「カッ、いつのまにかもう夜っつってもいい時間だな。
 今日も頼んでもねぇのに星と月が自慢げに光ってやがる
 何もしねぇくせに"俺らって輝いてるだろ?"ってよ。胸糞悪ぃ」

ドジャーが言った。
ミルレスの空。
空気が澄んでいるせいか、星がよく見える。
家々から少し離れたミルレスの西の町外れ。
それだけに月も輝き照らしてくれている。

「ま、いつもならこれからがお楽しみタイムなんだがな
 それでもツマミにルアスの地ビールで一杯ってもんだ
 夜酒は天国への通り道・・・・ってなぁ♪・・・・・・が、なんだこりゃ
 カッ、アレックス。これに対して納得いく説明してみてくれや」

ドジャーの目線の先。
それは・・・・

「見慣れたもんですけどね。絶景です。祝福してくれてるんですよ」
「カッ!落第点だ。それじゃぁ納得いかねぇな」

ミルレスの最西端を目の前にして・・・・・・
見渡す限り敷き詰める・・・・・・・
壮絶なる量のGUN’Sのメンバー達。











S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<最終突破と大と小と復讐>>












「はぁ・・・・・町の炎を遠いせいでよく見えませんが・・・・・
 ま、予測でざっと1500ってとこですね」

木陰から顔を覗かせながらアレックスは言う。
あの敵が全て肉まんならどれだけいいことだろうなどと考えながら、
今の状況と、肉まんの妄想にため息をつくばかりだった。

先ほどからアレックス達は足止めを食っている。
もちろんあの人数の敵に対し、
黙ってつっ立ってるなんて事はしない。
草と木に隠れながら状況を見守っている。
そしてドジャーがアレックスに聞く。

「おいおい1500だと?1500ってあの数字の1500か?」
「他にどの1500があるんですか」
「カッ、ざけんなよ。目的地はもう1kmってな距離に来てんだぜ?
 家から公園までって距離。死にそうジジィだって散歩できる距離だ
 なのに目的地直前で1500の肉壁だぁ?あいつら攻城戦でもやってるつもりかよ」

そう。
もうすぐミルレスの最西端につくのだ。
もうすぐなのだ。
なのに1500の多すぎる団体。
あれらのGUN'Sの団体は全て本拠地を守っているわけである。
それはつまり、安全に回避しようがないという事。

「まぁ絶望的ですね。ポジティブに考えれば本拠地の予想は大当たりって事ですけど、
 僕らだけで1500なんて相手できるはずがないです」
「カッ、分かってるっての。・・・・・・・・で、アレックス。作戦は?」

アレックスが呆れてため息をつく。

「ドジャーさん・・・・作戦ひとつでどうにかなる状況じゃないのは分かるでしょう?
 1500ですよ1500。"あ!ひかっかったなぁ!"で突破できる数じゃないわけです。
 僕が神様かなんかだと思ったら大間違いですよ?・・・全く馬鹿なんだから」
「バッ!?おまっ!今なんつった!」
「馬鹿でデベソだって言ったんですよ」
「ちょ、増やしてんじゃねぇよ!誰がデベソだっ!
 ってか馬鹿ってなんだ!一言多いんだよお前は!」
「・・・・・ちゃんと聞こえてるんじゃないですか・・・・まぁ冗談ですよ冗談。
 こんな所で思いつくはずのない作戦を要求されたら一言も言いたくなります・・・・・」
「うっせっ!冗談言う前になんか考えやがれっ!」
「だ、だからぁ・・・・」
「かーんーがーえーろっ!考えないとここで延々と時間が潰れるだけなんだ!」
「無茶ばっかり言うんだから・・・」
「カッ・・・・・」

ドジャーは一度濁した後、
小声で照れくさそうに言った。

「頼りにしてるってことだよ」

アレックスはそんなドジャーを見て、
おかしくて小さく笑った。
そして「うぅーん」とうなりながら、話し始める。

「まぁ、そうですねぇ・・・・・・作戦としては・・・・・・」
「思いついたか!?」
「"プラン1"は・・・・・・・・・・1m歩くごとに1人づつブッ倒しながらゴールに向かう。
 1km歩く頃にはあら不思議、敵は全滅して僕らは突破してるじゃありませんか」
「・・・・・・・・・・・・・・ふざけてんのか」
「ふざけてませんよ」
「ふざけてんじゃねぇか!結局ゴリ押しで突破するって事じゃねぇか!
 俺だったら50m進んだ所でモミクチャにされる自信があるね!」
「ま、そうですね。でもそれしか残されていない・・・・・・・そんな状況なんです」
「チッ」

やるしかない。
ドジャーが左手にダガーをクルクルと回しながら取り出す。

「"プラン2"」
「あん?」
「たしかに僕らが進むにはゴリ押ししかない。それしか残されてません。
 でもそれがイヤなら・・・・・・・・・・・・・諦める」
「・・・・ッざけてんのかっ!」

ドジャーがアレックスの胸倉を掴む。
だがアレックスはその状況でマジメに答える。

「ふざけてませんよ。逃げるか、降参するってのも手です」
「そんな選択肢はねぇっつってんだよっ!!それをわざわざ口に・・・・・・」

「あーあーあーあーあー」

ドジャーの横から口を出す声。

「あんたぁは分かってねぇ。ほーんと分かってねぇよ。
 おめぇ・・・・・アッちゃんの事ホントに分かってねぇよなぁ?」

それは赤い髪、火傷を負った頬。
ダニエル=スプリングフィールド。

「んだとぉ?」

ドジャーがアレックスを離し、
そして左手のダガーをダニエル突き出す。

「てめぇ、まだ居やがったのか!ついてくんなっつっただろ変態野郎!
 そんでもって俺に対して腐った言葉まで吐き出すか?あぁ?この野郎。
 訂正しろたぁ言わねぇ。だが、消えろ。胸糞悪くなんだ!俺の視界からさっさと散れ!」
「まーまーまーまードジャっち♪」

ダニエルが両手でドジャーをなだめる。

「ど、ドジャっちだぁ!?」
「そう、ドジャっち。あんたぁ俺の事嫌いだろ?だぁ〜ろぉ〜♪」
「カッ、"超"にオマケを付けたぐらいにな」
「だぁ〜ろぉ〜?・・・・・・同感♪俺もあんた大嫌い〜〜〜〜♪・・・・ヒャーーーハッハッハ!!!!」

ダニエルは大笑いの後、
引き続きニタニタ笑う。
そして顔をドジャーの下までもっていき、
覗き込むように、
そして見上げるようにドジャーを見ながら言う。

「あんたぁ、アッちゃんにベタベタしすぎなんだよなぁ〜♪俺のアッちゃんによぉ〜♪」

誰が誰のものだって?

アレックスの思惑をよそに、
ダニエルは引き続きドジャーにからむ。

「ドジャっち。オメェがアッちゃんの相棒顔するのはほんっとに胸糞悪いんだよ〜〜ん。
 だってよぉ♪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アッちゃんの事全然分かってねぇ。そこがムカツクんだ」

ダニエルは地面にツバを吐き出す。
ドジャーはブチ切れそうだった。
目の前の赤い髪の変態をゴミクズにしてミルレスの絶壁から放り捨ててやろうと思ったが、
アレックスが察して止めるので思いとどまった。
そしてダニエルがニタニタしたまま話を戻す。

「アッちゃんの言う作戦ってのはよぉ。降参する。つまり投降するって事だ」
「あぁん?投降だと?」

ドジャーはその話の続きを聞きたいが、
嫌いなダニエルを相手にしたくないようで、
アレックスの方を振り向く。
アレックスは答える。

「まぁそういう事です」
「・・・・・・・まぁそういう事ですじゃねぇよ。続きがあるんだろ?俺が知りてぇのはそこだ」
「つまりは・・・・・・自分達で辿り着けないなら、"連れてってもらえばいい"んですよ。
 投降する。捕虜になる。つまりそれはイコール・・・・・・・タクシーみたいなもんです」
「ほぉ、なるほどな」

ドジャーは納得したようで、
アゴに手をやりながら一度頷く。
が、何か思い当たったようで頭の上に?を浮かべたあと、
アレックスに話す。

「おいおい、それって結構危ねぇんじゃねぇか?
 投降するってこたぁつまり拘束されるわけじゃねぇか。
 GUN'Sの本拠地に入れたところで牢屋にぶち込まれるか、
 じゃなくとも拘束されて身動きとれないままお料理されてTHE・ENDだぜ?
 カッ!大体あのお相手ちゃん達が投降に応じるかどうかってのが怪しいもんだ。
 俺らを見るなり問答無用で斬りかかってきたらそれでアウトじゃねぇか」

むしろその確率の方が高い。
見るなり殺せと命じられているのだろう。
それくらいはここまで相手してきた者を思い返しても分かる。

「だからダニーがいるんですよ」

アレックスがニヤッと口を軽く吊り上げ、
ダニエルの方に目をやった。
ドジャーもつられて目をやると、
ダニエルは自慢げそうにニタニタと笑っていた。






















GUN'Sのメンバー達は雑談していた。

「あ〜ぁ。ヒマだなおい」
「こんなとこ敵こねぇよ。なんでこんなとこに俺ら配置されたんかなぁ?」
「バッカ。知らねぇのかよ」
「何が?」
「ウワサじゃ俺らの本拠地この辺らしいぜ?
 俺、初期からGUN'Sにいる正メンバーと仲いいから聞いたことあんだよ」
「ゲッ、マジで?初耳だぜ・・・」
「俺らはギルド吸収でGUN'Sに入った口だしな」
「ま、本拠地なんて六銃士と一部のメンバーしか入れないしな」
「でもどっちにしろこんなとこに敵はこねぇだろ」
「だな。俺らだって知らない本拠地を《MD》の奴らが知ってるわけねぇし
 《44部隊》と《昇竜会》が敵にいたって中央の奴らを突破してくるなんて無理だろ」
「ちょ!おいおい!あれ!見ろよ!」

一人の男が大声をあげ、
指を指す。
その先、
そこに見えるのは・・・・赤い髪の男。
そしてそれに連れられる二人の男。

「ダ、ダニエル様!」

最前列のメンバーは一斉に腰が低くなる。

「おーうおーーーう♪我がGUN’Sの愛しのメンバーちゃん達ぃ♪」

ダニエルは笑顔で大きく手を振る。
そしてもう片方の手からは二本の縄が垂れる。
その縄は騎士と盗賊の腕を縛っていた。

「ご無事でしたかダニエル様!」
「後ろの二人はなんです?」
「まさか・・・・・・」

「そっそ〜♪《MD」のやつらだっぜぇーい♪」

周りがざわつく。
1500の人だかりが、
人から人へざわつきを伝えていく。

「《MD》の奴らを捕らえてきたんですか!?」
「しかも一人で二人も・・・」
「さすがダニエル様だ!」

ざわつきは収まらない。
そしてダニエルと捕らわれた愚かなアレックスとドジャーに人が詰め寄る。

ドジャーとアレックスは表情が分からないよううつむきながら、
コソコソと話す。

(カカカッ!当たり前だが攻撃してくる奴はいねぇな。大成功じゃねぇか)
(まだまだ油断はきんもつですよ・・・・
 なんたって僕らは今1500の敵の中に埋もれてるんですから・・・・・・・)
(分かってるっての!)

ドジャーはうつむきながらニヤっと小さく笑い、
そして次は顔をあげて叫ぶ。

「チクショー!!この俺様をこんなにしやがって!ただじゃおかねぇーぞー!」

ノ、ノリノリじゃないか・・・・

ドジャーのクサい演技に、
アレックスはため息をつかずにはいられなかった。

「おーいおい部下ちゃん達〜。今から牢屋に連行するんだからあんまり近寄るなよぉ〜?
 それに盗賊の方は馬鹿で変態だから気をつけたほうがいいぜぇ〜〜〜?」
「ちょ!変態はお前の方だろ!」

辺りがさらにざわつく。

「へ、変態だって!?」
「あの盗賊変態なのか?!」
「そういや《MD》の盗賊野郎は手癖が悪いって聞いたことあるぜ!」
「手癖が悪いってそういう意味だったのか!?」
「た、たしかに『人見知り知らず』ってあだ名・・・変態くさいな・・・・・・」
「あぁ・・・。なにせ老若男女おかまいなしらしいぜ!?」
「うえぇぇ!?ケツ隠せケツ!めった突きされるぞ!!」
「ヤバい!離れた方方がいい!」
「もしかしたら縄で縛られてるのも喜んでるのか!?」

「ちょ、ちょま・・・・・」

ひいていく周りの者達。
敵でありながら、ドジャーはその者たちを引き止めたい気持ちになった。
そしてこの状況をつくったダニエルを憎くてたまらなかった。
ドジャーはゆるく結ばれた縄をほどいてダニエルにとびかかろうと思った。
だが、ドジャーが縄を解こうとした寸前でアレックスが止める。

(まぁまぁ、落ち着いてください変態さん。じゃなくてドジャーさん)

冗談かどうかも分からないアレックスの一言に、
ドジャーのボルテージが沸点を超えて平常心が蒸発しようとしたその時。

「おいおい!こっちの頼りなさそうな騎士さんも変態なのか?」

一人のGUN’Sメンバーがアレックスに近寄って言う。

「僕は変態じゃありませんよ」
「おまっ、"僕は"ってなんだ僕はって!
 "この人は変態ですが僕は違います"みたいな言い方すんな!!」

そんな場合じゃないのだが、
アレックスはニヤニヤとドジャーの反応を楽しんでいた。

「何ニヤついてんだ捕虜のクセに!!」

突然、
そういいながら一人のGUN’Sメンバーがアレックスを蹴飛ばした。

「ゲホッ・・・」

「捕虜のクセにニヤつきやがって!!!ナメてんのか!?」

「おいテメ・・・」
「おぉ〜いコラァ♪部っ下ちゃぁ〜〜〜ん♪」

ドジャーの声を掻き消しながら、
ダニエルが割り込んだ。
割り込んだのは口だけでなく、
縄をホッポリだす。

「なぁにアッちゃんを蹴ってんだ?ぁあん?♪」

「へ・・・へ?」

GUN’Sの男がとまどっているのをよそに、
ダニエルがその男を掴みにかかる。
男の首根っこを両手で掴み、
持ち上げる。

「ご・・が・・・ダニ・・エル・・・さま・・・・何を・・・・・・」

男は首を掴まれてたまま、
宙ぶらりんの足をジタバタと動かす。
首を締め上げている張本人のダニエルは答える。

「おめぇ、俺のアッちゃんを蹴ったろ?蹴ったよなぁ?
 なぁに俺のアッちゃんを傷物にしてくれてんだよ。
 アッちゃんは俺が燃やすもんだ!!!意味分かってやってんのか!ぁぁ!?」

「・・・ちょ・・・・・・・・助け・・・・・・・・・」

「消しクズになっちまいなっ!!!!!!!!!」

ダニエルは締め上げているその男。
その男の首を両手で掴んだまま・・・・・・・・
放った。
それはフレアバースト。
直接、直下。0距離のフレアバースト。
男は・・・・・・・

ダニエルの両手の中、
大炎の爆発に巻かれ、
砕け散り、燃え散り、
黒い灰になって周り一面に飛び散った。

「う、うわぁぁっぁああ!!!」
「味方が!!味方が粉々に!??」
「ご乱心だ!ダニエル様がご乱心だぁぁあああ!!!」

慌てふためく周り全体。
どうしたらいいのか分からず、
逃げ戸惑うようで、武器を構え、
叫ぶようで、走り回る。
一面がパニック状態。

「おまっ!何やってんだダニエル!作戦が台無しじゃねぇか!!!!」
「ぁぁ〜〜ん?何やってるだぁってぇ?決まってんだろ。緊急事態じゃねぇか。
 アッちゃんがあんなヘボ野郎に蹴られたんだぞっ。これ以上の事かあるか!」
「作戦上少々の事があんのは当たり前だろが!!」

今にも戦闘を開始しそうなドジャーとダニエル。
その間にアッちゃんが入りなだめる。

「二人とも、過ぎた事はしょうがないです。今はそれどころじゃないんですから・・・・・
 こうなると時は一刻を争います。パニックの間にできるだけ突破する・・・・それしかありません!」
「カッ!!!」

ドジャーは縄を引きちぎり、
腰から両手にダガーを取り出す。

「こーいうのも面白いんじゃねぇ〜のぉ〜?
 騎士団の時ほどじゃなくとも、愛する仲間を燃やすのは快感だから・・・・・なぁん♪」

ダニエルは両手を広げる。
そしてその両手からは炎が轟々と渦巻いた。

「どうにか・・・・・なってほしいところです・・・・・」

アレックスは縄を解き、
片手は槍を抜いて、
もう片手は突破用に『G−U』の卵を取り出そうとした時だった。


「うろたえるんじゃない!!!」

か細いような声が、
遠いような、
近いような所から聞こえた。
いや、
それ以上に聞こえる音。
地響きのような音。
いや、何かがキシむ音。

その正体はすぐ分かった。
4つ。
大きな大きな影があったからだ。

その一つの上に、一つの影。

「慌てるんじゃないわ。ただ味方が一人だけ死に、味方が一人減り、敵が一人増えただけよ」

その影は・・・・・マリ。
量産型スマイルマン4体をひきつれ、
その一つの上に立つマリ=ロイヤルの姿だった。

「・・・・・カッ。そんなのも居た・・・・・・・・なっ!!!」

ドジャーがすぐさまマリに向かって両手のダガーを投げる。
得意のダガー投げ。
だが・・・月明かりと、遠くに燃える街中の明かりがあるといっても、
夜の暗闇のせいかダガーは虚しくマリの脇を通り過ぎていった。

「チッ・・・」

部下達がマリに問いかける。

「マ、マリ様!」
「味方が一人減って敵が一人増えるって・・・・」
「それはダニエル様が裏切ったって事ですか!?」

「そういうのは問題じゃないわ」

スマイルマンの上で、マリは冷静に言う。
そして全体に聞こえるように大声で叫ぶ。

「いいか皆の者!私、再装填メンバーのマリ=ロイヤルが命ずるわ!!
 そこにいる三人を殺しなさい!!無論ダニエルも含めてね!!!
 ダニエルが裏切ったかどうかなんてどうでもいいのよ!!
 重要なのはダニエルが死ねば幹部の席が一つ空く・・・・・・
 それがどういう事か分かるわね!!!!!!!」

またざわめく1500のメンバー達。
そして・・・・各々が武器を取り出し、
ドンドンとアレックス達を睨み、
殺気立つ。

「状況の作り方がうまいですね・・・・・・・
 ここにいるメンバーを一瞬でまとめ、士気・戦意を向上させるいい命令です
 さすがミルレス商業団体のオーナー。商売上手の指揮上手ってとこでしょうか」
「カッ!ロイヤル一家はみんな野心の高いこって」
「ヒャーーーハハッハ!俺をハメるたぁあの女!いい女だねぇ♪
 燃やしてぇ♪めっちゃ燃やしてぇ♪女は燃やすといい臭いがすんだ!!!!」

三人をよそに、
GUN’Sのメンバー達は三人をとりまく。
1500の大包囲陣。
囲まれたというより埋められたに近い。
絶望。
ハッキリ言って摘み的な状況。
芋虫に1500のアリが群がるように、
一瞬で骨も残らなくなるだろう。

「・・・・・・・・・」
「やるしかねぇな・・・・」


そんな時だった。


「う、うわぁああ!!!」
「みろ!向こう!」
「あっち!あっちだ!!」
「どうなってんだありゃ!!!!」

GUN’Sの者達が騒ぎ出す。
今度はなんだ・・・・・とアレックス達もそちらに目をやる。
だが、
今度はあっけにとられた。

「わけわかんねぇ!」
「飛んでる!」
「人が吹っ飛んでる!!」
「噴水みてぇに吹っ飛んでるぞ!!!!」

そう、
GUN’Sの人ゴミ。
いや、人の海のようなこの場。
その遥か向こう。
そこで・・・・人が飛んでいる。
まるでちらかすように、
雑草を片っ端から抜き捨てているように、
人がぽんぽんと空中へ舞い散っているのだ。

「ど、どうなってんだありゃ・・・・」
「ちょ、ドジャーさん・・・・あれもしかして・・・・」
「ヒャハハハ!近づいてきてんな!」

そう、撒き散らばる人。
とっては捨て、とっては捨て。
次々に夜空に吹っ飛んでいく人。
それは・・・・ドンドン・・・こちらに近づいてきている。
かきわけるように、
道を作るように、
撒き散る人の噴水はドンドンこちらに近づいてき、
そして・・・・・・・・

「うわぁぁっぁあ!!」
「ぎゃぁぁぁあああ!!!」

アレックス達の目の前の男達が空中へ吹っ飛んだ。
同時に人ごみから、
かきわけた人ごみの道から、
"何か"が飛び出してきた。

その何かは、キキッ!とブレーキをかけ、
小さな手を一生懸命大きく挙げて言った。

「とぉ〜〜ちゃぁ〜く!!!」

狼帽子にブカブカのローブ。
そして体に不釣合いな・・・・大きなカプリコハンマー。

「ロッキー!!!」
「ロッキー君!?」

「えへへ〜・・・遅刻してごめんなさ〜〜い」

ロッキーは両手でカプリコハンマーを持ち、
ぺこりとお辞儀した。
小さな体で深くお辞儀をするその姿はかわいらしいが、
その手に持つカプリコハンマーは血液にまみれているので少し怖い。

周りのGUN’Sのメンバーも恐れてひいている。

「おいおいロッキー。遅刻はいいけどよ・・・・ってかむしろ最高のタイミングだけどよ・・・・・」
「こ、この敵の密集地帯を突破してきたんですか?」

「うん〜〜〜♪全部ぶっとばしてきたよぉ〜〜〜♪」

「みてみてー!」とロッキーが指を指す。
それはロッキーが通ってきた道。
さえぎる敵という敵をハンマーでふっとばし、
海を裂くようにかき分けてきた人の道。
そこ一列だけ削り取ったように隙間が生まれている。

「み〜〜〜・・・・・・・・・んな!!!後ろ向いてたから簡単にとおれたよ〜〜!!」

まぁ、
1500全てのGUN’Sメンバーがアレックス達に気を取られていたとはいえ、
背後から敵を全て吹っ飛ばしてここに来るこの小さな少年は恐ろしいものがあった。


「な、何を恐れているのよっ!!!!!!」

ビビり、ひいているGUN’Sの者達。
そこにマリの渇(かつ)が入る。

「さっき私が言ったでしょ!!敵が一人増えただけ!もう一人増えただけの事よ!
 こっちは1500!!!あっちは4人!対した問題じゃ・・・・・」

「マ、マリ様・・・・」

「何よ!」

「う、うしろ・・・・・・」

「?」

マリが後ろを振り向く。
そこは夜の背景と自分の引き連れているスマイルマンの姿。
さして変わった事はない。

「・・・・え?」

いや、おかしい。
一つのスマイルマン。
それが呻き声のようなキシみ音をあげている。

そして・・・・・・・

「!?!?!?」

一瞬にしてバラバラになった。
数十片に斬られたように分解され、崩れ落ちたのだ。
あの強大なスマイルマンが一瞬で・・・・

「ど、どうなってるのよコレ!!!」

マリの驚きをよそに、
数個の影が夜空を舞う。
小さい・・・小さい影。

それは・・・・アレックス達の前に降り立った。

小さな、
小さなその体に大きな大きな剣を背負うその姿。

黒いマントで全身を包み、
白いマフラーで口元を隠す、人ではないその姿。

それが3匹。
3人ではなく3匹。

そして3匹のうちの一人が口を開いた。

「人間。砦を守ってくれた借りを返しにきてやったぞ」

背中にカプリコソードを収めながら、
エイアグは言った。










                 






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