S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<アメと病院と悪がきリコス>>




「ったく。いつ来ても臭ぇ場所だ。衛生面大丈夫なのかよ」
「いや、絶対大丈夫でしょう・・・・病院なんだから・・・・・」

ここはミルレス白十字病院。
優秀な聖職者が生まれるミルレスの街の中核に建っており、
その規模は断トツでマイソシア一である。

アレックスとドジャーはメッツの見舞いでここに訪れていた。
先日メッツの手術は無事終了したらしい。
まぁ無事じゃないと困るのだが・・・・
とにかくアレックスとドジャーは医薬品の匂いが漂う廊下を抜け、
ドジャーが一室のドアを開け放つ。

「おーっすメッツ!元気してるか!?」

「メッツ貴様!拙者に!拙者によこせ!」
「誰が渡すか!死んでも渡さねぇからなオラァ!」

メッツの個室であるその病室。
メッツだけが寝ているのが当然なのだが
そこにはもう一人の影があった。
その女侍はメッツに飛び掛っていた。
まさに死闘中である。

「なんでイスカさんがここに・・・・」
「いや・・・・まぁ見舞いじゃぁないだろう・・・・」

メッツとイスカは何かを奪い合っているようだった。
アレックスがふと目線を落とすと
ベッドの横の小さなテーブルにはひとつの箱があった。
何が入っているか。
それは中身を見なくともアレックスほどの実力があれば
鼻だけで理解できる物であった。

「ケ、ケーキですか!?」

メッツとイスカの動きがアレックスの言葉で固まる。
そして二人は同時にアレックスを凝視した。
アレックスは二人のその真剣な眼差しにビクっとした。

「アレックス・・・・てめぇもこのケーキを狙ってんのか?」
「これは拙者のケーキだぞアレックス!狙うなら貴様とて容赦はせんぞ!」
「アホか!これは俺のに決まってるだろうがイスカ!
 このケーキはなぁ!マリナが俺の見舞いのために作ってくれたもんなんだオラァ!」
「ふ、戯言を。そんな経緯などどうでもよいのだ。
 ただ拙者がマリナ殿のケーキが食べられるかどうか・・・それだけだ」

メッツのベッドの上で繰り広げられる壮絶なマリナ特製ケーキ争奪戦。
このままではケーキのためにベッドが破壊されてしまう勢いであった。

「ったく・・・なにやってんだかこいつらは・・・・」
「どんどんイスカさんが僕のカッコイイ像から離れていくんですが・・・・」
「剣一筋とか言いながら今は間違いなく "マリナのケーキ > 剣" だからな・・・・」
「まぁでも・・・・」

アレックスはイスカとメッツが争うベッドの横へと歩を進める。
そしてケーキの箱を開け、そこから出てきたショートケーキ
その上部で輝く苺を指でつまんだ。

「食べ物のために必死になる気持ちは分かりますけどね。だっておいしいんですもん」

アレックスは摘んだ苺を口の上に持っていき、
そして大きく口を開けて・・・・・・・・

「貴様」

あとは苺を落下させるだけというだけの状況。
そこでアレックスは身動きひとつ取れなくなった。
首筋にイスカの剣が突きつけられたからだ。

「もしその苺がお主の口内へ落とされるような事があったら・・・・・
 苺がお主のノドを通る前に・・・・・・・・・・拙者の剣がお主の首を飛ばすことになる」

アレックスは震えながら苺をショートケーキの上に戻した。
首を飛ばされてはかなわない・・・・
これから食事を楽しむ事ができなくなってしまうからだ。

「ま、まぁメッツさんが元気でなによりです・・・・」
「手術開けであれだけ動けりゃ逆に尊敬すっぜ」
「じゃぁ僕達はこれで・・・・」

イスカとメッツはアレックス達を尻目に
ただただ争い続けた。
あきれたアレックスとドジャーはため息だけ吐き、
病室のドアを閉めて出て行った。

「見舞いってなんなんだろなアレックス・・・・」
「さぁ・・・」

「まだまだ甘いね(ペロペロ)」

「「?」」

いつからそこに居たのか。
メッツの病室を出た所。
アレックスとドジャーの目の前には小さな少年が立っていた。
棒つきキャンディーをペロペロと舐めながら
ドジャーとアレックスを見上げていた。

「まだまだ甘いね兄ちゃん達。あんなじゃ人に舐められるよ(ペロペロ)」

ペロペロとアメを舐めながらその少年は言う。

「なんだこのガキ、散れ!しっしっ」

「ガキじゃない。リコスだよ(ペロペロ)」

リコスと名乗った少年はアメを舐めながら言う。
ハッキリ行ってナマイキだ。
もうなんというかナマイキである。

「ボクに言わせれば押しが足りないよ兄ちゃん達。
 人に舐められちゃぁおしまいだよ。人は舐めるぐらいじゃないと(ペロペロ)」

アメを舐める少年に"舐める舐めない"と言われても説得力がない。
いや、まずこの少年はなんなんだ。
なんで自分達につっかかってくるのだろうか。

「あぁー分かった分かった。俺ぁガキは嫌いなんだ。
 オメェに用はねぇんだよ。ほれ、行こうぜアレックス」

ドジャーはリコスを跳ね飛ばしながら無理矢理歩を進めた。
その拍子にリコスのなめていたアメが落ちる。
地面にポトリと落ちたキャンディーを見ると
少年リコスはドジャーをキッと睨んだ。

「兄ちゃん達。俺を舐めたな」

そう言ってリコスは廊下の奥へと走って行ってしまった。

「なんなんだあのガキ・・・・」
「さぁ・・・」

ドジャーとアレックスは同時に首を傾げた後、
さっさとリコスが行った廊下とは逆を歩いていった。

「ま、ともかく見舞いなんて気軽に来るもんじゃねぇな」
「そうですか?」
「だってよ、見舞いは病人の気遣いに行くもんなんだぜ?
 なのに病人は気遣い無用で感謝も無し。なんじゃそりゃってなもんじゃねぇか?」
「まぁそうですね・・・・」

ケーキも食べ損ねたし・・・・

そういいながら階段に差し掛かった。
病院の階段って広いなぁとか考えながら歩いていると
急にドジャーの体が宙へ浮いた。

「ドジャーさん!?」
「おぁ!」

踏み外したのか、
ドジャーは真っ逆さまに階段から落ちた。
だが持ち前の瞬発力と運動神経で
地面に落ちる前に体勢を立て直し、階段の下でなんとか無事着地した。

「あっぶね!」

そんなドジャーの横を
一人の少年がトコトコと通過した。
さきほどの少年リコスだ。
もう新しいキャンディーを手にしている。
いや、口にしている。

「まだまだ甘いねぇ兄ちゃん(ペロペロ)」

そう言いながらリコスは奥へと消えていった。

「てめ!こらガキ!待ちやがれ!」

ドジャーが追いかけるが、
階段の角を曲がるとすでにリコスの姿はもう無かった。

「チクショウ!あのガキ!後から押しやがったな!」
「まぁまぁドジャーさん。相手は子供なんですし・・・」
「俺ぁ!ガキにナメられのが一番嫌いだっつったろ!」

あぁそりゃぁなぁ・・・・
来世はキャンディーに転生しない事を祈るしかないね

「まぁ病院で怪我したら笑えませんし早く帰りましょう」
「クソッ!今度会ったら金太郎アメみたいに切り刻んでやる!」

金太郎アメは別に切り刻むものって訳じゃないだろうとアレックスは思ったが
とりあえず病院の出口だ。
大病院だけに広さは中級住宅の敷地ほどあるんじゃないかというその病院玄関。
その扉へと歩を進めようとした時だった。

「ピンポンパンポーン♪ 病院の皆さんにお知らせします(ペロペロ)」

突如スピーカーから放送が流れた。
その憎たらしい声と、マイク越しにも聞こえるアメを舐める音。

「ドジャーさん!」
「あぁ、あのリコスってガキの声だな」

「只今病院から凶悪な知的障害者が脱走しました。
 病院の〜・・・・えっとぉ〜・・・病院に大変な事をしました〜(ペロペロ)
 外観はおっとり顔の騎士と長髪にピアスの盗賊です
 見つけた方は至急捕らえて下さい。手荒に(ペロペロ)」

「「なっ!!」」

手荒にってなんだと思うヒマもなく。
こういう事だといわんばかりにドジャーとアレックスの周りに人が囲んだ。
注射器を持ったナースや聴診器を振り回す医者に患者や見舞い人達。
出入り口の方に関しては完全に封鎖されたと言っても過言ではない。

「なんかヤバくないですか・・・・」
「なんでこうなるんだよ!」

ドジャーは叫ぶと同時に地面へジョーカーポークを投げつけた。
噴出す煙幕。
それはドジャーとアレックスの姿を煙の闇で隠した。
アレックス達を囲んでいた人たちが煙でゴホゴホと咳き込んでいるうちに
アレックスとドジャーは走ってその一帯を抜け出た。
先程降りた階段をまた昇る。

「なんなんだあのガキ!」
「アメを落とされたのがそんなに気に食わなかったんでしょうか・・・・」
「ガキにアメを落としたくらいで気に食わなかったと思われる俺が気に食わねぇ!」

・・・・
とりあえず二人メッツの病室に逃げ込もうと考えた。
二人はメッツの部屋のある階に入る。
メッツのいる病室へ向けて走った。
が、
すぐの廊下に一人の老人が立ちふさがっていた。

「・・・こ・・・ここはぁ〜・・・死んでもとぉさぁんぞぉ〜〜・・・・」

フルフルと震えながら松葉杖を構える老人。
点滴を腕に注射しながらアレックス達を止めようとしていた。
いや、あんたに死んでもと言われても説得力がない。

「ジジィ!寿命が縮むぞ!どけッ!さもないと・・・・」

ドジャーの言葉が言い終わるより先にアレックスの手が出た。
アレックスのパンチが老人にヒットし、老人はすってんころりんと廊下に転んだ。

「オメェは鬼か・・・・」
「すみませんおじいさん。でも安心してください。みねうちです」
「いや・・・みねうちもくそも・・・・」

廊下でピクピクと倒れる老人。
死んでない事祈る。
アレックスは胸の前で「アーメン」と十字を切った後、
その廊下をさらに奥へと足を進めた。

が、老人の横を通り過ぎてすぐ、
そこには一人の見知らぬ戦士が立ち塞がっていた。
その戦士はアレックスとドジャーを見るなり叫んできた。

「貴様らぁぁああああ!貴様らが凶悪なんたらだなあぁあああ!」

そう叫びながらその戦士はソードをピンとアレックス達の方へ突き出した。

「な、なんだぁこの暑苦しい奴は・・・」
「さぁ・・・病院にいるにしては元気すぎますね」
「あのソードが新手のメスってんなら納得するけどな?」

「自分はぁあああ!自分はぁああ!リヨンと申すぅううう!
 悪は許さぁぁあああああん!尋常にぃぃい!尋常に勝負せよぉおおお!!」








                 






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