全員が一斉に振り向く。

「いつの間に?!」

そこには一人の男がいた。
細い目をした盗賊。
白と黒の盗賊服を着た目の細い盗賊。

「ハッハ!あんさんらたいしたことあらへんな?おっと動かんといてや?コレが火ぃ吹きよるで?」

その男の手には銃。
ライフル。
それはドジャーの後頭部に突きつけられていた。

「て・・・」
「テメェ!!!」

「おっと動かんといてや?」

ドジャーの後頭部を睨む銃口。
ライフルがドジャーの後頭部に突き当てられている限り、
周り全員手出しできなかった。

「てっめ・・・どっから入った・・・・・・・」

「はぁあん?どっからやて?ハッハ!アホかい入り口からに決まっとるやろ」

入り口?
だがあの時、全員入り口に注目していた。

「・・・・・・・インビジ・・・・・・・・・か」

「そんなコスいマネするわけないやろ。正面から走っただけやがな。
 あんさんらの目が追いつかんかっただけや。・・・・わいのスピードにな
 ま、ある意味瞬間移動ってやっちゃ。もっと精進せなあきまへんで?
 ってわいを目で追うなんて無理やけどな!」

走った?
この9人が入り口に注目している中。
一瞬でドジャーさんの後ろに回りこんだっていうことか。
そんな事・・・・・

「わいのスピードは目にも留まらへんで?なんたって・・・・・世界最速や
 っと。自己紹介がまだやったな。わいはGUN'Sの六銃士がNo.2。エンツォ=バレットや
 世間じゃ『036(ゼロスリーシック)』のエンツォ呼ばれとりますわ。おおきに♪」

エンツォの細い狐目は笑っていた。

六銃士(リヴォルバーナンバー)2
エンツォ=バレット

その名にドジャーが眉を動かす。

「エンツォだと?キューピーが才能どうこう言ってた奴か・・・・」

「キューピー?知らん名やな」

「ぁあん?知らねぇわけねぇだろ。メイジプールの弓引きだ。お前の話をしてたぜ?」

「知らんちゅーとんねん。覚えがないゆーことは、わいよりトロい奴やったんやろな
 そんであんさんもや。わいより遅いって事は・・・わいより弱いって事や!ハハハ!」

エンツォは笑う。
見下したあざ笑い。
が、ドジャーも微笑しながら言った。

「カッ!記憶力の乏しいやつだな。痴呆症か?一本取られたぜ。
 まさか脳みそボケた奴がGUN'S仕切ってる一人とはなぁ!
 速いっつーのも脳みその軽量化が秘訣なんだろ?こりゃマネできねーわ!」

「あんさん・・・ボケはそんくらいにしときぃや」

エンツォは銃をドジャーの後頭部にさらに押し付ける。
もちろん引き金が指にかかっている。
エンツォが人差し指を数センチ動かすだけでドジャーは・・・・・

「調子こいとるんやないで?銃を突きつけられとるのはどないな気分や。
 あんさんは今わいの指先以下や。えろう身分の低いこっちゃで」

「あぁ、いい気分だぜ。心と後頭部にポカンと穴が空く思いだな」

「ほんとふざけたやっちゃ。ほんまにトサカにトンネル掘ったったろか?」

エンツォが引き金を少し・・・・


「エンツォ。あまり遊ぶな」

酒場の入り口から声。
もちろんMDのメンバーの声ではない。

入り口に一人の男が腕を組んでもたれかかっていた。
腰に剣を携えている。
さらに・・・・左目に一本傷。
片目・・・・隻眼の剣士のようだ。

「またGUN'Sのメンバーぁ?」
「・・・・・・・ウジのように沸くな・・・・・・」
「名を名乗れ」

イスカが剣を握る。
戦闘態勢。
が、その隻眼の男は、入り口にもたれたまま返事をする。

「俺か?俺はGUN'Sが六銃士のNO.1。スミス=ウェッソン
 まぁ名など覚えてくれなくてもいい。もう会うことはないかもしれんしな」

スミスはMDのメンバーの方を真っ直ぐ見る事はなく、
軽く目をつむったまま、余裕の表れである笑みを漏らす。

「俺達は取引に来たんだ。六銃士(俺達)直々にな。取引だ。まず・・・・
 言う事を聞け。従え。白旗をあげろ。降参すると言え。話はそれからだ」

「ざけんな・・・!」

メッツが動こうとする、
が、その瞬間エンツォはドジャーの後頭部を銃で殴る。

「痛ッ!」

ドジャーの額から血が垂れる。

「動くなやゴリラ!あんさんのギルドマスターの頭が派手に吹っ飛ぶことになるで!?」

「チィ・・・」

「俺達は取引に来たといったろ?大人しくしていればヤり会うことはない」
「素直に応じた方がええで。あんさんも友達の脳みそなんて見たないやろ?」
「とりあえず各々の武器を置け」

「ふん・・・・・・・・」
「チェッ・・・・」

イスカとメッツは剣と斧を地面に置く、

「他に武器装備しとるやつおるか?」

「・・・・・・・」

アレックスは黙って背中の槍を地面に置く。

「おいそこの修道士。気も解除しろ」

「へぇーい」

チェスターはブーたれるように両手のイミゲを解除した。

「これであんさんらは剣のないポンナイトってとこやな」

「・・・・・・ふん。ドジャーを人質にとったからと言って強気だな」
「そうジャン!こっちは9人!」
「・・・・・・・お前らは二人・・・・・・・・」

「十分だ」
「あんさんらの強さは分かっとる。大した事あらへん。わいら六銃士の下の下って事や」
「足元にも及ばんな」

「なによ!ちょっと強いからって自惚れるんじゃないわよ!」

マリナの叫び声。

と、同時に・・・・・轟音が鳴り響いた。
だがマリナが作り出した音ではない。

音の発現点は・・・リヴォルバーNo.1。
スミス。

「自惚れているのはお前らだ」

スミスはいつの間にか剣を抜いていた。
真っ直ぐ横に振り切っている。
真横に水平に振り切られた剣。
それは・・・・・
入り口から数メートルにかけて、店の壁に大きすぎる傷跡を残していた。
外の景色が見渡せる大きな穴。
店の入り口から店の端まで、斧で砕いたかのような切れ目。
数メートルもの・・・・・・・

「あ、あれが剣でできた跡かぁ!?」
「ちょ、私の店に何すんだコノヤロォオオオ!!!」
「落ち着けマリナ!」

ぶち切れそうなマリナをエクスポが止める。
後ろから腕を押さえつけて。
ジタバタと暴れるマリナをエクスポは必死で押さえつけた。

「どないや?ビックリしたやろ?あれが『一島両断』言われるスミスの剣や
 それに世界最速のわいの実力。わいら六銃士に勝てる見込みある思うてんのか?」

「・・・・・・・・・六銃士なら・・・・・何人も倒してきた・・・・・・・・・・・」
「そうだよ〜〜〜〜!!3人も倒したもんね〜〜〜〜!!」

「アホか。六銃士をたまたま3人倒したからって調子こきすぎやで?」
「聞いた所、ヴァレンタインもルカも・・・タカヤも・・・・
 タイマンで倒したわけじゃぁないらしいじゃないか
 多対1に不意打ち。勝った事だけは褒めるがそれで六銃士より強いと思ってるのか?」

・・・・・・・
その通りだった。
ヴァレンタインの時は、
アレックス、レイズ、そして不意打ちのドジャーの3VS1。

タカヤの時もチェスターとイスカというMDの中で戦闘面に秀でた2人VS1人。
その上イスカに至ってはやはり不意打ちに近い。

ルカの時に至っては向こうもケティと二人組だったとはいえ、
アレックスとロッキーの二人の時はどうすることも出来ず、
結果逃げ、
最終的にはマリナ、マリンを含めた4人がかり。

どれも実力で圧倒していたとは言えない。

「だからって二人でオイラ達を倒そうなんてなめすぎジャン!」
「やってみなきゃ分からないって言葉もあるわよ?」

「二人で十分と言ったが・・・・・・・誰が二人と言った?」

入り口でもたれていた隻眼の剣士スミス。
スミスが片足でドアを蹴り開ける。
そこにいたのは・・・
人人人・・・
武器を持ったGUN'Sのメンバー達。

「総勢50人。本隊の一部を連れてきた」
「"本隊"の意味は分かるわな?」
「俺達《GUN'S Revolver》はギルドの合併吸収を繰り返してでかくなったギルドだ。
 だが、元はたった200ほどのギルド。それがGUN'Sの本隊。
 本当に信用しているメンバーってとこか」
「わいらがWISのギルドリストに載せてとるのはこの精鋭だけや」
「これだけの数相手にできるとでも?」

「チッ・・・・・」

六銃士が二人揃っているだけでも面倒だが、
世界最強ギルドの精鋭が50人。
正直な話・・・・・・・・
まったく勝ち目がない。

「まさかやけど50人の本隊全員を相手できると思ってへんよな?」

エンツォはドジャーに銃を向けたまま、
ニヤニヤと笑う。

「おっと・・・動くなそこの騎士!」

スミスが剣を指す。
まっすぐ向いた剣はアレックスの方を向いていた。

「・・・はい?」

「とぼけるな。今コッソリ手元で十字を切っていたな」
「マジかいな。えろぅめざといやっちゃな」
「おとなしく手ぇあげてろ」

「バレちゃいましたか」

アレックスは笑顔で両手をあげる。
こっそりドジャーを助けるつもりだったのだ。
が、さすが六銃士。
簡単にそうはさせてもらえない。

「おい。そっちの修道士と聖職者も手ぇあげとけ」

「・・・・・」
「なぁーんでぇ?」

「今のところ武器無しで飛び道具が使えそうなのはお前らだけだからだ」

「・・・・いい状況判断だ・・・・・・腕っぷしだけで上り詰めたわけじゃなさそうだな・・・・・」

レイズはクックックと笑いながら両手をあげる。
チェスターもキョロキョロと見渡しながら手を挙げた。

「もう一度言う。降伏しろ。お前らはもう完全に詰まれている。
 ギルドマスターが人質の上、50人のGUN's精鋭が店の外に待機。
 そして六銃士の残り全員がこの場にいる限りお前らに道はない」

・・・・?

「六銃士全員ですって?」
「何言ってるの〜?えぇ〜っと・・・・・3人倒して〜ここに2人いるから〜
 六銃士って〜あと1人いるんじゃないの〜?」

ここにいる隻眼の剣士。No.1 スミス=ウェッソン。
同じくここにいるライフル持ちの盗賊。No.2 エンツォ=バレット。
昇竜会に潜入していた修道士 No.3 タカヤ=タネガシマ。
白十字病院の元院長 No.4 ヴァレンタイン=ルガー。
大富豪の半魔女 No.5 ルカ=ベレッタ。

六銃士はもう一人いるはずである。

「おるわい」
「おい、新入り。入ってこい」

リヴォルバーNO.1のスミスが店の外へ声をかける。
どうやらもう一人は外にいるようだ。

「いつまでも新入りって言わないでくれスミス。もうすぐ一年なんだぜ?」

その男が入ってきた。
入り口のドアをユックリと押し開いて。

「・・・・・あ、あんだと?」

メッツの体が固まった。

「うそ・・・」

マリナも気付き、声を漏らす。

その男はユックリと中に入って顔をあげた。
綺麗な顔立ちをした男。
空色の長髪。

「・・・・マジ?」

背中にはネクロをかたどった鎌。
サバスロッド。

こわばるドジャーの表情と逆に、
男は笑顔で言った。


「ひさしぶりだな。みんな」


ドジャーは奥歯を噛み締める。
こわばる表情。
その中で芽生える信じられないという心を押し殺し、
ドジャーは口を開く。


「ジャスティン・・・・」

「そんな怖い顔するなよドジャー」


六銃士NO.6。コルト=ジャスティンは、

笑顔で答えた。







                 






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