「よっ・・・・とぉ」

ヤンキが剣を一振り。
そして一人倒したと思うと簡単に次の一人をも一斬り。
黒いモノソードが闇夜の中で振られる。

「楽なもんだな・・・とぉ。あんたらみんな意地も意志もなく武器もってるだろ?
 だから輝かない。光になれない。光を求めな・・・・・・あんたら」

言いながらもヤンキはまた一振り。
剣が一振りされるたびに人が一人倒れていく。

「くそぉ!あの剣士強ぇぞ!!」
「ってか見えねぇ!」
「剣が黒くてこの夜の暗闇じゃぁよく見えねぇよ!!」

「暗くて見えない?・・・・・だから光を求めろって言ってるんですよ・・・とぉ!!」

一瞬で5回の斬り返し。
ツバメ返しならぬ、ヤンキ得意のカラス返し。
漆黒の夜の中、黒いモノソードが飛び交うその様子。
それは暗闇を数羽のカラスが高速で飛び交うようだった。

「クソォ!見えないのは剣が黒いからだけじゃねぇ!」
「剣速も速ぇんだ!」
「振り切った時を好機と思うな!斬り返しがくるぞ!」

そのGUN'Sの男達の様子を見て、
ヤンキはため息をついた。

「何回言ったらわかるんだ。光を求めろと言ってるじゃないか。
 何も目指さず飛び続ければ・・・・・・いつか落ちるだけですよっとぉ」

また一瞬で数人の男達が地に落ちた。
カラスに食われる死骸。
それが横たわっていく。

黒に身を包んだ男が、
闇夜を自由に飛びまわっていた。









「ぎゃぁぁ!!」
「ごぁっ・・・」
「ぎょえぇ!!」

絶え間ない悲鳴。
途切れない悲鳴。

「二花剣・コスモス(ルナスラッシュ)」

二刀によるルナスラッシュの連続攻撃。
ルナスラッシュの半円形の剣筋が美しく動く。
右の剣。
左の剣。
また右。
そして左。
永遠に続くその連剣。

「隙を無くす剣技こそ《騎士の心道場》の本質。そしてそれは師範が教えてくれた忘れ形見。
 小宇宙(コスモ)の如く続く永遠の連続技。身をもって味わい・・・・散り逝くがいいさ」

まだ続く剣。
止まらぬ剣。
右の剣が半円形に華麗に舞ったと思うと、
ツィン自身も一歩踏み出し、
半歩回転し、
今度は左の剣が半円形技(ルナスラッシュ)。

「散れっ。散れっ。散れっ」

ツィンが剣を振るたびに言う。

「お前らは散ればいいさ。そのかわり俺は・・・・・・枯れるまで咲き誇ってやる!」

左の剣で前の敵を斬ったと思うと、
無駄なく横の敵を右の剣で斬り伏せ、
次の瞬間真後ろの敵まで剣が鮮やかに半円形に舞う。

右と左の剣は、
止まることなく円を描き、
ツィンはそれにつれ、無駄なく動く。

それはまるでダンスを踊っているかのように華麗だった。
ステップを踏むように左右の足が交互に動き、
まるで別の生き物かのように両手の剣が鮮やかに舞う。
いや、咲き誇る。

暗闇の戦場に舞う一輪の花。

絶え間なく飛び散る血潮も、
まるで風で飛び散る赤い花びらのようも見えた。



「カッ!また腕をあげやがったなツィンの奴」
「そうですね。次やったら負けるんじゃないですか?」
「あ〜ん?天地がひっくり返ったってそんな事ねぇよ。
 俺は勝つためだったらなんだってするからな!畳育ちの坊ちゃん剣士に負けるかっての!」
「すごぉ〜〜ぃ!あのお兄ちゃん凄いねぇ〜〜!!
 かっこぃぃ〜〜〜!!きれぇ〜〜〜!お花みたいだよ〜〜〜!」

ロッキーが純粋にツィンをホメる事に、
ドジャーは少しムッとしたようだった。

「んじゃこんなんはどうか・・・・・・・なっ!!!」

いつ取り出したのか。
ドジャーはダガーを腰から取り出していた。
というよりすでに投げていた。
いつもながら手の早い事だ。
そして投げたダガーは・・・・・・・・・ツィンの背後に。

「・・・・・・・っ?!」

弾く音。
ツィンはまるで後ろに目がついているかのように
ドジャーのダガーを剣で弾いた。

「おい、何するんだ」

「ヒューーー♪本当に不意打ちに強くなったじゃねぇか」

「盗賊さん。味方に攻撃するほど手癖が悪くなったのか?
 今のダガー。確実に俺に当たってるコースだったろ」

「だな。当てる気で投げたからな」

「当たったらどうするんだ」

「"当たらなかった"じゃねぇか」

ドジャーがニヤニヤと笑う。
ツィンはドジャーのその態度に軽く鼻を鳴らし、
敵をもう一人斬り倒した後、
背を向けて言う。

「盗賊さん。俺はあんたと戦いたい・・・・・ライバルだと勝手に思ってる。
 だがな。俺ぁやっぱあんたの事が好きなわけじゃぁないってのを今再確認したよ」

「そりゃご結構♪」

「だからさっさと消えてくれ。突破するんだろ?のんびり観戦してんなよ
 なんのために俺達はここに来て戦ってるんだ。お前の暇つぶしピエロになるためじゃぁない」

「カッ!お前口が悪くなったな。あーはいはいはい。分かりましたよっ!!
 こっちだって頼んだわけじゃねぇんだから偉そうにすんなよクソっ!」

ドジャーは半ギレ状態。
いつもながら堪忍袋の小さいこと小さいこと。

「あばよクソ野郎!」

ドジャーの得意の瞬発力。
その素早さですぐさま跳んでいった。
敵の群れの中に飛び込むように。
突っ込むように。
はたまた間を縫うように素早く跳んで行った。

「あっ・・・ちょ、ドジャーさん!」

アレックスの呼びかけも空しく、
すでにドジャーは声も届かない所まですっ飛んで行ってしまった。

「はぁ・・・もう・・・・・短気なんですから・・・・」

アレックスは腕を組み、
ため息をつく。

「こんな長く多い人ゴミじゃぁ僕の『G−U』は最大まで生かせないんですよ?
 ドジャーさんについていけるわけないじゃないですか・・・・ほんと考えなしですよ・・・・」
「アレックスぅ〜〜!頑張って走ろ〜〜よ!!!」

ロッキーが眉毛を逆ハの字にし、
小さな腕を振り上げて言った。

「ハハ・・・そうですね。それしかないです」

アレックスは笑顔をロッキーに返してあげるしかなかった。

「あっ、フレアさん。それじゃぁ僕達・・・・・・」

振り向きながらアレックスはフレアに話しかけようとした。
だがやめた。
振り向いた先のフレア。
彼女は・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・は炎を纏いし堅き怒り・・・天より出(いずる)時に空は裂け逃げ・・・
 ・・・雲から顔を出すは無数の魔物・・・・我・・それ導きし者とし・・・唱えたるは怒りへの炎を・・・・」

すでに詠唱を始めていた。
凄い集中力だ。
まったく周りの声が聞こえていない。
そしてまったく周りが見えてもいない。
ただ淡々と詠唱を朗読し続けている。
もちろんメテオの詠唱。

「おい騎士さんよぉ」

ヤンキがアレックスに話しかける。

「俺達はどれくらいの間あの女魔術師を守ればいんですか・・・とぉ」

「そうですね・・・・終焉戦争の時を思い出すと・・・・・・・・・・・・残り15分ってとこでしょうか」

「じゅ・・・・」
「15分!?」

話しかけていたのはヤンキだが、
ツィンもアレックスの言葉につられて驚いた。

「ちょ、騎士さん!15分て・・・詠唱時間が15分って事か!?」
「あの女魔術師は世界最高級の魔術師なんだろ?なんでそんなにかかるんだ」

ツィンとヤンキの驚き。
詠唱時間15分。
もちろんそれは敵の1500の大群相手に
"15分も持ちこたえなければならない"・・・・という嘆きの驚き・・・・・・・・ではない。
単純に、何故詠唱に15分もかかるのかということ。
詠唱はたしかに魔術師にとってのデメリットだが、
どんなに長くとも数秒〜十数秒で終わるものだ。
15分の詠唱なんて聞いた事がない。

「彼女が『フォーリン・ラブ(空から降り注ぐ愛)』とまで呼ばれるのは、
 それは単純に魔力が高く、高威力なメテオを使えるからじゃないんです」

アレックスは終焉戦争の時を思い出す。
あれは恐ろしかった。
外門はいつもチェスターに即効で壊されていただけだったが、
鉄壁の内門前を一瞬で危機に陥れた彼女のメテオ。

「彼女は"メテオを保留できる"んです」

アレックスの言葉。
ツィンとヤンキは敵を斬りながら短く首をかしげる。

「保留?」
「どういう事だ・・・とぉ」

「ま、聞いた方が早いですかね。ほら、耳を澄ましてみてください」

言われてツィンとヤンキは耳を澄ます。
ヤンキはついでに襲い掛かってきた敵を片手でぶった切った。

「・・・・・・・・・・・空は裂け逃げ・・・雲から顔を出すは無数の・・・・・」

「分かりましたか?」

「・・・・?」
「ただの詠唱にしか聞こえねぇよ・・・とぉ」

「まぁただの詠唱ですよ。ただ、"先ほども読み上げた呪文"部分です。
 分かりますか?彼女は何度も同じ呪文を唱え続けているんですよ。
 メテオの呪文を・・・何度も・・・・何度もね」

「ってことは・・・」
「つまり・・・・」

ツィンとヤンキは同時に夜空を見上げた。
月が見える。
そして少し多目の雲の数も。

「あの雲の上には今、どんどんとメテオが溜まっていってるんですよ」

ツィンとヤンキはさすがに寒気がした。
フレアは今何度目の呪文詠唱なのだろうか。
そしてそのたびにメテオが溜まっていく?
つまり・・・・
そして・・・・
それは最後に一斉に・・・・・・

「「・・・・・・・・・」」

「って事でフレアさんの護衛。頼みましたよ」
「んじゃいこーよアレックスぅ〜〜」
「そうですね。行きましょう」

まだ半分放心状態で夜空を見上げているツィンとヤンキをよそに、
アレックスとロッキーは人ごみの中へと突っ込んだ。


「い〜〜〜〜やぁ〜〜〜っと!」

ロッキーが小さな体を全開に使ってカプリコハンマーを振る。
目の前の敵に直撃する。
ジャストインパクト。
子供の力と思えないほどのハンマー打撃。
食らった敵は夜空のお星様になりましたとさ。

「てぇーい!てぇ〜〜〜〜い!せいばぁ〜〜〜〜い!!!」

カプリコハンマーを・・・
振る。
振る。
振り切る。

ロッキーがハンマーを振るたび、
敵がどんどん夜空に浮かぶ。

「ほんっと・・・凄い子供ですね・・・・・」

アレックスは道を切り開くロッキーを後ろから見ながら言う。
カプリコ三騎士の養子。
その力。
その恐ろしさが特に分かる。
恐ろしい才能を持った子供だ。
・・・・いや、子供といっても実年齢は20歳。
ロッキーは人の4倍程生きるのだ。
だからこそ・・・未来が恐ろしい。

「とぉ〜〜〜〜〜〜〜ぅ!!!」

子供のバネとは思えぬ跳躍力。
重いカプリコハンマーを持ったまま人の何倍も飛び上がる。

「オリオールぅ〜〜〜!いくよぉ〜〜〜〜!」
「ウヌルネ・・・ロヌヌ!」

二人にしか分からない会話の後、
ロッキーは空中からハンマーを振り下ろす。
重いハンマーは、ロッキーと共に勢いよく地面へ急降下し・・・・・・

「ちぇ〜〜すとぉおおおお!!!!」

地面に突き刺さると同時、
大爆発を起こした。
バーストウェーブ。

「うわぁぁあ!」
「ぎゃぁあああ!!」

人ゴミの人がゴミのように飛ぶ。
まるで水面に岩を落としたように、
人という水しぶきが辺りに波状で吹っ飛んだ。

「へへーん♪」

ロッキーは小さな人差し指で鼻をコスる。
自慢げ。
まるで学校で100点をとってきた子供のよう。

「凄いですよ!ロッキー君!」
「でしょ〜〜〜〜?」
「これならもしかしてメテオがなくても突破できるかもしれませんね」
「えへへ〜〜〜」

ロッキーは狼帽子の上から自分の頭を撫でて照れる。
さすがにメテオ無しで突破というのは無理だろうが、
アレックスは口がうまい。
人の士気をあげるのはお手の物といったところである。

「さっ、チャッチャと突破しちゃいましょうか」
「うん〜〜〜〜♪」

アレックスとロッキーは、
また敵の群れの中に突っ込もうとした。
だが・・・・・・・

大きな轟音が鳴り響いた。
それはアレックスとロッキーの目の前から。
目の前に大きな破壊音。
というか何かが落下したような、
叩きつけられたような轟音。

「ごっぁああ!!」
「ぎゃあーー!!!」

その地点からの悲鳴。

アレックスとロッキーは突っ込むのをやめる。
いや、できなくなる。
アレックスとロッキーの目の前・・・・
そこには・・・・・・・・・・大きな鉄の腕。
それがGUN'Sの男達を潰していた。

「これは・・・・・」

「チッ、外したわ・・・・」

上の方から声。
腕をなぞるようにアレックスは視線をあげる。
そこには、
赤い無機質な目をしたスマイルマンの顔。
そしてその頭の上に・・・・マリ=ロイヤル。

「そんな簡単に通すと思ってるの?さっきから私を忘れたように話を進めちゃってさ」

実際忘れていた。
そしてアレックスは、
忘れていたついでに変な事を言い出す。

「マリさん。通してくれると嬉しいんですが」

「と、通すわけないでしょ!時と場合を考えて言いなさいっ!」

「でも通してくれると僕ら嬉しいんですけど。ね〜ロッキー君」
「へ?・・・・・・・・・・・・ね〜アレックス〜〜♪」

ロッキーはよく分かってないようだが、
楽しそうにアレックスにノった。

「・・・・ふざけた人だわ!本当にふざけた言う人ね!
 六銃士の再装填メンバーの私と、こんなビッグでステキなスマイルマンを無視なんて!」

スマイルマンの上で顔を真っ赤にするマリ。

「無視しようなんて気をなくしてあげるわ!見なさいよこのスマイルマン達を!
 こんな大きくて強くてで堅くて力のあるスマイルマンが3体よ3体!!!
 これを素通りできると思うの!?これらの存在をひと時でも忘れただけでも奇跡よ!」

やけに自慢げなマリ。
恐らくマリが金などによりをかけて作ったのだろう。

「別に大きければ強いってわけじゃないと思いますよ?
 ここにいるロッキー君は小さいけど物凄く強いですし」

またロッキーが照れくさそうにする。
照れくさそうかつ、嬉しそうにするので褒め概のあることだ。

「あら。大きいにこしたことはないわ!それは力(パワー)も!権力も!
 そしてお金だって多いにこしたことはない!どれも余分以上にあって損はないの!
 だから・・・・・私は手に入れる。力も!権力も!そしてお金も!
 そしてそれらを全て手に入れたら・・・・・・・・・・・・あの楽しかった家庭を・・・・・」

マリは少し思いつめたような悲しい顔つきになった。
だが、
すぐに意志を固めたように強い顔つきに戻る。

「とにかくっ!私はあなた達を通さない!いえ、あなた達が通る事なんて不可能よ!
 部下の話じゃ、昼間スマイルマン一匹に数人がかりでなんとかだったらしいじゃない?
 でも今あなた達は2人!そしてここには3体のスマイルマン!!
 そう!3体もスマイルマンがいるのよ!あのロウマ=ハートだって3体もいたら・・・・・・・」

マリが自信を持って、
かつ力強く演説をしている時だった。

「邪魔ぁっ!邪魔だってぇのぉ!」

横からどんどん大きくなる声。
それはダニエルの声。

「どけぇ!デカブツっ!どけってんだ!燃えろってんだよぉ!」

敵をどかし、
かきわけ、
燃やしながら近づいてくるダニエル。
そしてダニエルは、

「燃えとけぇえええええ!!!!」

通り過ぎるついでに、
1体のスマイルマンを燃やした。
大きな大きなスマイルマンが、
炎に巻き込まれ、炎上する。
だが、さすが鉄でできているだけある。
燃えただけではビクとも・・・・・・・・

「のけっ!鉄くず!」
「応々!!」
「・・・・・邪魔」

3つの伝説が飛び上がった。
そして閃光が3回。
いや、見えない速度で数回。
それが飛び散ったと思うと・・・・・
ダニエルによって炎上していたスマイルマンが・・・・・・・
ただの燃える鉄の破片に分解された。

「待てぇ人間!」
「オラァ!」
「・・・・・止まれ」

「ヒャーッハッハ!クッソォ♪しつけぇんだよてめぇら!!!」

「必ず!必ずこの手で殺してやるぞ人間!参る!」
「応!絶対だ!」
「・・・・・承知しているっ!」

ダニエルとカプリコ三騎士の鬼ごっこ。
行きずりの人をついでで燃やし、
目の前の人間をついでに斬り飛ばす。

その超速の台風のような1人+3匹は、
通りすがりの障害物のように、
スマイルマンを1体破壊し、
そしてまた迷惑を振りまきながら走り去っていった。

「・・・・・・・」

「「・・・・・・・・・」」

嵐がすぎさったように、
マリも、
アレックスとロッキーは一瞬呆然とした。

「え・・・えと・・・・・・・スマイルマンは何体って言ってましたっけ?」

マリの頬がヒクつく。

「お、お前らなんてスマイルマン2体で十分なんだよ!!!
 いけっ!二号機!あのザコ二人を潰してしまえ!」

「ん〜。こうかな」

「へ?」

マリは驚いて下を見下ろす。
スマイルマンが返事をするわけがない。
だが量産型スマイルマン二号機から声がしたからだ。
そしてその声の主は、

「よし、ここをこうだな」

ツィンだった。
ツィンがスマイルマンの下で、
腕の付け根の部分で何かしている。

「あ、あんた!・・・そこの剣士!あんたそこで何をやっているの!?」

「ん?見ての通りだが?」

といいながら、
ツィンは最後に両手の剣を一振り。
すると・・・・・

「ガ・・・ビガ・・・ガ・・・・・」

ぷしゅーん・・・・・
スマイルマンが音を立て、
腕の付け根から煙を上げ始めた。

「いや、ね。この腕の付け根のところ。とりあえず斬りまくってやったよ。
 機械の事をよくわからんが、作るより壊す方が簡単さ」

ツィンの言った通りだった。
スマイルマンの腕の付け根と部分。
そこがめっためたに斬り刻んであった。
しかもいつの間にか両腕を。

「付け根の部分はむき出しだったからな。変なコードやら金具やらをとりあえず斬りつくしてみたよ。
 むき出しの部分があるのはよくないぜ?隙があるってのはどんなものでも弱点だ。
 それは剣道も人も、そして機械にとっても同じ。
 師範はよく言ってたな。まず隙を作らない事。そして"懐に入られない事"」

両腕の付け根をめっためたにされたスマイルマン。
壊れてはいないが・・・・・・・・・
腕が故障したとなると・・・・・・

「腕が使えないスマイルマンなんてただのだるま(バスケットケース)だよ。
 まさに手も足も出ないってね。ま、機械とはいえ可哀想だな。
 俺だって両腕がなければ剣も持てない。俺も両腕は誇りだからな。同情するよ。
 あ、だがこの鉄の塊はあるだけ邪魔だ。粗大ゴミの日にでも出しとけよお嬢さん」

それだけ言い残し、
ツィンは堂々と背を向けて戻っていく。

「ありがとうございますツィンさん!」

礼を言うアレックス。
ツィンはそれに対し、
戻りながら、
背を向けながら、
剣を持った腕でアレックスに手を振り返事をする。

「なぁに。盗賊さんだけじゃなくあんたにも死んでほしくないからな。
 こんな鉄くずにやられたんじゃぁあんたに負けたリヨンが浮かばれない。
 リヨンが試合の後にこう言ってたんだぜ?」

ツィンが一度だけ振り向く。

「"自分が師範の次に尊敬できる騎士を見つけた"ってな。
 だからこんなところで死んでくれるなよ?
 すぐにでもリヨンに会いに行ってくれるってんなら話は別だけどな」

ツィンがそう言って笑いかけてきた。

「おいツィン!終わったんなら戻ってこいよ!・・・とぉ
 俺だけでこの数相手に護衛はキツいんだ」
「分かってるよ」

ツィンはまた背を向け、
近くの男を二人、片手づつで突き殺して戻っていった。

「尊敬できる騎士ですか・・・・・」

アレックスは自分の右手を見る。
そして握り締める。

「僕はそんな立派なもんじゃないですけどね・・・・・・」

アレックスはいろんな事を思い出しながら、
思いつめた顔をした。

「どうでもいいわ!!!」

怒りの篭った大きな声。
もちろんマリの声。

「何回も私の事を忘れて話進めてくれるわね!
 そんでもってスマイルマン1体いくらすると思ってるの!」

知らないけど・・・・

「私のスマイルマンをドンドン壊してくれちゃって!」

僕ではないけど・・・・

「あんたに全部弁償してもらうからね!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!?

「えぇ!?」

「フフッ!とりあえず損害賠償は病院のベッドで聞いてあげるわ!
 いくわよ"スマイルマン・ロイヤル"!!!」

マリの声に連動するように、
マリの下のスマイルマンが軋むような唸り音をあげる。
そのスマイルマン。
他のスマイルマンとは違う。
まず外見が違った。
他のスマイルマンより洗練されていて美しく。
他より素材がいい・・・というよりも凝(こ)った造りになっている。

「このスマイルマンは私の最高傑作!
 一番お金がかかっているからスマイルマン・ロイヤル(高級品)!
 そして・・・・・私のロイヤル家を取り戻すための架け橋!
 他の何を捨ててでも私はこのスマイルマンに全てをかける!
 GUN'Sで成功して!莫大な力と権力とお金を手に入れて!
 そしてスマイルがあったあの日!・・・・笑い合えたあの日々を取り戻すの!!」






                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送