・・・・

「だけどそれは俺も同じだ」

ジャスティンはバックステップ中のアレックスに鎌を振付ける。
鎌も至近距離で戦える武器ではない。
だからこそ・・・・
距離を置こうとしたアレックスには・・・・調度当たる距離。

「くぁぁあっ!?」

アレックスの脇下を鎌でえぐられた。
深くはないが、確実に斬られて鮮血が舞う。
そしてアレックスは後ろに転がった。

「アレックス!!!」

プレイアを食らったドジャーが体勢を整え、
斬られて吹っ飛ばされたアレックスに駆け寄ろうとする。
が・・・・
とんとんっ・・・・と背後。
ドジャーの肩を叩く指。

「え?」

ドジャーの背後には、笑顔のラスティル。

「リベレーション!!!」

ジャスティンが鎌の柄を地面に突きつける。
と、同時。
先ほどの同じ。
ラスティルを媒体に女神が召喚され、
至近距離のドジャーを聖なる衝撃で吹っ飛ばした。

「ドジャーさんっ!」

「どっち見てるんだアレックス君」

「!?」

アレックスの横。
そこにはすでに左手を突き出したジャスティン。

「プレイア!!!」

放たれる聖なる衝撃。
アレックスもジャスティンのプレイアで吹っ飛ばされた。
ごろんごろんと吹っ飛ばされ、
転がり、
そしてドジャーの横まで吹っ飛ばされる。

並ぶように地に伏せるアレックスとドジャー。

「もう終わりかい?ドジャー、アレックス君」

ジャスティンは左肩にラスティルを抱き、
右手で鎌を一度振った。

「運命だよ」

地に伏せったままの二人を見下ろしながら、
ジャスティンは悲しい笑顔で言う。

「運命なんだ。終わりなんだよ」

「終わりじゃねぇよ・・・・」
「えぇ・・・・」

アレックスとドジャーはまたフラフラと立ち上がる。

「運命は決まってるのに・・・・まだ立つのかい?
 俺はもう立って欲しくない。君らに苦しみを与える時間が増えてしまう」

「ハハッ・・・運命ですって・・・・ドジャーさん」
「カカカッ・・・・まだ言ってるぜあのエロガッパ」
「えぇ・・・運命なんてものは・・・・」

アレックスは槍を構えなおす。
ドジャーを両手にダガーを構えなおす。

「自分で決めて・・・・」
「自分で切り開いてやんぜ・・・・ああああぁぁああ!!!!」

ドジャーが突っ込む。
ダガーを突き出しながら、
真っ直ぐ突っ込む。

「・・・・・・そうか。じゃぁバイバイだぜドジャー!!!!」

ジャスティンは肩に抱いていた彼女を突き放し、
真っ直ぐ突っ込んでくるドジャーに鎌を振る。
大きく大きく鎌を振る。
ドジャーを、
かつての友を真っ二つにする勢いで・・・・・・

「昔の俺と同じと思うなっ!」

目の前のドジャー。
ジャスティンの鎌が襲う。
が、
いない。
ドジャーがいない。

「こっちだジャスティン!」

ジャスティンの背後。
ドジャーはそこでダガーを突き出していた。
ラウンドバック。
一瞬でジャスティンの背後に回った。
隙をついて、
ドジャーはジャスティンの背後をとった。
だが、

「それも・・・・それも分かってるんだよドジャー!!!」

ジャスティンが横に振っていた鎌。
それは目の前のドジャーを狙ったものではなかった。
その大振りの勢いを生かし、
そのまま背後にまでブゥンと鎌を振り切る。

「分かっちまうんだよドジャー・・・・」

最初から・・・・
ジャスティンには分かっていた。
ドジャーが背後に回ってくるだろうことも。
ドジャーの事は分かっているから。
ドジャーの事はよく知りすぎているから。
背後まで振り切った鎌は・・・・・
ドジャーの横腹を割いた。

「・・・・・・・・・クソッ・・・・」

ドジャーは腹をカッ割かれ。
鮮血を舞わせる。
後ろに吹っ飛ぶ。
空中を舞うドジャー。
鮮血は空中をゆっくりと舞った。

「もらったぁあああ!!!!」

アレックスの叫び声。
そして突き出す槍。
だが、
それはジャスティンに向けてのものじゃなかった。
アレックスの槍は・・・・・
ラスティルを狙っていた。
ドジャーがジャスティンの気を引いた隙に、
アレックスはラスティルの方を狙っていた。

「それも分かってるんだ!!!」

ジャスティンは鎌の柄を地面に突きつける。

「リベレーション!!!!」

そして放たれるリベレーション。
槍を突こうとラスティルに近づいていたアレックス。
突き出されていた槍。
リベレーションの受け・・・・女神に変貌するラスティル。
放たれる聖なる衝撃。
・・・・・・・。
リベレーションの方が早かった。

至近距離でアレックスは女神の聖なる攻撃を受ける。
そして・・・・吹っ飛んだ。

「分かってしまうんだよ・・・・」

鎌の柄を地面に突きつけたままの体勢で、
ジャスティンはボソリと言った。

「ドジャーがあんな阿呆のように突っ込んでくるのかを考えれば・・・・・
 どれだけアレックス君の事を信用してるかも分かる・・・・
 ドジャーの事は分かってしまうんだ・・・・・
 仲間を信じて・・・・自分を犠牲にしてしまうそのやっかいな性格の事も・・・・・」

地下の空間。
この広い、暗い空間。

アレックスとドジャーは・・・・
血にまみれて倒れたままだった。

「俺の思い出。さよなら(グッバイ)か・・・・・・」

ジャスティンは悲しい表情で彼女を抱きしめた。

「・・・・・・・・運命・・・・・・か・・・・・・・俺だって納得できねぇよ・・・・・・」

そう言ってジャスティンは彼女を強く抱きしめた。
心がバラバラになってしまわないように。










                 






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