-1日前の夜 《GUN'S Revolver》本拠地内 牢屋 -







「・・・・・・・・・・・・ボクだったわけだ・・・・・・・・」

エクスポは
自分の舌に・・・・・ゆっくり歯を重ねた。

「最後は華々しくがよかったんだけどね・・・・・・・・・」

エクスポが自分の舌を噛み切ろうとした時。
脳裏にかすめる声。

            唯一心残りなのは・・・・・・・・あんた達が笑って死ねるかってことだけさ・・・・・・・・
                あんた達も・・・・・・笑って死ねる美しい人生を歩みなよ・・・・・・・・

母の声だった。
死に逝く母の遺言とも言える言葉。
生きて、生き抜いて、
美しい人生を送って欲しいという・・・・

「何をやってるんだボクは!こんな人生の終わり方があるか!」

エクスポは自分の舌の代わりに、自分の唇を痛いほど噛み締めた。
そして自分の拳を牢の活を入れるように鉄格子に打ちつける。

「自殺なんて美しくない!最後の最後まで生き抜こうとしてこそ命は美しいんだ!
 ボクはまだあがいていない!まだ可能性を全て試していないのに死のうだなんて・・・・・」

そう言いながら・・・・
エクスポは気付く。

「・・・・・・・・・可能性?」

そう、
可能性。
その言葉にひっかかった。
ジャスティンだ。

「ジャスティンはなんでボクに爆弾を作れなんて言ったんだ・・・
 そんなものをボクが作るわけないは、仲間だったジャスティンが一番分かってるはずだ・・・・
 ボクがそんな美しくない爆弾を作るはずが無い・・・作る可能性なんかないんだ!・・・・・そして・・・・・・・・」

                 諦めずに・・・・生き延びてくれ

「あれはボクの自殺の決心をさせる言葉と思ったけど・・・・・違う。
 ボクが人一番"生きる事"に執着している事をジャスティンは知ってる。
 つまりあの言葉は・・・・・・シンプルイズザベスト・・・・・・・・そのままの意味だったんだ」

エクスポは立ち上がる。
この日何度も打ちつけて血だらけの拳を握る。
その目には力を決意を秘めていた。
エクスポの言葉に例えるなら、
美しい光が目に宿っていた。

「普通に考えれば当然だ!
 ジャスティンは《MD》にできるだけ被害を与えたくないて考えてるんだ。
 なのにボクを自殺に追い込むようなまねをするわけがない・・・・・つまり・・・・・・」

エクスポは牢屋の一辺を見た。
そしてそこに転がっているもの。
その一部を拾ってボソりと言う。

「ハハッ・・・あのウソつきめ・・・・・・」

そう言って笑った。
エクスポが拾い上げたのは・・・火薬。
ジャスティンが大量殺人兵器を作れと手渡した火薬。

「これで・・・・・これを使って逃げろって事だったのか・・・・・・
 フフ・・・・・・そうか。そりゃそうだよね。人質にこんな危ないものを渡す奴がどこにいるんだ」

そうして・・・・・

エクスポはジャスティンから貰った火薬を使い、
GUN'Sの牢屋から逃げ出した。

















-----------------------------------------------------------














「カッ!ジャスティンがねぇ・・・・・」

ドジャーはエクスポの話を聞き、
不機嫌そうに答える。
が、その不機嫌そうな顔の奥、
なにやら嬉しそうだった。
それはそうだ。
死んだと思っていた仲間がちゃんと生きていたのだ。
それも人質から解放されて無事ここにいる。

「ま、俺はエクスポがすぐ死ぬタマだとは思ってなかったけどな!
 なんたって"ド"と"馬鹿"がつくほど死んでも死なない美オタクだからな!
 綺麗な墓でも自分で立てるまで死なねぇだろカカカッ!!!」

一番心配そうにしてたくせに・・・
なんでこうも意地っ張りなんだか・・・・・

「美しくない事を言うねドジャーは。僕がゾンビみたいじゃないか。
 ・・・・・・で、皆の宝物であるボクはここに無事脱出してきたわけだけど・・・・
 まだ戦争はするのかい?野蛮で悲しく美しくない戦争なんて愚事をさ」

エクスポがスカした笑顔で言う。
戦争なんて美しくない。
まぁ彼が言い出しそうな事だが・・・・・

「ごめん。愚問だったね」

エクスポはそのままの笑顔のまま、
首を横に振った。

「オブジェは向こう。敵の中にジャスティン。
 オブジェは最終的に断念したとしても、ジャスティンは止めなきゃね」
「馬鹿いってんじゃねぇよエクスポ。本当に愚問だぜ?」

ドジャーが右頬を緩めて言う。
そして続くように他のメンバーも言う。

「オブジェもちゃんと戴きますよ」
「そうだ。そんな事は当然。承知の上」
「それに負け逃げなんてむかっ腹にくるしね!」
「・・・・・・ジャスティンは止める・・・・・・・GUN'Sの天下も断ち切る・・・・・・・・・」
「だからゴメンって言ってるだろ?美しくないなぁ。
 謝ってるのに責めるなんて恥ずかしくないかい?
 いいかい?人の意志ってのはね美しさの象徴で、それは言葉から最初に・・・・・」
「「「はいはい」」」

エクスポの美講義が始まりそうだったので、
皆は同時にそれを断ち切った。
エクスポは少し不満そうだった。

「まぁどっちにしろ後戻りできる段階は過ぎましたしね」

アレックスは周りを見渡す。
敵と炎にまみれるミルレスの町。
暴れまわる残りのスマイルマン。
それに対抗する44部隊。
たしかにもう自分達だけが逃げるとかいう段階ではない。

「じゃぁ次はオフェンスね!!バリバリ攻めちゃいましょ!」

マリナが両手を腰に当てて言った。
マリナらしい言葉。
だがその通り。
エクスポが人質でなくなった今、
気に病むものはもうない。
今度はこちらから仕掛けていく番だ。

「・・・・・そういえば・・・・・・エクスポ・・・・・・・お前は逃げてきたって言ったな・・・・・・・・・」
「そうか。お主。敵の本拠地が分かるであろう」

「残念。夢中で逃げてきたから覚えてないんだ」

エクスポは残念という割には・・・・
覚えていないという割には・・・・
偉そうにスカした態度で言った。

「・・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・」
「この役立たず」
「スカポンタン」
「ダメ男」
「ビューティフルオタク」

あまりの言われよう。
アレックスはエクスポを少し同情した。
まぁスカポンタンと言ったのはアレックスだが。

「・・・・・・美しくないなぁ・・・・・・・でもGUN'Sの本拠地だろ?少しなら分かるよ。聞くかい?」

さっきまでの「残念」とは一辺、
間逆の言葉。
スカした態度だけが変わっていない。

「・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・」
「もったくぶるなよ」
「犬でもないのに回りくどい」
「スカポンタン」
「さっさと言いなさい」
「・・・・・・・・・・」

エクスポはやれやれと言った感じで一度ため息をつき、
そして話し出した。

「まぁボクも馬鹿じゃない。逃げてきた方角は西の方からさ」

西。
ミルレスの西。
あまりに大雑把だが、
それさえ分かれば少なくとも無闇でも進む方向ぐらいは決められる。

「そしてね・・・・・・あぁまぁこれは言わなくても分かってるかもね。
 ボクが牢屋にいた時WIS連絡をしていた君達でも分かる事だしね」
「何がよ・・・」
「だからさっさと・・・・」
「地下さ」

エクスポは短く切る。
いや、牢屋が地下な事は知っているが・・・・
GUN'Sの本拠地がまるまる地下だということか。

「地下は地下でも・・・・・・ミルレスの端だね」
「なんで分かるのよ」
「なるほど」

アレックスが頷く。
いや、盲点だったとため息をつく。

「あぁ・・・・本当になるほどです。たしかに地下という事ぐらいは検討がついてました。
 だって幹部クラスじゃないと使用しないとはいえ、
 この《GUN's Revolver》という巨大ギルドの本拠地が表にあればさすがに気付きますからね。
 でもミルレスの端。これは気付かなきゃ馬鹿でした。いやぁ・・・僕も馬鹿でした・・・・・」
「お前ももったいぶるなアレックス・・・・」
「まぁつまるところ・・・・エクスポさんは牢屋の中で"地下なのに外の景色が見えていた"」

そう、地下に窓があること自体おかしい。
エクスポの牢屋は地下なのに月の景色やらが見えていたのだ。
それが指す答え。
それはミルレスという町の形状にある。
ミルレスは岸壁に囲まれた孤島のような町。
町の端は絶壁。

「つまり・・・・・GUN'Sの本拠地はミルレスの外側の絶壁のどっかって事ね」
「ミルレスの大地の側面って事ですね」
「そして西」
「・・・・・・・それだけ分かれば・・・・・・・かなり絞れるな・・・・・・・・」
「あ、そういえばあれじゃなかったか?えぇーっと・・・・」

ドジャーが考える仕草をする。
何か思い出そうとしている。
と思うと、手をポンと鳴らした。

「あれだあれだ。ほれ、ミルレスの西。そうだそうだ
 昔イスカの剣研ぎに来たとき一回散歩して行った事なかったか?
 ほれ、ミルレスの西の絶壁につり橋みたいなんがかかっているとこ。あっただろ?」
「あぁ〜!」
「そういえば・・・・」

そういえば・・・・
と、アレックスにも王国騎士団時代の記憶があった。
ミルレスの西の絶壁。
小さな階段のようなつり橋のようなものが、絶壁を伝うように伸びている。
そして・・・・

「立ち入り禁止の洞窟があったわね」
「・・・・・・・・・怪しすぎる・・・・・・・」
「ミルレスの西・・・・・絶壁沿いの地下・・・・・・そしてそこに延びる架け橋と洞窟」
「間違いなさそうですね」

決まりだ。

「カッ!そうと分かりゃぁもたもたしてらんねぇ!
 映画も小説も、短く太く。さっさと片付けるに限る」
「さっさと向かいましょうか」

と、アレックスは笑顔で西に振り向いた。
が、

そこに広がるのはまたもや絶景だった。

「いたぞ!」
「《MD》の奴らだ!」
「やはり爆発を頼りに向かってよかったぜ!!!」

1・2・3・4・・・・・
いや、100飛んで200飛んで・・・・
あぁ・・・・数えるのも面倒だ。
まぁいうならば"たくさん"。
まるでアリや蜂が巣に集うかのような数。
数百というGUN’S兵が集結していた。

「な、なんだこの数・・・・」
「この一箇所に何百人いるのよ・・・・・」

44部隊が交戦中の相手、
そこだけでも1000以上の数のGUN'Sメンバーがいた。
そして・・・

「この一部分でこの数なら・・・・
 すでにここら全体に3〜4000の数がいると考えていいでしょう」
「・・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・・・」

見れば見るほどどうしようもない数。
倒せるか倒せないかではない。
どうしようもない数なのだ。
こちらは6人。
相手は数百。
一人頭100。
無理。
タイマンで100人抜きなら話は別だが、
一斉にかかってくるというならもうお手上げだ。

「美しくない絶景だね」
「数の分が出始めおったな」
「あぁ。44部隊だって何千人を一辺に相手する事はできねぇ」
「一気に・・その上徹底的に・・・・強火でカラっと潰してくる気ね」
「ここからさらに4・5000人になってきたら44部隊だってお手上げよ」
「・・・・・・・・あいうら・・・もう2時間は・・・・・休み無しで戦ってるわけだしな・・・・・・・・・・・」

そう。
質ではなく量。
それをもってこられると、どうしようもない。

「数・・・・か・・・」

イスカが着物の内側から手を出し、
アゴに添える。

「間に合えばよいが・・・・」

イスカがボソリと言った。

「あん?何がだイスカ」
「いや、一応駄目もとで手配だけしたのだが・・・・」
「手配?」
「・・・・・・なんのだ・・・・・・」
「うむ。敵は世界最大のギルド。ならば"二番目"を引き込むのがよかろうと思ってな」

二番目のギルド?
すでに終焉戦争の15ギルドでさえ、
ほぼ壊滅している。
44部隊とGUN’Sの強襲でだ。
その上で二番目。

「いや、フッ・・・・心配するだけ無駄だったようだ」

イスカが目をつぶり、
そして口を小さく開けて言った。

「間に合ったようだ。こう見ると見事也」

何が間に合ったのか。
分からないが。
それはつまりイスカの先。
アレックス達は振り向いた。
そこには・・・・
また絶景があった。

黒。
黒に埋め尽くされている。
黒黒黒。
アレックス達の背後に、黒を着た男達で埋め尽くされている。

「うわ・・・・」
「なるほど・・・・・・」

黒服のスーツを着た男達。
その真ん中がかき分けられ、
一つの道が出来る。
その中心を堂々と歩いてくる男。

「久方・・・というには短き頃合。だがそれも華が咲くには十分な時でやしょう・・・・・」

その男はスーツをマントのように背負い、
屈強な筋肉とサラシを見せて歩いてくる。

「《昇竜会》・・・・」
「極道のリュウ・・・・か」

集結するGUN'Sと逆サイド。
黒スーツの集団の最前列で、
リュウは口を緩めながら話し始めた。

「まずは喧嘩(ゴロ)の華の中。時短くして再会した事を興とよみやしょうかイスカ嬢。
 それも戦場という名の黄泉津比良坂(よみつひらさか)の畔(ほとり)。世界の桜木の真下でさぁ。
 漢気見せるにゃぁ申し分ない按配でして・・・・おいトラ坊。火」
「へい」

リュウがタバコを咥えると、
すぐさま横の若い男ヤクザがライターで火を付けた。
リュウは煙を一度吐き出した後、
話を続ける。

「いつぞやはご迷惑おかけしやした。仁義に欠ける配分で重々後悔に曇らせて頂いてやす。
 ただあっしも親で子がため、オブジェを欲しいと思う気持ちは今時分変わらず・・・・
 さらが上、あんたに借りを返せるというのなら・・・・・それはもう至上の按配でさぁ・・・」

リュウはそう言い、
一人でこちらに近づいてくる。

近づいて来ながら、
唐突に叫ぶ。

「トラ坊!大木殺(だいもくさつ)を!」
「へい!」

一人の男が一つの木刀を投げる。
背後から飛んでくる木刀。
それをリュウは後ろを見ずにキャッチした。

そしてリュウは
アレックス達の前、
いや、イスカの前に立つ。

「イスカ嬢。一言だけ頂きてぇ」

そう言い、
リュウは木刀の柄を前に出した。
イスカは小さく笑う。
そして返す。

「・・・・・・・・リュウ。この戦争は酷く拙者らの私情が混じっておる。
 だが、目的が重なる事だけを理由に・・・・・・・恥を忍んで助力を頼みたい」

「欲しいのは理由であってそんな理由あぁありやせん。
 あんたにはタカ坊の一件もあり借りがありやす。つまり一つ。
 聞きたい事はたった一つでさぁ・・・・・・・・・・・・・そこに仁義はありやすか」

「・・・・・言わずともかな」

「十分でさぁ」

GUN'Sに筋が通っていない事は分かっていた。
だが、イスカの口から聞きたかった。
リュウはそんな笑顔を送り返した。

イスカも剣の柄を突き出す。
そしてイスカの剣の柄と、
リュウの木刀の柄がコツンと当たる。

「トラ坊!あっしのスーツを持て!」
「へい!」

言うなり、
リュウは背中に背負うスーツを投げ捨てた。
そして背をこちらに見せると、
背中の竜の刺青が吠えるように顔を見せる。

「この背中の竜が鳴く限り、あっしは仁の中で生き続けたい!それは我が子も同じでさぁ!
 GUN'Sの天下に興もなく、仁無き渡し舟だとでも言いござろうなら!
 一つ義理がため!一つ仁義がため!そして目的が重なる縁あるあんた方がため!
 不肖リュウ=カクノウザンと《昇竜会》が構成員1382名!
 竜の杯(さかずき)と芯に賭け!命枯らすつもりで戦いやしょう!」

リュウが地に木刀を突き刺す。
木刀はゴンっと重い音を奏でた。

「野郎共!極道のゴロを見せてやんなせぇ!!」

構成員達の返事。
「おぉおおおお」という一音の連続のみ。
それは響く地震のように響く。

そして、
一斉に黒スーツの団体がなだれ始めた。

「おらおらぁ!!!」
「どけや死ねやGUN’S共ぉ!」
「極道なめんなよ!!!!」
「命(タマ)とったらぁ!!!!」

黒の雪崩。
圧巻だった。
GUN’Sとは違う、
縦社会であるヤクザという"組織抗争"
統率のとれていないGUN’Sの人間達を飲み込んでいく。

「小指(エンコ)じゃすまさんぞコラァアア!!!」
「ワシらほっぽって何が天下じゃぁああ!!!」

黒スーツ達の活躍を、
組長がリュウはニヤリと笑ってみていた。

「いい部下達でしょうや。悪党ばかりですがぁね、《昇竜会》は血の流れた一つの大木。
 血縁がためなら竜にも鬼にもなるやつらばかりでさぁ。親冥利に尽きるってもんで」

悪党だが味方のためなら。
それはまるで《MD》のような絆だった。
リュウもそれを思って手を貸す気になったのかもしれない。

「礼を言う。リュウ」

イスカは無表情のまま、
軽く頭を下げた。

「頭を上げておくんなせぇイスカ嬢。好きでやってる事でさぁ。
 GUN’S側の人間以外は皆、GUN’Sの天下を望んでるもんじゃぁねぇ。
 じゃぁ黙ってねぇでそのために出来る事をするってのが筋ってもんでやしょぅ。
 そして恥ずかしいが極道てぇ裏社会で生きてきたあっしらでさぁ。
 オブジェの力で表社会に出たいってぇ野望もまたあっしらの私情でごぜぇまさぁ」

そう。
目的が重なったからこその助力。
GUN’Sの天下。
それは王国騎士団と同じ力に統一。
そんなGUN’Sの天下など誰にも求められるものじゃない。

「僕からもお礼を言いますリュウさん」

アレックスも頭を下げた。
心からの礼だった。
それは1000を越える嬉しい助力を得たからではない。
それは・・・・
自分のせいで起きたこの戦争。
それがちゃんと意味のある事だったという事。
この戦争が間違った事ではなく、
多くの人が求めるものだったという事を証明してくれたから。
心から嬉しかったからだった。

「騎士さんも頭あげてくんなせぇ。そいで聞きたい事もありまさぁ」

リュウが神妙な顔をしてアレックスを見る。
それは睨むようで曇ったような、
そんな表情だった。

「はい。なんですか?」

「44部隊がこっち側ってぇ聞きやしたが・・・・たしかでしょうね?」

よく分からないが、
アレックスは何か違和感を感じた。

「えぇ、あなた方《昇竜会》と同じく僕らと目的が重なったんです」

「なるほど。ならいいでさぁ。いえ、あれらと戦うなら話は別ですからね。
 終焉戦争を思い出すとあれらと戦うなんて勘弁こうむりやすから」

そうだ・・・。
違和感がハッキリした。
アレックスは王国騎士団。
昔敵だった《昇竜会》が味方。
いや、違和感はそこにあるんじゃない。

44部隊が味方。
そこだ。

「大丈夫です・・・彼らは味方です」

《昇竜会》がこちら側につくのはこれ以上なく頼りがいがある。
なにせ、終焉戦争に参加した15ギルド。
その中でも数だけなら最上級。組織力ならトップ。
そして、15ギルドがほとんどが壊滅している中、
現存するギルドでは、
GUN’Sに次いで二番目の規模だろう。

まだまだ遠く及ばずとも、
数だけがどうしようもない点だった今回の戦争。
その点で《昇竜会》の参加は嬉しい。
だが、
先ほども述べたが、
なぜ他の有力ギルドが壊滅しているか。
それは・・・・・・
王国騎士団の滅亡を生んだ15ギルド。

それを・・・・・44部隊が潰して回っているからだ。

44部隊にしたら・・・
《昇竜会》は《GUN'S Revover》と同じく
潰したくてたまらないギルドなのだ。

「ロウマさん達は・・・・まずGUN'Sを潰したいはずです。
 だから今回の戦争で《昇竜会》に手を出す事はないと思います」

そう、
GUN'Sを潰す事は最重要だ。
ここは素直に《昇竜会》の助力を喜ぶべきだろう。

そして同時に、
チェスターがこの場にいない事をアレックスは安堵した。
今もなお王国騎士団である事を貫く44部隊。
そして外門壊しの傭兵として王国騎士団の天敵であるチェスター。
それが44部隊とはち合わせたら・・・・

「カッ!とにかく!」
「・・・・・・・・・これで当分はしのげるな・・・・・・・」
「あ、リュウさん。今度は僕から質問いいですか?」

アレックスがリュウの顔を見て聞く。
他を見ていたリュウだが、
アレックスの方を振り向く。

「よござんす」

「あ・・・いえ、たいした事じゃないんですけど。
 これだけの数をどうやってミルレスに進入させたんですか?」

そう、記憶の書で飛ばすにしろ大事故になる人数。
さらにミルレスのたった一つの入り口と、
たった一つのゲートの到着地点はGUN'Sに見張られている。
これだけの数がいたらどちらにしろとっくに大騒ぎになっていたはずだ。

「そりゃぁ簡単な話でさぁ。あっしらの本拠地である市場は
 ルアスやスオミなんかの町と繋がってやす。もちろんミルレスもでさぁ」

あぁ。
と納得する。
そして関心もする。
こう考えると、団体でミルレスに入れるのはむしろ《昇竜会》だけかもしれない。
これ以上ない援軍だ。
そしてそれを見越したかどうかは分からないが、
援軍を頼んだイスカをアレックスは関心して見た。

「?・・・・拙者の顔に何かついておるか?」
「あ、いえ・・・・」

多分そこまでは考えてなかっただろう。
まぁそのイスカが前に出て、
リュウに話しかけた。

「リュウ。まるで時間稼ぎで悪いが、
 この援軍を好機として拙者らはGUN'Sの本拠地に挑もうと思う・・・」

「ようがす。適材適所ってもんでさぁ。あっしらが団体で攻めたところで・・・・・・・・」

「リュウの親父!!!」
「おやっさん!!!!」
「組長ぉおおおおお!!!」

聞きなれない声。
それはそうだ。
黒スーツの男達。
リュウの部下のヤクザ達だ。
まるで逃げるように、
慌ててリュウのもとへ走ってくる。

「どうしたんだ野郎共。怖気づいたか?
 まぁ自分の命(タマ)を落とすまでやれたぁ言わねぇが、芯ってもんを・・・・」

「違うんです親父貴!!!」
「リュウの親っさん聞いてくだせぇ!」
「化けモンでさぁ!化けモンがいるんす!!!」

化け物。
その言葉にアレックス達は顔を見合わせた。

「お恥ずかしいとこを見せしやした《MD》の方々・・・・
 おい!野郎共!何が化け物だ!何のことかぁ知らねぇが、そんなもんほっとけ!
 スマイルマンなら44部隊に任せておけばようがす!
 ・・・・・まさかロウマがこっちに手を出してきたっちゃぁ言いませんわなぁ」

「違います!」
「違うんでさぁ親っさん!!!」
「もっとおかしな奴で!!」

思い当たらない。
量産型スマイルマンでもなく、
ロウマでもない。つまり44部隊でもない。
むしろ44部隊は戦争中は《昇竜会》に手を出してこないだろう。
ならなんだ。
化け物?
今のところスマイルマン以外に考えられないが・・・・
あ、いや。
敵で戦場にいる者。
つまりそれは・・・・

「まさかダニ・・・・・」

「きたぁぁあ!!」
「化け物だ!!!」
「に、逃げろ!!!!」

黒スーツのヤクザ達が逃げる。
逃げ戸惑う。
化け物から。
いや、
そんなものどこにいるのか。
だが気付くと、
黒スーツの男達の死体がたしかにある。

「な、なんだ・・・どうなってやがんだ・・・」
「化け物ってなんだい!?」
「・・・・・・・・・・どんどん死んでるな・・・・・・・・・」
「ふん。ダニエルという輩か・・・・」
「いえ、彼は炎術使い。彼なら死体は燃えているはず・・・・」
「じゃぁ誰よ?!」

疑問。
化け物。
だが、
その答えは・・・・・

降ってきた。

アレックス達の目の前に振ってきた。
どっから跳んできたのか、
思い地響きを立て、
その化け物はアレックス達の前に降り立つ。

荒い息を吐き出し、
化け物は両手の獲物を振りかざして雄たけびを上げた。


「あがハ!はは葉は亜あ゙ア!あ゙我はハ覇ハァアガ!!!!!!」


ドレッドをなびかせ、
照準の合わない目をキョロキョロと動かし、
両手の重い重い両手斧が、
また黒スーツの男を鮮血に変えた。

「メ、メッツ?!」

声に反応したドレッドの化物は、
怒り狂い、
思考も停止しているかのようだった。

ただ目の前のものを判断できる思考も持ち合わせておらず、
声も届かない。

我を忘れた狂戦士は、
斧を振り上げ、

味方という名の敵へと飛びかかった。












                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送