「ハッハー!燃えろ燃えろぉ!!元気に!陽気に!燃ぉえつきろぉぉおお!!!!」

ダニエルはその言葉の通り、
燃えるミルレスの町を元気陽気に歩いていた。
両手に炎を渦巻かせ、
背後には数人のGUN'Sメンバーを引き連れ、
まるで大量奉仕!とでもいいたげに、
炎をそこら中にばらまいていた。

「お、お助けくだせぇ!!!」

「んあ〜ん?」

燃えるミルレスの町。
町の中の一つの家。
そこから一人の男が出てきた。
つまるところ、ミルレスのただの民だ。
その男はダニエルに言った。

「私もGUN'S員に入ります!だから・・・だから・・・・・」

その男は、燃える家から出てきたため、
服が焼け焦げ、体もボロボロであるにも関わらず、
地面に顔を当て、
ダニエルに縋った。

「ん〜〜〜」

ダニエルはアゴに指を当て、
考えた。
そして笑顔で決めた。

「よっし!オッケぇー!このGUN'Sの再装填メンバーであるダニエル様の一任だ!
 お前をGUN'Sのメンバーに入れてあげよじゃねぇか〜〜〜♪」

「ほ、ほんとですか!?」

「あぁん!!??このダニエル様がウソつくと思ってんのか!?えぇコラ!?」

ダニエルは急に形相を変え、
その男ににじみ寄る。

「い、いえ・・・そんな・・・・」

「だろ♪ま、安心しな。たった今からお前ちゃんをこのダニエル様の部下に任命!」

ダニエルはまた笑顔になる。
火傷の痕のある頬を緩めて笑う。

「そいで〜♪お前ちゃんは俺の部下なわけだから〜〜。俺がどうしようと勝手なわけね?」

「へ?」

「よっしゃ最初の任務だぜっ!」

ダニエルの顔が一瞬だけ真顔になった。
・・・・と思うと、
一言だけ言った。
その男に。
最初の任務を。

「燃えて死ね」

ダニエルが腕を一振りする。
すると腕から伸びるように火炎が放たれ、
その男を飲み込んだ。
うめき声と共に、
その男の命は消え去った。

「ヒャハハハ!丸焼きはやっぱレアよりこんがりだな!」

男を一人燃やした事により、
ダニエルは満足そうだった。
焼くのが趣味。
燃やすのが生き甲斐。
それがその一連の行動だけでも分かる。

「ダ、ダニエル様・・・・・・」

GUN'Sの部下の一人がダニエルに話しかけた。

「おぃ!やめろ!」
「口出さない方がいい!」
「いや・・・・言わせてもらいたい・・・・」

「いいぜいいぜ♪部下4号!言いたい事があるなら言ってみな」

部下4号と呼ばれたGUN'Sの男は、
地面に膝をつき、
頭(こうべ)を垂れてダニエルに話す。

「この戦争が終わりましたら天下はGUN'のもの・・・・・・
 そしてダニエル様はそのGUN'Sの六銃士になられるお方・・・・・
 ならば少し民の気持ちを考えるべきかと・・・・・」

その部下の言葉。
それに対し、ダニエルは上目遣いに考える仕草をした。
そしてポンッと手を叩く。

「ふむ・・・・・・・なるほど!たしかにその通りだ!いやいや納得しちまった!
 たしかにその通りだぜ!いい事言うね!ハハッ!まいったまいった!」

ダニエルは笑顔をウンウンと納得する。
赤い赤い髪を揺らしながら、
仏のような笑顔で納得する。

「だよなぁ。ミルレスはGUN'Sの本拠地になる場所だもんなぁ。
 そんな民の気持ちも分かってやんないと駄目だな!おう!よし!」

そしてダニエルは少し歩み、
頭を垂れている部下4号の肩に手を置いた。

「立派な意見だ部下4号!だから民の気持ちを考える任務!君に託そうじゃないか!」

「へ?」

部下4号の疑問をよそに、
部下4号はダニエルに無理矢理立ち上げさせられる。
ダニエルの両腕はガッチリ部下4号を掴んでいた。
そして・・・・・・・

「おーりゃ♪」

ダニエルは両手で思いっきり部下4号を投げ飛ばした。
それは燃える・・・
燃え盛る一件の家の中。
そこに部下4号は投げ入れられた。
まるで・・
燃えるゴミを投げ捨てるかのように。

「よっしゃ!任務開始だ!」

そう言い、
ダニエルはケタケタと笑いながら家を眺める。
燃える家の中。
炎の中でうっすらを悶え苦しむ部下4号。

「あつい!・・・お、お助けをダニエル様!!」

「ふむふむ。民とはこういう気持ちなんだな。なるほどなるほど」

「あ、あづいぃいい!燃えるぅうううう!!!」

「あづい!燃えるぅううううう!!!・・・・ヒャーハッハハハハ!!!」

ダニエルはマネをしながら大笑いする。
無邪気とも言える笑い。
燃える家。
燃える仲間。
それを見て、ただただ笑い続ける。

「ヒャーーハッハッハッハハ!」

楽しそうに、
ただ楽しそうに笑い、
そして・・・・・・・・
突然ピタりと笑うのをやめた。

「飽きた」

ダニエル無表情でそう言い、
自分の両手を合わせた。
両手に炎が渦巻いていく。
そしてまるで炎がダニエルの両手で塊のようになったと思うと・・・・

「炭クズになっちまいな」

大きく、強大で、巨大な火球が放たれた。
それはビッグフレアバースト。
炎系でもかなり最高級魔法。
超ど級の火球が放たれる。
それはその家にぶつかると、
家が爆発したかのように燃え上がった。

「ぎゃぁああああああああああああ!!!!」

家からは、
断末魔とも言える、
最後の灯火とも言える、
男の最後の声が響いた。

それを聞くとまたダニエルは嬉しそうに笑い、
他の部下達の方を振り向いた。

「あぁ・・・悲しくも部下4号は殉職してしまった。だが部下4号は立派だった。
 惜しい部下を亡くしてしまった・・・・・・・・・・なぁ皆。そう思うだろ?」

「「「「は、はい!!!」」」」

ダニエルはその返事に、
嬉しそうに笑顔を返した。
その顔は最高に満足そうだった。
だが、
その満足感を千切る声が聞こえる。


「ちょ!あんた止まれって!」
「お前『チャッカマン』ダニエルッスねっ!」

「あぁ〜ん?なんだぁ〜?」

その声の主。
一人は金髪の少年顔の修道士。
一人は大きなディスグローブを装着した少年顔の聖職者。
それはチェスターとナックルだった。

「お前酷い奴だなっ!ヒーローとして見逃せないジャンっ!」
「男としても見逃せないッスね!」

チェスターとナックルは、
同時に指を突き出す。
二人並んで正義の味方のように。

「男のやる事じゃないッス!!!」
「敵〜〜!!!お前は敵〜〜〜!!悪い奴っ!!」

というより二人はまんま正義の味方のつもりだ。

「なぁんなんだぁお前ら。うっせぇやつってむかつくんだけどよぉ
 まぁでも俺もお客は嫌いじゃねぇ。だから忠告だけしとくぜ」

ダニエルは右手を突き出す。
そして右手の3つの指を重ねる。

「俺に触れると・・・・」

そして右手の指をパチンっと鳴らした。

「ヤケドするぜ♪」

同時にライターのように小さな炎がダニエルの指から発火した。
それはダニエルが完全に、
スペルブックの魔法以外でも完全に、
そして自由自在に炎を操れる事を表していた。

「うっせ!ヤケドなんて怖くないもんねっ!問題はそこじゃないジャンっ!
 悪い奴は悪い奴!それもめちゃ悪っ!そんなんほっとけないよなっ!ナックル!」
「そうッス!チェスター!自分は男らしくない者を許せないッス!」
「おしおきジャンっ!」
「教育指導ッス!」
「このオイラ!チェスター君と!」
「自分!ナックルが!」

チェスターとナックルが、
それぞれブンッと腕を振る。
一件ラジオ体操の一部分のような腕の振り方。

「スーパーヒーローとしてっ!」
「男の中の男としてっ!」

またそれぞれが腕を振る。
足の位置もズラし、
腰をひねる。
どうやらチェスターとナックルはポーズをとっているようだ。
そして最後の決め。

「全力でお前をっ!」
「倒っ・・・・あっ!」

ポーズをとっているナックルの手がチェスターの手にぶつかる。

「あ〜!ナックル!台無しジャン!」
「すまんッス!チェスター!せっかくのポーズが!」
「いや、いんだけどさっ・・・・」
「や、やり直すッスか?」
「えぇ〜・・・・それもカッコ悪くない?」
「けどこのままってのも・・・・」

チェスターとナックルが向き合い、
あーでもない。
こーでもないと意見を出し合う。
戦闘前のポーズ。
こんなにどうでもいい事を真剣に討論するのはこの二人だけだろう。

「クッ・・・・ヒャハハハ!」

ダニエルが不意に大笑いを始めた。

「ヒャハハハハ!!なんだ!なんだあいつら!面白れぇ!面白れぇよ!なぁ皆!」

「なぁ皆!」と言った同時、
ダニエルは自分の部下達の方を振り向く。
だが、GUN'Sの男達は「え・・・」っとどうしたらいいのか分からない反応をした。
それにダニエルは不愉快を感じたらしい。

「おい。面白いだろ?アァン?笑えよお前ら」

ダニエルが部下達を睨む。
すると、
部下達はビビり、
無理矢理ひきつった笑いを作った。

「もっと笑え」

ダニエルが、
炎のように深くまで染み渡る声で言う。
部下達はダニエルのその一言に、
もうどうにでもなれといった感じに大笑いを始めた。

「そうだろそうだろ♪」

ダニエルは満足そうに腕を組んで頷いた。

「何やってんだ?お前・・・・理解不能ジャン・・・・」
「頭おかしいんスか?」

チェスターとナックルのその言葉。
さっきのさっきであるからこの二人が言うのもなんなんだが、
それはある種の起爆剤のようなものになったようだ。
ダニエルはアゴを上げて緩やかに二人を睨み、言う。

「あぁ〜ん?何だってぇ〜?頭がおかしいだぁ〜?
 あ〜あ。ダメだこりゃ。こりゃダメね。俺、ピッキーーンときちゃったね」

ダニエルは腕をコキコキと鳴らす。
そしてその手から炎が渦巻きだした。

「なぁ愛(いと)しの部下ちゃん達よぉ〜。あいつらはなんだ?」

ダニエルの一言一言の問いにも、
部下達は敏感に恐怖する。

「は、はい!え、えぇ〜っと・・・・」
「自分は分かります!あれは『ノック・ザ・ドアー』です!」
「俺も攻城戦で見たことあります!もう片方は44部隊のナックル=ボーイです!」

「違う」

ダニエルはチッと舌打ちし、
一度その場で炎を払う。
そして指先をチェスターとナックルに向ける。

「ありゃぁただの燃えるゴミだ」

ダニエルが右手に力を込める。
まるで腕が震動するかのように、
右手に炎の力が渦巻く。
ダニエルの右腕が炎の塊に包まれ・・・・・

「ゴミは燃えてりゃいい!ゴミは燃えるのが幸せだからなっ!
 あぁ〜っとぉ!?今日は何曜日だ!?燃えるゴミの日か!?」

部下達はお互いを見回し、
そしてダニエルの問いに声を合わせて答える。

「「「も、燃えるゴミの日です!」」」

「しゃぁー!ならオッケー!・・・・・・・・・ゴミは燃えてろ!!!!」

ダニエルが腕を振りぬくと同時、
その腕の炎が火球となって飛ぶ。
大きな大きな火球。
それが発射される。
吹っ飛んでいく。

「のぇっ!?」
「詠唱無しでフレアバーストっすかぁ!?」

真っ直ぐ飛んでくるフレアバーストの火球。
その炎は着弾せずとも威力は分かる。
危険としか言えない炎。
まるでメテオの一つのような・・・・・

「あぶねっ!」
「ダメっすっ!」

チェスターは左へ
ナックルは右へ、
二人は咄嗟に、持ち前の運動神経で避ける。
チェスターとナックルがそれぞれ避け、
火球は二人のいない地面に着弾した。
・・・・・・と思うと・・・・

火球はうなりをあげ、
炎を撒き散らしながら爆発した。
炎が、火球が爆発したのだ。

「うわっ!」
「うっ!」

二人はそれぞれ爆発の熱風を咄嗟にさえぎる。
フレアバーストの爆発。
その熱風と風圧だけでも威力を物語るに十分だった。

「ヒャーーハッハッハ!惜しいなぁ!惜しい!だが楽しいぜっ!
 むかつく奴が!燃やしたい奴が俺の炎を避けるすげぇ奴!
 そんな状況楽しすぎるぜっ!燃やしてぇ!燃やしてぇよぉおおおお!!!!」

ダニエルの異様な叫び声。
怒りというよりは嬉しさの篭った叫び声。
チェスターとナックルが咄嗟にダニエルの方を向く。

「うっわ!」
「何スかアレ!!」

ダニエルは両手を広げるように、
はたまた掲げるようにかざしていた。
いや、異様なのはダニエルの姿勢ではない。
その周りの様子。

「ゆっくりコトコト・・・・端から芯まで!燃やしつくしちゃるぜぇ!」

ダニエルの周り。
両腕を広げるダニエルの周り。
そこには・・・・無数の火球。

「何個あるんスか・・・」
「6・7・8・・・・たくさん・・・・・」

計15個。
15個もの火球が、ダニエルの周りに浮遊している。
ファイアビット。
まるでダニエルを取り巻くように。
火球がダニエルを守るように。
はたまた・・・・・チェスターとナックルを燃やすのも待ち望んでいるように。
ダニエルの周りの15球の火球は浮遊していた。

「アッツアツだ!ゆっくり弱火で燃え尽きなぁ!!!!」

ダニエルが右腕を振る。
すると、一つの火球がチェスターに向けて発射される。

「クソッ!なめんじゃないジャンっ!!」

チェスターはまたもや咄嗟に避ける。
だが、

「ほいほいほい!お代わりドンドンいくぜぇ!!!お熱いうちに戴いてくれやぁ!」

ダニエルが左腕を振る。
右腕を振る。
左腕を振る。
ダニエルが腕を振るたび、
火球が次々と発射されていく。

「や、やっばいジャン・・・・」

チェスターは苦笑いをした後、
次に飛んできた火球を、側転で避ける。
次の火球を今度はナナメにバク転して避ける。
今度は上に避け、
次は片手で着地した後、
腕の力だけで横に飛んで避ける。
ダニエルの連続火球をどんどんと避けていく。

「やるじゃねぇか!だが次のはサービスだぜぇぇ!!!
 セット販売だ!食らって燃えちまいなぁぁぁあああ!」

ダニエルの言葉の通り、
チェスターの目の前にサービスで二つの火球が同時に飛んできていた。
二つの火球が同時にチェスターを襲う。

「甘いジャン!どっ!かぁぁああああん!!!」

チェスターは咄嗟にイミットゲイザーを放つ。
その気力のエネルギー弾は、
まっすぐその2つの火球に飛び、
そしてぶつかると同時。
気とも炎とも分からぬ小さな爆発を起こした。
打ち落としたのだ。

「げっ?!」

いや、打ち落とせてなかった。
片方の火球だけ打ち落とせなかったのだ。
イミットゲイザーを放ったばかりのチェスターに、
火球が・・・・・

「りゃぁっぁああああ!!!」

隣から声がした。
それはナックル。
ナックルがチェスターの横から飛び込んでき、
そしておもくそに右腕のディスグローブで火球をぶんなぐった。
炸裂するように。
掻き消えるように。
ナックルの拳によって火球が砕け散った。

「サンキューナックルっ!助かったジャン!」
「仲間ッスからね!」

チェスターとナックルはニッと笑い合う。

「笑ってる場合かゴミどもぉおおおお!!!」

空気が揺れる音。
熱で燃え走る音。
それは火球が飛んでくる音。
気付くとダニエルの残りの火球が、全て二人に飛んできていた。
残り全て。
その数は5・6・7・・・・・たくさん。
避けるにも打ち落とすにも、二人では腕の数が足りない数。

「やばいッス!」
「今度はオイラに任せろナックル!」

チェスターは両腕を腰の横に構える。
そして両腕に気を溜める。
チェスターの両腕は気で輝き、
そして轟々とうなりをあげる。

「師匠直伝っ!!イミットゲイザー伍式っ!
 ウルトラスーパーミラクルゲイザー爆裂拳っ!!」

センスのない技名と同時。
チェスターは両腕をおもくそに高速連打。

「どどどどどどどどどどどっかっぁあああああん!!!!!」

イミットゲイザーの連発。
両腕から幾数ものイミットゲイザーが放たれる。
飛び散る気弾。
連発されるエネルギー弾。

チェスターの性格だ。
かなり適当撃ちだろう。
数段あらぬ方向に飛んでいったが、
やはりさすが。
火球の数の分の炸裂音。

ダニエルのファイアビットを全てを叩き落した。

「っしゃ!どんなもんジャンっ!!!」

チェスターが右腕でガッツポーズをとると、
チェチェがチェスターの頭の上で飛び跳ねて喜んだ。

「ヒャーハッハ!凄いじゃねぇかガキんちょぉ♪」

おかしな事に、
敵であるダニエルまで喜んでいた。

「GUN'Sなんかに入ったせいで燃やしがいのある奴とはトンと会わなくなっちまってたが・・・
 イィ・・・・♪・・・・・・めっちゃいいぜぇ♪・・・・燃やしてぇ!お前らみてぇの燃やしてぇよ・・・・・」

ダニエルは目をつむり、
感じるようにふるふると震えていた。

「なんかやっぱおかしいぜあいつ・・・・なぁナックル?」
「・・・・・・」
「ん?どったんナックル?」
「チェスター。ちょっと聞いていいッスか?」
「なになに?オイラたちの仲ジャン!なんでも聞けよっ!」

オイラ達の仲。
さっきあったばかりのチェスターとナックルだが、
まるで兄弟や親友のような親密感。
実際それぐらい気が合うからこそでもある。
が、ナックルの質問。

「さっきあのダニエルの部下がさ・・・・チェスターの事『ノック・ザ・ドアー』って・・・」
「ほえ?それがどうかしたん?」

「最高だぁああああああああ!!!」

突然にダニエルが叫ぶ。
叫ぶと同時。
火柱がダニエルから上に立ち上がる。
まるで迸るオーラのように、
ダニエルの感情と共に炎が一瞬吹き上がった。

「お前ら最高!燃やしがいありすぎ!俺テンションMAX!!
 お前らみたいなんを炭クズにしたらもう・・・・・快感が突き抜けるだろうぜ♪」

ダニエルは緩みまくった顔で言う。
愉悦に垂れる目もと。
焼けどのある頬も緩む。

「おい部下2号!3号!ちょっとこい!」

ダニエルは部下の2人をチョィチョィと笑顔で誘う。
二人の部下は嫌な予感がほとばしる程にしたが、
ダニエルの言葉を拒む事は直接死を意味する。
二人の部下は恐る恐るダニエルに近づく。

「お前らは俺の部下だ!俺の手足ってわけだ!だから役にたてっ!
 あの二人を燃やすために・・・・・・・・・・・・・・・・ちょっと盛り上げてくれ♪」

「「へ?」」

部下二人の疑問をよそに、
ダニエルは二人の部下の頭の上に手を置く。
そして・・・・・・・・・

「うぎゃああぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!??」

突然二人の部下は燃えた。
全身が燃えた。

「あつぃいいいぃいいい゙!」
「ダ・・・・ダニエル様!?何をぉおおおお!?」

「ヒャーーーハッハッハハハハ!!!」

自分の部下を燃やしたダニエル。
そして愉悦に浸っている。

「な、何してんジャンっ!?!」
「自分の部下を殺すなんておかしいッスよ!」

「部下を殺す?ヒャハハハ!そんな事するわけねぇだろが!」

ダニエルが笑顔をやめない。
チェスターはふとダニエルの部下二人に目をやる。
殺していない?
たしかに部下二人はまだ燃え続けている。
燃え続け、苦しみもだえている。
全身を火だるまにされて燃え苦しんでいる。

「たすけてぇぇ!ダニエル様ぁぁぁああ!」
「炎を!炎を解除してくださぁぁぃいいい!!!」

「だーめ♪お前らは今から俺の炎。俺の武器だ♪
 助かりたきゃ・・・・・・・・・残り少ない命であいつらを殺してみろ」

ダニエルの指先。
それはチェスターとナックルに向いている。

「バデスチキチキ命とりゲェーッム♪ルールは簡単!
 お前らが俺のバーニングデスで燃え死ぬ前にあいつら二人を殺せ♪以上!
 そしたら助けてやるとかやらないとっかぁ〜♪」

バーニングデス。
ダニエルが部下二人にかけたのはバーニングデス。
対象の命を、炎でジワジワを燃やしていく魔法。
そんな苦しい魔法を仲間に平気でかけるダニエル。
いや、もとからかける必要もないのにかけるダニエル。
自分の楽しみのためだけに。

「こ、殺さなきゃ・・・」
「あづい・・・あづい・・・・・」

燃える二人の部下はチェスターとナックルを見た。
自分の命が消えていっている中、
かすかな希望にかけ、
チェスターとナックルに殺意をむける二人の部下。

「ぁぁ・・・ぁああああ死にたくねぇぇぇえ!!!」
「俺のため・・・に・・・・も・・ぇ・・・・・死んでくれぇぇえええ!!!!」

バーニングデスの炎に焼かれながら、
二人の部下はそれぞれの武器を構え、
チェスターとナックルに突っ込んでくる。

「ク・・・・」
「っそぉ!!」

その二人の部下を、
チェスターとナックルは、
ぬぐえぬ思いを断ち切り、
拳を振り切った。

チェスターの右腕と、
ナックルの左腕は、
二人の部下をあっけなく貫いた。

ただでもバデスで弱りきっている部下二人。
それはあっさりとチェスターとナックルの前に崩れ去った。
燃えながら・・・
うっすらと泣き声のようなものを残しながら・・・・
二人の部下の命は炎の中に消えていった。

「じゃじゃーん!ゲェェーーームオーヴァァァ♪俺の負け〜♪ヒャーーハハッハッハッハ!」

ダニエルは大笑いする。
腹を抱えて笑う。
最初から結果がこうなる事はわかっていた。
それを楽しんでいた。
自分の部下があっけなく死んでいくのを・・・・・

「よっしゃ!コンティニュー♪」

ダニエルが嬉しそうに言う。
そして振り向く。
そこには・・・・
ダニエルの部下の残り一人。
その部下はギクリとした。

「決めちゃえ部下1号♪ここで俺に一瞬で焼かれるか、
 それともバデスチキチキ命とりゲームに挑戦するか♪」

部下に意味もなく最悪の決断を迫るダニエル。
部下1号と呼ばれた男は涙目になり、
震える自分の拳を握り締めて決心した。

「ダニエル様・・・・・自分に・・・・バーニングデスをかけてください・・・・」

「ヒアカムズア!ニューチャレンジャー♪ヒャーッハッハッハ!!」

嬉しそうなダニエル。
そこで、

チェスターの線がプチンと切れた。

「この悪党ぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

異常なる瞬発力。
大陸に名を轟かす『ノック・ザ・ドアー』の本気の瞬発力。
そこらの盗賊の比にもならない速さで、
チェスターはダニエルに真っ直ぐ突っ込む。

「そうこなくっちゃな!」

ダニエルは両手に炎を渦巻かせる。

「燃えろぉ!!」

ダニエルが両腕をクロスするように振り切る。
ファイアストーム。
多数の蛇のような炎の塊が、
一点を目指すように噴出す。
そしてそれは・・・・・・・

チェスターの目の前で巨大な炎となって燃え立ち上がった。

「ヒャーーハハッハッハ!!」

家一件は丸呑みにするような炎。
それがチェスターを飲み込んだ。
間違いなく・・・・
跡形も・・・・

「らぁああああああああ!!!!」

炎を突きぬけ、
チェスターがぶっ飛んできた。

「ほお♪」

まるでロケットのように突っ込むチェスター。
その突き出された拳は、ダニエルを目掛けて真っ直ぐ。

「死ねぇええ!!!」

「やだよん♪」

ダニエルは魔術師とは思えない反応スピードでチェスターの拳を避ける。
そして避け際にチェスターに一撃蹴りを入れる。
空中で蹴りを受けたチェスターは、吹っ飛ばされた。

「ぐっ!」

「ついでに燃えろぉ!」

ダニエルが右腕を振る。
まだ吹っ飛ばされているチェスターに追い討ち。
そのまま空中にいる間に炎がチェスターを襲う。
空中じゃぁ避けようがない。

「なめんなよっ!」

チェスターは空中で体勢を整えた。
それは常人にはできないような身のこなし。
普通なら空中で、
ましてや吹っ飛ばされているのに体勢を変えるなど絵空事。
だがチェスターは空中で体勢を整える。
天才的運動センス。
そして拳を突き出す。

「痛みを知れよ悪党ぉ!!!どっかぁっぁぁああああん!!!」

チェスターの両手でのイミットゲイザー。
ただのイミットゲイザーだが、
それは両手での本気のイミットゲイザー。
通常のものとは比べ物にならない威力。
そのイミゲは、
まるで煙にミサイルが突き抜けるかのようにダニエルの炎をかるく突きぬけ、
そして

「ちぃ!」

ダニエルに直撃した。

「くっそ!」

本気のイミットゲイザー。
それを食らい、ダニエルは痛みに両手を振る。

「チっ、この俺にダメージを与える奴ぁ久しぶりだぜん♪」

ダニエルは咄嗟に両手でガードした。
魔力と炎でかるく威力を消し、イミットゲイザーのダメージを軽減したようだ。
それでも威力はかなりあったろう。
ダニエルは両腕が思い通りに動かないといった感じに見られる。

「やばい。やっばい♪こんな楽しい戦いはひさびさだっぜっ♪
 燃やしがいあるぜ!この苦労を超えてお前を燃やした時にゃぁ・・・・・」

「だぁああああああ!!!」

今度は違う方から声。
ナックル。
ナックルがダニエルに突っ込む。

「忙しいぜ」

ダニエルは両腕を無理矢理動かし、
チェスターのイミゲをガードした時のように、
両手に魔力と炎を込めてガードしようとする。

「ぐっ!!」

が、ナックルのディスグローブは、
それを突きぬけ、ダニエルの両腕にめり込むように決まる。
メシメシと悲鳴をあげるダニエルの両腕。
そしてそのまま吹っ飛ばされるダニエル。
ダニエルは吹っ飛ばされて転がる。

「いだだだだだだっ!!」

吹っ飛ばされた先で痛みに苦しむダニエル。

「魔力と炎をかき消しただとぉ?お前が44部隊の『ブレイカー(壊し屋)』か・・・・
 ヒッヒ・・・・・・・ヒャーーーハッハッハッハ!おもしれぇ!マジおもしれぇよぉ!!!」

魔法を放つ両腕に致命的なダメージを受け、
戦況的にも絶望的。
それなのにダニエルはまだ笑う。

「世界一の傭兵『ノック・ザ・ドアー』とぉ!
 俺の炎を無効化して殴ってくる44部隊の『ブレイカー(壊し屋)』!!
 俺様ダニエル大ピィーンチ?やっべ!面白すぎるぅ!最高!」

何が面白いのか。
わからないが楽しいのだろう。
ただ、イカレているとしかいえない。

「だけど痛ぇのはイヤだぜぇ?そろそろやっちまうか・・・・
 燃やしてゴミクズにしていいころだろ。十分楽しんだ。
 しゃーねぇヤバいから一年ぶりにアレやっか。このままじゃ勝てねぇしな!」

ダニエルは笑うのをやめる。
そして一息。
まるで集中するかのようにフゥと一息。
そして、
遠目でも分かるように、突如全身に力を込める。

「行くぜオラ!・・・・・・"自分バデス"!!!!」

ダニエルが叫ぶと同時。
火柱が吹き上がる。
ダニエルを中心。
いや、ダニエル自身を火柱として。

そして・・・・
ダニエル自身が、
炎に包まれていた。
まるでオーラを纏うように、
自分自身に炎を纏っている。
いや、自分自身を・・・・・焼いている。
バーニングデスを自分にかけたのだ。

「熱い・・・・・熱いなぁ!これやると自分もめっちゃ熱いんだよ!
 死にそうになるほど熱いんだよぉおおおおおおおおお!!!」

自分でやっておいきながら、
いきなり今度はわけのわからない逆ギレ。
血管が浮き出るほど怒りの表情をダニエルは浮かべる。
・・・・・・・と思っていると。
また突然。

「だけどよぉ・・・・・・・・・この熱さが・・・自分の肉が燃える痛みが・・・・・・」

ダニエルの顔が愉悦の顔に戻る。

「快っ・感♪」

ダニエルは自分が炎に抱かれ、
なおヨダレを垂らすような愉悦の顔で言う。
そして、
チェスターとナックルに目をやる。

「さぁ・・・・やろうか♪燃やそうか♪」

なにをしでかすか分からない。
そんな不安を胸に抱きながら、
今にも何かしてきそうなダニエルに、
チェスターとナックルは身構えた。

そして・・・・・・・・

「な、なんじゃこりゃ!どうなってんだ?」

また別の方から声がした。
ダニエルでもなく、
チェスターでもなく、
ナックルでもなく、
はたまた一人残ったダニエルの部下でもなく、

あらぬ方向から。
それは・・・・・

「うぉっ!チェスターじゃねぇか!」
「なんか大変な場で遭遇しちゃったみたいですね・・・・」

アレックスとドジャーだった。

「ドジャー?!」
「アレックス部隊長!?」

突然に、偶然に現れたアレックスとドジャーに、
チェスターとナックルは驚いたようだった。
まぁそれ自体はドジャーとアレックスも同じだ。
それもまさに戦闘中。
さらに戦闘のクライマックスといった場面なのだから。

だが・・・・
一番驚いていたのは、
アレックスとドジャーでもなく、
チェスターとナックルでもなかった。

それは・・・・・
ダニエルだった。

ダニエルは戦闘中一度も見せたことない顔を見せた。
愉悦ではない。
ただ驚きを表したような放心的な緩んだ顔。
いつの間にか炎を消えていた。
炎を消してしまうほどの驚きの表情を表し、

ダニエルはその驚きを口にした。

「あ・・・・アっちゃん?」

その言葉に、
アレックスが笑顔で返事をした。

「久しぶりですね。ダニー」


















                 






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