-酒場 Queen B-



「ナメてんのかぁ!?このクソガキ!?」
「はぁ!?ナメてんのはそっちジャン!」

貸切の酒場。
その中心で睨み合う二人。
チェスターとメッツ。

「今とっちめちまってもいいんだぞコラァ!この猿!」
「うっせうっせ!ゴリラのくせにー!」
「やんのかオラァ!?」
「おーいーよ!戦績は50勝48敗36分けでオイラが勝ってるんだぜぇ!」
「んだとぉ!?俺が52勝だろコラァ!」
「レイジ使ったヤツは無しに決まってんジャン!」

酒場の中心で顔をギリギリまで近づけて睨み合う二人。
目に血管をたぎらせている。

「何ケンカしてるんですか彼ら?」
「あー。なんかチェスターのバナナをメッツが食ったとかそんなだ
 んでチェスターがキレてメッツのタバコを窓から投げ捨てた」
「・・・ふん。くだらんな」
「美しくないね」
「そんな事で〜怒らなくてもね〜〜」
「・・・・・・・・・・両方死ねばいいのに・・・・・・・・・」

「バナナの大切さを分かってないだろメッツ!」
「知るか!猿の食い物だろコラァ!?」
「人間だって食べるジャン!」

うん。
食べる。
おいしい。
アレックスは冷静に思った。

「お前だってタバコの素晴らしさ分かってないだろがよぉ!」
「体に悪いだけの煙ジャン!」
「俺にとっちゃ吸わない方が体に悪いんだよぉ!」

「はいはいあんた達も座んなさい!」

「だってよぉマリナぁ!この猿が・・・」
「このゴリラが・・・」

マリナはニコリと笑った。
そして言った。

「スワリナサイ」

二人は女神の笑顔の中に悪魔の眼を見た

「「はい」」

メッツとチェスターは素直に返事をし、
言われてもいないのに仲直りの握手をした。

アレックスは、
このギルドで一番権力があるのはドジャーではなくマリナだと、
心で確信した。
そして人間の上下関係のピラミッドの中、
自分がマリナの下に来るだろうことも。

「よっこいせ」
「・・・・・・メッツ・・・・親父クサ・・・・・」
「オ、オヤヂぃ!?・・・ちょ、コラッ!うっせぇぞレイズ!」

レイズがクックックと笑う。
メッツは「チェッ」と言ってスペアのタバコの箱を取り出し、
火をつける。

チェスターも椅子に座ろうとした。
が、その前にアレックスに気付き、
笑顔で近づいてきた。

「よっ!お前がアレックスだなっ!よぉーろしっく!」

チェスターがアレックスに手を指し伸ばす。
握手しようぜ!って感じだろう。
アレックスは戸惑いながら手を差し出す。

「あ、はい・・・・・・・ヨロシク・・・・・・・」
「オイラがチェスター!これで友達だなっ!」
「へ?」
「とーもーだーち!」
「は、はぁ・・・・・・・」

チェスターは握手した手を放し、
ピョンっ!と隣のテーブルの上に飛び乗る。
そしてテーブルの上に寝転んだ。

アレックスはドジャーに顔を近づけてコソコソと話す。

(あれがチェスターさんですか・・・
 攻城戦でたまに顔は見かけてましたけど・・・あんな性格なんですね・・・・)
(あんな性格?)
(いやぁ・・・・有名ですからもっとイカつい性格してるのかと・・・
 まさかあんな"漫画の主人公"みたいな性格だとは・・・・・)
(あいつはその漫画の主人公みたいなのに憧れてんだよ)
(そ、そうですか・・・・)

嫌いなタイプではないが・・・
苦手なタイプでもある。
MDにまともなタイプはいないのか?とか思っていたが、
直線的すぎる性格はそれはそれでまともじゃない気がした。

「あ、おい!マリナ。お前も座れよ」

「はいはーい」

マリナは人数分のコーヒーをトレイに乗せ、
テーブルに戻った。
一人一人にコーヒーを渡し、
そして自分自身もテーブルに座る。

「全員揃ったな」

ドジャーが言った。








S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<9人のMDと思いと1人>>









貸切のQueen B
その中心の大きな円卓。
丸いテーブル。

たった今座ったマリナ。
その横にはドジャー。
椅子をキコキコと傾けながら座っている。
その横にアレックス。
揃ったメンバーを興味深そうにキョロキョロと見ながら座っている。
その横にメッツ。
足を大胆にテーブルに投げだし、片手にはタバコをふかす。
その横にロッキー。
地面に足がつかない小さな体。椅子の上に人形のようにピョコンと腰掛ける。
その横にエクスポ。
片肘をテーブルにつき、不機嫌そうな顔を片手に乗せる。
その横にレイズ。
少し下に俯きながら、ブツブツと御経のような小言を放っている。
その横にイスカ。
椅子の横に剣を立て掛け、自分椅子の上で座禅を組んで片目をつぶっている。
一周してまたマリナ。
自分でいれたコーヒーを口に含み、自分を絶賛していた。
隣のテーブル。
そのテーブルの上に行儀悪くチェスターが横に寝転がっている。

総勢9人。
MD全員がこの酒場に集結していた。

「ペッ!ペッ!まじぃっ!マリナぁ!やっぱオイラコーヒー飲めないってぇ〜!」
「ガハハ!やっぱガキだな猿!」
「んだよメッツ!んじゃぁメッツはコーヒーの良さ分かるのかっ!?」
「あったりめぇよ!」
「どの辺がうまいんだよ」
「そ、そりゃぁ・・・・この黒い辺りだよ・・・・」

「「「「・・・・・」」」」

どの黒い辺りだろうか・・・・

「マリナぁ〜〜〜ぼくもコ〜ヒ〜飲めな〜〜い〜〜。モス酒と変えて〜〜〜」

コーヒーの代わりにアルコールを要求する子供。
無邪気の少し斜め上を行っている。

「あらごめんね。でも話が終わるまで我慢できる?」
「え〜〜!!・・・・む〜〜・・・・」

ロッキーは頬を膨らましてむくれる。
ぼくも何か飲みたいんだと言いたいようだ。

「じゃー早く話終わらせよ〜!で〜、ねーねードジャ〜〜。結局今日は何の話なの〜?」
「そうジャン。そうジャン。全員集合なんてひっさびさジャン?」
「何ヶ月ブリって感じだな」
「・・・・・・俺も忙しいんだよね・・・・・・・・・・・・・手短にしてくれ・・・・・・・」

「あぁ」

ドジャーが口を開く。
これでもギルドマスター。
仕切るのは彼だ。
先ほどまでと違い、
神妙な顔つきで話す。
この話の重さが分かる。

「皆知ってると思うけどよ。今うちは・・・・・・・・・・・・・オブジェを所有している」

その時、
突然バンッ!と大きい音が鳴り響く。
テーブルに手を打ち付けた音。
グラスが驚いて揺れる。
その手はエクスポの手だった。
彼の表情には・・・・・・・怒りが表れていた。

「どういう事なんだいっ!なんで今までちゃんと話してくれなかった!
 もらったのはたった一通の軽いメモ箱だけっ!
 シンプルイズザベストじゃない!説明不足なだけだ美しくもない!
 こっちはどこ行くにも知らない連中に襲われたり命をとられそうになったりしたんだよっ!」

突然豹変したようなしゃべり方。
エクスポの口調はアレックスの知っているものとは違った。
どんな時でも落ち着きを乱さなかったエクスポ。
それがアレックスの印象。
それが見る影もない。

「拙者も同意見だ」

イスカがボソリと言った。

「オブジェの所有。あまり大きく考えておらんかったが、襲われてみれば現状の深刻さが分かった」
「ガハハ!自分っていうよりマリナに火の粉が飛んでるから反応してるんだろ?」
「・・・無論だ。否定はしない。拙者自身の危険はどうでもいいのだ。お主は違うのか?」
「ん?あ、いや・・・」

メッツは言葉に詰まり、灰皿にタバコを押し付けた。
マリナに思いを寄せているのはメッツも同じだからだ。

「でっ!!!」

エクスポが叫ぶ。
エクスポは話を続ける。

「狙われるくらいならまだマシなんだよっ!ボクらは年中戦って暮らしてるような奴ばっかしね
 けどボクが怒ってるのは・・・・・・・・・・・・"狙われる意義"だ!!!!」
「・・・・・・なるほどな・・・・・」

レイズがクックッと笑う。

「・・・・・・・・俺も・・・無関心でいたが・・・・そこはハッキリしてもらわくちゃな・・・・・・・・」
「そこ・・・って言いますと?」
「ふざけるなっ!」

エクスポはもう一回テーブルに手を打ち付けた。
マリナは店のテーブルを乱暴に扱うのは少しやめて欲しいという目をしていた。
それはそうとエクスポの話は続く。

「オブジェを持っている"意義"だよっ!結局の所なんでそんな物を持ってるんだ!
 それを教えてもらっていないっ!なのに命を狙われてちゃたまらないんだよっ!」
「ま、ごもっともね」
「ガハハ!そりゃオブジェで世界征服だろやっぱ!」
「あれジャン!?お金!ルアス城のギルド金庫の金でしょ!」
「大切だからとかぁ〜〜〜?」

チャラけた態度をとるメンバー。
が、

「皆ふざけないでって言ってるんだよ!美しくないっ!」

エクスポ一人の目だけが尋常じゃなく真剣だった。
それは純粋な怒りを訴えていた。

「分かっているのかい君たち・・・・無意味に命が危ないんだよ?
 ボクはこれでも今日まで知りも知らないギルド団体に襲われ、
 中小ギルドを3っつも返り討ちにした。いや、しなきゃならなかった」
「拙者も二つほどやったな」
「勝った!オイラは5つ!しかも一個はあの有名な《修道ポット》!」
「僕達が戦ったのは《ハンドレッズ》《騎士の心道場》《メイジプール》といった所です」
「その他にも弱小ギルド3つほどアレックスと二人でやったな」
「拙者とチェスターで昨日《昇竜会》ともやった」
「・・・・・・・・クク・・・終焉戦争に呼ばれるほどのギルドが・・・・・・・・3つもあるな・・・・・・・」
「パーティーみたいだねっ〜!すご〜い!」

「話がそれてるんだよっ!」

エクスポが椅子から立ち上がって叫ぶ。
そしてドジャーの方を睨む。

「さっきも言ったけどね・・・・ボクは戦うこと自体はいいんだ。問題は命を狙われていること!
 いいかい?ボク達《MD》に共通してる事が一つあるよね?」

エクスポの目はじっとドジャーを見つめたまま言った。
答えをギルドマスターであるドジャーに要求していた。
ドジャーはハァ・・・とため息を一つついて答える。

「他人より身内・・・・だろ?」

「そうだよっ!なのになんなんだっ!君はその身内に危険を冒させている!
 その"意義"を知りたいって言ってるんだよっ!話せよ!黙ってるなんて美しくないっ!
 大事な味方を世界の標的にするほどの意義がオブジェにはあるのかいっ!?
 金かい!?権力かい?!そんな美しくないもののために仲間は死ぬかもしれないんだよっ!」

エクスポの怒り。
それはここの中で誰よりも仲間を想っているからこその怒りだった。
それに対して・・・アレックスはうつむくしかなかった。

「そう怒鳴るなってエクスポ。連絡が遅れたのは悪かった。今回はその件の話で集めたんだ。
 んでオブジェ所有の理由の方だが・・・・。金でも・・・権力でもねぇ。実はな・・・・」
「僕が・・・話します」

アレックスが顔を上げた。

「理由は・・・僕が持ち込んだものですし・・・」
「アレックス君」

エクスポはアレックスが話す前に言葉を発する。

「アレックス君。ボクは君が好きだ。君が《MD》に入ってる事も何一つ反対はない。
 けど、もし君が《MD》にこんな戦争を持ち込んだんだとしたら、
 ドジャーや皆が許したとしてもボクは君を許さない。即刻オブジェごと出て行・・・・」
「・・・・・・・・エクスポ・・・・・話ぐらい聞いてやれ・・・・・・・・・」

レイズの言葉にエクスポは言葉を詰まらせる。
言いたい事は山ほどあるといった感じだったが、
大人しく椅子に座った。
アレックスが話し始める。

「僕の・・・わがままです。オブジェをどこかの手に渡らせたくないという。
 もし今このギルド戦争中にオブジェがどこかの手に入るとしたら・・・・・
 そのギルドはオブジェの力を使って即刻マイソシアの頂点に行くでしょう
 でもそれは力で作り上げた力の世界。
 王国騎士団のように民を押さえつけた強行なる支配。
 またあんな支配世界を作りたくないんです・・・・・」

アレックスが話す事。
それにエクスポはたった一つため息をついて返す。

「それはそれは・・・美しい理由で。まったくをもって美しい。世界規模の美徳だ。
 だけどここであえて醜い言葉で言わせてもらう。そんなもの"クソくらえ"だよ
 たしかに君の言う通り王国騎士団のような支配世界はイヤだ。美しくない。
 ボク自身もこの世界恐慌(システム・オブ・ア・ダウン)は起こるべくして起こったと思っている
 けどね、それがイヤならオブジェを壊すなりなんなりとすればいい」
「そりゃそうだな」
「だがそれをしないのはつまり。アレックスの私情が絡んでおるのだろう」
「あら、そうなのアレックス君?」

「・・・・・・・・」

アレックスは黙るしかなかった。
いや、ここで黙る訳にはいかない。
しっかりと話さなければならない。

「そうです・・・・理由の中にはかなり僕の私情が入ってます」
「ほらみろ美しくない」
「まぁアレックスの話も聞いてやれって」
「・・・・・・・ドジャーは・・・・・・・甘すぎる・・・・」
「ホメ言葉としてもらっとく。とにかく聞いてやれ」

ドジャーはアレックスにかるくアゴで合図した。
話してやれと。
アレックスは頷き、話を始めた。

「理由の・・・・・・・・私情の一つは・・・・・・・母の遺言なんです。
 僕のせいで死んだ母が・・・・・・・・最後に言ったんです。
 "世界は人が手を取り合って作るものだ"・・・・・って。
 僕は・・・・・・基本的にこの99番街の人たちのような性格です。
 聖人なんかじゃない。どちらかといえば良い人間でもない。
 他人より自分。ある意味人間らしい性格だと・・・・僕自身自覚しています。
 けど、そんな僕にもたった一つ正義があるんです。心に決める強い正義。それが母の遺言。
 僕はそのたった一つの正義・・・・助けられなかった母の遺言を・・・・・・どうしても叶えたい」

アレックスは片手をぎゅっと握り締める。
目には真っ直ぐな光が満ちていた。

「そりゃまたデカすぎる遺言だな!」
「夢!正義!いいジャン!ヒーローっぽくていいジャァーン?」
「アレックス〜。お母さん想いなんだね〜〜」

「だが・・・・・・・オブジェを壊さない理由にはなっておらん」

イスカの的確な一言で、
一瞬また全体が無言になる。
アレックスは答える。

「オブジェを壊さない理由も酷く私情です。
 ・・・・・・・・オブジェは僕の昔の仲間が必死で守ったものだからです。
 1万に近い騎士団全員がたった一つのオブジェを守るためだけに・・・命を落としました。
 彼らは任務、心情、誇り。それぞれの想いを貫いて最後まで戦った・・・死ぬまで・・・・。
 なのに一人逃げた僕が彼らの誇りを壊す事が・・・・」

「壊せばよい」

イスカは言い放った。

「母の最期の心。死んだ同士の誇り。両方立派だ。お主の気持ちは分からぬでもない。
 だが、それは所詮外から持ち込んだ話だ。拙者ら《MD》には関係のない話」
「そうさっ、ボクらはボクら以上に優先すべきものはない。
 ボクも仲間のためになら何かしてやろうとは思う。それがボクの美徳。美しさへの心情。
 だけど知りもしない騎士団の誇りのために仲間を売ろうなんて美徳は持ちあわせていないよ」
「だけどアレックスは母ちゃんの遺言を叶えたいんジャン?」
「誇りを捨ててオブジェを壊す。それだけでその美しい遺言は叶う。そうじゃないか?
 ボクだってアレックス自身の事は考えてやりたい。
 けど知りもしない騎士達の誇りなんてものはどうでもいいさ」
「・・・・・・・・たしかに・・・・・・・・俺達には関係のない話だ・・・・・・・・」

「じゃぁ関係ある話をするか」

ドジャーが口のふちだけ笑みを含ませて、
それでいて真剣な顔つきで話し始めた。

「俺ら《MD》の結成理由はなんだった?覚えてねぇか?
 思い出させてやる。メジャードリーム(MD)。クソッタレの逆襲だ。
 この世界(マイソシア)に俺達の力を見せ付けてやるっていうな」

「あーあったなそういうの!」
「私は最初から興味なかったけどね」
「で?」

「それを叶えるとしたら今しかねぇ。ゴミ箱(99番街)の夢を叶えるならよぉ。
 今現在。オブジェが渡って困るのはGUN'sだ。
 《GUN'S Revolver》。断トツで世界最大最強のギルド。
 もし他のギルドにオブジェが渡ったとしても、さっさとGUN'sの手に渡るのは時間の問題
 そうなったとしたら最後。世界はGUN'sの支配下。
 王国騎士団規模の支配世界が出来上がる。統率取れてない分さらにタチ悪そうだけどな
 それを俺ら《MD》がオブジェを餌に・・・・・・・・・潰す」

ドジャーが指をパチンと鳴らす。

「オブジェは餌だから壊さねぇってか!!ガハハ!」
「世界で一番高級な餌だな」
「お腹いっぱいだね〜〜〜!」

「そゆこと、んで俺達がGUN'Sとぶつかる。倒す。めでたし。以上
 俺らも世界もみんなハッピー。神様もビックリの素晴らしさだろ?絵本にでもするか?」

「本当に絵本のような話だよ」
「GUN'Sのギルメンの総計は王国騎士団規模。万に近いギルドに9人でぶつかるわけだからな」
「途方もない話だな」

「それがメジャードリームだ。そうだろ?
 俺達はたしかにゴミ箱(99番街)で育った者がほとんど。
 俺達は世間的にはゴミだぜ。が、ゴミをナメんなと言ってやりてぇ
 ゴミにも誇りと根性。そして光があることを、俺達は示すんだ。・・・・・・どうだ?」

ドジャーはニヤっと笑って指を指す。
誰をとかでもなく、
《MD》全員に向けて。

「そんな途方もない話っ!ボクは賛成できないっ!皆が危険なのには変わりないっ!
 ボクの話は聞いていたのかい?!絶対誰かが命を落とす事になるって言ってるんだ!
 いや、最悪全滅・・・・・。なぁドジャー。仲間を捨てる決断ほど醜い事など・・・・・・・・」

「俺はいいけどなっ!ガハハッ!」

メッツは笑いながら言う。
片手にライター。
それで咥えたタバコに火をつけ、ひと煙吐いた後話す。

「ギルドの発端者としてそのMDの意義ってのも賛成だしよぉ。何より面白そうだ!
 こちとらヒマをもてあましててよ。世界とケンカ!こんなヒマつぶしはねぇってもんだ!」

「メッツ・・・・そんな理由で・・・・」

「オイラもいいぜっ!」

「お、おいチェスター・・・」

チェスターは隣のテーブルの上に立ち上がり、
腕を掲げて話し出す。

「悪い世界を作らないように立ち上がるオイラ!
 ヒーロージャン!スーパーヒーロージャン!
 オイラはスーパーヒーローになるために生きてる!戦ってる!カックィー!!!
 そんでこの戦いはオイラの夢に繋がってる!ヒーローへの道へ!
 ヒーローの夢はオイラの生き甲斐。戦う意味!ならドンとこいって感じだぜっ!」

「ぼくもいいよ〜」

ロッキーが椅子の上で手をあげながらピョンピョンとジャンプする。

「アレックスの言ってた事も〜〜ドジャ〜が言ってたことも〜〜
 どっちもいいことだも〜〜ん!悪い事は嫌だけどいい事だも〜ん!
 アレックスは〜〜無関係なカプリコの皆のために体張ってくれたし〜
 僕も恩返しするよ〜〜!パパ達も仲間を助けてこいって言ってくれたし〜〜!!」

ロッキーは口を大きく開いてイシシと笑った。

「・・・・・・俺は・・・・・・・」

レイズはボソリと言葉を発する。

「・・・・・・・・・面倒事なんかは御免だな・・・・・・・勝てもしない戦いならさらに御免だ・・・・
 ・・・・・・・・・俺は静かに暮らせればいい・・・・・・・自分の命が一番好きだ・・・・・・・・」
「だ、だろ!?レイズ!」
「・・・・・・・けど・・・・・・」

レイズは話を続ける。

「・・・・・・・・・・俺は尊敬すべき人が・・・・・GUN'Sのオフィサーだった・・・・・・・・
 ・・・・・・・俺はいつかどうせ巻き込まれるって事だったんだ・・・・・・・・
 ・・・・・・・・そのついでだ・・・・・・・・・手伝ってやる・・・・・・・・・」
「レイズ・・・・」
「・・・・・・・何より・・・・・・もう取り返しがついてない・・・・・・・・
 ・・・・・俺は唯一名前までGUN'Sに公表された上に・・・・・・堂々と病院で働いてるんだ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・最初から俺は・・・・・・・・・やらなきゃしょうがないんだよ・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・死ねばいい・・・・・・・・って感じの話だけどね・・・・・・・・・」

レイズは自分の右腕を見る。
それは自分の腕ではなく、
もとはヴァレンタインの腕だった右腕。


「しょうがないわねぇ」

マリナは両手を広げてため息をつく。
そして話す。

「私は基本的にいい人なのよ。皆がやるなら手伝ったげるわ
 感謝しなさいよぉ?このマリナお姉さんにね。
 それに99番街の名前が売れれば店がもっと繁盛するしね♪
 ・・・・・・・・・・・それに・・・・・・・・・・・ルカと妹の一件でGUN'Sには少しむかっ腹だしね」

「マリナ殿がやるなら・・・・・・・・拙者がお守りせねばなるまい」

イスカは鞘の上から剣を握る。

「拙者はマリナ殿以上に優先すべきものはない。理由はこれだけで十分だ
 幾月も重ね、磨いた我が剣。どこまで何かを守れるか・・・・試してみよう」

「皆さん・・・・・」
「カッカッ!うちは馬鹿が多くていいだろ?
 アレックス。お前は幸せモンだぜ?俺に・・・・いや、MDに会えてよぉ?」

そう言ってドジャーはアレックスの肩に手お置き、
笑った。
アレックスも恐る恐る笑顔で返し、頷いた。

このギルドはいい人が多すぎる・・・と少し涙がこぼれそうになった。


「み、皆・・・分かってるのか・・・・命を落とすかもしれないんだぞ!」

エクスポだけは未だ反対していた。
誰より仲間を思う気持ち。
それは確固たる意思でもあった。

「GUN'sを・・いや、世界を相手にするなんて美しくない!
 それは無謀なんだ!自殺と一緒だ!美しさのカケラもないっ!
 考え直してくれ!ボクは皆を失いたくないっ!」

心底からの思いだろう。

「なぁ・・・・一発で花を咲かそうって考え方はダメなんだ!それじゃぁ美しくない!
 ギルドの方針にしてもコツコツとやっていって咲かせばいいじゃないか!
 積み重ねて積み重ねて・・・・そして最後に華を咲かす事が本当に美しいんだよっ!?」

「・・・・・・」

ガタッ、と椅子の音。
突然イスカが立ち上がったのだ。
片手には剣を持ち、そして入り口の方を見据えている。

「どうしたイスカ」
「トイレ〜〜〜?」

だが動いたのはイスカだけじゃなかった。

「よっと」

隣のテーブルの上にいたチェスター。
突然ジャンプ。
空中をクルクルと周り、
イスカの横にストンと着地した。

「ガハハ!どちらさんか知らんけど手回しが早いこったな」

メッツがタバコを灰皿に押し付け、立ち上がる。
首をコキコキと鳴らし、
腕を回す。

メッツ、イスカ、チェスターの三人が並び、酒場の入り口を見据えていた。

「どうしました?」
「・・・・・・なんなんだ・・・・・・・・」
「3人揃って便所か?」

「・・・・・気付かんのか?」
「殺気ムンムンじゃん?」
「こりゃぁ寝てても気付くぜ気持ち悪ぃ」

三人だけが気付いたソレ。

「何の事だ?」

「ガハハ!知らねぇ!でもなんかこう・・・第六感っつーのか?ムズムズすんぜ」
「ピンピンした殺気だなっ。気が揺れてる。一人の気じゃないジャン」
「空気・・・・足音・・・・大勢だ。酒場に近づいてくる」

イスカは剣を抜き、鞘を捨てる。
チェスターは両拳に気を溜め、イミットゲイザーの準備を完了させた。
メッツはどっこらしょと二つの斧を肩に担ぐ。

「来るぞ」

イスカがそう言った瞬間。

酒場のドアが、動く。
ソット。
それでいて静かに。

が、
姿がない。
ドアも一瞬フワッと開いたかどうかというほど動いただけ。

風か?
そう思った時だった。



「トロくさい奴ばっかやな。後ろや後ろ。わいが引き金引いとったら今一人死んだで?」






                 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送