ある小さな町
     廃れた街。

     ルアス99番街

     そこに二人の小さな少年がいた。


     「今日はあっち行こうぜドジャー!」
     「おーーう!」

     少年達の名前は
     ドジャーとメッツといった。

     「へへ、ドロダンゴ爆弾完成!」
     「ティル姉ちゃんビックリするな!」


     ある日

    「お前らガキだなぁ」


     一人の少年が二人に話しかけた。


     「なんだとぉ?!」
     「ま、たしかにガキだけどね!」
     「認めんなよメッツ!・・・ってかお前誰だよ?」


      少年の名は


     「俺?俺ジャスティン」


      その日から

      少年達は二人組でなく・・・・・・

      


      三人組になった。







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「どういう事だよ!」
「答えろよジャスティン!」

「どうもこうもこういう事さ」

両手を広げて言うジャスティン。
まるで大空を掲げるように。

「世界最強ギルド《GUN'S Revolver》の六銃士が一人。
 No.6。コルト=ジャスティン。説明しただろ?そのまんまさ」

「このっ・・・・」

ドジャーが飛びかかろうとした、
が、後頭部にはエンツォのライフルが冷たく触れる。
だがドジャーはむしろ頭のひとつくらいくれてやろうかと思うくらいの感情だった。


「・・・・・・・・・・・・え?誰ですか?」

アレックスだけが状況を分かっていない。
置いてけぼりの状態。

ドジャーは形相が怒りに染まっている。
メッツは理解が追いついていない。
他のメンバーもあっけにとられている。
とても聞ける状況じゃない。
だが、レイズがボソリとアレックスに教えてくれた。

「・・・・・・・・・・・・元・・・ギルメンだ・・・・・・・・」
「え?」

その言葉をスミスとエンツォが聞いていたようで、
笑い始めた。

「ハハハッ!!そうなのか新人!お前が元《MD》だなんて初耳だぜ!」
「なんやなんやジャスティンはん。それならそう教えてくれればえぇもんを」
「だからこの間の会議でも《MD》について詳しかったわけだな」

「そういう事だ」

ジャスティンはニヤッと笑顔で返事する。

「ジャスティンてめぇ・・・・」

メッツは腕を震わせ、
声も震わせ、
そして、

「てめぇコラァッァアア!!!!」

突然の咆哮。
と同時に振り切られる小麦色の豪腕。
それはジャスティンの頬を射止め、
ジャスティンは店の端まで吹っ飛んだ。
ジャスティンは店に壁にぶつかり、
ずるりと倒れる。

「ちょ、何してんねやゴリラ!ギルマスが人質になっとんの忘れてへんか!?」

「い・・・・・いいんだエンツォ・・・・・・」

口から血を垂らし、
ジャスティンは立ち上がる。
右手で口の血を拭う。

「てめ!ジャスティン!説明しやがれコラァ!馬鹿な俺でも分かるようによぉ!!!」

メッツは怒っていた。
ケンカ好きだが、めったに本気でキレる事のないメッツ。
まるでドジャーの分も俺がといった怒り。

「答えろジャスティン!!!」
「そ、そうジャン!ジャスティン!なんでだよ!?」
「何故そっち側におるのだ」
「・・・・・・・・敵・・・・・・なのか・・・・・・」
「理由を言ってよ!」

ジャスティンが口の中から血のツバをプッと吐き出し、
もう一度口をぬぐってから答える。

「何故?そっち側?敵?何言ってるんだお前ら。理由もクソもない。聞きたいのはむしろ俺の方なんだ。
 俺は一年前からGUN'Sのオフィサーなんだよ。そしたら今回お前らが勝手に敵になってきたんだ
 お前らの前に俺が立ちふさがってるんじゃない。お前らが俺の前に立ちふさがってきたんだ
 そんな質問検討違いだぜ?だが一つ確実な事を答えると・・・・・・・・・・・・・俺はお前らの敵だ」

「そんな〜〜〜・・・・・・・」

ロッキーがピョコピョコと歩く。
小さな足を必死に動かし、
そしてジャスティンの傍へ、
いや、ジャスティンの足にしがみつく。

「ジャスティン敵なの〜〜〜?なんで〜〜〜?なんで〜〜〜〜!!!!」

「ゴメンなロッキー・・・・・・」

そう言い、
ジャスティンは優しい顔でロッキーを振りほどいた。
ロッキーはショボンとうつむく。

ジャスティンは後ろを向く。
長い空色の長髪を向け、そして話す。
 
「俺だって・・・・・・・お前らとは戦いたくないんだぜ?
 なぁ皆・・・・・・大人しく降伏してこちらの出す条件に従ってくれ」

「ジャスティン。あんた、なんでGUN'Sなんかに・・・・・・・」

「俺には夢があるんだ。皆には何度も言ったよな?本当に何度も・・・・・・・・・
 俺の夢は生まれ育ったルアス99番街を世間に認めさせる事だ。
 もしGUN'Sが世界を統一したら、六銃士の権限でそれを実現できる。
 99番街の発展開発。差別決壊。ドラグノフ様はそれを認めてくれた」

「ドラグノフ・・・・・・・・"様"だと!!!?」

ドジャーがキレかけた。
が、ドジャーの後ろに構えているエンツォが、
銃でそれを冷たく止める。
アレックスもドジャー止める身構えだけしていた。
ドジャーがキレて動いたら最悪な状況になりかねない。


「・・・・・・心も・・・・・・・GUN'sに売ったか・・・・・・・・・・」

「売ってないさレイズ。俺はたった一つの志だけを信じて動いてる
 GUN'Sなら俺の夢が・・・悲願が叶う。それだけだ。
 なぁ皆。降伏してくれ。俺は誰よりも99番街が好きだ。そしてお前らの事も・・・・」

「てめっ」

ドジャーが動き出すのが分かった。
もう我を忘れてジャスティンに飛び掛るのが。
もうエンツォのライフルの存在も忘れ、いやどうでもよくなっている。
もう爆発するだけの状態。

・・・・いけない。

「!ジャスティン!!!ふざけんなよテメェ!!!!」

「はーーーい!!」

話を割るような一つの声。
シリアスな話をかっ裂くような声で返事をしたのは
・・・・・・・・・アレックスだった。
右手を大きく挙げて笑顔で返事。

「はいはーい。降参しまーす。言う事聞きまーす。怪我したくないでーす」
「て、てめアレックス!ふざけてんじゃねぇぞ!」
「・・・・・ドジャーさん。いいからここは降参しとくべきです」
「てめ・・・」
「いいから」

アレックスは無理矢理ドジャーを鎮める。

「ハハハ!話の分かる奴もおるやんけ!」
「フッ、こういう情けない奴がいると交渉ってのは楽だな」

相手の挑発的な言動にもアレックスはニコリと返した。
ドジャーがアレックスを睨む。

「どういうこったアレックス」
「ドジャーさん。気持ちは分かりますが冷静になってください。
「アレックス。そりゃぁ無理な相談だ。落ち着けってもそうもなれねぇ。なれねぇんだ
 今俺の頭ん中はカンカン照りだ。まるで脳みそにビールでもぶっかけたようによぉ!」
「それでも落ち着いてください。今我を忘れて暴れたら最悪の状況になります。
 それに今はどう考えても"詰み"です。おとなしくしましょう・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・カッ!」

ドジャーは唾を吐き捨てた。
まだイラついているようだが、
アレックスのお陰で少し落ち着いたようだ。

「・・・・・・・・フッ」

ジャスティンは薄っすら笑い、
ドジャーに目を向ける。

「ドジャー。いい仲間を入れたな」

ジャスティンの薄っすらな笑いは・・・・・・微笑みだった。

「余計な世話だぜジャスティン」

MDのメンバーは元気が上がらなかった。
まぁ状況が状況。
しょうがない事である。

だが一方、六銃士達は別。

「しゃぁ!やっと話まとまりおったな!」
「《MD》は降伏。それでいいんだな?」

六銃士の問い、
それに誰も返事をしなかった。
《MD》のある者は顔をそらし、
ある者は唾を吐き捨てた。
無言。
それは沈黙という名の了承だった。

「じゃぁこちらの要望を言わせてもらう」

スミスが少し前に出て、
そして話し出した。

「オブジェを渡せ・・・・・・・と言ってもすぐ出せるわけじゃないだろう。 
 どこかに隠しているんだろ?そしてそうそう見つからない所にオブジェは隠してある。
 なら居場所を吐け・・・・・・・・と言いたいところだが、嘘を言われてはどうしようもない。
 という事でドラグノフ様が出した結論は・・・・・・・・」

スミスは剣を突き出した。

「お前らの誰か。捕虜として身柄を拘束させてもらう。人質という奴だ。
 一週間後。また連絡を入れる。その時オブジェとその人質を交換だ」

「カッ!俺らがみすみすオブジェを渡しに行くと思ってるのか?」

「思ってるさ」

ジャスティンが言う。

「この作戦は俺がドラグノフ様に提案したものだ。
 俺は誰よりもお前らを知ってる。そして誰よりもお前らを信用している。
 お前らは"世界最大の宝ごとき"で仲間を捨てるような奴らじゃない」

「・・・・・チィ・・・・そりゃナイスな作戦だな」
「仲間思いな意見を提出してくれたものね。・・・・・"元"って言った方がいいかもしれないけど」
「クソォ!!」

メッツが椅子を蹴飛ばす。
スミスとエンツォはニヤニヤと笑っていた。

「さぁさぁ、それで誰が捕虜になるんだ?」
「このままこのピアスのギルマスを銃突きつけたまま持ってけばええんか?」

誰からか歯軋りの音が聞こえる。
"いいのか"と聞かれて"いい"わけがない。
だが・・・・どうしようもない。

ドジャーがハァとため息をつく。

「しゃぁねぇ。俺が・・・・・」
「僕が捕虜になります」

アレックスが言う。

「何言ってるのよアレックス君!」
「そうだよ〜〜〜!!アレックスはまだ入ってばっかりじゃん〜〜〜!!」
「いいんです」

アレックスは前に出る。
そして歩く。

アレックスの思惑はこうだった。
自分が作ってしまった問題。
ならその責任は自分がとるべき。
それに新人の自分ならば、
仲間的に捕虜としての価値も低い。
助けてもらえないならそれはそれでいい。
自分がなるべきなのだ。

アレックスは歩き、
そして両腕を差し出した。

が、

「アレックス君」

アレックスの肩に一つの手が置かれた。
優しい手。

その手はエクスポのものだった。

「捕虜には・・・・・・ボクがなるよ」

エクスポは微笑しながら言った。

「エクスポさん・・・・・・でも僕・・・」
「いいから」

エクスポはアレックスを突き飛ばす。
アレックスはバランスを崩して地面に転がった。
エクスポは軽く「すまないね」と言って前に出る。
そしてエクスポはジャスティンの前に立った。

「エクスポ・・・・・・・・いいのか?」

「あぁジャスティン。ボクが投降する」

「そうか・・・・・・」
「ええ心構えや!」

エンツォはいつの間にか、エクスポの後ろに回りこんでいた。
ライフルがエクスポの後頭部に突きつけられる。
スミスが叫ぶ。

「おい、外のメンバー!数人来てこの盗賊に手錠とスパイダーウェブをかけろ」

呼ばれて、店の外からGUN'Sの本隊の数人が店に入ってくる。
そしてエクスポの両腕に手錠をかけ、
その上からスパイダーウェブでグルグルに固めた。
目の前でエクスポ(仲間)がそんな事をされているのに、
見ているしかなかった。
だが、エクスポはこちらを向いて笑顔で言った。

「じゃぁね皆。見捨てないでくれよ?再会は美しいからね」

「エクスポ・・・・」
「お前・・・・・・」

エクスポは微笑しながら背を向け、
GUN'Sの人間に連れられながら店の外へと歩を進める。
後ろからエンツォのライフルで突つかれている。


「エクスポさん!」

アレックスが叫ぶ。
エクスポは歩を止める。

「あんなに反対していたエクスポさんがなんで・・・・・・・」

エクスポは黙った。
唯一最後までGUN'Sとの対立に反対していたエクスポ。
問題を持ち込んだアレックスを責めさえしていた。
だが、そのアレックスに代わり、自ら自己犠牲。

「アレックス君」

エクスポはゆっくり話す。

「君の意見には今も反対だ。全てにおいてね。美しくもない。・・・・・・・・・けど・・・
 ・・・けどひとつだけ・・・・・・共感できた事・・・・・母親の遺言の話だ」

エクスポはエンツォに「はよ歩け」とライフルで突つかれる。
無理矢理歩まされるエクスポ。
店のドアを出て行く寸前、
最後に一言言った。

「母の遺言を叶えたいのは・・・・・・・・・・・ボクも同じでね」

そうしてエクスポは店の外に消えた。
捕虜として。
敵の真ん中へと消えていった。

「・・・・・・・・・」

店の中には、
エクスポを覗いた8人の《MD》のメンバーと、
ジャスティンだけが残った。
ドジャーが眉間にしわを寄せて言う。

「ジャスティン・・・・・・・俺はテメェを・・・」

「許してもらおうなんて思ってない」

ジャスティンはハッキリと言った。
そして続ける。

「そして俺は自分が間違っているとも思わない。
 あとはお前らがオブジェを持ってきてくれるだけで全てはうまく行く。
 エクスポは釈放。《MD》の中に犠牲もなく、俺の悲願も叶うんだ」

「叶うと思ってんのか?」

「叶えるさ」

ジャスティンは優しく笑った。
そしてジャスティンは店から出て行こうとする。

「待てジャスティン」

ドジャーが言葉を投げかけると、
ジャスティンは背を向けたまま足を止めた。

「なんで話してくれなかったんだクソッタレ。
 黙ってギルド出て行って・・・・何年もなんの連絡もくれずによぉ」

「・・・・・・・・・・。まぁ簡単な事だ。俺が《MD》を作ろうなんて言い出したけどな、
 99番街を認めさせるってのは酷く俺個人の思想であり、俺個人の夢だ。
 だからお前らに迷惑かけずに、俺一人でそれを叶えようとした結果だ。
 今、俺がGUN'Sにいるのも、オブジェを欲しているのもな」

「ざけんなよっ!!!!」

ドジャーの腹の底からの声。
怒りに満ちた声。

アレックスは、ジャスティンと初めて会うわけで、
彼のその夢への思いの強さが分かるわけでもない。
だが、
アレックスにはドジャーが怒る意味の方は分かる。
前に自分に対しても同じように怒ったからだ。
《ハンドレッズ》と戦った後、
迷惑がかかるから《MD》から離れると言った時だ。


ドジャーさんは・・・・
何にしろ、仲間が何かを一人で抱え込む事に酷くイラつくんだ。
というか黙っていられない。
そういう性格なんだ。



「さっきも言ったが・・・許してもらおうとは思ってない」

ジャスティンがそう言った。
アレックスが問いた。

「許す許さないじゃないです。これでイイと思ってるんですか?」

「・・・・アレックス君。君は面白いね。とてもイイ。君がいればMDも安心だ。
 どうかドジャーや他の皆をセーヴ・サポートしていってくれ」

「話をそらさないでください」
「そうだ。お前はどう思ってるんだ」

ジャスティンは少し黙り、
一度上を、
天井を見上げて答える。

「俺は俺が信じる道を進んできたつもりだが・・・・
 今回成り行きでお前らと対立する事になった。それで正直・・・・少し心が揺れている。
 が、・・・・・・・・俺は夢を叶えるためだけに生きてきた。止まる気はない」

ジャスティンが歩を進め、
ドアを開ける。

「ただ、もし俺が間違ってるんだとしたら・・・・・・・お前らが俺を止めてくれ。
 ・・・・・・・一週間。それが装填(リロード)タイムだ。
 その間。どんな事態になろうともエクスポの命の保障は俺が約束する。
 ・・・・・・・・どんな事態になろうともだ。・・・・・・・・・・待ってるぜ」

そう言ってジャスティンは店から出て行った。

静かな店内が戻った。

「クソォ!」

ドジャーの拳がテーブルに打ち付けられた。
静かな店内に響くその音は、
この静かな空間で、空虚な何かを埋め合わせたいかのようだった。








                 






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