「AH〜!イヤイヤイヤ。きた。アレックス、メッツ。きたぜ時間が」

ドジャー亭。
そこに揃うはアレックスとドジャーとメッツ。

ドジャーは時計の秒針が天辺を通過したのを確認し、
椅子から飛び上がった。
そして腰にダガーのガーターを付けながら話す。

「正午という名の"丑三つ時"だ。パーティの準備はいいかベイビー」
「ガハハ!パーティねぇ。たしかに戦場はパラダイスだな」
「カッ!YES。そうだ。いつもパーティは12時だ。シンデレラとは時計一周違うがな
 まぁ武器がパーティの招待状だ。忘れるなんてヘマはなしだぜ?
 アイテムも十分に持ってけよ。かさばるぐらいが調度いい」
「あとハンカチと保険証もですね」
「カッ!冗談だけうまくなったなアレックス」
「ガハハ!じゃぁ線香と墓も持参してくか?」

それは冗談になってない・・・・

「ま、それは死んでから買えばいい。今は必要なのは生きるのに必要なもんだけだ」

ドジャーをダガーを身につけ終わる。
数を数えていたが、
何個のダガーを身につけているんだろうか。
30?
50?
アクセだらけでジャラジャラした格好だと思っていたが、
改めて見ると人間凶器みたいである。

「あーあっと。OK」

ドジャーは最後に耳にピアスを付け、大きくノビをした。

「よし確認だ。場所はミルレス。相手はGUN'Sだ」
「あぁん?ドジャー。何をいまさら言ってんだ」
「まぁ黙って聞けよメッツ。確認だっつってんだろ?
 パーティの開演には退屈な演説はつきもんだ。いいか」

ドジャーがテーブルにドンっと手をつく。
テーブルの上の灰皿が灰をこぼしながら揺れた。

「GUN'Sの数。こりゃぁ予定外の早さの収集で5000。"5000"だ。
 1・2・3・・・なんて数えてたら日が暮れちまうほどの数だ胸糞悪ぃ」
「出来れば相手にしたくないですよね」
「突破か?」
「そうしたいのもやまやまなんだが・・・・締まらなねぇ事にゴールが分からねぇ。
 GUN'Sは本拠地ごとかくれんぼって寸法だ。突破する"先"がねぇんだよ」
「ミルレスの表にGUN'Sが全部出てくればいいんですけどね
 でもまだ顔も出してきていないGMドラグノフの事ですからそれはないでしょう」
「YES。だから当面の目的は戦争じゃねぇ。"本拠地探し"だ。
 ミルレスについたら無駄な戦闘は極力さけて隠密行動といこう。
 真っ向勝負で"GUN'S5000 対 MD9人"じゃぁオッズは1億倍ってなもんだ」

まぁ考えには考えてるんだなとアレックスは思う。
面倒嫌いだが、
面倒を起こさないための面倒な計画は怠らない・・・・といったところか。
それに仕切りのうまさ。
自分も部隊長だったから分かるが、
やはりドジャーがGMという立場に、MDの誰も文句を言わないのも改めて頷ける。

ドジャーが話しを続ける。

「昨日言った通り、昨日レイズとチェスターが襲撃を受けた。
 相手も受身じゃねぇ。ノリノリってやつだ」
「一番突きたかった"油断"って部分も危ういですね」
「あぁ。胸糞悪い」
「襲撃っつえば・・・・・・・アレもだな」

いつの間にタバコに火を付けていたのか、
メッツは灰をトントンと灰皿に落とした。

「そう・・・・・ミダンダスの件だ。無関係なあいつを最悪の形で巻き込んじまった」
「しょうがない・・・っていうとアレですけど、しょうがないですよ
 まさか敵にジャスティンさんがいるとは思いませんでしたし」
「・・・・・・・」

それでもドジャーは少し顔をしかめていた。
他人の命など・・・といつも言っているが、
後ろめたさがあるのだろう。
そして"ジャスティン"というワードにもひっかかり、
やるせなさがあるに違いない。

「それに・・・・」
「エクスポさんですね」

アレックスが代わりに言うと、
ドジャーは頷いた。

「連絡がとれねぇ。WISに出ないんじゃなくて通信事態ができねぇ。何事もなけりゃいいけどよ」

それ以上は言わなかった。
確実によい変化ではないだろう予想はつくからだ。

「ま、以上だ。今の話から俺が言いたい事は・・・・」

ドジャーはパサりと三つの何かを放り投げた。
紐で結ばれたソレは大きな音をたてることなく、
フローリングの上に落ちた。

「とりあえず今は前に進むしかねぇって事だ」

地面に落ちたのは三つのミルレスゲートだった。

「カボチャの馬車か何かで行くんだと思いましたけど?」
「着けばなんでもいんだよ」
「ガハハ!この結果主義が!」

三人は同時にゲートを拾い、
合図も無しに一斉にスクロールを広げた。
三人は転送魔法の光に包まれていく。
ゲートの光に包まれながらドジャーは言った。

「これから始まるのは世界一のギルドと世界一のクズの戦争だ。
 クソッタレの逆襲。MD(メジャードリーム)だ。
 オブジェ(冠)手に入れてGUN’Sのクソ野郎共は王様気分。
 そんなあいつらに一発ぶち込んでやろうぜ・・・・・・・・・・特大のをだ」

ドジャーの一言を最後に、
三つの光の塊は窓を通り抜け、
天へと飛んでいった。

その空はミルレスへと続いている。

戦場の空へ。











S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<ミルレスと開戦と5000>>

















-ミルレス-



三つの光がミルレスへと落ちてくる。
それはまるで流れ星(シューティングスター)。
三つの星達はそのままミルレスの地面へと衝突した。

「てて・・・ついたか」

ゲート転送。
特価品を使ったせいか、転送が乱暴だった。
転送の衝突で砂煙がたちこめる。

「まぁ無事ついたってとこですかね」
「一人無事じゃぁねぇけどな」

ドジャーが指を刺すのでアレックスはその方向を見た。
そこには、
メッツが頭から地面に突き刺さっていた。

「モガ!がもががが!」
「「・・・・・」」

器用な不時着をしたものだ。
10点万点のウルトラCをあげたい。
アレックスとドジャーはため息をつきつつ、
メッツの足を片方ずつ掴み、
いっせーので引っ張った。
まるでカブでも引っこ抜くように、地面からメッツが生まれた。

「ペッ!ペッ!だぁチクショウ!なんで俺だけこんな着地なんだよ!」
「カカッ!日ごろの行いってやつだろ?」
「ったく。じょーだんじゃ・・・・・」

周りに立ちこめていた砂煙が晴れた。
緑豊かなミルレス。
そこに見えたのは絶景だった。

「じょーだんじゃねぇぜ・・・・・・」

もう一度いうと絶景だった。
晴れ晴れとした空。
雲もまばらで青々としている。
空気がおいしいのが目で分かるほど透き通った空気。
そんな田舎町、古都ミルレス。

人人人。
人だ。
空以外を埋め尽くすような数の人。
右みて左みて前から後ろ。
人人人。
人だらけ。
全てこちらに注目している。
それも、
ドジャーの先ほどの意見でいうと、
パーティの招待状を構えた人間ばかりだ。

つまるところ、
アレックス達はすでに200人以上の武装した人間に取り囲まれていた。
隙間無いほどにギッチギチに。

「きたきたきた。また馬鹿が飛んできたぜ」
「おい、容姿チェックしろよ。3人全員だ」
「トロい顔した騎士と目つきの悪いピアス盗賊、そんでドレッドマッチョマン」
「間違いねぇな」
「六銃士に連絡だ!だれか連絡先知ってるやついねぇか!」

ドジャーは焦ってダガーを腰から両手に取り出す。

「なんなんだこりゃぁ!」
「・・・・すでに"ゲート到着地点は張り込み済み"って事ですね。
 当然といえば当然・・・・・。少し頭を使うべきでした・・・・」

アレックスはため息をつきながら背中から槍を抜いた。
メッツも口に咥えたタバコに火をつけてから両手斧二つを構えた。

「ガハハ!いきなり開演か?」

アレックスとドジャーとメッツはお互い背中をつける。
そして周りの人間およそ200人。
会話の内容からするにGUN’Sの人間。
もちろん戦闘意識は満々だろう。
200人が滲みよってくる。
職業も獲物(武器)も色とりどりの200人。

「お前らその容姿から察するに《MD》のやつらだな!」
「ジャスティン様の命令で張り込んでいたが大当たりだな!」
「ミルレスは崖に囲まれた離島形だ。正面の大橋とゲート地点は疑うべきだろ」
「《MD》ってのは馬鹿ばっかか?」
「さっき来た女二人もだしな!」

女二人?
マリナさんとイスカさんか。
先に来てたんだな。

「ドジャーさん」
「あん?」
「マリナさんとイスカさんが来たみたいな事言ってるけど戦闘の痕跡がありません」
「のぁぁ!?捕まったのか!?」
「カッ!ばっかメッツ。あの二人がなんもせず捕まるか?」
「つまり逃げた」
「俺達と同じ考えだな。無駄な戦闘は避ける。じゃぁ俺達も・・・・・・」

トンズラが吉。

「ごちゃごちゃ話してんじゃねぇ!」
「こっちはこっちで必死なんだ!」

「ヤバ、一斉に来る気だぜ・・・・」
「あ、僕だけテレポートランダムで飛んでいいですか?」
「おまっ!一人だけ逃げる気かコラァ!」
「冗談ですよ。ミルレスのどっかにランダムに飛ばされたら僕だって困ります」
「・・・・・・・・冗談言う時と場合も考えろよ」

突如ドジャーの周りに風が渦巻く。
ドジャーのアクセまみれの服が音を鳴らして揺れた。
ブリズウィク。
そしてトォーントォーンとジャンプして調子を確認した。

「よし、最好調。アレックス!さっさと逃げる用意しやがれ!」
「せっかちだなぁ・・・・」
「のんびり逃げるアホがどこにいんだ!」

やれやれと思いながら、
アレックスは卵を地面に叩きつける。
煙を上げて現れたのは、
愛くるしい顔をしたジャイアントキキ。

「キ!」

アレックスは毛むくじゃらのGキキの体に手を置き、
飛び乗る。

「準備はいい?『G−U(ジッツー)』!!?」
「キ♪」
「OK!突っ切るぞ!」
「ちょちょちょ待てコラァ!俺はどうやって逃げんだよ!」
「あ、メッツさんは僕の後ろに・・・・」

「あいつら逃げる気だぞ!」
「逃がすな!さっきの女二人も逃がしてばっかなんだ!」
「六銃士に怒られるぞ!」

GUN’Sの200人が本格的に迫ってくる。
200という数は3人という数に対すると少なくない。
多いようでやはり多い。
まるで壁が縮んでくるようにも感じる。

「やば・・・・ドジャーさん。僕が道を開きますよ!!」

アレックスはGキキの上で槍を突き出す。

「ハイヤー!!!G-U!!チャージアタック!!!」
「キキィ♪」

槍を突き出したまま、、
アレックスはG-UごとGUN’Sの集へと突っ込む。

「どいたどいた!ってね」

「あぶ!」
「突っ込んでくるぞ!?」

超加速でGキキが丸ごと超特急で突っ込んでくる。
GUN’Sの面々は慌てて散る。
まるで巣穴に棒切れを突っ込まれた蟻のように散らばる。
逃げ遅れた人間は、
愛くるしいGキキにひかれて吹っ飛ぶ。

「突破ですね」

アレックスは止まらず、
そのまま逃げる形で走りきる。

「上出来だアレックス!」

気付くといつの間にかドジャーが併走していた。
Gキキのスピード、それも王国騎士団御用達のG-U。
それに余裕で追いつくすばしっこさには頭が上がらない。

「げ、追いかけてくるぜあいつら」
「あらら・・・・」

Gキキに乗ったアレックス。
それに併走するドジャーが走りながら振り向くと、
そこにはGUN’Sの群れ。
先ほどの200人がわらわらと追いかけてきていた。
人間の足で地響きが奏でられる。
以前ディドの大群に追いかけられた時を思い出す。

「面倒だ!このまま逃げ切るぞ!」
「ですね。・・・・・・・・ってあれ?」

アレックスはふと思い出す。

「メッツさんは?」
「へ・・・・・あぁ!?忘れてきちまった!!」

人間一人分の忘れ物。
いや、置いてきてしまったというよりは、
置き去りにしてしまったと言っていい形。

「やべ・・・とりに戻るか?」
「うーん・・・・メッツさんなら大丈夫でしょう。
 念のためお祈りだけしときましょうか?・・・・・・アーメン」

アレックスはG-Uの上で十字を描いた。

「俺を殺すなコラァアアアアアア!!!!」

真後ろから声が聞こえた。
それはG-Uの後ろ。
G-Uの尻尾に捕まっている筋肉男がいた。

「あ、いた」
「あ、いた・・・じゃねぇぞオラァアアアアアアア!!!」

まぁたしかに「あ、いた」で済む状況じゃなさそうだ。
咄嗟に飛びついたのだろう。
メッツはG-Uの尻尾に捕まっている。
つまり超猛スピードで引きずられているのだ。
砂煙を巻き上げながら引きずられるメッツ。
もの凄い摩擦だ。
どんな大根でも2秒で塵までおろされるだろう。

「いだだだだだだ!ってか摩擦で熱ぃいいいい!!!」
「大丈夫ですかメッツさん?」
「大丈夫かメッツ?」
「大丈夫じゃねぇ感想言ってるだろがコラァアアアアア!!!!!!」
「大丈夫そうですね」
「おう、大丈夫そうだ。メッツ。体が半分くらいまですり落ちちまったら教えてくれ」
「ふざけんなコラァアアアアアアアアア!!!!」

引きずりまくってるメッツを横目に、
アレックスはその背後を確認する。
さすがにドジャーの足と、
G-Uの足。・・・足?
とにかくこのスピードについてこれる追っ手ではなかったようだ。
背後にはもう先ほどの200人の姿は見えない。
ひとまず安心。
そこで提案。

「ドジャーさん。無闇に走り回ってもナンです。
 この先にたしかレストランがありました。あ、ほらありました。
 あそこで体を隠しがてら対策を練りましょう」
「カッ!まぁいいか」

ドジャーとアレックスはレストランの前で急ブレーキをかける。
G-Uが猛スピードから速度0kmまで急減速すると、
その反動で尻尾に捕まっていたメッツが吹っ飛んだ。
それは美しい弧を描いた。

「お、ドレッドヘアーが舞ってるぜ」
「筋肉大砲ですね」

そのままメッツは吹っ飛んでレストランの壁にぶつかった。
メッツがドサりと落ちると、
それを横目に
アレックスとドジャーは何事もなかったかのようにレストランのドアノブを開いた。

「ちょ、ちょ待てよコラァアア!」
「あん?置いてくぞメッツ」
「先に中入ってますよー?」

慌てて怒りながらついてくるメッツをなだめながら、
三人はレストランの中へ入り、
席の一つについた。
古都ミルレスだけあって、なかなか趣(おもむき)のある食亭だ。
昼飯時というのに客もまばらな小さなレストランだった。

ドジャーは何気なくその内装を見渡していたが、
アレックスはさっそくメニューを広げ、
メッツはぶつぶついいながら灰皿を自分の前にひっぱり、タバコをつけた。

「で、どうすんだ」

メッツはタバコをくわえ、ふてくされながら聞く。
そして引きずった箇所と、最後に吹っ飛ばされて壁に衝突した場所をさすった。

「そうだな・・・・。アレックス。ロウマに連絡とれるか?」
「あ、はい。でもまぁこちらから連絡する分には意味ないと思いますよ
 なかなかマイペースな人ですからね。こないだのルケシオンの時と一緒で、
 場所もなんも指定せず、自分達が着いてから突然呼びに来るタイプです」
「カっ!めんどくせぇな」
「・・・・・いいじゃねぇかあんなやつらいなくても。俺らだけでよ」

メッツはタバコの煙を噴出しながらそっぽをむいた。
それは先ほどの件のふてくされと違うのはアレックスにも分かった。

メッツさんは気にしてるんだ。
ロウマさんに負けた事を。
ドジャーさんを助ける力が無かった事を。
そして不安になっている。
自分自身の力を。

「メッツさん。メッツさんは強いですよ。保障します」
「あぁん?なんだコラァ。そんな話してなかったろが」
「頼りにしてますっていいたいんですよ」

アレックスがニコリと笑うと、
メッツはケッと照れくさそうにもう一度そっぽをむいた。
アレックスはその反応にクスリと笑いつつ、
大事な事を思い出した。

「店員さん!注文いいですか?」

アレックスは大きく手をあげて店員を呼ぶ。
店員は「はい。すぐに」と言って近寄ってきた。

「おま、アレックス!さっき家で飯食っただろが!」
「"腹が減っては戦はできぬ"ですよ」
「だからさっき家で食ってばっかだろって言ってんだろ!」

ドジャーさんが何かくだらない事を言ってるが、
関係ない。
食べれるなら食べればいいのだ。
だから僕は食べる。
食欲は誰にも止められない。

「ご注文お伺いします」

「軽いのにしとけよアレックス」
「えー」
「えーじゃねぇ!」
「・・・・んじゃぁ"ミルレス産すっぱいりんごのすりおろしヨーグルト"!」

「サービスで大盛りにいたしましょうか?」

「え?いいんですか!?」

「もちろんです。お客様は神様です」

店員さんは優しく笑った。
なんていい人だ。
この人こそ神様に違いない。
アレックスはそう確信した。

そして店員は笑顔のまま、
懐からおもむろに何か取り出した。
なにやら輝くもの。
食事用の食器?
・・・・・
いや!?

「最後の晩餐になるんですし」

ダガーだ!

「なっ!」

突然斬りかかってきた店員。
一番近かったドジャーへの攻撃だったが、
ドジャーは咄嗟に避けた。

「チッ!おい野郎共!MDのアホ共がお出ましだ!」
「「はいマスター」」

食堂の中から武装したコック(料理人)がぞろぞろと出てきた。

「当店ではお客様を料理にするサービスを行っています」

「この人達もGUN’Sの手の内!?」
「やっべ!」
「逃げるぞ!」

ドジャーが言うなりテーブル横の窓を体当たりでぶち破った。
メッツとアレックスも慌ててその割れた窓から外に飛び出す。

「つつ・・・・」

外に出た後、
すぐさまレストランの中に視界を戻す。
するとさきほどの店員が口に指をあてている。
・・・・それは口笛。
ピィーっと綺麗な音色をその店員が立てると、

突然まわりの建物全てのドアがガチャリと開いた。

もちろん出てきたのは武装集団。

「ちょ、こういうのは聞いてねぇよ!!!!」

ドジャーが先陣切って逃げ出す。

「あ、待ってくださいよ!」
「また置いてく気かコラァアア!!!」

それをアレックスとメッツが追いかける。
全力で走る。
振り向く。
もちろん武装集団が追いかけてくる。
すごい形相だ。
止まるヒマもない。
守護動物を出すヒマもない。

「メッツさんこれ!」

併走するメッツにアレックスは一つの瓶を投げた。
全力で走る事に必死なメッツはそれを横目で受け取る。

「なんだこれ」
「速度ポーションです」
「ガハハ!用意いいな!」
「ドジャーさんにおいてかれちゃいますからね」

アレックスとメッツは同時にグビッと飲むと、
不思議と体が軽くなる。
といってもドジャーほどじゃぁないが、
それでも足は速くなった。

「おい!アレックス!メッツ!遅ぇぞ!」
「だぁあああドジャー!てめぇの足基準で話すんじゃねぇ!」
「ダメですね・・・追いつかれるほどじゃないですけど、撒ききれる感じでもないです」

だがとにかく走る。
走る走る。
振り向く。
もういつの間にか後続は凄い数になってる。
町中が追いかけてきているかのようだ。

「だぁぁああ!もう相手しちまった方が早くねぇか!」
「ダメです!一回戦ったらもうあとは戦い続ける事になるでしょう
 せめて44部隊と合流するまではそれは避けたいです!」

つまりまぁ走るしかないという事だ。
逃げるしかないという事だ。
だがドジャーと違い、
全力疾走をしているアレックスとメッツにはキツいところだ。
特に、足は遅くないが持久力のないメッツはもう死にそうな顔をしている。
戦ってもいないのにHP残り5みたいな顔だ。

はっきりいってもう持たない。
このままじゃぁメッツさんの言ったとおり
戦うしかないのか。

その時。

「こっちよ!飛び込んで!」

突然声がした。
聞いた事があるようで、聞いた事のない事だった。
もうわけがわからなかったが、
とりあえず神の声にすがるように、
その声の方へ三人は飛び込んだ。

「ほげっ!」
「あでっ!」
「ふぎゃっ!」

飛び込んだところはなにやら大きめのロッカーくらいのどこかだった。
せまっくるしく、
アレックス、ドジャー、メッツの三人は、
飛び込んだ格好のまま三段重ねのようにその"どこか"にしき詰まった。

「咄嗟に突っ込んだけど・・・ここどこだ?」

「しっ!」

狭苦しい中で狭苦しい格好のまま、
三人は息を潜める。
目の前に見える空間を見ると、
先ほど追いかけてきていた武装集団が三人を見失ったのか、ウロウロしていた。
そして他の所を探しに言った。

「もう大丈夫よ」

その声の主。
どこから聞こえたのか分からなかったが、
どうやらこの狭苦しい中に一緒にいたらしい。
その声の主。
その女性は、カウンターと思わしき台の上に座って
狭い中に押し込まれた三人の方を見た。
その顔には見覚えがあった。
いや、見覚えがあったというか・・・・

「ここはなんでも屋よ」

なんでも屋?
この狭い空間はなんでも屋の中か。
納得。
落ち着いてみてみるとなにやら商品が敷き詰めてある。

ドジャーが最初に馬鹿狭い店内で体勢を直した。
商品がガタガタと崩れるが知らん顔で。
そしてドジャーはカウンターの上に座る女性に声をかけた。

「助けてもらって礼を言っとくけどよ。おめぇ・・・まさか」

その女性はニコリと笑って返事をした。

「そ、あたしはマリ。マリ=ロイヤル。ルエン(姉)とスシア(妹)がお世話になったらしいわね♪」





                 






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