「絶交。・・・・・・・・分かるか?つまり俺はお前らを友とは思わないって事だ。
 俺の邪魔をするなら・・・・・・BYE BYEだ。一生な」

ジャスティンは鎌をユックリ回す。
満月を表すようにユックリと。
そして自分の足元にきた所で止めた。
その鎌を構える姿は、まるで死神を感じさせるようにも感じた。
『ハローグッバイ』
戦場であったが最後。
そう呼ばれるのも頷ける威圧感と残酷さがあるとアレックスは思った。

なんというか・・・
ドジャーさんとメッツさんと違い、
時によっては容赦などしない。
そんな雰囲気がする・・・・・・

だが、それよりもドジャーとメッツは
思考より感情が上回り始めていた。

「なぁにがバイバイだコラァアアアアア!!!!!!」

メッツが飛び出していた。
その姿は、
レイジも使っていないのに憤怒にまみれ、
周りも見えていない様子。
素の怒りで産まれたバーサーカーのように。

「らぁああああ!!!!」

メッツが岩石を割るかのごとく斧を振り落とす。

「焦んなって」

ジャスティンは、
そんなメッツの足を軽くかける。
勢い余ったメッツは、
ボーリングピンを倒したように簡単に転んで転がった。
片方数十キロの両手斧が、
思ったるい音を奏でながら転がる。

「・・・・チッ!てめっコラッ!!!」

メッツが体勢を立て直そうと体を起こそうとするが、
そこに太陽に反射する刃が突きつけられる。
ジャスティンの鎌が、
メッツの首にかけるように突きつけられた。

「メッツ。お前はいつも猪突猛進だな。少し冷静になれよ
 本気になったら俺なんて相手にならないくらい強いんだぜ?お前は」

「てめぇ・・・ジャスティンこらぁ!何を知った口・・・・」

「お前とドジャーの事なら誰よりも知ってるつもりだ」

ジャスティンは突きつけていた鎌を背中に戻し、
メッツに背を向けた。

「お前はいつも腕力に頼りすぎだ。少し捻った戦い方をされるとすぐ危うくなる。
 筋肉だけでなく、脳も使え。それが生き残る秘訣だ。・・・・もう死ぬかもしれないけどな」

そう言いながら、ジャスティンは自分の彼女の所に戻っていった。
そして彼女をいつものように肩に抱き・・・・・
と思うと、
彼女を体ごと抱き上げ、
なんでも屋の上までジャンプで跳んだ。

「ロマンチック(いい眺め)とは言えない高さだよな」

ジャスティン・・・六銃士の一人は、
彼女を肩に抱き、
なんでも屋の上に座った。

そして見下ろして言う。

「どんなものでも"始まれば終わりがある"。ハローとグッバイだ。
 何故か。"命"がそうだからだ。だから全てのモノには終わりがある。
 それはどんなものでもだ。それは・・・友情や仲間ってのもさ。
 友・・・・・・"friend"って単語が"end"で終わってるようにな」

ジャスティンは無表情で言った。

「最後に・・・BYE BYEする前に何か聞きたい事はあるか?
 冥土の土産ってやつだ。"元"友にそれくらいのプレゼントはしてやりたい」

そこでジャスティンは皮肉混じりに薄っすら笑った。
笑顔の先。
ドジャーの顔は笑っているはずが無かった。

「てめぇに聞くことなんざねぇよ!!!」
「あ、じゃぁ僕が・・・」

血管を浮かせたドジャーの後ろから
アレックスがノーマルな声で言った。
手を挙げて。

「あん?アレックス。テメェはひっこんでろよ!」
「やです」
「だと?」
「ドジャーさん達がこうなった時のために僕がいるんですよ。ま、ジャスティンさんの言うとおり、
 ドジャーさん達がここで死ぬ気なら話すことはないでしょうけどね」

ドジャーは言い返そうか口を震わせた後、
言葉に詰まり、
唾を吐き捨てた。
アレックスはニコリと笑い、
なんでも屋の上のジャスティンを見上げる。

「質問いいですか?ジャスティンさん」

「あぁ。・・・・・・・ドジャー達はほんとにいい仲間を持ったな。
 君はドジャー達に・・・《MD》にまるまる足りない分を補ってくれてるような・・・・・。
 ・・・・・・アレックス君。君になら本当にドジャー達を任せられると思った。
 だからこそ、それに敬意と感謝を表して受けるよ。なんでも聞いてくれ」

「敵から聞ける情報なんてたかが知れてますけどね。
 でもただ一つだけ・・・・・一つだけ答えてください」

「なんだい?」

「エクスポさんはどうなりましたか?」

ジャスティンは一度顔をしかめた。
一度顔を小さくそむけた。

一瞬黙り込んだが、
戻した顔は、作り顔か分からないが・・・・薄っすら笑っていた。

「俺がエクスポの監視役だったわけだが・・・・まぁ、"そんな事する必要もなくなった"
 ・・・・といえば馬鹿なお前らでも分かるか?"どう"なったか」

ドジャーの顔色が沸点に達した。

「てっ!」

ぶち切れそうなドジャーを、
アレックスが無理矢理止めた。
そして話を続ける。

「・・・・・・死んだって事ですか?」

「言わなきゃ分からないか?俺はエクスポに状況を全て話した。
 そして彼にとって耐え難い要求も求めた。そしてエクスポに言った。
 そうなった時エクスポならどんな行動をとるか。予想ぐらいつくだろう?
 一応言っておいたけどな・・・・・・・・・"できれば死なないでくれ"・・・・・と・・・。
 だが・・・・・美を、自信の美学に背いて行動する男じゃない」

出会って日のたたないアレックスにも分かる。
美を尊び、
自身の美学に基づいて生きる彼にとって、
それを侵害するような事があれば・・・・・

「アレックス。話は終わりだ」

ドジャーはアレックスを手で押しのけた。
その手は怒りで震えていた。

「待ってくださいドジャーさん!焦っちゃぁ・・・」

ドジャーを止めようとするアレックス。
だが反対側から違う手がアレックスを掴む。
その凄い力は、
アレックスをひるがえし、
地面へと叩きつけた。

「悪いなアレックス。俺達にゃぁ我慢の限界があんだ」

メッツはアレックスを地面に叩きつけたあと。
その手に斧を担ぎ、
ドジャーと並んだ。

「あぁその通りだメッツ。
 堪忍袋なんてもんがあるとしたら、そんなもんとうの昔にハジケ飛んでる」
「我慢なんてするもんじゃぁねぇよな!原因が怒りってんならなおさらだ!
 大体俺の堪忍袋なんて玉袋ほどの大きさもねぇんだよ!あのアホを殴ってやろうぜ!!!」
「あぁ、あれはもうジャスティンじゃねぇ。・・・・・・・・・・・・・ジャスティンの形したアホだ」

「来るか?ドジャー、メッツ」

ジャスティンはなんでも屋の上で座ったまま、
鎌を背中から取り出す。
弧を描きながら、
ネクロスタッフがジャスティンの右手に収まる。

「俺はエクスポに言った。"お前らの中の誰かが死ぬだろう"ってな」

・・・・・・・・・・・・誰かが死ぬ

「お前らは大事な仲間だ。・・・・おっと"元"な。死ぬのは一人でいい。
 ・・・・・・なのにそれを増やす気か?お前らは死ななくていいんだぜ?
 エクスポは体を張ってその状況を作ってくれた。
 あいつなりに言うなら仲間を思う"決死の美学"だ。
 ・・・・人質がなくなったんだ。やめようと思えばお前らはもう戦わなくていいんだぞ」

「カッ!そうは行くかクソッタレ!!!!」
「こちとら胸糞が爆発してんだコラァアア!!!!!」

「無駄に死ぬのか?エクスポが悲しむぜ?
 勝ち目のない戦いだ。こっちは5000。お前らはたったの8人」

「"8"って言うんじゃねぇええええええ!!!!!」

ドジャーが飛び出した。
ダガーを両手に握り、
なんでも屋の上へ向かって。
まるで鳥が飛び立つが如く、
ドジャーは斜め上に突っ込んだ。

「感情的になるのが悪いクセだ」

ジャスティンは咄嗟になんでも屋の上で立ち上がる。
いや、飛び起きる。
目の前の宙にはすでにドジャー。

ジャスティンは飛び起きた反動でドジャーの手を蹴り上げ、
そのまま鎌を振った。

空中でドジャーの腹は鎌で斬りつけられた。

「がっ!?」

空中で血しぶきをあげ、
ドジャーはなんでも屋の反対側へ落ちて言った。

「ドジャーさんっ!!!」

「慌てるなよ。そんな深く斬ってない」

ドジャーが地面に転がった。
転がった後すぐ片膝をついた体勢に立て直したが、
腹から垂らした血を手で押さえていた。

「だが、戦うのは無駄だと悟るには十分のはずだ。退く気になったか?
 お前らは勝てないよ。GUN'Sの5000どころか俺一人にも・・・・・」

勝ち誇ったような、
悲しいような、
そんな顔をしていたジャスティン。

だが、その表情が変わった。
明らかに変わった。

「・・・・・・・だと?」

ジャスティンは何かしらに驚きの表情を表していた。
ドジャーの攻撃に対して?
空中のすれ違い様、ドジャーも攻撃したのか?
違う。
視線の先が違う。
それはドジャーへ向けられた視線ではなく、
アレックスやメッツでもない。

ふと、
何かに気付いたようだ。

なんでも屋の上から、
もっと・・・・
もっと先の方を見据え、
その景色に驚いて固まっている。

「チクショゥ・・・・・聞いてねぇぞ・・・・・・・・そうか・・・そういう事かドジャー・・・・
 結果主義のおまえが勝ち目のない戦いのまま来るはずがなかった・・・・」

ジャスティンが視線を固めたまま、
顔をしかめた。

アレックスもジャスティンの視線の先、
後ろを振り向いた。
なんでも屋の上じゃなくてもそれはわかった。

あたりを囲むGUN'Sのメンバー達。
そのさらに向こう。
そこに見える影。
それは・・・・・

「クソ・・・・1年ぶりだ・・・・"死"が並んでるのを見るのは・・・・」

ドロイカン。

10そこそこのドロイカンと、
大型のハイランダー。

「4(死)並びの部隊・・・・・44部隊だと?そうか、クソ・・・アレックス君のツテか・・・・
 なんでルケシオンなんかでエンツォと接触したのか分からないでいたが・・・
 あそこにいった理由はこういう理由か・・・・クッソ・・・・想像外だ・・・たまんねぇ・・・・」

「カカッ!ちびりそうか?」

ドジャーが腹の傷を抑え、
口から血を垂らしながら皮肉を言った。

「クッ、俺は終焉戦争で44部隊の恐ろしさは目の辺りにしてるからな・・・・
 ドジャーの皮肉にのってやると・・・チビりそうな感情だぜ。オムツがいるレベルだ」

「カカカッ!そりゃたまんねぇわな」

「"想像外が一番怖い"。ここは一端退くか」

ジャスティンは懐から何かを取り出す。
片手に取り出したソレは、記憶の書。
それを片手で開く。

「逃げる気かてめぇコラァアア!!!」

「だから退くって言ってるだろ?まぁBYEBYEじゃないさ。シーユーってやつだ。
 おい、お前ら!適当に時間稼げよ!六銃士命令だ!・・・・・・・ん?」

ジャスティンは周りのざわめくGUN’Sメンバー達に命令している途中。
遠くの景色を見、また顔をしかめた。

「チっ、身内は身内で困ったもんだ。ダニエルなんて推薦するんじゃなかったあのアホめ」

何を見たのか分からないが、
不機嫌そうに、そして急ぎながら、
ジャスティンは記憶の書をペラペラとめくる。
そして一つのページで止めたと思うと、
なんでも屋から下を見下ろし、
無表情で言った。

「ドジャー、メッツ。俺を殺したいなら生き延びろよ。また会えることを願ってる」

「待てっ!!」

それを尻目に、
ジャスティンは肩に抱く彼女と共に光に包まれ、
空へと飛んでいった。

「クソォ!!!!」
「ドジャーさん!!!見てください!!」
「あん?44部隊か?」
「違いますっ!!!あっちです!!!」

アレックスが指差す。
それは最後にジャスティンが見た方向。
ドジャーが振り向くと、

そこは・・・・
まるで夕焼けだった。

「なんだありゃ」

メッツは首をかしげながらそちらを見ていたが、
察しのいいドジャーはすぐに叫んだ。

「炎?!まさか、GUN’Sの連中ミルレスを燃やしてんのか?!」
「あぁん!?うそだろ!?」
「ここまでやりますか・・・・」
「相手は俺達だけなんだぜ!?何考えてやがんだ!やりすぎだ!!」
「連中・・・・なりふり構わないって感じだな・・・・」
「いえ、恐らく再装填(リロード)メンバーのダニエルという男の独断行動・・・・」
「?」
「なんで分かるんだよ」
「ジャスティンさんの言動からです。GUN’Sにとっても思惑外の事でしょうね。
 それに・・・・ダニエルという男は少々知るところでして・・・・・・」
「カッ!」

アレックスは少し遠くの炎に気を取られた後、
思い出したようにドジャーに駆け寄り、
傷にスーパーヒールをかけ始める。

「ジャスティンの野郎・・・・・」

44部隊とか、
燃えるミルレスとダニエルとか、
そんなものはドジャーにはもうどうでもよさそうだった。

ドジャーは治療を受けながらも歯を食いしばっていた。
そしてアレックスは気付く。
ドジャーは腹を斬られたため、口から吐血していたのかと思ったが、
いや、実際半分そうなのだが、
そのもう半分の血は・・・・唇の血。
ドジャーが強く、強く。
怒りとともに唇をかみ締めていた血だった。

「死んでるわけねぇ・・・・・」

それは信じるから出た言葉というよりも
信じたくないから出た言葉だった。


夕暮れまで時間がある。
が、

ミルレスは戦争の渦で燃え始め、

赤になりきれないオレンジ色に染まり始めていた。
 
 







                 






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