「なな・・・なんでこんなとこに?!」
「さ、三騎士・・・・・」
「カプリコ三騎士だ!!!!」
「カプリコ三騎士が出やがったぞぉおお!!!!???」

密集していた1500のGUN'Sメンバー達は、
一斉に騒ぎ出す。
かのカプリコ三騎士。
それはモンスター界でのカリスマ。
人間の中にまで深く知れ渡る異質の三匹。

「応応!!!うるせぇ人間共だぜっ!!!」

アジェトロが口元の白いマフラーを剥がしながら言い、
そして背中の大剣カプリコソードを抜く。

「ムカツクから黙りなっ!」

その小さなカプリコの体が跳んだと思うと、
アジェトロは空中で剣を一振り。
小さなカプリコには大きすぎるそのカプリコソードを、
体いっぱい回転させるように振り回すと、
それだけで人間の頭が5個吹っ飛んだ。

「うわぁぁぁ!!」
「退け!逃げろ!死ぬぞ!!」

GUN'Sの男達が一斉に逃げようとする。
だが、1500の密集地帯。
逃げようにも逃げれず、
攻めようにも攻めれず。
パニック状態。

「応応々!!!!逃げんな人間共!このアジェトロ様と戦いやがれ!」
「・・・・・・・・・アジェトロは落ち着きが無い」

フサムはマフラーの中で、
ボソリと言った。
逆にロッキーは、「アジェパパかっこいい〜〜!!」と、
小さな体でぴょんぴょんとジャンプしながら喜んでいた。

「おいアジェトロ。もう少し我慢しろ」
「応〜。りょ〜か〜い」

エイアグの言葉に、
アジェトロはそう返しながらも、
最後にもう一人と言わんばかりに首を一つフッ飛ばし、
アジェトロは身軽に戻ってきた。

「ったくエイアグぅ。俺ぁ早く殺(や)りたくてたまんねぇんだぜ?
 戦いがしたくてウズウズするんだ。話ならさっさと終わらせてくれよ?」
「ふん。これは人と人の戦争だ。我らは無駄に殺生を行う必要はない。
 だがすべきときにはいくらでも殺す。その時だけ参ればいい」
「応!そうだな!」
「・・・承知」

エイアグがアジェトロとフサムをまとめ、
アレックスとドジャーを見る。
だがアレックス達は軽く放心状態だった。
ドジャーがやっと口を開く。

「あー・・・・いや・・・・・・・・。ビビった。ビビったぜ。
 あんたらがまさか手ぇ貸してくれるたぁ思わなかったからよ・・・・
 猫の手も借りたかったとこだが、まさかカプリコ三騎士の手を借りれるたぁ・・・・」
「はい。助かることこの上ないです」

ドジャーとアレックスは、
想像外の戦力のプラスに、
まだ驚きを隠せないまま、ただ嬉しさを表現できずにいた。

「んとね〜〜。パパ達ね〜〜。あ、みんなは駄目なんだ〜〜。危ないから〜〜。
 けどね。パパ達は〜〜お礼〜を僕が〜〜〜〜・・・・・・・」

「「???」」

ロッキーは何かを伝えようとしているようだが、
アレックス達にはよく分からなかった。

「ロッキー・・・・俺が話すから大丈夫だ」

一生懸命伝えようとしていたロッキーをエイアグが止める。
ロッキーもパパが言うならとお利口になった。
エイアグがアレックス達に話し始める。

「まぁさっきも言ったがこれは《メイジプール》の件の返しだ。
 金も少々やったが礼のフェイスオーブ"オリオール"はロッキーが持ってるし
 なにやら礼をしてやった感がなかったからな」

「いえいえ・・・そんな・・・・・」
「カカカッ!なんにしろありがてぇ事この上ねぇよ!
 なんたってあのカプリコ三騎士が味方なんだぜ?!」
「ですね。物凄く心強いです」

「ま、カプリコ砦の者達を危険な目に合わすわけにはいかねぇからよ」
「・・・・・・・我ら三匹の手だけだが」
「貸してやる。我らを存分に使え」

ある意味切り札より強い手札。
カプリコ三騎士のカード。
ロウマ率いる44部隊も心強い手助けだったが、
あちらは目的が重なっただけ。
アレックス達のために動いているわけではない。
だが・・・・カプリコ三騎士という凄すぎる手札。
さらに"存分に使え"などと言われれば嬉しくないわけない。

「なんとかなるもんですね!」
「おう!だからギャンブルはやめられねぇ!」

アレックスとドジャーはこのどんでん返しの嬉しさで、
ハイタッチをパチンと鳴らした。
ロッキーが「ぼくもぼくも〜〜」とせびるので、
二人はロッキーにも低いハイタッチをしてやった。

「ま、自由に使えなんつったけどよぉ」
「・・・・・・・・・結局は殺(や)る以外に仕事はないな」
「おい人間!早く戦略でもなんでも教えやがれ!
 早くやりてぇんだよ!あいつらをよぉ!!」

アジェトロがカプリコソードを突き出す。
GUN'Sの者達はギクリと一歩引く。
1500という途方もない数がいるにも関わらず、
3匹の魔物に怖気づく。

「そうですね。僕達の目的はあくまで本拠地までの突破口です。
 三騎士の方々ならこの人ゴミの肉壁に道を作るなんてわけないでしょう」
「カカカッ!ほんと運がむいてきたぜぇ!負け決定みたいな状況だったのが、今は俄然現実的だ!
 激アツ演出だぜ!ビッグボーナスが確定したようなもんだ!」

そう。
三騎士ならその威厳的圧力と、
その壮絶なる武力で、GUN'Sの海のようなこの場を切り開くことができる。
ある意味《GUN'S Revolver》本拠地への道は約束されたようなもの。

「ならば我らは道を開けばいいのだな」

エイアグが剣を抜くと同時に、フサムも黙って剣を抜く。

「仕事は道を開く。我らはそれだけ行ったらすぐに去るぞ人間。
 借りを返したらもう我らには無関係の戦だからな」

「え?帰っちゃうんですか?」

「あぁ。早く帰らないとコロラドのオムツを変える時間に間に合わなくなる」

真顔でそんな事を言う生きた伝説エイアグ。

「お、オムツ・・・・」
「オムツですか・・・・・」

「そうだが?何かおかしいか?数時間前にここミルレスで買い物をしてな。
 人間用だが良いオムツが手に入ったのだ。横漏れしない上に肌に優しい。
 少し高かったがコロラドのためだし・・・・・・・・・・・・・ムッ!!??
 そうだった!コロラドはパパがいないと起きたときに泣いてしまう!!
 昼寝から起きてもしパパがいなかったら・・・・あぁ!!コロラドぉ!!!
 想像の中でもそんな顔で泣かないでおくれぇぇ!すぐパパが迎えに行くからな!!!」

剣をほっぽりだし、
頭に両手を添えながら一人ブツブツと悶絶するエイアグ。
なんなんだろうかこの伝説は。
この親バカが本当にモンスター界の伝説になってしまうのだろうか。

「応々・・・・エイアグ・・・子供が心配なのは分かったから・・・・
 それならさっさと人間カタしちまおうぜ」
「ん?おう!そうだったな!コロラドのためだ!光速で殺しつくしてやる!」

エイアグが元気いっぱいにカプリコソードを拾い、
そして構える。
だがその途中、エイアグがフサムに目を留める。

「ん?どうしたフサム」
「・・・・・・・・あいつ」

フサムは一点を凝視していた。

「・・・・あいつ。承知しているぞ。知っている・・・・あの人間」

フサムが見ている方。
GUN'Sの人ごみの中・・・・・・・・・の一人の男。
それはGUN'Sの男であってGUN'Sの男ではない。
いや、そんな事はどうでもいい。
とにかくフサムが見ていたその男。
人ごみの中にこそこそと隠れようとしている男。
あまりにも・・・・・・・・
その赤い髪が目立っているその男。

「!?・・・・応々!!!!」
「あいつは!?」

エイアグ、アジェトロの顔つきも一瞬で変わった。
・・・・と思った次の瞬間。
すでに三騎士全員がとびついていた。

「参る!」
「応!」
「・・・・・承知」

「や、やっべぇ!?バレた!!」

ダニエルが気付く。
そして逃げようとするが、
それも三騎士の前では遅い。
一瞬で三騎士はダニエルの周りをとりまき、
そして三本のカプリコソードをダニエルに突きつける。

「わ!ちょ、まった!タンマタンマァ〜・・・・・・・・ヒャハハ・・・・・・・」

ダニエルは恐る恐る笑いながら、
両手をあげる。

「あ・・・あぁ〜〜っと・・・・・・・・ハハ・・・・・三騎士様がこのダニエルさんになんの用?」

「とぼけるな人間!!!!!!!」
「・・・・・我らがお前の顔を忘れると思ったか?」

アレックスとドジャーはわけも分からず、
状況を把握できなかったが、
ただ見ているしかなかった。
三騎士が話しを続ける。

「おめぇ!まさか忘れたとは言わせねぇぞ!」
「・・・・・・・外道め」
「お前はその両手で!我らカプリコ砦とノカン村を焼いただろう!!!!」

アレックスは「あっ・・・」と納得しつつ理解した。
そうだった。
アレックスは参加していなかったが、
歴史に残るカプリコとノカンの一斉駆除。
カプリコ砦とノカン村が世界地図から消える大事件、大討伐。
あれにダニエルは参加しており、
そしてカプリコとノカンの戦争を好機にそれぞれの本拠地を焼いたのは・・・・ダニエルだった。

「・・・・・・あの恨み」
「応!必ず復讐してやろうと思っていたぜ!」
「王国騎士団が消えてお前も死んだと思っていたが・・・・・のうのうと生きていたか!!!」

ダニエルは焦り、
両手を振りながら次々とつなぎ目の言葉を発する。

「ま、まぁまぁお三方!!・・・俺様とあんたらは偶然の再会したわけだし・・・・
 ここはひとぉーつゆっくり腰を落ち着かせて・・・・・・な?な?」

「・・・・・言い訳は無承知」

フサムが剣を振り切るため、剣をひいた。
それは同時にエイアグとアジェトロも。
三つのカプリコソードがダニエルに三つの切れ目をいれようと構えられた。

「・・・・・・・・・・・・ハハ・・・」

ダニエルは小さく笑った。
観念した笑い・・・・・・ではない。
表情は笑み。

「そりゃ許しちゃくれねぇか・・・・・・クク・・・・・・・・ヒャーハッハ!!!!」

ダニエルは大きく笑う。
そして片手を振り上げる。

「ま、あの時は・・・・・・・・・楽しかったぜお三方!!!!」

そう言いながら、
ダニエルは真下。
自分の足元に拳を突き落とした。
と、同時。
地面から炎が噴出する。

それはダニエルを中心に周囲に炎が噴出した。
まるで壁。
そう、ファイアウォール。
ダニエルの周りに炎の壁が噴出す。

「く・・・・」
「外道め!!」

「ヒャーーハハハハハ!!!!!あ〜〜ばよっと♪」

ダニエルはファイアウォールの隙に、
咄嗟に自分は逃げ出す。

「おらっ!どけっ!散れ!燃えるか消えろ!!」

ダニエルは炎を振り回しながら、GUN'Sの群れの中へ突っ込む。
いや、逃げ込む。

「どけっ!どけって!!!」

三騎士から逃げようと人を燃やしながら、
GUN'Sの群れをかき分ける。
草むらに駆け込んだかのように、
炎で人を燃やしながら必死に逃げる。

「逃がすか人間!!参る!!」
「応!!!」
「・・・・承知!」

当然三騎士も追う。
一瞬で三つの伝説が跳ぶ。
そして目の前の人ごみ。
目の前の邪魔な人間。
まるでただの邪魔な障害物のようにGUN'Sの者達の首を飛ばす。
カプリコソードを振り回してポンポンと花でも摘むかのように人の首を飛ばし、
小さな三つの伝説はダニエルを追う。

「ヒャーーハッハ!やべぇ!マジやっべぇ♪
 おーらどけ!燃えろ!ダニエル様が逃げるぞ!どけっ!燃えろ燃えろ!!」

ダニエルは人という人を燃やしながら、
自分は人ごみの中を逃げまどう。

燃える人。
逃げる人。
首の飛ぶ人。
追う魔物。

1500のGUN'Sの群れはもう大パニック状態だった。
無差別に燃やす人間が群れの中を走りまわり、
通りがかりの人間をついでというようにカッ斬る伝説の三騎士。
それが動き回っているのだから、
パニックになるのは当然。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

アレックスとドジャーは本当にもう呆然とするしかなかった。
もうついていけない。
なんなんだろうこれは。

さきほどまではもうどうしようもないと思っていた1500の敵。
それをまるでゴミかのように殺しまわる1人と3匹。
そのお互いの理由のついでだけで・・・・。

「あっと・・・・三騎士の助力はどうなったんだ・・・・」
「えぇ・・・っと・・・・」

アレックスは考えながらため息をついた。

「ダニーはやっぱどっかで撒いてくるべきでした・・・・」
「ほれみろ・・・・」
「ま、まぁパニック状態を期に本拠地へと向かいましょうか・・・・・・・」
「ロッキー。お前でなんとか道を開いてくれっか?」

状況も飲み込めず、
よくも分からず、
とにかく自分のパパ達を一生懸命応援していたロッキー。
その手と声を止め、ドジャーに返事をする。

「え〜〜〜・・・・パパ達なんか怒ってるみたいだし・・・・そっちを手伝いたいなぁ〜〜〜」

ロッキーは露骨にイヤそうな顔をする。

「ロッキー君。僕達の方を手伝ってくれると嬉しいんですけど」

アレックスの言葉に、
ロッキーは「え?」と一瞬考え、
そしてピョンっ!とジャンプして答える。

「じゃぁい〜よ〜!アレックスが嬉しいんなら手伝う〜〜!!」

嬉しいなら手伝う。
なんとも嬉しい純粋な返事だ。
そして心強い。

だが、それでもアレックスには心配があった。

たしかにロッキーは道を開くという事に関してなら、
その得意のハンマーのお陰で《MD》のだれよりも適しているだろう。
さらに敵はパニック状態。
だが・・・
それでも相手は1500・・・・
突破できるだろうか・・・・。

「やるしかねぇよ」

ドジャーはアレックスを察し、
肩に手を置いて微笑む。
アレックスはそれを見て、
微笑み返して頷いた。

「じゃぁ今の内に・・・・」


「あの・・・・・・・・」

さぁ行こう!と
アレックス・ドジャー・ロッキーが飛び出そうとした時だった。
後ろから声がした。

「のぇ?」

すぐさま振り向く。
ロッキーはずっこけた。
とにかく呼ばれた声の方を三人は振り返った。

だがどこから声がしたのか分からない。
何せ敵だらけの人ごみ。
人だらけなのだから。

「あ、私です私です」

一人の女が手を挙げた。
だが「私です」と言われても分からなかった。
その女性は、見たこともない人だった。

外見。
それは恐らく魔術師だろう。
ピンク色のローブ。
バイティスとでもいう装備だったか。
魔術師にはあまり珍しくないそのローブを着ている女性。
いや、珍しくないと言ってもその外見は少し特殊だった。
ローブといっても異様に"丈(たけ)"が短いのだ。
言うならば、
ローブをミニスカートのように着こなしている。
そしてその女性はそのミニスカートなローブに手を揃えてお辞儀した。

「どうも」

「あ・・・どうも」

誰かも分からないのに、
アレックスはつられてお辞儀した。

「いや、誰?」

ドジャーはあまりに的確に聞いた。
だがその女性でなく、
ロッキーは飛び跳ねながらドジャーに言う。

「あのね〜あのね〜〜ドジャ〜〜〜」
「いや、ロッキー。お前に聞いてねぇ」

一生懸命説明しようとしたロッキーだが、
ドジャーに止められると、
ブスッと口をとがらせてスネた。
足を投げ出してその場に座り込んでしまった。

一方その女性は、
ドジャーの問いに落ち着いて返事をする。

「あ、私はフレアと言います。フレア=リングラブです」

フレア・・・・・・
聞いた事あるような無いような・・・・

「私は味方です。三騎士さんに言われて助力に来た者です」

「・・・・・・・?・・・三騎士が人間に助力ぅ?カッ、わけわかんね」
「っていうかあなたどうやってこのGUN’Sの人ごみの中を?」

「え?ただ普通に歩いてきましたけど」

フレアは普通に返す。
ドジャーは「はぁ?」と露骨に口を開けて返す。

「いやいやいやいやお嬢ちゃん。1500の敵の中を歩いてきただぁ?
 ばっからしい。なぁにをわけのわかんねぇことを・・・・」
「・・・・・あっ!」

アレックスは
フレアの言葉の中で何かに気付いて声をあげる。
そして額に手を当ててうつむいた。

「そうか・・・その手があった・・・・」
「あぁん?何がだよアレックス」
「いやぁ・・僕も馬鹿でした。そうですよ。敵は1500もいるんです。
 それを逆手にとればよかったんです。利用すればよかったんです。
 敵だって自分の味方の顔を分かってるわけじゃないんですし、
 当たり前のようにGUN’Sに紛れ込んでしまえば楽でした・・・・・」
「・・・・・・・・・遅ぇよ。顔バレまくったじゃねぇか」
「盲点でした」

アレックスは反省の色もなしに、
むしろ笑顔でそう言うと、
ドジャーはポコンと頭を殴った。

「痛いじゃないですか!別に僕が悪いってわけじゃないでしょ!」
「うっせ!ん〜で?!」

ドジャーはフレアに顔の向きを戻す。

「お前さんはなんなんだ!カプリコ三騎士に頼まれただぁ?
 なんで人間がカプリコ三騎士に頼まれるんだ?意味ワカンネ!ワーカーンーネ!
 ふざけてんのか!?おちょくってんのか?!それとも本当は敵なのか?!ぁあん?」

ドジャーは指を突き出しながらズカズカと言う。
フレアは少し気迫に負けながら答える。

「あ、いえ・・・その私はですね・・・・《メイジプール》の生き残りなんです・・・・」

「あ?」
「《メイジプール》の生き残り?」
「む〜〜・・・・ぼくが説明しよ〜と思ってたのにぃ〜〜〜・・・・・」

ロッキーはまだスネていた。
アレックスがそんなロッキーを謝りながらなだめている間に、
ドジャーが話を進める。

「《メイジプール》は俺らとカプリコ軍で全滅させたと思ってたが?」

「生き残ったのは私一人です。いろいろあって私だけ三騎士の方に保護されたんです。
 "仲間を殺されて生き残った気持ちは分かる"と言われまして・・・・
 ・・・・・・あの方々は魔物なのに良い方々ですね♪」

フレアは優しく笑顔を振りまいた。

「それで恩返しを兼ねて三騎士の方々と共に助力に来たんです」

「あっ!思い出しました!」

アレックスはポンッと手を叩く。

「フレア=リングラブ!世界一のメテオ使い!『フォーリン・ラヴ』のフレアさんですね!」
「有名なのか?」
「ほら〜、僕らがメイジプールと戦ってた時・・・っていうか戦う直前ですね。
 空にメテオが舞ってたじゃないですか。あれもフレアさんのものですよ」
「あ〜。あったような・・・・・・・・」
「でしょ?」
「カッ!・・・・・・・ってことはつまり」

ドジャーは突如ダガーを腰から抜き、
高速で回転させた後で止め、前に突き出し言う。

「やっぱこいつは敵だアレックス」

ドジャーが続ける。

「《メイジプール》だぜ?つまりはどうやったって俺ら《MD》を恨んでる。
 そんでもってカプリコもな。そこに世話になるわけもねぇ。
 そんでもって・・・・・終焉戦争での騎士団への恨みも忘れてねぇはずだ」

そう。
つまりは《MD》であるドジャー達、
とくに《MD》かつ元王国騎士団のアレックスに手を貸す訳はない。

「どさくさにまぎれて復讐したい。そうだろ?なぁフレアさんよぉ」

「違います」

フレアは真っ直ぐな言葉で言った。

「私は本当に味方です。話を聞いてください」

背後では悲鳴がたくさん聞こえる。
GUN’Sの者達のものだ。
剣を振り回している三騎士の姿がたまに視界を横切る。
追われて焦っているのか喜んでいるのか分からないダニエルの姿も。
追いかけっこしているダニエルと三騎士。
とばっちり燃えたり悲鳴をあげたりしているGUN’Sの者達。
背景ではドタバタと人が倒れていく中、

フレアは落ち着いて話し始める。

「騎士団にやられたこと。カプリコの残党とあなた方《MD》にやられたこと。
 これ自体は気にしてない・・・とまでは言いませんが、復讐しようとまでは思ってません。
 どちらもこちらから仕掛けた事で、味方はその上でやられていったのですから」

フレアは思いふけるように話す。

目の前をダニエルに燃やされた男が吹っ飛ばされて視界を横切った。
その次に三騎士に吹っ飛ばされた生首が三つ飛んだ。
だがフレアは何事もなかったようにシリアスに話を続ける。

「だからあなた達の味方です」

「カッ!信じられねぇな」

ドジャーが両手を広げて言う。

「味方が殺された事をそんな簡単に割り切れるたぁ思わねぇからな」

そうドジャーは言った。
だがアレックスには分からなくもなかった。
アレックスとて騎士団の仲間達を失った。
だが、だからといって攻城戦の敵ギルド達に復讐しようなどとは思わなかった。
まぁロウマを含む44部隊は別のようだったが。

「そうですね」

意外にもフレアは拝呈した。

「私も復讐しようと思ってます」

「ほれみろ」

「ですが・・・それはあなた達にでなく・・・・《GUN'S Revolver》にです」

フレアは少しだけミニスカートのようなローブの裾を払い、
話を続ける。

「終焉戦争時、GUN’Sは私達メイジプールをオトリに使い、
 そして死ななくていい仲間が本当の力を発揮することなく無念の中で死にました。
 《メイジプール》の誇り・・・そして尊敬の繋がりを彼らは打ち砕いた・・・
 だから正直・・・・・私はGUN’Sに復讐したい。それだけの私情なんです」

フレアの目は真っ直ぐ。
そして真剣にアレックス達を見据えていた。

「マスターの無念を・・・・味方の悔しさを晴らしたいんです」

「・・・・・・チッ」

ドジャーが目をそらした。
アレックスはそれを見てクスリと笑ってフレアに言う。

「ドジャーさんは信じるらしいです。よかったですねフレアさん」
「なっ!アレックス!いつ俺がそんな事言ったぁ!?」
「そういう反応だったじゃないですか。僕には分かりますよ。素直じゃないんですから」
「あのなぁ!」
「じゃぁ違うんですか?」
「・・・・・・・・・・チッ」
「ほら」

アレックスが笑う。
むくれていたロッキーも笑う。
フレアもつられてクスクスと笑った。

穏やかな雰囲気。
周りでGUN’Sの男達の悲鳴が飛び交っていなければ、
とてもほんわかした平和な雰囲気であっただろう。

「で、あんたは何ができるんだ!?」

ドジャーは、皆に笑われたのを照れ隠すように。
はたまた不機嫌そうに言う。

「私ですか?私はメテオが出来ます」

「そんなん分かってんだよ!それでどう俺らの力になるのかって聞いてんだ
 仲間のためにGUN'Sに復讐したいのも分かったし、
 おめぇがメテオを使えるってのも理解した。だが"ハサミも使いよう"。
 それをいかに俺らの役に立ててくれるかってのを聞き・・・・」
「ドジャーさんドジャーさん」
「あんだよアレックス!!」
「さっきも言いましたけどね。彼女は『フォーリン・ラヴ』のフレア。
 世界的に有名・・・・いや、メイジプールが彼女しか残っていない今、
 世界一の魔術師と言ってもいいのが彼女です」
「カッ!繰上げで世界一ねぇ・・・・・・・・・・・で?俺が聞きたいって言ってるのは・・・・」
「彼女が世界一で遜色がないと言える逸話を一つ・・・・・・」

アレックスは言いながらも、
少し落ち込んだ様子を見せながらゆっくり話す。

「彼女のメテオ・・・その世界一の超広範囲メテオ・・・・。
 それは長く崩された事の無かったルアス城の内門を・・・・打ち破る礎となったものです」

それを言うアレックスを見ると、
フレアも少し気まずそうであった。

「彼女の広範囲メテオが内門前に被弾し、内門前は壊滅に至り、結果は内門も突破。
 そしてそれ以降・・・・ルアス城の内門が破られる事はありませんでした・・・・」
「え〜〜?なんでぇ〜〜?」
「お、おいロッキー!」

純粋すぎるロッキーの質問。
ドジャーは慌ててロッキーの口を塞いで止める。

フレアの超広範囲メテオでの内門突破。
それ以降ルアス城の内門が破られていない理由。
それは一つしかない。

その日、王国騎士団がなくなったからだ。

「ま、そういう事です」

アレックスは笑顔になる。
無理に作ったような笑顔だった。
自分はもうふっきっていると言い聞かせている笑顔。

「フレアさんならこのルアス城内門前級の密集地帯だってお手の物って事ですよ」
「カッ!なるほどな」
「ですよね?フレアさん」

「あ、はい!」

フレアはミニスカートのような丈の短いローブにまた両手を添え、
丁寧にお辞儀をする。

「全霊を込めてやらせていただきます!」

長く礼をしたままだった。
いろんな意味を込めたフレアの心の表れなのだろう。
数秒深くお辞儀をしたままだった。

「ただ・・・・」

フレアは顔だけあげた。

「あなた方にはメテオ発動時を突破してもらいますけど・・・
 距離にして突破する距離は1kmといったところでしょう・・・
 メテオが発動してからではそれだけの距離を突破しきれるか分かりません。
 メテオが発動するまでの間もできる限り距離を稼いでおいてもらいたいです」

「あぁ楽勝楽勝!なんせ軽くパニック状態にはなってるからな!」

ドジャーが親指で指し示す。
その先では、
それぞれの事情で暴れまわるダニエルと三騎士。
最悪なほどに迷惑な追いかけっこ。

「どんだけかの距離を自力で稼げって言われったって軽ぃ話だ。
 軽ぃ軽ぃ!上等で軽ぃ話だぜ!」
「ん〜・・・っとぉ〜・・・・つまり〜〜!フレアがえ〜っと・・・・魔法の言葉〜〜?」
「詠唱ですね」
「それぇ!それをしてる時にぼくたちは・・・え〜っと・・・・走る?」
「突破ですね」
「それぇ!それすればいんだね〜〜!!」

何故かロッキーは異様に満足そうだった。
小さな顔全体でニヒヒーっと笑った。
状況をちゃんと理解できたといっただけで、
嬉しく、かつ自慢げなのだろう。
そんなロッキーにアレックスは微笑んだ後、
話をフレアに戻す。

「ですけどフレアさん」

「はい?」

「詠唱中、フレアさんの身の危険はどうするんです?
 こんなパニック状態でもGUN'Sの数人は僕らを見ています。
 フレアさんが一人、隙だらけで詠唱してたらGUN'Sの方々もただでは・・・・」
「アレックス。危険は誰もが同じだ。
 俺達だって危険なのは変わりねぇ。だからなんにしろ・・・・」

ドジャーが話している途中の事だった。
フレアだけが気付いた。
アレックスもロッキーもドジャーと同じくフレアの方を見ていたから、
気付いたのはフレアだけ。
それはドジャーの後ろ。
一人。
なんでもないGUN'Sの一人の男。
そっと・・・・近づいてきている。
剣を振り上げ、
ドジャーに後ろから斬りかかろうと・・・・

「危ないっ!!!」

「あん?」

フレアの咄嗟の叫び。
ドジャーが「なんだ?」と振り向く。
だが遅すぎた。


・・・・・・・・・一つの金きり音が鳴り響いた。
甲高い音。
鉄と鉄が合わさって奏でられる音。
ドジャーに振り落とされた剣。
それは・・・・

宙を舞っていた。

「・・・・・お、おまっ!」

剣が地面に落ちて刺さった。
そして、
ドジャーを後ろから殺そうとした男は、
胸に×の字の大きな斬れ跡を残し、
血を噴出して倒れた。

「こんな所で死んでもらっちゃぁ困るんですよ盗賊さん」

両手の剣を振り落とした状態。
背を向けた状態でその男は言った。

「あんたは俺が倒すんですから」

男は両手の剣を引き上げた。
両手の剣。
二刀。

「・・・・・・ツィン!」

同時に横から一人の男が斬られて吹っ飛んだ。

「おいおいツィン。いきなり敵の中に突っ込む奴がいるか・・・とぉ」

新しい血がついてばかりの黒い剣。
モノソードを担いだ男も駆け寄ってきた。

「悪いなヤンキ。俺のライバルは変なところで抜けてるらしくてな」
「あいあい。ここは道場じゃなく戦場なんだからよ。慎重に頼みますよ・・・とぉ」

ドジャー達の目の前に、
ツィンとヤンキ。
《騎士の心道場》の二人が並んだ。

「おめぇら・・・なんでここに・・・・」

「決まってる。そしてさっきも言ったぜ盗賊さん」

ツィンはそう言いながら両手の剣を両方ドジャーに向ける。
そして口の片方を緩ませながら言う。

「あんたとは1勝1敗。そう、決着はついてないんだ。
 だから決着を付ける日まであんたに死んでもらっちゃ困るんだよ」
「そういう事らしいですよ・・・と。俺はどっちでもいんだけどな」

ヤンキは顔をしかめながら言った。

「ま、好きに参加させてもらいますよ・・・・っとぉ
 俺とて師範絡みでGUN'Sの野郎共は好いてねぇ」
「ま、そういう事です。話は聞いた。その女魔術師の護衛。俺らが受け持とう」

ツィンが振り向き、
ヤンキもやれやれと振り向く。
ツィンは両手の剣を戦場に咲く花のように広げる。
ヤンキは夜の闇に紛れるような黒い剣を構える。

「戦士であり騎士である威信を持ち続けるため・・・・・・・」

「《騎士の心道場》と師範の誇りを賭けるため・・・・・・・」

「騎四剣が二剣を示すこのツィン=リーフレット!
 『両手に花』の二つ名通り!鮮やかに咲いて参る!!」

「《騎士の心道場》騎四剣が一人。『千刃烏(せんばがらす)』ヨーキ=ヤンキ。
 剣の羽を奮い、闇を裂いて飛んでまいりますよ・・・・・・っとぉ」







                 






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