ガバッ!

布団をはじき飛ばしながらアレックスは目を覚ました。
汗がすごい。
こんな夢を見るからだ。
ほとんど毎日見る夢である。
一年前の攻城戦の夢。

「・・・・・・・」

自分だけ生き残ってしまった。
世界の宝ともいえるシンボルオブジェクトを手にして・・・・。
たくさんの仲間は誇りと諦めずの心を胸に戦っていったというのに
部隊長の自分は・・・。

アレックスはベッドから立ち上がる。
そして毎朝と同じように思考を切り替えた。
そうしないとしょうがなかった。
忘れてはいけない事だしその過去を糧にしていかなければいけないけど
とりあえず今日を生きるべきだ。

そのためにはまず・・・・


「朝ごはんだ!!」


失礼なほど思考が180度変わり、
腹のタイマーがアレックスに空腹を知らせる。
アレックスのおなかは朝・昼・夜 定期的に時刻を知らせるようにできていた。
こうしちゃいられない
朝ごはんを食べないと!

アレックスは自分の部屋・・・・といっても借り物だが
とにかく部屋のドアを開け、隣の部屋へと走った。

そして大きく隣の部屋のドアを開け放つ

「おはっよー!朝ごはんですよドジャーさん!」

ベッドの上にはピアスを付けたまま寝ている盗賊がいた

「ん・・・・あぁ・・・・・おめぇは"朝=朝ごはん"なのかよ・・・・・・・・・・」

といいつつドジャーはまたベッドの上で夢の世界へと旅立った。
たしかに起きるには少し早い時間である。
だがそんな事アレックスには関係ない。
なぜならおなかが減っているからだ
アレックスはベッドの上のドジャーを揺する

「ドジャーさん!起きてください!朝ごはん食べないと死にますよ!」
「・・・・・うっせぇな死なねぇよ・・・・・」
「僕は死ぬんです!」
「・・・・・・・・・・じゃぁ死ねよ!」

そう言ってドジャーはアレックスの手をはじき、
布団に包まった。
とにかく寝たいらしい。
だがここでアレックスは引くわけにはいかない。
なぜならお腹が減っているからだ。

「ドジャーさん!ほら!早起きは3グロッドの得ですよ!」
「・・・・・・じゃぁ3グロッド払うからもうちょい寝かせてくれ」
「お金よりご飯です!!!」
「いいから散れ散れ!」

ドジャーはどうしても起きようとしないようだ。
アレックスはため息をついた。
このままではご飯が食べられない。
だが諦めるわけにはいかない。
なぜならお腹が減って・・・・・

ふと
机の上の物に目がとまった。
ドジャーのダガーだ。
アレックスはそれを手に取る。
そして振り上げた。
そして言う。

「朝ごはんをくれてやる!!」



ドジャーの悲鳴が半径50mに児玉した。











S・O・A・D 〜System Of A Down〜

<<新しい朝とご飯と女侍>>






「ちょっと!ドジャー!アレックス君!いる!?」

一人の女性が家のドアを開け放ち、
そしてドジャーの部屋のドアも大きな音をたてて開けた。
するとするとそこには・・・

「・・・・・・・・・・なにやってるのあんた達・・・・」
「よぉ、マリナ」
「マリナさん・・・・助けてください〜・・・・」

両手に数本のダガーを構えるドジャー。
そして目の前にはタルの中から顔だけ出したアレックスがいた。
まるで海賊要塞にいるモンスターのようだ。
アレックスが詰め込まれたタルには数本のダガーが刺さっていた。

「あぁ、マリナもやるか?名づけて"聖騎士危機一髪"だ
 アレックスが血を噴出したら終わり、
 それまでダガーをタルに刺し続けるってゲームだ」

怖いゲームを発明するものだ。
ドジャーはそう言うなりダガーをアレックス入りのタルへと投げつけた。
いい音を鳴らしながらダガーはタルへと刺さる

「イタッ!今刺さった!今太ももにちょっと刺ささりましたって!」
「カッ!俺のケツの恨みだ!」
「お尻の恨みって何よ・・・・・」
「いやぁな、アレックスの野郎が俺を起こそうとケツにダガーをぶっさしやがったんだ!
 なぁにが「朝ごはんをくれてやるっ!」だ!なめてんのかテメェわ!」

ドジャーがもう一本タルへ投げつける。
今度はアレックスに刺さらなかったようだ。
アレックスがふぅと安心の息を噴出すと
ドジャーはチッと舌打ちをした。
寝起きの恨みは時として怖い。

「・・・・・あんた達は朝から楽しそうでいいわね・・・・」
「で、マリナこそ朝っぱらから何のようだ?」
「あーそうそう。なんか朝っぱらから店にメッツが入り込んでるのよ
 なんとかしてちょうだい・・・・」











-酒場"Queen B"-


「おーぅ!ドジャーとアレックス!ひさびさじゃねぇか!」

当然開店してるはずもない朝の酒場のテーブル。
そこには豪快に足をテーブルの上に投げ出して座るメッツがいた。

「ひさびさじゃねぇよ!一昨日も見舞いに顔出してやったじゃねぇか」
「ガハハハ!まぁ深く気にすんなって!」
「どうしたんですかメッツさん。病院にいなくていいんですか?」
「朝っぱらから抜け出すなんて珍しいじゃねぇか」
「え?あ・・・・あぁそれがな・・・・まぁ・・・・・その・・・・なんだ・・・・」
「手術が怖いんですって」
「「はぁ!?」」

メッツはその言葉を聞こえないフリをして煙草に火を付けた。
どうやら手術を怖がってるのが恥ずかしいらしい。

「本当にわけのわからない所で怖がるんですね・・・・普段は怖いもの知らずなのに・・・・」
「で?なんで手術なんだマリナ?」
「レイズの話だと直で内臓にヒールを与えるのが一番なんですって
 入院は手術ができる体力を回復するもので手術は最初から入院の予定に入ってたそうよ。
 だから入院費の中に手術費は入ってるって言ってたわ」
「ほぉ、じゃぁ金の心配はなさそうだな」
「メッツさんの心配はいいんですか?」
「そうだな、手術くらいでこいつが死ぬなら心配もするけどな」

ドジャーの目線がメッツへ向く。
メッツはギクっとした表情をした。

「じょ、冗談じゃねぇぜ!手術だぞ!?腹かっさばいちまうんだぞ!?
 そんなもん俺死んじまうじゃねぇか?!」
「死にませんよ、ちゃんと麻酔とかあるんですから・・・・」
「いや死ぬ!絶対死ぬ!俺は何人の人間をぶった斬ってきたと思ってんだ!
 そん中で腹真っ二つにして生きてた野郎なんていなかったっての!」
「だから麻酔があるっつってんだろ?」
「麻酔?麻酔ってなんだよ!眠るだけじゃねぇかオラァ!
 じゃぁ寝込みを襲われた奴にガムテープ貼ったら生き返るってのか?!」

説明がめんどくさい・・・・
というか説得がめんどくさい・・・・
大きな体からよくこうもドンドン弱音が出てくるもんだなぁとアレックスは関心した。
そしてドジャーはメッツの話を尻目に
WISオーブを口に当てていた。
どこかへWIS連絡をとっているようだった。

「・・・・・あぁそうそう。郵送。そうそう。おぅ、人間一人。じゃぁよろしく」

そういってドジャーはWISオーブの通話を切った。

「どこに電話してたんですか?」
「まぁ救急車みてぇなもんだ」

よく分からないが、
ドジャーも自分と同じく説得するのを断念したのだろうと思った。
いや、ドジャーとメッツは長年の付き合いだ。
むしろ断念する前にメッツの事なんてお見通しなのだろうとアレックスは納得した。
それにしても救急車とはなんなのか

そう思っているとあまりに早くその救急車は登場した。
迅速ともいえるべき速さ。
いや、それが彼女達の仕事なのだから当然である。

ホウキにまたがった一人の赤い髪の魔女。
それが店のドアを開け放ちながら飛んで入ってきた。
そして空中でキキッとブレーキをかけたと思うと
アレックス達の目の前で静かに足をついた。

「こんにちは!"魔法であなたとあなたを繋ぐ"カレワラWIS局です!
 お届けモノはどちらでしょうか?」

アレックスとマリナも状況を飲み込み、
そしてドジャーと共に三人でメッツを指差した。
メッツは「イ゙!?」と驚いていたが、
カレワラWIS局魔女はそれをお構いなしに話を続けた。

「はい。お届けはミルレス白十字病院までですね?」

「おぅ」
「よろしくお願いしますー」

アレックス達の言葉を確認した後、
魔女がホウキを振ると、
蛇のようなロープが現れてメッツに絡まる。
そしてメッツの体を縛り付けた。
メッツの筋肉質な体が身動きできなくなる。

「ちょ、まて!簡便してくれ!手術はイヤだ!あんなもんやったら死んじまう!
 俺はぜってぇ手術しねぇぞ!手術するくらいなら死んでやるぞオラァ!!!!」

どっちにしても死ぬんじゃないか・・・・
まぁともかくメッツの言い分を尻目にメッツは魔女のホウキに縛り付けられる。
そして魔女はそのホウキに跨り、
少し宙に浮きながら言った。

「ではご利用ありがとうございました!
 それではまたカレワラWIS局をよろしくお願いします」

そうして魔女は店から飛び立った
メッツの「イヤダァア」という叫び声がどんどん遠くなっていく。
そしてとうとう声も聞こえなくなった。
数分後にはミルレス白十字病院の中だろう
アーメン。

「まったく。朝から迷惑かけないで欲しいわ・・・・
 朝っぱらから店に入ってきて「マリナァ〜助けてくれ!医者に殺されるぅ!」よ?」
「カカカッ!メッツはアホだな」
「命を助けてもらうわけなのに・・・・ほんとメッツさんは面白いですね」
「面白いで迷惑かけられてちゃたまらないわ・・・・」

そう言ってマリナは店の奥へと入っていった。
酒場の店主なのだ。
夜遅くまで営業している事を考えるとこの時間は早い。
寝足りないのだろう。

とりあえず空き家と変わらないこの酒場に
何一つ予定のないアレックスとドジャーが残された。
いや、アレックスには何物にも変えられない予定が残ってはいるが・・・・

「店の冷蔵庫開けて適当に朝飯でも食うか」
「まってました!」

それはある意味泥棒という。
ドジャーにとっては日常茶飯事だが
アレックスとしても飯のためならなんでもする。
そう、今朝ごはんより優先順位の高いものはない


その時だった。
店のドアがカランカランと鈴を鳴らしながら開いた。

「ん?こんな時間からやっておるなんて珍しいな」

それはまるで男のような言葉使いだったが
入ってきたのは綺麗な女性だった。
着物に身を包み、腰には不釣合いな剣の鞘が掛かっていた。
一見して女侍といったところだろうか

「うぉ、イスカじゃねぇか」







                 






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