「はぁ・・・・・・・」 小さなため息。 「疲れたわよホント・・・・・」 そう言うマリナは、 ギターを杖代わりにしてもたれかかり、 地面にヒザをついていた。 「感想を言うには早いよマリナ」 そんなマリナの後ろにエクスポが立って言う。 後ろに立つエクスポを、 マリナはヒザをついた姿勢のまま、 顔だけ振り向き、上げて強めに返す。 「早い?早いって何?遅かれどうにかなるっていうのエクスポ?! アレ見て対策思いついてから私に意見言いなさい!」 「ん〜・・・・・そうだね・・・・」 エクスポが見る。 その先。 燃えるミルレス。 夕焼け空の中。 燃えるような空の中に燃える町。 その真ん中に 「死・・・・・・・視ハハあはハ!!!!!!!」 まだ疲れることなく動く狂戦士。 「美しくはないけどまるで映画のワンシーンみたいだね。 題して"戦場に踊るターミネーター"ってところかな」 「その映画・・・・バッドエンドじゃないでしょうね・・・・・・」 「さぁね。美しくないB級パニックムービーには違いないけどさ」 「全員生還の確率低いじゃないのよ・・・・」 S・O・A・D 〜System Of A Down〜 <<狂戦士と戦いと敗北>> 「あーもー!で?で?どうすんのよどうすんのよどうすんのよ!? アレックス君とドジャーにカッコつけたけどっ! 本当に暴走したメッツを倒せるの!?ってかどう止めるの!? できるの!?やれるの!?ってか私もう帰っていい!?」 「うるさいなぁマリナ・・・・・女のヒステリックは美しくないよ?」 「あら、んじゃぁ私を黙らせる"ステキで美しい作戦"でも答えてもらおうかしら」 「・・・・残念。考え中さ」 「もぉ!もぉーーー!!!!こんな事ならアレックス君だけでも残ってもらうべきだったわ! あの馬鹿を止める解決策なんか考えてよっ!ってか私ホントもう帰っていい?」 「・・・・・・・・うるさいって言ってるだろマリナ・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・」 横からボソリと篭ったような小声。 それはレイズ。 ダラァーっと座り込んで文句を言う。 「・・・・・・・・イスカを見習って・・・・・少しは戦ったらどうなんだ・・・・・・・・・」 自分も座り込んでいるクセに、 イスカを見習えと指を指すレイズ。 そして指を指した方向。 そこにはメッツと戦うイスカの姿・・・・・・ 「ぬぉっ?!」 いや、そんな声をあげながら、 メッツに吹っ飛ばされてこっちに吹っ飛んでくるイスカの姿。 それは指を指し示したレイズの方へ、 真っ直ぐ吹っ飛んできて、 「・・・・お、・・・おい・・・・・・・むぐっ・・・・」 そして直撃した。 「くっ・・・・・しくじった・・・・・」 「・・・・・・・・・・・"しくじった"じゃない・・・・・・重い・・・・・どけ・・・・もしくは死ねばいいのに・・・・・・・」 レイズの上に着地しているイスカ。 下敷きにレイズ。 イスカは「おぉ、すまぬ」と言ってレイズの上からどいた。 「イスカでも駄目か。美しくない状況だ」 「イスカが唯一の近距離型なんだけどね。それで駄目ならお手上げよ」 「何を言っておるマリナ殿っ!拙者は必ずマリナ殿をお守りするっ!」 「出来るなら願ってもないけどね」 「・・・・・・・・まぁ・・・・・・・とりあえずは・・・・・・・・あいつに任せるしかないな・・・・・・・・・・」 レイズの言葉。 釣られてマリナ、エクスポ、イスカも目線を先にする。 燃えるミルレスの中。 そこで対峙するのは・・・・ 「ひゃガはあラ羅ばばなあああああああ!!!!」 「ちぃ!畜生の相手たぁ楽じゃぁねぇもんでさぁなぁ!!!!!」 メッツとリュウ。 そこで行われているのは鍔迫り合い ・・・・と一言に言えるほど軽いものではない。 怒り狂ったメッツが持つの二つの斧。 両手斧x2。 それは総計で数十キロ。 それに暴走したメッツの全体重と腕力。 それはもう・・・・・・・ティラノが乗っかっているような重さ。 「ぐっ・・・・・あっしはこんなもんで・・・へこたれるわけにゃぁいかんのでさぁああああ!!!!」 リュウの両腕。 黒い上着(コート)を脱ぎ捨ているため、 上半身はサラシのみのリュウの両腕。 それは血管が浮き出るほどに限界まで力を引き出す。 そして、 たった一本の・・・・・木。 木刀でそれに耐え、押し堪えている。 「凄いね。美しい。木刀でメッツのパワーに耐えてる。 両手斧二つ支えて折れないあの木刀も凄いけど、リュウのパワーが特に凄いね」 「・・・・・・・さすが・・・・15ギルドの一つ・・・・《昇竜会》のマスター・・・・ってとこか・・・・・・・・」 「メッツの力に耐えれる人間なんて《MD》にはいないものね」 「何をマリナ殿っ!拙者とて本気を出せばあれぐらいっ!」 「無理無理・・・・イスカは技で勝つタイプじゃない・・・・・」 そう。 《MD》にパワータイプはメッツのみ。 それも暴走時のメッツのパワーときたら折り紙つき。 補助とか工夫でどうにかなるレベルではない。 限界ギリギリとはいえ、 それに持ちこたえていられるリュウが特殊なのだ。 というより・・・・ リュウがいなければこんなにもメッツとの戦闘に持ちこたえられなかった。 リュウがいなければ・・・・ すでにこの場には死体が転がっていただろう。 怒れるバーサーカーが、 訳も分からず自分の味方をぶったぎって・・・・・ 「ギギ・・・・・ギギャがガ我らぁぁあああああ!!!!」 メッツが片手の斧だけを振り上げる。 一気に力で圧迫して決めてくるつもりだ。 「よかねぇでさぁ!」 リュウは咄嗟に腕を引く、 そして、 「もらったぁ!!!」 斧を振り下ろそうとしているメッツへ、木刀をおもくそに横ぶり。 力任せ、 メッツとの鍔迫り合いで強張った両腕の筋肉を全開にし、 木刀がメッツの胴を捕らえた。 「アぶ・・ひゃガ!」 捕らえた・・・完全に捕らえた。 ・・・・・と思ったのだが、 一言で言うと人間離れしている。 隙をつかれたのにもかかわらず、 体勢を整えていないのにも関わらず、 メッツは超人的な瞬発力でビョンっと後ろに跳んで避けた。 「いぎ・・・・イしし死・・・・・らガハハハア!!!!!!」 メッツは首をブラブラと垂らし、 自慢のドレッドヘアーも垂らし、 どこを向いているのだというタイミングでたまに叫び声をあげ、 目線をうつろのままヨダレを垂らす。 「化物め・・・・まるで冥土から生まれてきた死神でさぁ・・・・・」 リュウは片手を地面につく、 全員がメッツと戦い始め、 すでに時計の短針がかるく一周はしているだろう。 その中で一番負荷の高いリュウ。 立てるかどうかといったところだ。 よくここまでメッツと戦ってこれた。 それだけでも賞賛に値する働き。 そして限界。 だが、リュウは立つ。 「死神め。よくもあっしの子らを冥土に渡してくれなすったなぁ! あんたの血肉を死んだあいつらに花添えするまではあっしも死ねねぇ!」 木刀を肩に担ぎ、 刺青のついたその背中。 一時的に戦いを共にしてるとはいえ、 マリナ達にもその背中は頼りがいがある。 人数ではGUN’Sに次いで多く、組織力では全ギルドトップともいえる《昇竜会》。 すべてはこのリュウという大木が支えていると理解できる。 「三途も近き燃ゆるこの古都!あっしも一匹の竜としてっ! 息ある限り筋を通しっ!仁の上に立ってみせまさぁ!!」 「うる・・・・ガっ・・・・・死け・・死ぅ刑らぎなひアま間ららラぁああ!!!」 メッツが跳ぶ。 照準の合わない両目。 粉砕ハンマーのような両手斧二つを空中で振り上げ、 リュウに飛び掛る。 空中から跳んでくるその狂戦士の一撃。 それは最大級だと一目に想像できる。 「避けろリュウっ!それは止められないっ!」 「聞けねぇ意見でさぁイスカ嬢!あっしに退くなんて選択肢はねぇ! 揺らぎねぇ大木として!あっしは正面からぶつかってやりまさぁああ!!!!」 リュウが木刀を後ろに構える。 居合い切りのような構え。 技を持たないリュウにとっては全力を放つためのただの構えにすぎないが、 下段に構えるその木刀。 そして今振り切られるメッツの斧。 「あっしの一振りに一点の曇り無しっ!!!!」 リュウの木刀が勢いよく振り切られる。 それはメッツの斧と交差する。 甲高い音。 重い斧と、 木刀。 それが重なった音にしては甲高すぎる男。 芯に響くような音。 振り切られた木刀。 振り切られた斧。 「が・・・・バ・・・・・」 メッツの横腹。 そこに大きな赤い痣(あざ)ができていた。 リュウの木刀が直撃したのだ。 斧が折れている。 いや、割れている。 頑丈で高密度の重い鉄の斧が、 木刀という木の塊によって・・・・粉砕されていた。 「木の一念・・・・・全てを貫く・・・・・・ってとこでしょうかね」 俗に言う所の・・・・クリティカル。 いつも一撃に全力をかけるリュウ。 だからこそできた芯の入った一撃。 最強の剣であるイスカのセイキマツでさえ粉砕される恐怖を与えるその一撃。 攻城戦でリュウを見かけたある者は言った。 リュウの攻撃は"オールクリティカル"であると。 「がぐ・・・グヘ・・・は・・・・」 斧を一本砕かれ、 内臓にまで響いただろう一撃がメッツを襲う。 さすがのメッツも悶絶。 そして・・・・ 「散りゆくもまた・・・・・一興・・・・・とは思えねぇ・・・んです・・・がね・・・・・・・・・」 リュウの方が地面に倒れ去った。 メッツのもう一本の斧。 それもまた、リュウの肩口から一閃。 ざっくりと切り裂いていた。 とめどなく流れる血。 赤い液体を地面に垂れ流しながら、 リュウはうつ伏せに動かなくなった。 「なハ!蛾ずがラは亜あああバ場ははあああ!!あ阿っ!!!」 メッツは突然拳を振り上げ、 そして、その拳を振り落とした。 血を流してもう動かないリュウ。 そのリュウの頭蓋へ、 トドメと言わんばかりに重き拳を叩きつける。 そして・・・・ メッツは奇声とも叫びとも分からぬ声を天に放った。 「リュウっ!!!」 叫ぶイスカ。 だがリュウはもう動かない。 逆にその声に反応するメッツ。 ドレッドヘアーに隠れる目が、こちらを見据えた。 「やばっ・・・・」 「万事休すだね・・・・」 万事休す。 その言葉の通り。 どうするか。 リュウが倒れた今、 もうメッツと張り合えるものはいない。 正面からぶつかれる者はいない。 「ちょ・・・私マジに帰っていいかしら・・・・・」 「・・・・・・ハハッ、美しくないけどそれも一つの手だね」 「ふん。逃げると申すか?」 「・・・・・・・・・無理だな・・・・・・・・あのメッツから逃げる事が・・・・・無理だ・・・・・・・・」 「たしかにね。この中で一番足の速いエクスポだって盗賊としては速い方じゃないし、 とてもじゃないけどあの状態のメッツから逃げられるとは思えないわ」 「やるしかないね」 「やはり拙者がぶつかるしかないか」 「援護するよ。あっ、レイズ補助を・・・・・・ってレイズ!?」 エクスポはレイズに目をやるなり驚きを表す。 「・・・・・・・・・・なんだ・・・・・・・・」 「なんだじゃないよっ!どうしたんだいその脇腹!?」 「・・・・・・・・ぬっ・・・・・・・・」 レイズも気付かぬうち、 レイズの脇腹から・・・・血が垂れ流れていた。 とくとく・・と・・・ まるで瓶に穴が空いたように。 「・・・・・・チッ・・・・・・魔力切れか・・・・・・・・」 言うなりレイズはマナリクシャを取り出し、飲み干す。 「魔力切れ?いや、意味が分からないよ!どうしたんだいその怪我は!?」 「・・・・・・・・・メッツと戦ってるんだ・・・・・お前らだって怪我だらけだろ・・・・・・・・」 「ちょちょちょ!違うわよ!あんたにはブレシングヘルスがあるじゃない! あんたのブレシングヘルスならそれぐらいの怪我はたちどころに・・・・」 「うむ。見たところ、魔力が回復してもその怪我が治っているようには見えぬ」 「・・・・・・・・・・」 レイズは脇腹の傷を手で塞ぐ。 だが、ブレシングヘルスを使ってもまだ完治しないその怪我。 手についた血のりを見ながら、 レイズは話す。 「・・・・・・・・この傷は・・・・・・・・・治らないんだ・・・・・・・・・」 「はぁ!?」 「何それ?!」 「・・・・・昨日・・・・・・再装填メンバーの・・・スズランって奴にやられた・・・・・・・ ・・・・ブレシングヘルスでも・・・・・ヒールでも・・・・・完治しない・・・・・・」 「スズランってあの毒使いで有名な女二人組みの片方かい?」 「じゃぁそれは毒なのではないか?」 「・・・・・・・・そうだ・・・・・・・・・・・」 「じゃぁキュアポイズンで治せばいいじゃないの!」 「・・・・・・・・・・そうもいかない・・・・・・・・・クック・・・・・さすがあれでも再装填メンバーか・・・・・・・ ・・・・・・単直に"新型の毒"だ・・・・・・・解毒ポーションだろうが・・・・スペルだろうが・・・・・治らない・・・・・・・」 治せない毒。 レイズ自体が医者として、 独自に分析して至った結果。 それは解毒剤から作られた毒。 解毒作用のあるものから作られたため、解毒に強い。 つまり・・・言うところの・・・・ 治しようがない毒。 「・・・・・クック・・・・さすが世界的な毒使いだ・・・・・・・こんなものがあるとはな・・・・・・・・」 「た、対処法はないっていうの?」 「・・・・・・・あえて言うなら・・・・・・・常時ブレシングヘルスをかけておくこと・・・・・・ ・・・・・ダメージうけながら・・・・随時回復する・・・・・・・これくらいしかない・・・・・・・ ・・・・・・クック・・・・だから魔力を・・・・・・・随時補給しなければならない・・・・・・・ ・・・・・・・お陰で・・・・昨晩はロクに寝てない・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・」 つまるところ・・・ もう一生レイズに安眠というものは訪れないかもしれない。 いや、 それ以上にレイズの体がもたないだろう。 毒の傷口は、毒ゆえに少しづつ範囲を広げていた。 昨日のうちはダガーの切り口である幅数センチぐらいだったが、 今はもう10センチ程にも及んでいる。 「・・・・今回持ってきたマナリクシャも・・・・・・・・・あと一本・・・・・・・ ・・・・・・戦争だ・・・・それもすぐ尽きるだろう・・・・・俺はもう・・・・・駄目かもな・・・・・・・」 「諦めるなよレイズっ!諦めるなんて美しくな・・・・・」 エクスポのしゃべりが途切れた。 突如に途切れた。 いや、目の前からエクスポの姿自体が消えた。 吹っ飛ばされたのだ。 エクスポは吹っ飛び、 木に直撃する。 「ぐぁ・・・・」 吹っ飛ばしたのはもちろんメッツ。 今のメッツにとって、レイズがどうこうの話など耳に入らない。 この場に割り込んできて、 おもくそにエクスポをぶん殴った。 「くそ・・・・メッツめ・・・・・」 エクスポはフラフラとよろめきながら・・・・・右手を振った。 それはスキル。 スパイダーウェブ。 蜘蛛の巣がメッツの足に絡みつく。 「う・・蛾が?」 メッツの足を封じ込めるように蜘蛛の巣絡む。 地面から撒きつくその蜘蛛の巣。 「・・・押しだけじゃ駄目さメッツ・・・・・・・・戦いは美しくスマートにするべきさ・・・・ ・・・・・・・・・君の戦いと粗暴さは・・・・・美しくないから少しじっと・・・・・・」 エクスポが口を止めた。 今度は自身の意志で止めた。 その光景にだ。 「阿ナラがァああ吾あ゙ああああ!!!!!」 メッツは引きちぎった。 自力で・・・蜘蛛を・・・・・ まるで地面ごと引っ張り砕くように、 ブチブチと・・・・・ 無理矢理、力任せに、強引に。 そして狂えるドレッドヘアーの男は、 また自由に解放された。 「ウソだろ・・・・・・・」 「死にリ矢ヤははハ覇はははああ!!!!!」 飛び出すメッツ。 フラつくエクスポに一直線に。 「クソッ・・・・・」 エクスポは両手に爆弾を構える。 だが、 突っ込んでくるメッツに、 それを放つ事はできなかった。 火力の高い自分の爆弾をメッツにぶつける。 そこに迷いが出た。 爆弾では手加減もクソもない。 それをメッツに・・・・ 仲間に放つという事がどいう事か・・・・・ 「死ぎひィ亜ぁああ!!!」 エクスポが戸惑っているのをよそに、 メッツは右腕を張り手のように広げ、 その手でエクスポを・・・・・・ おもくそに後ろに木に叩きつけた。 ゴンッ・・・と鈍い音が響いた。 「・・・・君の・・・美しくない・・・・・・・・そういう野蛮なとこが・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・嫌いだって・・・・・・・・いつも言ってるだろ・・・・・・・・・・・・」 エクスポはズルりと滑るようにそこに倒れた。 木に血の跡を残しながら・・・・・ 「メッツ貴様ぁあああ!!!!」 イスカがメッツに迫っていた。 剣を横に構え、 真っ直ぐメッツに突っ込む。 メッツもそれを見ると怪しく笑い。 そして斧を振り上げた。 「・・・・・・・イスカもヤバい・・・・・・」 「もう!突っ込んで!馬鹿なんだからっ!」 マリナが援護する。 後ろからギターから弾を数発発射。 それをメッツに当てないよう、メッツの斧に当てる。 メッツが一瞬ひるんだ。 「好機っ!礼を言うマリナ殿っ!」 だがメッツはひるんだにも関わらず、 斧をおもくそに振り下ろしてくる。 走ってくるイスカに。 仲間に向かって躊躇なく。 「お主は昔から技が荒いのだっ!」 イスカの得意技。 見切り。 瞬時にメッツの斧を半歩横に避ける。 メッツの斧は地面を砕くように突き刺さった。 「死なぬ程度のみね打ちにしてやるっ!御免っ!!」 斧が地面に突き刺さっているメッツ。 剣を振るイスカ。 防御するものがないメッツ。 世界最高の剣を持つイスカ。 それは・・・・確実にメッツを捕らえ・・・・ 「い戯っ!」 「馬鹿なっ!」 メッツは・・・・掴んだ。 イスカの剣を・・・・・素手で掴んだ。 刃の部分を・・・・。 「お主!メッツ!阿呆な事はやめろ!」 「井はハ覇あははあ!!!」 イスカの剣を握るメッツ。 その手からは・・・・血が垂れる。 剣を握り締め、 血が流れ落ちる。 「クッ・・・・・」 イスカにはどうしようもなかった。 無理に剣を動かせば・・・・・ メッツの手が、指が・・・・吹っ飛んでしまう。 「・・・・チクショウめ・・・・」 「ギャ等ガなばばス葉派覇!!!!!!」 メッツはそのまま・・・・ 斧を持った方の腕で・・・・・ イスカの腹にボディーブローを放った。 「ゴォハっ?!」 鈍い、鈍い。 腹を突き抜けてしまうんじゃないだろうかというほど強力なボディブロー。 「・・・・あ・・が・・・・」 イスカは余りの衝撃に・・・ 口から何かとも分からぬ液体を吐き、 両手を腹に当て、 ヒザを落とす。 「ぐ戯ニ覇ああああああっ!!!!」 そんなイスカに、 メッツはヒジをおもくそに叩きつける。 それでイスカも倒れ去った。 倒れ去ったエクスポとイスカが並んでいる。 メッツは・・・また雄たけびをあげた。 「・・・・・・・・・・・・マジに・・・・・・・・・ヤバい・・・・・・・・・」 レイズは十字を切り、 そして両手を突き出す。 両手の指の間を照準のようにし、 メッツに向かってプレイアを・・・・・ 「・・・・・・・!?・・・・・・・・どこに行った!?・・・・・・・・」 指の間から見える景色。 そこにはメッツがいなかった。 「上よレイズっ!」 レイズが咄嗟に上を見上げると、 夕日を背負うように、 バーサーカーが飛び掛ってきていた。 「・・・・・・・・ヤバい・・・・・・」 空中のメッツにプレイアを放とうとするレイズ。 だが、 もしプレイアを当てたとて、 メッツの斧はレイズを・・・・・・ 「ちょっとゴメンねレイズッ!!!」 「・・・・・・・・・・・ん?・・・・・・・ごあっ!?・・・・・・・・・・・」 マリナがギターを振り切る。 レイズに向かって。 ギターの打撃を受けたレイズは吹っ飛ぶ。 そして、斧を振り落としたメッツの攻撃を避けた。 「間一髪ね!」 マリナはすぐさまメッツから離れる。 そしてレイズの近くへと走りこむ。 レイズがマリナの打撃の痛みに顔を歪めていた。 「メッツの斧よりはマシでしょ!感謝しなさいよっ!」 「・・・・・・・ありがとう・・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・」 「はいはいっどういたしまして!あんたがやられると困るのよっ! まだ間に合うかもしれないうちにエクスポとイスカの治療をお願いっ!」 「・・・・・・・・・・・・そうしたいのは・・・・・・・・やまやまだが・・・・・・・・・」 レイズの目線の先。 エクスポとイスカ。 だが、はっきりと見えない。 何故ならメッツが遮断しているから。 メッツを超えなければ倒れている二人に辿り着けない。 「・・・・・お手上げだな・・・・・・・あいつら二人も・・・・・・死んでるかもしれない・・・・・・・・・」 「まだリバースも間に合うわっ!」 「・・・・・・・・・・どうやって・・・・・・・・あそこに行く・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・メッツがあそこにいる限り・・・・・・・・・標的だ・・・・・・・・・・」 「わ、私がひきつけるわ・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・無理だ・・・・・・・・・」 「ちょっと!私だってやればできるのよっ!馬鹿にしないでっ!」 「・・・・・・・・・違う・・・・・・・・・・・お前だからじゃない・・・・・・・・俺達だからだ・・・・・・・・・・・」 「は?」 「・・・・・・・・・メッツが仲間だから・・・・・・・・躊躇がうまれる・・・・・・・・ ・・・・・・・リュウのように・・・・・強者でさらに他人でなければ・・・・・・」 そう。 倒せないのはメッツが単純に強いからではない。 味方。 敵は味方。 メッツは敵で味方。 本気でやっても勝てるか分からないのに、 そこに躊躇が生まれる。 だから倒せない。 殺意を持って戦っていたリュウだからこそ、 持ちこたえていれたのだ。 「あっ!じゃぁリュウを復活させたらっ!」 「・・・・・・・・・・同じ事・・・・・・・・・・リュウが倒れてる場所も・・・・・メッツの射程圏内・・・・・・・・ ・・・・・・クック・・・・それにリュウは・・・・あの調子だと死んでるかもしれない・・・・・・・・・ ・・・・・・・だとしたら・・・・・時間的にもう・・・・・・・リバースも間に合わない・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・ほんっ!とうに帰りたいわ」 だが帰るわけにもいかない。 だがマリナが諦めムードになってきている。 どうすればいいのか分からない。 やるしかないのか。 いや、 味方を殺すくらいなら・・・ いっそ味方に殺される方が・・・ そんな事まで考えてしてまう。 「・・・・・・・・・・だが・・・・・・・・それでも・・・・・それでも・・・・・・ ・・・・・・・・・・俺らの中に・・・・・・メッツを抑えれるほどの・・・・・力を持つ者がいるとしたら・・・・・・・・」 「へ?」 「・・・・・・・それは・・・・・・・・・」 「呼んだぁ?」 とぼけたような声。 それは一つの燃える屋根の上。 「それ、オイラの事ジャン?」 夕日をバックに一人の男。 「敵あるところにオイラありっ!戦うところにかけつけるっ! 愛と正義と勇気と希望の戦士!・・・・あっ!あと努力の戦士っ! そう!それがオイラ!世界のスーパーヒーローチェスター君だっ!!!!!」 のん気に決めポーズをとるチェスター。 夕日をバックにできるように位置取りを調整したため、 チェスターの満足感は溢れんばかりであった。 チェスターの頭の上で同じく決めポーズを取るチェチェも満足そうだった。 「とぉ!!」 チェスターが跳ぶ。 空中で足を折りたたみ、 ボールのようにクルクルと回りながら、 レイズとマリナの横に着地した。 「どう?かっこよかったっしょ!?」 「・・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・・」 「またまた〜!それはレイズの照れ隠しだってオイラは分かってんだからっ!」 チェスターは気軽にレイズの肩をポンポンッと叩く。 レイズは斜め下を向き、もう一度消え入りそうな小声で「死ねばいいのに」と言った。 「ってォアァア?!エクスポとイスカやられてんジャンっ! うわっ!リュウもだっ!ってかなんでリュウがここにいるんだっ?!」 新鮮に驚くチェスター。 驚きのポーズをする。 頭の上ではワイキベベのチェチェもチェスターと同じポーズをしている。 「うるさいわよこの遅刻猿!それより相手見てよ相手!」 「ん?うわっ!マジでメッツジャン!ドジャーの言ってった事マジだったのか!」 チェスターの目線の先。 そこでニヤニヤと怪しく笑い、 目線を揺らす狂戦士。 ドレッドヘアーを揺らしながら、 斧をブラブラと構えている。 「ま、たしかに・・・あれはオイラじゃないとキツいよな」 チェスターはゆっくり、 少しだけ前に出る。 そしてトォーントォーンとジャンプしたあと、 肩を鳴らして構える。 「メッツとのケンカは久しぶりだなっ」 「ケンカって!いつもあんたとメッツがやってるケンカとは訳が違うわよっ!」 「・・・・・・・・・メッツはレイジ状態だ・・・・・・・・・・・それも極度の・・・・・・・・」 「ダイジョブダイジョブ♪」 チェスターはマリナとレイズに背を向けたまま、 余裕を表す手を軽く振る。 そして言う。 「オイラ、レイジ状態のメッツに一回勝ってるし♪」 「えぇっ!?」 「・・・・・・・・本当か?・・・・・・・・・」 (・・・・・4回負けたけど・・・・・・・) チェスターが聞こえないように小声で言う。 頭の上のチェチェがチェスターを慰める。 「分かってるよチェチェ。あっ、マリナ。チェチェを預かっててくれよっ!」 チェスターがそう言うと、 チェチェは自分からチェスターの頭の上から跳び、 マリナの頭の上に着地した。 「私の頭は猿の巣じゃないわよ・・・・・・」 頭の上に乗られるのがイヤだったようで、 マリナはチェチェを両手で掴み、 胸で抱いた。 「さぁーって」 チェスターは首をコキコキと鳴らし、 腕をぐるんぐるんと回す。 そして右手てクィックィッとメッツを挑発して言う。 「今までのメッツとの戦績は・・・・・えぇ〜っと・・・・ あっ、そうそう! 134戦 50勝48敗36分けだなっ! んでレイジ込みだと139戦 51勝52敗36分け! 負け越してるけどこれでオイラが勝ったら文句言えないぜっ!」 チェスターが両手に気を溜める 「よっしゃ!140戦目だ!スーパーヒーローをなめんなよっ!!!」 |
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