「ロイヤル?」
「あぁ、ミルレスに妹がいるってルエンがいってたな」

あぁ、なるほど。
ルエンさんの妹さんか。
似てる似てる。
声とか顔とか。
だからなんでも屋か。
ロイヤル姉妹は
ルアス、ミルレス、スオミでそれぞれなんでも屋をしてるんだったな。

「当分隠れてるといいわ。あいつら当分ここらを捜索するだろうから」

アレックス達を隠すようにカウンターの上に座っているマリ。
笑顔はやはりルエンを思い出させるものがあった。

「てて・・・・たまんねぇなコラァ」

メッツも商品をガラガラと崩しながら体勢を直す。
狭い狭いなんでも屋の中。
そこにアレックスとドジャーとメッツ。
男が三人入っているとなればほんと狭い。
そこで一回り大きいメッツが動くと窮屈でたまらなかった。

「俺達を追いかけてきたあいつらぁなんなんだ?」

「あいつらもGUN’Sよ」

「でもコックだったり家から出てきたりしてたぜ?」
「ミルレスの町人じゃないんですか?」

「ミルレス町人よ。GUN’Sの本拠地はミルレスなんだから真っ先に狙われたのよ。
 GUN’Sはギルドなんかを倒しては吸収して大きくなったギルドよ
 あの人達はギルドと少し違うけど、《ミルレス商業団体》の人達。
 ま、ともかくつまりはGUN’Sのいいなり。GUN'Sの傘下。まぁ単純にGUN'Sの一員ね」

なるほど。
つまりミルレスのどこもかしこもGUN’Sの手にかかっているつもりでいろと。
ミルレスに安息地はなさげだな・・・・

「GUN’Sはあなた達を倒そうと必死よ。
 六銃士を倒したってウワサも、知る人にとっちゃぁ有名な話になってきてるしね」

「あ、やっぱそうなんだ・・・」
「まぁヴァレンタインの時病院にいたやつらや、《昇竜会》のやつらとか
 どれだけでも目撃者はいるだろうしな」

「でも倒したは倒したでも六銃士を4人も倒したらしいじゃないの!
 凄いじゃない!ルエンちゃんやスシアがベタ褒めするはずだわ
 ねぇねぇなんかもっと武勇伝とかないの?聞きたいんだけどそういう話!」

カウンターの上から体をのり出し、
夢中かつ、強引に聞いてくるマリ。
さすが次女って性格をしている。
とっつきやすいというか・・・・
まぁあんな強気な姉と弱気の妹の間に生まれてくれば
こういう明るい性格の次女になるのだろう

「あとGUN’Sの六銃士も残り二人ね!応援するから頑張ってよ!
 私もミルレスの住人だからむかっぱらなんだからっ!
 えぇ〜っと・・・・残り二人は・・・・あぁそうだそうだ」

聞いてもいないのにマリは一人でどんどん話し出す。

「えぇ〜っと・・・・リヴォルバーNo.1、『一島両断』隻眼の剣士スミス=ウェッソン。
 No.6、『ハローグッバイ』コルト=ジャスティン!どっちも最近は悪名高いわね
 でもあんた達ならチャチャッっとやっつけちゃえそうね!ラクショーラクショー♪」

ジャスティンの名が出たせいか、
ドジャーは舌打ちをした。

「そういえば昨日ミルレス白十字病院で一騒ぎあったらしいけど、
 あれもあんた達の仲間かなんかでしょ?ねぇ?そうなんでしょ?」

知りたがりな性格だなぁ・・・・

「あぁ・・・まぁな」

「やっぱりぃ?あれ、GUN’Sの六銃士の再装填(リロード)メンバーってやつらしいわよ?」

「六銃士の再装填?ジャスティンが言ってたやつだな」
「昨日戦った相手がそんな事言ってたってレイズが言ってたな」

「3人収集されたって話よ?ヴァレンタイン、ルカ、タカヤの替え玉ってことでね。
 ・・・ま、って言ってもそのうち2人は倒しちゃったんでしょ?
 ベラドンナとスズランっていえば結構有名な女2人組の毒使いだったのにさすがね!
 あ、でもあと一人ってのが怖いわよぉ・・・あの悪名高き『チャッカマン』ダニエル!!
 いろんなギルドを点々とした放火魔殺人鬼!かなりイカれてるってウ〜ワ〜サ〜!」

『チャッカマン』ダニエル・・・・・?
ってまさか・・・・

アレックスは昔の記憶をたどる。

「それにね・・・・」

マリはまだまだ話したそうにドンドン言葉を発するが、
マリが話している途中。
ドジャーはカウンターに手をつき、
それを跳び箱の容量にしてなんでも屋から飛び出した。

「カッ!話の途中悪いんだけどよ、今回に限っては無関係者を巻き込みたくねぇんだ。
 ま、他人なんかどうでもいんだけどよ、知り合いの姉妹となりゃぁ話は別だ。
 それにこの辺はむしろ危ねぇしな。身を隠すにもどれだけもつか・・・・」

ドジャーはGUN'Sのメンバーに見つからないか、
辺りを見回した。

「ま、さっさと移動してぇとこだ。・・・・・・てぇ事で、ここらでおいとまさせてもらうぜ」

ドジャーはマリに後姿を見せたまま、
手を振る。

「まぁドジャーが言うならそうするか」

メッツもなんでも屋から飛び出した。
華麗にストッと着地したドジャーと裏腹に、
メッツが地面につくと、重い音がする。

「ちょっとぉ〜!危ないわよ!もうちょっと隠れてればいいのに!
 ルエンちゃんとスシアのお礼なんだから気にしなくていいのよ!?」

「いいんだ。邪魔したな」
「ガハハ!礼は言っとくぜぇ〜」
「おい、アレックス行くぜ?」

勝手に話を進める人達だな・・・
アレックスはため息をついてなんでも屋から飛び出した。
ドジャーとメッツはすでに背後を見せ、
どこかに行こうとしている。

だが、
アレックスはドジャーとメッツを追いかけるでなく、
その場に立ち止まった。

「ちょっとだけ待ってくださいよドジャーさん。メッツさん」
「あん?」
「カッ!アレックス。そんなヒマはねぇよ。この辺は危ねぇっつってんだろ?
 さっきの奴らがまだうろついて探してんだ。《MD》狩りってとこか。
 檻に入れられて標本にされる前にさっさとどこかに身を隠すぞ」
「そう、"この辺は危ない"んです」

言うなり、
おもむろに、
それでいて鋭く。
アレックスは槍を取り出し、
突き出した。
その先端は・・・・・・・・・・・

「え?・・・何?」

マリに向いていた。

ドジャーとメッツも頭に"?"を浮かべていた。

「どうしたんだアレックス?」
「ガハハ!マリにむかついたか?」
「そんなとこです」

「ちょ、ちょっとぉ!槍下ろしてよ!」

マリは両手をあげながら困る。

「下ろせませんね。質問に答えてもらいます」

「何よ。なんでも教えたげるわ!
 ルエンちゃんとスシアの件があるから協力するって言ってるじゃない!」

「ロイヤル一家は最近不仲と聞きましたが?・・・・あ、いえ。それはいいんです
 仲良くなったのならそれでいいですし、他人の家庭にまで口出ししません。
 けどそれ以上に・・・・"なんでも教えてあげる"。そう。"詳しすぎる"んです
 ウワサがどうこうのレベルじゃない。あなたはあまりに詳しすぎるんです」

アレックスの言葉に、
ドジャーとメッツも疑問に思ったのか、
黙ってそれぞれの武器を取り出す。
マリは慌てる。
突然武器を向けられて疑われたら当然だ。

「協力するためにわざわざ調べたのよ!そんな恩を疑で返すなんて・・・・」

「そうですか・・・・じゃぁ最後の質問です」

アレックスはマリに向けていた槍の先端。
それをゆっくり横にズラす。
次にその先端が向けられた先は・・・・

「なんでも屋のソコ。カウンターの横です。僕の視力が悪くなければ・・・・
 そして文字を読み違えてなければ・・・"ミルレス商業団体"のシールが貼ってありますね。
 さらに僕の記憶力が先ほど教えてもらった事を忘れるほど悪くなければそれは・・・・・・・・」

「・・・・・・あぁ分かったわよ。もういいわ」

そこにもう明るいマリはいなかった。
はいはいと面倒くさそうに答えるマリ。

「あなたの思ってる通りよ」

マリは懐から採取用ナイフを取り出し、クルクルと回して手におさめた。

「いや、あなたの思ってる以上って言っておくべきかしら」

アレックスは警戒する。
槍を突き出すのでなく、攻撃の体勢で構える。
ドジャーとメッツもアレックスの横まで歩き、
おもむろに構えた。

「カッ!てめぇも《ミルレス商業団体》の一員。つまりGUN’Sの傘下か」

「思っている以上だって言ってるでしょ?
 一員じゃない。私は《ミルレス商業団体》のオーナー。団長ね」

マリは腰のパウチからなにやら取り出す。
爆竹。
それをポーンポーンと片手でお手玉する

「あなた達には感謝してるわ。昨日エンツォを倒してくれたらしいわね
 "お陰で席が空いた"。今日の朝、直々にジャスティン様から連絡がきたわ」

マリはお手玉をしていた爆竹を握った。
そして採取用ナイフを右手に姿勢を低くして構える。

「再装填(リロード)メンバーが一人。『萬屋(よろずや)』マリ=ロイヤル
 今日の戦いを越えればわたしは晴れて六銃士なの。
 夢のため。金のため。私のため。あんた達には死んでもらうわ」

マリは後ろに飛ぶ。
高いその跳躍力は、一跳びでなんでも屋の上に着地した。

「『萬屋(よろずや)』・・・・・・ですか」
「カッ!"地獄の沙汰も金次第"ってことだな。悪行も含め・・・・ってか?」

「そうよ。金のためならなんでもするわ。あの楽しい我が家を取り戻すためにね
 このミルレスに来てからもお金のためならなんでもしたわ。
 古都ミルレス。・・・ま、いうところの田舎だから商業も皆積極的じゃないのよ
 だからわざわざ"ミルレス商業団体"なんて作ったのにそれもトントよ。
 ・・・だから自分からGUN'Sに入ったの。団体事ね。要は先物買い。投資は大事よ」

「カッ!吸収されたんじゃなくて自分からGUN’Sに取り入ったわけだ。
 ロイヤル家はどうなってんだ?どいつもこいつも金欲に一度は負けるようにできてんのか?」

「あんた達に我が家を語ってほしくないわ!!!・・・・母さんを殺したあんた達に・・・・」

母さん。
マリの母。
つまりルエン、マリ、スシア三姉妹の母。
不思議の国のエリスの事だ。
だがあれは・・・・

「エリスさんは自分で・・・・」
「いいんだアレックス」

ドジャーはアレックスを制する。

「俺達が殺したようなもんだ」

「認めたわね」

なんでも屋の上で
マリは片手の爆竹をジャリっと握る。
そして・・・
マッチで火をつけた。

「オラァ!来るぞ!」
「気ぃつけろメッツ。ルエンと同じ手口ならあの爆竹はオトリ。
 あれで錯乱したり威嚇させといて攻撃してくる」

・・・・と思った。
アレックスも思った。
だがその爆竹はアレックスたちに向けられなかった。
上。
上へむかって飛ばされた。
それは空中でパァンとはじけた。

「・・・・・・・・・?」
「何をやってんだあいつ」
「いけないっ!!!」

アレックスが叫んだ。

「・・・・・何がだよ」
「やられました・・・・・・・・最悪です」
「だから何がだってんだコラァア!!!」
「今のでGUN'S全体に僕らの位置がバレたようなもんです」
「?!」
「げっ!?」

「フフ・・・」

なんでも屋の上でマリは不敵に笑った。
そして間髪入れる間もなく、

「こっちだー!」
「オーナーの爆竹が見えたぞ!!」

先ほどのGUN'Sメンバー達。
いや、それ以上。
近場にいただろうGUN'Sメンバーが
全てこちらに向かってきているのが分かる。
すでに数十人がアレックス達を取り巻きだした。

「やっべ・・・」
「戦争が始まっちまうぜ!?どうすんだ!?やんのか!?」
「まだ早すぎます・・・けど、もう・・・・・」

そう。
ボヤボヤしてる間もなく、ドンドンGUN'メンバーが集まってくる。
その数は甚大。
戦争が始まるとかじゃない。
普通にこのままじゃぁヤバイ。

「逃げ・・・」
「無理でしょうね」
「ゲートで一辺帰って体勢を整えなおすってのはどうだ?」
「カッ!今更退くのか?」
「おんなじ事が繰り返されるだけですね・・・・」

人が集まってくる。
ここ、なんでも屋のある中央広場に、
建物もない開かれた場所なだけに、
人が集まってくるとドンドン敷き詰められていく。
ゲート到着地点にいた200・・・
いやもっと。
隠れていたゴキブリを全て呼び寄せたかのような集まり方。

「やるしかねぇ・・・・」

ドジャーの言葉に、
アレックスとメッツも心を引き締めなおす。
武器を握る。

「行くぞ!」
「オラァアアアア!!!!」
「ちょっと待ってください!」

飛び出そうとするメッツとドジャーを、
アレックスは引き止める。

「んだよ今更!」
「あそこ見てください」

アレックスは指を刺す。
もちろんどこを指差そうが、
四方八方GUN'Sに取り囲まれているわけだが・・・・
一箇所。
なんでも屋の横のあたり。
そこに敷き詰められていたGUN'Sのメンバー達が
突然どきだす。
海が割れるように道を開きだした。

そしてその道の真ん中を、
1人の男、いや2人の男女が歩いていた。

「ご苦労だ」

笑っているその男。
その男にはもちろん見覚えがある。
肩に抱く女。
背中の鎌(ネクロスタッフ)。

知らないわけがない。
知らないわけがないのだ。
唐突で、
段階的には早すぎる登場ではあるが、
間違いなく・・・・

「この・・・・」

気付いたときには
ドジャーが有無を言わず、
弾けたように飛び出していた。


「ジャスティンてめぇええええええええ!!!!!」

突然現れたジャスティンに、ドジャーが突っ込む。
真っ直ぐ。
最速。
ただただ真っ直ぐ。
両手にダガーを握り締め、
そしてジャスティンに向かって飛び込んだ。

「ったく」

ジャスティンが素早く肩の女から手を離し、
背中の鎌を抜く。

次の瞬間。
大きな金属音が鳴り響いた。

押し出されたジャスティンの鎌の裏刃を、
ドジャーの両手のダガーが押し合う形で止まっていた。
鍔迫り合いの形になる。

「それが挨拶かよドジャー。お前はせっかちなんだからな」

「るせぇ!!!!てめぇ!ジャスティン!!!どのツラ下げて出てきた!!!」

「こんな顔さ」

ジャスティンは鎌を押しながら笑顔を送った。

「ざけんなよ!!!!」

ドジャーが鍔迫り合いから攻撃を繰り出そうとした。
だがジャスティンはそれを察知し、
鎌を横に振る。
ドジャーはダガーごと弾かれ、
後ろに跳んだ。

「溜まった男じゃねぇんだからそんなガッツクなよドジャー。せっかくまた会えたんだぜ?」

「カッ!そりゃぁ嬉しいこった!まさかこんな早く出てくるとは思わなかったからな!!!
 これはお祝いだ!くれてやらぁ!ご馳走をな!」

ドジャーは右手のダガーをジャスティンに投げつける。
一本の閃光。
だがジャスティンはそれを簡単に鎌で弾いた。

「ガッツクなって言ってるだろ?」

ジャスティンは余裕の笑みを送り、
まず自分の彼女に謝りを入れた。
咄嗟に突き飛ばしてゴメンみたいな感じだろう。
戦闘中とは思えない余裕。
そしてすぐ横のなんでも屋の上にいるマリに話しかける。

「ご苦労だったなマリ。いい仕事をしてくれた。再装填メンバーに推薦してよかったよ」

「ありがたい言葉です」

「だがもうちょっと役に立ってもらいたい。"アレ"の用意をしてきてくれ
 ミルレスでの地位だけじゃなく、アレがあるから君を推薦したんだからな」

マリは笑って返事をしたあと、
なんでも屋の後ろに飛び降り、どこかへ行ってしまった。

「さて・・・・・・・」

ジャスティンがこちらを振り向く。

「ドジャー、メッツ。それと・・・・・・アレックス君だったな。
 ”Queen B"で言った事をもう一度だけ言う。これが最後になるかもしれない。
 そのためにこんなに早く俺は出てきた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・退いてくれ」

「やだね」
「だな」

いつの間にかメッツもドジャーの横まで歩み寄っていた。

「ドジャー、メッツ。俺達は親友だろ?
 俺はこれから先、お前ら以上の友が出来るとも思わない。失いたくないんだ。
 退いてくれ。もともとお前らに関係ないことだろ?
 今、退いてくれるだけでいいんだ。そうすれば俺が99番街を成り上げる夢も叶える。
 俺達の関係ももとに戻る。全てが丸く収まるんだよ。そうだろ?」

「カッ!悪いけどよ。俺ぁクソッタレが作るクソッタレた世界に住むのはイヤでな
 そんでもってお前を止めなきゃならねぇ。ハッピーエンドはこっちの意見だ」

「俺は止まらない」

「止める。場合によっては・・・・」

ドジャーはダガーを強く、強く握り締める。
決心してきたのだろう。
場合によっては・・・・

殺す形になるかもしれない事も。

「しょうがないな・・・・」

ジャスティンは自分の鎌を自分の首にかけた。
そして、首を掻っ切るマネをした。

「絶交だな」

あまりに幼稚なその言葉は、
ドジャーとメッツの耳に
重く、悲しく響いた。







                 






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