「・・・・・・・・どこだ・・・・・・・ククっ・・・・・・・ベラドンナ・・・・・・・どこだ・・・・・」

右手を十字を切り終え、
プレイヤを放つだけの状態の右手。
それを前に突き出したまま、
レイズはコツコツと歩く。

「・・・・・・・・・どこだ・・・・・・・どこだ・・・・・」

まるで真っ暗闇の道を手探りで歩いているようにも見えるし、
その右手が探知機にでもなっているような歩きにも見える。
いや、銃を構えたまま獲物を探すハンターのようだ。

「・・・・・・・殺す・・・・・・・・俺に命をすがってきた者を殺した罪・・・・・
 ・・・・・・・そのお前を逆に・・・・・俺がこの手で殺して精算してやる・・・・・ひひ・・・・・・」

命。
軽くない。
それを奪う者。
復讐や仇討ちとは少し違う。
大事な命が奪われたという感情ではない。
感情ではなく、勘定。
清算はしなくてはならない。

「・・・・・・・どこだベラドンナ・・・・・・生きようとした・・・・・価値ある命を殺したお前は・・・・・・
 ・・・・・・・・死ねばいい・・・・・・・殺してやる・・・・・・・・殺ってやる・・・・・・・
 ・・・・・・・・お前に生きる価値なんてない・・・・・・・・命の価値なんてない・・・・・・・・・」

命の清算。
+−ゼロ。
レイズはそれを望んでいる。
仇討ちでなく清算。

レイズが初めて持った・・・・・"命を助けたい他人"
それを消された。
その清算。
つまり・・・・・

とにかく殺す。

「・・・・・・ベラドンナ・・・・・殺す・・・・」

揺れる心だけが、レイズを悪魔にした。
悪魔とは代償を望むものだ。



「ベラドンナちゃんはここにいないよっ!!いるのはスズちゃんだよっ!」

突然飛び出してきた女。
それは女盗賊。
スズラン。
右手にダガーを持ち、
陽気な顔でこちらを見据えている。

「Dr.レイズだよねっ!お縄についちゃって!」

「・・・・・・どけ・・・・・・・・アマ・・・・・・・・」

「アマじゃない!スズちゃんだ!」

"スズちゃん"という響き。
さきほどまでのレイズは、この言葉を聞くとイラついていただろう。
だが、今のレイズにそんな感情はない。
ただ"邪魔"という感情だけ。
そして右手を真っ直ぐスズランに向けた。

「・・・・・・・死ねばいいのに・・・・」

そして放たれた。
プレイヤ。
放たれたといっても何も見えない。
見えない聖なる衝撃。
それが空気を吹っ飛ばすように弾け、
スズランに直撃した。

「きゃっ!」

スズランが吹っ飛ぶ。
そして狭い病院の廊下を転がったと思うと、
すべるように体勢を立て直した。
盗賊さながらの運動神経。

「この遠距離でプレイヤ?そんなの聞いたことないよ!
 え?でもあれ?やっぱりスズちゃんどっかで聞いた事あるなっ!」

スズランは少し上目遣いに考えた後、
腕をポンっと叩いた。

「スズちゃん思い出しちゃったもんねっ!ヴァレンタイン様のプレイヤだっ!
 でもなんで使えるんだろ?そんな才能があの顔色悪い聖職者にあったのかな?」

                   「君とはきっと分かり合えると思ったのに」

「・・・・うっ!・・」

レイズは頭を押さえる。

なんだ今のは。
どこからかの言葉?
脳内に響き渡る呼びかけ?
・・・・いや、違う。
断じて違う。
ただの記憶。
記憶が再生されただけだ。

「・・・・・・・くっ・・・・・・・・・・」

レイズは頭を抑え、
少し苦しむ。

「ほぇ?」

スズランはそんなレイズを見ると、
不思議そうにしたが、
すぐさま

「よくわかんないけど!スズちゃんチャァ〜〜ンス!」

盗賊特有の素早さを生かし
狭い廊下を一気に駆け抜ける。
その速さ。
さすが六銃士候補。
風のように一気にレイズの目の前まで間合いを詰めた。

「そぉ〜れ!」

ダガーで一撃。
一振り、
逃げも避けもしないレイズの肩に一筋切れ目が入れられた。
血がその切れ目から綺麗に飛び出す。

「スズちゃんもういっぱぁーっつ!」

すぐさま連撃。
今度は振り落とすようにダガーを振り、
レイズの胸から腹にかけて、大きくかっさばいた。
今度は大きく血しぶきがあがる。
斜めに大きな傷。

そしてスズランはすぐさまバックステップで距離をとる。

「確保前に瀕死にしちゃえばラクチン!うん!スズちゃんあったまいー♪」

ポーズを決めるスズラン。
頭を抱えたままそれでも動かないレイズ。
いや、動いた。
普通の立ち姿。
血が出すぎている。
が、
もちろんレイズにはこんなもの"ヘ"でもない

「・・・・・クク・・・・ひひ・・・・・・痛いだろ・・・・・・・」

その言葉と共に、
見る見る傷口が治っていく。
血は止まり、
傷口はまるで粘土が修復するようにもとにもどった。

「は、はえ?」

レイズの特化型ブレシングヘルス。
異常なまでの回復能力。
いや、再生能力。
そんな情報を、スズランは知らなかったようだ。

「スズちゃんビックリ・・・・・なにそれ・・・・君、悪魔かなんかなのかな?」

ただただ目の前の状況に驚くスズラン。
頭をひねる。
「?」を浮かべる。
考えてもよく分からないようだ。
だが、
何かを思いついたように手をポンっ!と叩き、言った。

「なるほどっ!よくわかんないけどドラグノフ様が欲しいのはこの能力なんだねっ!
 スズちゃんあったまいー!でもどうしよ・・・・攻撃効かないんじゃぁ・・・・ん〜・・・・・・・あ、そうだ!」

スズランは、懐から何か瓶を取り出す。

「じゃじゃーん!」

それは緑色の液体の入った怪しい瓶。
髑髏が書いてあるのがあからさまに怪しい。
スズランはその瓶の蓋を開け、
瓶を傾ける。
すると、その中の緑色の液体は、
スズランのダガーに降り注いだ。

そしてあっという間にダガーは薄緑びたしになった。

「やりたい攻撃も効かないこんな世の中じゃ・・・・・・ポイズン♪」

スズランは嬉しそうにポイズン付加のダガーを構える。
そして、
またさっそうと走りこんだ。

だがレイズは何も対応しない。
怪しく笑っているだけ。

「そーれドックドクー♪」

突き刺さる。
スズランのダガーはレイズにまっすぐ突き刺さった。
毒付加ダガーはレイズに深々と突き刺さる。
血が垂れ、
緑の液体も垂れる。

そして、レイズの傷口が毒で腐食され始めた。

「いやー♪お医者さんが毒でたぁーいへん!」

スズランは嬉しそうに笑う。
が、
もっと嬉しそうなのは・・・・
レイズだった。

「・・・・・・・ひひ・・・・・・・こんなもんか・・・・・・・」

「え?」

レイズは思いっきり、
左手のツリスタッフを振り切った。
そのスタッフは、
スズランの頭にジャストミートし、
スズランは横に飛ばされる。

「きゃっ!」

狭い病院の廊下。
そこで横に飛ばされるスズラン。
スズランは窓に激突した。
窓は割れる。
が、
間一髪スズランは落ちずにすんだ。

「あ、あぶぅ・・・・スズちゃんピンチだっしゅつぅ〜・・・・うわっ!?」

そんなスズランの目の前には、
レイズの右手が突き出されていた。

「・・・・・・・ひひ・・・・・・・・死ねるなお前・・・・・・・・・」

「あ、ありゃりゃ・・・・スズちゃん大ピーンチ・・・・」

スズランは観念したといった感じで両手をあげる。

「まいったぁ・・・ス、スズちゃんこうさんでぇーす!
 こんな至近距離でヴァレンタイン様級のプレイヤ食らったら大変だもぉーん・・・・」

「・・・・・・・・ククッ・・・ひひ・・・・・・・・大変だよな・・・・・・・・・・」

レイズの怪しい笑いには、
スズランは顔を引きつらせるしかなかった。

「で、でもDr.レイズさぁん・・・レイズさんもスズちゃんのポイズンで大変だよぉ・・・・」

「・・・・・・・・・・?・・・・・・・これか?・・・・・・・」

レイズの腹に深々と刺さったままのダガー。
そして腐食した傷口。

「・・・・・・たいした事じゃぁない・・・・・・・」

レイズは左手のツリスタッフの魚頭。
その魚頭の口でダガーを引っこ抜いて捨てた。
そして傷口。
毒の腐食はすぐさまキュアポイズンと思われる効果で治療され、
傷口も見る見る閉じ始めていた。

「うっそ・・・・無敵じゃん・・・・」

「・・・・・・・・・・・そうだ・・・・・・・・無敵だ・・・・・・・悪魔みたいにな・・・・・・・・・・
 ・・・・そしてお前はその悪魔の手で地獄に落ちる・・・クク・・・安心しろ・・・手加減はしてやる・・・・・・」

スズランは両手をあげたままおびえる。
そして真後ろを少し見る。
そこは割れた窓。
見える景色は・・・・絶景。

「て、手加減されてもスズちゃん落ちちゃうじゃん・・・・ここ3階だよ?
 普通の3階と違って病院の3階って結構高いんだよ!スズちゃん死んじゃうよ!」

「・・・・・・・・・・・・ひひ・・・・・・・・知ってるから言ってる・・・・・・・・・死ねばいいのに・・・・・・・・・」

と、
同時に、
低威力のプレイヤが放たれた。
スズランは小さな悲鳴をあげたと思うと、
あとは無音で・・・・
病院の窓から。
三階の高さから。

落ちていった。

「・・・・・・・・地獄に落とすのも・・・・・悪魔らしいだろう・・・・・・・・」

誰も居なくなった廊下。
たたずむ一人の悪魔(レイズ)

「・・・・・・・クッ!・・・」

突然また右腕が疼いた。
いや、さっきから変な感じだったが、さらに。
そして頭も痛くなった。

一時。正気に戻った。

「・・・・・・・・・・なんだ・・・・・どうしたんだ俺は・・・・・・・・・・・・」

正気に戻ったといっても、記憶は飛んでない。
いや、さっきから意識自体は飛んでない。
というよりも、
先ほどまでの行動も、平常ではないがちゃんと自分の意思で動いていたのだ。
スズランを倒したのも自分で、自分の意思でやったことだ。
ただ、少し感情が違っただけ。

                   「僕と共感できる人だと思ってたのに・・・・・・・」

またヴァレンタインの言葉が頭によぎった。
なんなんだ。
院長は何を俺に言いたいんだ・・・・

いや、違う。
だから・・・・・・これはただの記憶だ。
自分に呼びかける言葉じゃぁない。
自分で勝手に院長の記憶を思い出してるだけだ。

「・・・・・・・いや・・・・・・でもなんでだ・・・・・・なんなんだ今の状況は・・・・・・・・
 ・・・・・・自分が自分ではないような・・・それにこの右腕・・・・ヴァレンタイン院長の力を使える・・・・・・」

そういえば心臓などの臓器を移植された患者が、
臓器提供者の記憶を見ることがあるという。
これはそれ・・・・
まさか・・・・心を乗っ取られ・・・・

          「君はきっといつか僕の考えが分かってくれるだろうと期待してたんだから」

気付いた。
分かった。

「・・・・・・・・違う・・・・院長に乗っ取られるとかそんなじゃない・・・・・・・・・」

そんな空想の理論じゃない。
思考を支配されるとか、
そんな事じゃぁないんだ。

ヴァレンタイン院長は自分に言った。
この俺には分かるはずだと。
ヴァレンタイン院長の考えを共感できるはずだと。

そうだ。
簡単だ。

「・・・・・・・・・俺も・・・・・・ヴァレンタイン院長と・・・・似た人間・・・・・・・
 ・・・・・・・・いや・・・・・・・・・同じ種類の人間だったんだ・・・・・・・」

命を金に換算する簡単な考えを一時捨て、
ヴァレンタイン院長と同じく、
命について考え出したとき、
自分も同じく・・・・・間違った・・・イカれた人間になりえる人間だったんだ。

普通とは逆。
"命について考えれば考えるほど狂った方向に進みえる人間"

それがヴァレンタインとレイズ。

ヴァレンタインにはレイズも同じ人間だという直感が働いた。
それでレイズに対して同属意識が沸いていた。

「・・・・・・・・・それで・・・・・・・右腕と記憶が・・・・・・俺と共感反応を起こしたのか・・・・・・」

簡単にいうと、
レイズもヴァレンタインと同じ方向へ進んだ。
それだけの事。

「・・・・・・・分かってはいた・・・・・きっと俺の心の奥は・・・・悪魔のような闇なんだろうと・・・・・・・・・・
 ・・・・・ベラドンナを殺したいのも・・・・ただ命の清算をしたいからだ・・・・・・・・・
 ・・・・・・院長が・・・・100人のために10人を殺すような・・・・命を勘定する考え・・・・・」

レイズは頭をかかえた。

命について考える。
それは人らしく、
医者らしい。
だが、
それに固執すると・・・・自分はイカれる。
とにかくそういう人間なのだ。
それが分かってしまった。

「・・・・・・・・・・・・だからといって・・・・・・だからといって・・・・・どうすればいい・・・・・・・
 ・・・・・・・・・こんな自分を受け入れればいいのか・・・・・・・どうすればいいんだ・・・・・・・・」

レイズは苦悩した。
自分がそんな風に生まれてしまった事に。

「・・・・俺は・・・・・・・・俺は・・・・・・どうすればいいんですか・・・・・・・院長・・・・・・・・・」



























「俺は・・・・・どこに向かえばいいんですか・・・・師範・・・・・・・・・」

虚ろな目をした剣士は、
黒い剣をブラリと構えてボソりと言った。

その黒い剣には、
目立たないが血のりが付着している。

「クッ・・・・突然何をするのですか!?」

ベラドンナは肩の傷口を押さえる。
突然ヤンキに斬られたのだ。

「わらくしは・・・・えっと・・・『ポイズンガールズ』のベラドンナです。
 楽団名はまだ仮名ですが、素晴らしい癒しの音楽を伝える奏者なのです。
 そう、わたくしはただあなたの心の癒してさしあげようと思っただけですよ!」

「俺に癒しですか・・・・とぉ・・・」

「そう。音楽は耳から伝わり、心身の隅々まで届きます。それは心まで届くという事です」

「意味がわかりませんよ・・・・・・・とぉ・・・・」

「病んでますね。そうでしょう。患者さんなのですからしょうがないです
 わたくしを斬ったのは許します。だから今度はわたくしの第13楽章を聞きなさい」

そう言い、
ベラドンナは黒髪をたくし上げた後、
ハープを持ち上げて手を添える。

「・・聴きたくも・・・・・・ないですよ・・・・・とぉ・・・・・・」

ヒュンッと風きり音のようなものが聞こえたと思うと、
ベラドンナの目の前にヤンキのモノソードが突きつけられていた。
ベラドンナは演奏しようとしていた手をやめた。

「何をするのです」

「・・・・・毒に侵されたところで・・・・・俺は救われるのか・・・・光が見えるのか?」

「最初から毒を受け入れられないのは当然のことです。
 ですが、・・・・・・・・まぁここが病院という事なのでいい話をしてあげましょう。
 薬とはほとんど"毒"でできているのです。薬とは毒の事なのです。言う所、毒も使いようなのです」

「・・・・・・・」

ヤンキは虚ろな目をしたまま、
剣を突きつけたまま、
話を聞いていた。

「医者というものは毒を患者に出しているのですよ。それはその毒(薬)が病に効くから。
 つまり使いようによって毒は癒しを与えてくれるものなのです。
 だから第13楽章を受け入れるべきなのです。"毒は薬"です」

「俺の闇を照らす光になると?・・・・・・そうは思えませんよ・・・とぉ・・・」
 
「怖いのはしょうがありません。病が毒を、闇が危険を怖がるのがしょうがないです。
 だが薬は毒でできている。薬というものは実際危険なものなのです。
 "クスリ"の反対は"リスク"。そういうものなのです。それさえ理解してください
 薬が毒なら毒も薬なのです。さすればあなたは毒によって癒されるはずです」

「分かった」

ヤンキのその言葉に、
ベラドンナは嬉しそうに手を合わせた。

「本当ですか!それはよかった!あなたにも毒の癒しが理解できたのですね!
 ならば今すぐにでも心を毒によって癒して差し上げます!」

「いや・・・分かったのは"話しても無駄"・・・って事ですよ・・・とぉ・・・」

「何を言っているのです・・・・・・・・・て!?」

ベラドンナが驚いた時には・・・・もう遅かった。
黒いモノソード。
それが舞う。
まるでカラスが一羽疾飛したように。
黒く、
血の羽を飛ばして舞う。

ヤンキの剣はベラドンナを大きくかっさばいた。

「あ・・・・この私を斬る捨てるなんて・・・・・なんてことを・・・・・・・・」

ベラドンナは持っていたハープを落とした。
そして自分の血糊でいっぱいの両手と、
致命傷の自分の前の傷を見た。
そして自分の状況を理解し、震えていた。

ヤンキはモノソードを振り切った状態で言う。

「あんたの言葉には・・・"光"がなかった・・・・・・それだけですよ・・・・とぉ」

ベラドンナは両膝をついた。

「わたくしは・・・・わたくしはもっともっと・・・人に伝えなければならないのに・・・・
 音楽を・・・私の思いを・・・耳から体へ・・・体から心へ・・・
 音楽はいかなる垣根も越えるから・・・善も悪も・・・届け・・・・私の・・・・・思い(音楽)・・・・・・・・・」

ベラドンナは虚しく崩れ去った。

「あんたが正しくなかったから斬ったんじゃない・・・・
 俺が正しい事を理解できなくなったから斬った・・・・・
 分からない・・・・・・光(師範)がいないと・・・あの場所(道場)がないと・・・・
 俺はどこに進めばいいか分からない・・・・
 99番街に居た頃のように・・・・死骸の周りを飛び回り・・・・
 ・・・・腐った臓物を突いては闇へ向かう・・・・カラスのような自分に戻ってしまう・・・・」

ヤンキは苦悩した。
いや、苦悩していた。
イスカと戦った時の傷はほぼ完治していた。
だが、精神面で酷く揺れていた。
師範と道場という光を失った事は彼にとって大きすぎる事で、
とにかく行く先を見失っていた。
だからただただ、
暗室にしてもらった集中治療室で苦悩するしか道が残っていなかった。
道を照らす光を失ったから・・・・・・

だがヤンキは、
突如首を上げた。
そして廊下を見る。

「もう一人・・・・・・カラスのように闇を生きる者がいるな」

ヤンキが見据えた先。
その廊下の先。
そこから現れたのは、

悪魔のような医者。

「・・・・・・・クック・・・・ひひ・・・・・・」

「Dr.レイズさんですか・・・とぉ」

「・・・・・・・・・クック・・・・俺の事などどうでもいい・・・・そしてお前の事もな・・・・・・・
 ・・・・・・・俺が興味があるのは・・・・・・・そこに血まみれで転がってる女だ・・・・・・・・」

レイズがツリスタッフで刺した先。
無残に転がったベラドンナ。

「それは先ほど俺が殺した女ですよ・・・・・・・とぉ
 これは・・・・俺の求める光じゃなかった・・・・・・だから死んでもらった・・・・」

「・・・・・・・ほぉ・・・・ひひ・・・・・・・」

レイズは怪しく笑っていた。

「それよりあんた・・・・同じだな。あんたも闇に迷ってるだろ・・・分かる・・・・・
 ・・・・・・・カラスは匂いに敏感でね・・・・それも腐った闇の匂いにね・・・・・・・」

「・・・・・・迷った?・・・・・クック・・・・・あぁ迷ったさ・・・・・・・闇に飲まれてる・・・・・・・・・
 ・・・ひひ・・・・・・だがとりあえず迷うのをやめた・・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・とりあえずベラドンナを殺したいという感情・・・・・・・・
 ・・・・・・善も悪も抜きに・・・今ある感情は本物だ・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・それにとりあえず委ねる事にした・・・・・・・が困ったなぁ・・・・クック・・・・・」

転がるベラドンナを、
レイズはもう一度冷たい目で見た。

「・・・・・・・勝手に他の奴が清算してしまったみたいだ・・・・・・・
 ・・・・・・・・・ひひ・・・・・・こういう時は・・・・・・・どうしたらいいと思う院長?・・・・・・・・」

レイズは自分の右腕に向かって話しかけた。
言葉は返ってくるはずもないが、
それはまるで悪魔のような行為に見えた。

「自分の右腕を院長と呼びますか・・・・とぉ・・・・
 イカれてる・・・・・まるで闇で行く先を見失った俺みたいだな・・・・」

「・・・・・・・・クック・・・・この右腕は院長のものだからしょうがないだろ・・・・」

「・・・!?・・・・・・・・・・・・・・・・・・面白い事を聞きましたよ・・・とぉ・・」

ヤンキはモノソードを横に振って構えた。
レイズはツリスタッフを横に振って構えた。


そこからは会話にならなかった。


「・・・・・・・・・クック・・・ひひ・・・・・俺はどうしても・・・・・・・
 ・・・・・どうしても・・・・ベラドンナを殺したかったんだがな・・・・・・・・・・」

「俺の光を奪った存在・・・・ヴァレンタイン・・・殺してやりたかった・・・・・・」

「・・・・死んで欲しかったんじゃなく・・・やはり"殺したかった"んだな・・・・
 ・・・・・・・・・・・ひひ・・・・・・・やはり・・俺の心は・・・・・悪魔の闇だ・・・・・・・・・・・・・」

「あいつのせいで俺はまた闇に放り出された・・・・・何も見えない・・闇の中・・・・・・
 だから今は・・・師範の仇討ちが・・まるで光を取り戻す行動のように思える・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・だが・・・・・やはり・・・自分で・・・清算しないと・・・・・・晴れないなこの気持ち・・・・・・・」

「光・・・・・やはり師範(光)を消した闇を・・・・斬らなければ・・・俺の行先は見えないのか・・・・・」

「・・・・・・・・・・けど・・・・・・ここにベラドンナを殺した奴がいるな・・・・・・・・・・・」

「・・・・・だが、目の前にヴァレンタインを一部にしている者がいるな・・・」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」


「「 代わりにこいつを殺すか 」」


苦悩する二つ。
行く先を見失った二つ。
闇に生きる二つ。

悪魔と烏(カラス)
同じ黒き羽を背負った二つの生き物。

それらがお互いに獲物を見据えた。








                 






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