アレックスの槍に付加された蒼白い炎。
轟々と燃えるオーラ。

「ア、アレックス。なんだ・・・・・その槍・・・」
「何も珍しいもんじゃないですよドジャーさん。いや、珍しいかな?
 普通は数百個のルナリン他諸々多大なアイテムを消費してやっと完成するもんですけど
 僕はそれをパージフレアを付加してバイパス作成しただけです。
 ディアンさんのライトニングスピアやツィンさんのフレイムスラッシュと同じ原理ですよ
 ってまぁ・・・・・・・さすがにフレイムウェポンを作れるのは聖騎士である僕くらいですけどね!」

言ってのけるアレックス。
自信に満ち溢れたその言葉は、普段のアレックスとは違った印象を受ける。

「謙虚なんて言葉は今の僕にはありませんよ!」

オーラランスを横に振る。
蒼い炎の残像がブゥンと揺らめいた。

「僕は強い。謙虚なんて言葉で強さの限界を決め付ける事はしません。
 己を信じること。自信。それは強さ。・・・・・・・理解しました。
 僕なら・・・ロウマさんにだって届く!僕なら・・・・できる!」

そんなアレックスをドジャーは「ちょっと来い」と腕で掴む。
アレックスをずるずると引きずり、
ドジャーはロウマから離れた所へ行く。

「ちょ、なんですかドジャーさん!」
「アレックス。おめぇやられたエンツォと同じ事を言ってるぜ?
 "自分ならできる自分ならできる"ってなぁ。・・・・・・・ほんとに大丈夫か?」
「自分に言い聞かせる事と自分を信じる事は違います」
「カッ!自信もいいが慢心ってのは危ないぜ?」
「もういいですよドジャーさん!黙っててって言ったじゃないですか!
 早くやりたいんですよ!・・・・・・・自分の力を試してみたい」

アレックスはニコりと笑ってドジャーから離れる。
いや、ニヤっという笑い方。
ドジャーから見れば、それはまるでケンカを楽しんでいるメッツのような、
そんな笑い方。

「いきますよロウマさん!」

アレックスはもう一度、聖なる火を宿したオーランランスを振って言った。

「こいアクセルの倅(せがれ)。喰ってやる」

ロウマは地面に刺した二本の槍を抜く。
ハイランダーランスとドラゴンライダーランス。
まるで真っ直ぐの双竜。
いかつい巨槍。
それを広げると、まるで大きな化け物のようにも見える。

アレックスはこの戦闘自体を祈るように
胸の前で十字を切った後。

「アー・・・メン!!!」

・・・・走り出した。
真っ直ぐ。
ロウマへ。
爆発したようなオレンジ髪の化け物へ。

右手には蒼く揺れるオーラランス。
聖なる炎を抱く槍を右手に掲げ。
走る。

「あぁぁああ!!!!」

意気込む。
ロウマへと・・・・突っ込む。
そして少し遠い距離から跳び、槍を振り上げ・・・・・

「!?」

ロウマが突如避ける。
巨体を身軽に動かす。
思えばロウマの咄嗟な動きは今日これが初めて。
メッツの攻撃にも一歩も動かず全て受け、裁いていたロウマ。
それが突然避けた。
アレックスのオーラランスを避けるために?

違った。

突然。
先ほどロウマが居た場所からパージフレアが吹き上がった。
ロウマはそれに気付いて避けたのだ。

「・・・・ふん」

ロウマは、砂の地面でブレーキをかけて止まる。

「いただきます!!!!」

既にアレックスはそこに詰めていた。
蒼く揺らめくオーラランスを振り落とす。
その槍がロウマを捕らえるかと思った瞬間。
ロウマは自分の大きなランスを振り、アレックスごと弾き飛ばした。

「くっ!」

アレックスは空中で半回転したあと、
片手をついて地面に着地した。

「やっぱ甘くないですね」

「オーラランスに気をひかせておいて・・・・・実はパージフレアで攻撃か
 あれだけ派手にオーラランスをチラつかせていれば大抵の者はかかるだろうな」

「戦略ってのも僕の持ち味でしてね。
 身体能力で負けている相手にも、戦略、知略で勝ってきました
 能力・脳力。全てひっくるめて僕の強さです」

「本当に理解したようだな」

ロウマは二つの巨槍を一度ガキンっ!とぶつけたあと。
左右に広げて構えた。

「もっと見せてみろ。そのお前の強さ。このロウマが受け止めてやる」

「後悔しないでくださいよ!」

アレックスは槍の柄を両手で掴む。
いや、握る。
そして、溜めた。
いや、集中した。
魔力を。
全神経を。

「いきます」

アレックスはオーラランスを振る。
左から右に大きく一度。
次に下から上に大きく一度。
つまり横に一、縦に一。
槍の蒼い炎が"十字"を描き、天に向いた。
聖なる槍が天へとそびえる。

「今度は避けられないと思いますよ!!」

そう言ってアレックスはクルりと槍を持つ両手を逆手に変える。
今度は逆に槍は真下を向く。
と、同時。

「聖十字の名の下に・・・・」

ロウマの足元に魔方陣が現れる。
パージフレアの魔方陣。
だが、
違う。
何が。
規模が。
ロウマの足元に広げられた魔法陣の大きさ。
それは通常のパージの規模とは比較にならない大きさ。

「あぁぁぁぁ!!!!直径10mパージフレア!!!!!!・・・・・・・・・・アーメン!!!!」

アレックスが地面に槍を突き刺す。
と同時に。

吹き上がる。

ロウマの足元の魔方陣から聖なる蒼い炎。
まるで焼き尽くすかのような規模。
直径10mの魔方陣から噴出すパージフレア。
小さな家をまるまる一件吹っ飛ばすんじゃないかという勢い。

遠くから見ていたドジャーや44部隊の他のメンバーも。
勢いと眩しさに手でさえぎった。

「はぁ・・・はぁ・・・・」

吹き止んだ特大規模のパージフレア。
消える魔法陣。

だがそこには・・・・
ロウマの影形さえなかった。

「こっちだ」

アレックスは咄嗟に上を見る。
宙。
ロウマの声。
見上げた空。

そこにはロウマの影。
ルケシオンの眩しい太陽の日差し。
その太陽に重なる一つの大きな影。

何故あの巨体があそこまで飛べるのか。

そう思うより早く。
ロウマが落ちてくる。

「喰ってやる」

言うと同時に。
ロウマの二本の槍。
それが砂の地面に突き刺さった。
アレックスの目の前。
そこに突き刺さる二本の巨槍。

ハボックショック。

・・・・・・・と言っていいのか分からない。
ロウマの二本槍を中心に、
通常のハボックショックをはるかに超えた規模の衝撃。
アレックスの特大パージを超える衝撃。
地面の砂が爆発したかのようだ。
いや、大爆発といったほいがいい。
地面の砂ではなく、地面ごとといっていいほどの。

「うわぁぁぁああ!!!!」

アレックスは咄嗟に身を守ったが、
この超級の範囲攻撃。
避けるにも防ぐにも間に合わない。
吹き飛ばされる。
地面で弾けるハボックショックの衝撃。
それに吹き飛ばされ、

斜め上へ飛ばされた。

槍も吹っ飛んだ。

空中。
吹き飛ばされて滞空する。

時間が少しゆっくりに見えた。

僕は・・・・・・
僕は負けたのか・・・・

「・・・・・・・・いや!!!」

アレックスは空中で体に活を入れる。
そして思う。
諦めなければ、それは負けじゃない。
自分で負けというラインを引いてどうする。

負けと考えるヒマがあったら・・・・

「よくやった」

「!?」

吹っ飛ばされた空中。
その目線の先。
そこにはロウマがいた。

「お前の強さ見せてもらった」

ロウマも跳んできたのだ。
アレックスを追って上へ跳んだ。
いや、
自分のハボックショックの衝撃に身を任せて上へ飛んだのだ。
二本の槍は地面に突き刺したまま、
宙へと。

「合格だ」

そう言ってロウマは宙でアレックスを掴む。
両手で。
その何もかもを掴めるような大きな両手でアレックスを掴む。
そして

「ゆっくり休め」

宙から投げ落とした。
アレックスを地面に向けて。
斜めに滑降するアレックス。

アレックスはそのまま砂の地面に斜めに叩きつけられた。
地面を削るように、
すべるように、
投げ落とされたアレックスは砂煙があげながら、
その勢いで地面を滑走させられた。
そしてヤシの木にぶつかって止まり、
ヤシの木が折れたの同時に、

意識を失ったアレックスの姿があらわになった。

ドスンとロウマが着地する。

「いい戦いを喰わせてもらった」

そう言ってロウマは顔あげた。

善戦なりに・・・・・・・・・
ふたを開けてみればアレックスの完敗だった。

だが、
ドジャーの評価は逆だった。

「アレックスがここまでやるとはな・・・・」

心底から思った。
メッツの強さを知っていたからこそ、
そのメッツ以上の戦いをしたアレックスの凄さ。
ロウマの強さを短期間で知ったからこそ、
そのロウマと善戦したアレックスの強さ。

「これが己を磨いてきた者の強さだ」

ロウマが言った。
突然だったので分からなかったが、
ドジャーに対して言ったのだろう。
当然だ。
もうドジャーしか残ってないのだから。

「なんで俺にそんな事言いやがんだ?」

「決まっている。お前がそれとは違う人間だからだ
 何故なら・・・・・お前はこの人生・・・・"過程"をおろそかにしてきた者だろう
 己と向き合い、己を磨いてこなかった者だろう」

「さぁてな。俺はこう見えて結構頑張り屋かもしれねぇぜ?」

「偽るな。目を見れば分かる」

「あ・・・・そ。んじゃ白状するよ。正解だ。ピンポンパンポン大正解。
 俺ぁ努力ってもんが嫌いでね。それ以上にその"過程"ってもんの良さは分からねぇな」

ドジャーは指を小さくピッと刺す。
ロウマに向けて。
そして言う。

「世の中は結果だ。勝てばいい」

それに対し、
ロウマが微笑したように見えた。
いや、微笑と言っても・・・・失笑。

「なるほど。たしかにお前はこの人生で勝ってきた者なのだろうな」

「あぁ。だから俺は今立ってんだ」

「だが、ただ・・・・ただ勝ってきただけ。結果を勝ち取ってきただけだ。
 たしかに勝利というものは重要だ。それから得られるものは大きい。
 だが、勝利などというもの。そんなものは弱き者でも手に入れられる」

「んだと?」

「いいか、盗賊。・・・・いやドジャーと言ったか。聞け。例えばお前の限界を10とする。
 時に勝利というものはその中の8の力・・・・いや、4や5でも勝ち取れるものだろう。
 己に勝たなくとも、ただ相手に勝てばいいだけの話なのだからな。
 ・・・だが。己に勝つという事はいつの時も10を越えねばならん
 故にいつも己と向き合い、己の10を超えてきたものは・・・・・・・・・・強くなる」

「なるほどなるほど。つまりてめぇはこう言いてぇのか
 ドジャー君ドジャー君。もっと努力しなさい。だから君はダメなんだ。
 ・・・・・・・・カッ!なめんじゃねぇよ。てめぇは学校の先公か?」

「己を向き合ってこなかった者の答えだな」

「あん?違うね。お前さっきアレックスに言ってたよな。己を信じろとかなんとか。
 そりゃぁ俺。もう出来てるぜ?なんたって・・・・・・・俺ぁ自分が大好きだ♪」

ドジャーは片目をつむり、
ニヤっ笑って答える。

それに対し、
ロウマは・・・・・・呆れたといった目つきだった。
表情は変わらないが、
今にもため息を吐き出しそうだ。

「帰るか」

突然ロウマが言い出した。
ロウマは地面の槍を抜き、
後ろを向いた。
背後のマントの"矛盾"文字が揺れた。

「な?!帰るだと!ちょ、待てよ!協力の件はどうなったんだ?
 アレックスに対して言っただろ!「合格」ってよぉ!」

「あぁ言った。協力しよう。このロウマと44部隊は明日GUN’Sを攻めよう。
 ただし策に乗るのはお前らではなく、アクセルの倅(せがれ)に対しての約束と思え」

「・・・・?」

「アクセルの倅(せがれ)は己の強さを持った。このロウマはそういう者が好きだ。
 己を信じれる者は強き者。このロウマの興味の全てだ。
 だから協力してやる。アクセルの倅(せがれ)に感謝するんだな」

そう言ってロウマは歩き始めた。
ドジャーに背を向け、
自分のハイランダーの方へ。

「待てよ!」

ドジャーは叫んだ。

その声にロウマは足を止めた。

「なんだ?」

「言ったよな。俺ぁなにより結果だってよ」

「それがどうした」

「結果だ。過程じゃねぇ。俺ぁすべての中で結果を優先するぜ。
 つまるところ今、この時。この結果。見てみろよ」

ドジャーは両手を広げて言う。

「・・・・・・俺の大事な二人の仲間がノびてる。アレックスとメッツがよぉ!!!
 理由(過程)なんてどうでもいい!俺の身内に何してくれてんだこの野郎!!」

ロウマが振り向いた。

「どうして欲しいのだ」

「決まってんだろ」

ドジャーは腰元からダガーを二本取り出す。
両手に一本づつ。

「俺はこのムカっぱらを晴らしてぇ。てめぇを逆に見返してやりてぇ!」

ダガーを両手でクルクルと回転させ、
ピッと両親指で止めた。

「俺と戦え」

ドジャーの目は真剣だった。
だが、
ロウマの答えは・・・・・

「無理だな」

ロウマはまた眉を動かさずに話を続ける。

「このロウマは今のところお前に余り興味がない。
 このロウマ。己を見出そうとする者の相手はしたいと思うが、
 残念だがお前と戦う気は起こらない」

「んだと!?」

「考えを改める事があれば戦ってやる。過程を甘んじる者に強さはない。
 己と向き合う事。それは結果よりも偉大であるという事が分かればな。
 過程で己に自信をつけなければ、己を真に信じる事などできん」

「カッ!」

ドジャーはツバを吐き捨てた。
ツバは砂の地面に溶けた。

「俺ぁ考えを改めるなんてことはしねぇ。
 いいか。もう一度言ってやる。世の中は結果が全てだ。
 終わり良ければ全て良し。ごもっともな言葉だぜ」

「愚かだな」

「愚かだと?違うね。俺は結果が欲しいんだ。いつの時もな
 ・・・・・・・・もし・・・もしだ。結果的に・・・・俺の仲間が死んじまったとする。
 俺はそれを「でも俺ってよく頑張ったじゃん?」とか言って納得しろってか?
 カッ!虫唾が走ってヘドが出るぜ。そうなるようなら俺は死んでも仲間を助ける
 ・・・・・・・・・・っとなんか話がそれてきた気がするな・・・・何が言いたいんだっけか・・・」

ドジャーが無愛想な顔で自分の髪をかきあげた。
それに呼応するようにピアスが揺れた。

「あーもういい!わけわからんくなってきた!理屈とかどーでもいいんだよ!
 難しい話は知るかってんだ!よーするに俺はムカついてんだ!
 仲間をやられてよぉ!仲間を侮辱されてよぉ!
 俺の意見はいつもこれだ。身内に手ぇ出す奴だけは許さねぇ」

ドジャーが真っ直ぐ右腕を突き出し、
右手に持つダガーをまっすぐ突きつけた。
刃先はまっすぐ先のロウマを捕らえていた。
そして言った。

「俺の仲間に手ぇ出した事。メッツを弱者と言った事。
 ワビ入れさせてやるぜ最強さんよぉ」

ドジャーがダガーを突きつけたままニヤっと笑った。

ロウマはやはり表情を変えない。
だが、少しドジャーに対する考えが変わったようだ。

「曲りなりに己の信条を持っている・・・・・・か。いや信条と呼べる物か分からんが、
 お前のその真剣さ。そして仲間思いの思想には敬意さえ感じる。
 ワビを入れるつまりはまだないが、一つだけ訂正する」

ロウマの視線がドジャーを見つめる。

「お前は弱くないな。才能だけに溺れた愚か者だと思っていた。
 仲間のために自らの身を投げるその覚悟。
 "己の身"は捨てても"己の考え"を捨てず、ソレのために行動する。
 少々気に入った。その確固たる思想はお前を強くするだろう」

「俺はどうでもいいからワビろ!
 じゃなきゃ無理矢理にでもワビさせてやるって言ってるんだ!
 戦えっつってんだよ!!!俺とよぉ」

「チャンスをやろう」

「あん?」

「・・・・・・・おいグレイ。お前が相手してやれ」

ロウマは自分の部隊。
44部隊の中の一人に対して言ったようだった。

「?・・・いいんですかいマイキャプテン(隊長)」
「あぁ」
「ハッハー!そりゃ糞あがっちまう話だ!」

そういいながら、44部隊の中から一人の男が出てきた。
その男は修道士の身なりだった。
ポケットに両手を突っ込んだまま。
がらの悪そうな男だ。

「ドジャーとやら。この男。グレイと戦え。もしお前がこの戦いを超えたならば、
 その時。このロウマはワビてやろう」

「代理で気が済むと思ってんのか?」

「このロウマに謝罪させたいのなら、それを納得させねばならん。
 それには方法は一つ。"強さ"を示せ」

「また審査か」

「そうだ。その己の考えの貫きが生み出す強さをこのロウマに示せ。
 そのためにこのグレイはうってつけだ。お前と似た境遇で育った者だ。
 そしてグレイはその境遇の中で強さを手に入れた者だ。これを超えてみろ。
 それに・・・・・・・・・・・・少しばかりお前とグレイは因縁があるようだしな」
「因縁だとマイキャプテン(隊長)?じゃぁこのクソ野郎が?」
「あぁ」

ロウマの話が終わると、
グレイと呼ばれた男はニヤニヤしながらドジャーに近づいてきた。
因縁。
何も思いつかないが、
そういわれると・・・・どこかで見た気のする顔だ。

「グレイっての。てめぇフルネームなんだ?」

「フルネーム?んなもんねぇよ糞タコ野郎!俺はグレイ。ただのグレイだ。
 ま、だが便器の糞みたいにテメェの顔にヘバりついてるテメェの耳と脳みそ。
 それらでも分かるような名前で名乗ってやってもいい」

両手をポケットに突っ込んだまま、
グレイという男はニヤけながら言った。

「お前に分かりやすい名に言い換えるとすると・・・・・・・俺はグレイ=ソックス
 てめぇが殺したエド=ソックスとワイト=ソックスの腹違いの兄ってやつだな。
 チャチな因縁だ。腐った魚の恋愛話みてぇな痴話だなぁ!えぇおい?」









                 






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