「俺らを誰だと思ってやがんだ!」

どこのどいつが言ったかと思ったら
一番偉そうな奴の顔の穴が動いたからそいつなのだろう。

「俺ぁマルボ!99番街最強ギルド『戦盗民族』のギルマス様だ!」

「だとよメッツ」
「ガハハ!知らねー!」

ドジャーとメッツは肩を並べながら笑った。
苦笑とあざ笑いだ。
ざっと10人ほどに囲まれているこの状況。
だが二人はそれをなんとも思ってないようだった。
メッツは懐からタバコを一本取り出し火を点ける。

「知らないだぁ!?このマルボ様を!?『戦盗民族』を?
 聞いて驚くなよ二人組み。俺らのギルドはまず戦士と盗賊だけで・・・・」
「お、おやびん」
「あん?なんだ。いまいいところじゃねぇか」
「それがおやびん・・・」
「こ、こいつら例のアレですぜ・・・・」
「例の?アレ?」
「あの・・・・・・メッツとドジャーですぜ!!」
「な!!!」

ごろつきギルドの全員がドジャーとメッツを見る。
するとドジャーは「はぁーいドジャーでぇーす」と手を挙げた。
メッツもガハハと笑いながら手を挙げた。

「こんなふざけた野郎どもがあのメッツとドジャーだと・・・・」
「あのメッツとドジャーじゃ分が悪いですぜおやびん」
「で、出直しましょう!」
「アホか野郎ども!ひるむんじゃねぇ!あのメッツとドジャーといえど
 こっちは11人いんだ。こっちのが有利に決まってるだろが!」

「10人の間違いじゃねぇか?」

「あん?」

とマルボが横を見ると、そこには額から血を吹いてる手下がいた。
頭の中心にダガーが突き刺さっている。
その手下はゆっくり地面へ倒れた。

「ひ、ひぃ!」
「な、貴様!いつの間にダガーを投げた!」

「いつの間にって・・・なぁ、メッツ」
「ガハハ!・・・だな。べちゃくってる方が悪いわな!」

メッツは口からタバコをプッと吹き出し
両手に両手斧を取り出した。
その大きな両手斧が両手に構えられるとかなりの威圧感である。

「あんな数十キロはある斧を二つも!」
「お、おやびん!やっぱ分が悪いッスよ!」
「ひるむなっつってんだ!俺達『戦盗民族』は99番街最強のギルドだぞ!」

「オラオラ、テングが威張ってやがんぜドジャー」
「カッ!どいつもこいつもすぐに"最強"って言いたがる。得に犬レベルな奴ほどな」
「ガハハ!犬ってか!野良犬にゃぁ間違いねぇやな!」

メッツはその場で斧をブゥンブゥンと回した。
そして肩をコキコキと鳴らす。
準備運動は万端とでもいいたそうだ。

「おっしゃオラァ!このメッツ様が相手してやんぜクソ野郎ども!
 ションベンちびる準備は完璧か!?死んでから漏らしてもママはいねぇぞオラァ!」

メッツが飛び出す。
片方の斧を振り上げながら突進する重戦車。

「う、うわぁあ!」
「きたぁあ!」

蜂の子を散らしたように逃げ惑うゴロツキ達。
だが逃げ切れない。
あぁ無情。
一人目の犠牲者に斧が振り下ろされた。
いっちょあがり。
その男は地面にめり込みながら真っ二つに切断された。

二人目の犠牲者はメッツが振った斧を腰で受け、
上半身だけ屋根の上まで吹っ飛んだ。

「わわ・・・あわわわわわ!」

逃げる一人のゴロツキ。
とにかくメッツのいない方へと。

「残念。こっちも行き止まり」

ゴロツキの目の前にドジャーが立ちふさがった。
そしてダガーで首をひと斬り。
ゴロツキは首を折り曲げて地面に沈んだ。

「カッ!むしろ"生き"止まりってか?」

そうしてる間にすでにメッツの目の前に7人ほどの死体が並んでいた。
7人の死体が14個になって転がっている。
いや、ひとつ屋根の向こうに吹っ飛んだから13個か
真っ二つ。
割られたスイカのように簡単に死体が並んでいる。
15個目の体の部品がボロリと転がった時。
とうとう敵はギルドマスターのマルボだけになった。

「わ、分かった!やめ!やめだ!今日は簡便しといてやってもいい!」

下がりながらマルボは言う。

「簡便しといてやってもいい?何言ってんだこいつ」
「さぁーーな!脳みそも犬レベルなんだろうよ」

「こ、こうしよう!お前らを俺の手下にしてやる!
 ど、どうだ?99番街最強の『戦盗民族』に入れるんだぞ?な?
 お前らがいりゃ99番街制圧も夢じゃないぞ、な、それでよ・・・・」

ドジャーとメッツが一歩踏み込む。
その音でマルボは声を止めた。

「99番街制圧?夢のねぇやつだなオラァ!」
「ほんとレベルの低いことしか言えないやつはこんな奴ばっかなんだろうな」

と言いながらしゃべりついでにドジャーはダガーを投げる。
その瞬間にアッサリと『戦盗民族』は全滅した。

「あーあ。売られたケンカはほとんど金にならねぇからイヤだぜ」

そう言いながらドジャーは売れそうな装備をゴロツキの体から剥いでいた。

「俺ぁスカッ!とすっからいいけどな!ガハハ!」
「カッ!俺はオメェと違って面倒な事は嫌いだからな」
「それよりよドジャー」
「あん?」
「こいつギルドに入らないかとか言ってやがったな」

メッツはマルボだったモノを蹴飛ばして言った。
そして"食後"のタバコに火をつけた

「あぁ、そんな話クソ食らえだけどな」
「いやぁー俺は面白そうだと思ったぜ?」
「は!?何言ってんだメッツ!あんな野郎のギルドに入りたかったのか?!」
「ガハハ!違う違う。なんかギルドっつーもんが面白そうでよぉ」
「カッ!メンドくせぇよそんなもん。人とツルむのに箱根なんて作らなくていいっての」

「面白そうな話をしてるな」

ドジャーとメッツが振り向く。
そこには片手に女を連れた男がいた。

「おぉジャスティンか」
「カッ!また違う女連れやがって」

ジャスティンと呼ばれた彼は
背中に鎌(サバスロッド)を背負った聖職者だった。
一言で言うと美男子。
女を挑発するような長髪。
いつも絶やさない笑顔。
ドジャー曰く"スカした野郎"だ。
だがドジャーとメッツにとって一番長い付き合いの男でもある。
というよりドジャーとメッツが初めて気を許した相手でもあった。
三人で行動する事も多かったほどだ。

「いいじゃないか。あ、ごめんよ今日はここでお別れなんだハニー。
 さみしいけどまた明日ね。今日も帰ったらすぐ連絡するからさ」

そう言ってジャスティンは横の彼女の額にキスした後、
手を振って分かれた。
ドジャーとメッツは同時に「ケッ!」とツバを吐き捨てた。

「んで、ジャスティン。面白そうっつってたな」

「いや、その前に・・・・」

ジャスティンは鎌を持ち上げた、
そしてスッとメッツの足元へ添えた
いや、それはメッツの足元ではなく
マルボの死体の首元だった。
マルボの首にひっかけるように鎌が当てられた。

「ドジャー、メッツ。お前らはまだまだ仕事が荒いよ」

そしてジャスティンは鎌を一気に引く。
マルボの死体の首は「ぐぇっ」という声を上げながら飛んだ。

「確実に生きては返さない。それくらいじゃないとナめられるよ」

「カッ!微妙に殺し損ねたのに気付かなかっただけじゃねぇか」

「それが荒いって言ってんだよ。ってまぁそんな事はいいんだ
 そうそうギルド。ギルドの話だ。作ろうぜ俺達でさ、な?」

「だーかーら!メッツと話してたの聞いてただろ?メンドいっての!」
「ガハハ!そうらしいぜジャスティン。俺ぁ作ってもいいと思うんだけどよ」

「そんなドジャーに吉報だ。ギルドってのは作っといて損にならないんだぜ
 ルアス城でパッパと手続き済ますだけでお得いっぱいってね。
 WISオーブにギルド通信機能やギルドメンバー表機能が増えて
 さらにルアス城の中にギルド用特大金庫を用意してもらえるってもんさ
 ギルド登録してないとできない事やいけない所もあるしな」

まるで商売上手の商人のようにジャスティンは薦める。
それを聞くとさすがのドジャーもまんまと関心した。

「じゃぁ作ってもいいかもな」
「ガハハハ!ドジャーは"得"に弱ぇーんだからよぉ!」
「うっせぇぞメッツ!もらって損ないもんはもらっときゃいいんだよ!」

「その通りだ。俺としてはギルド表が一番ありがたいね
 なにせフレンドリストは女の名前でいっぱいなもんでさ、
 もうすぐリストからお前らを削除するはめになるんだ」

ドジャーとメッツはまた同時にツバを吐き捨てた。

「んで具体的にはどうすんだよ」

「俺はWISの機能さえ使えればいいからお前らで好きに企画してくれよ」

「じゃぁまぁドジャーがギルマスやっちまえよ!」
「あん?メンドいだけじゃねぇか ん〜なもん」
「だから言ってんだっての!ガハハハハ!でもよ、やっぱお前がいいと思うぜ?」
「あいあいあいあい。んじゃやってやるっての!
 メッツやジャスティンが任せる方が心配だしよ」
「お、そういやギルド名どうすんだ?あー!楽しくなってきたぜオラァ!」
「ギルド名なんてどうでもいいっての。メッツで決めてくれや」
「じゃぁ『メッツ&ドジャー』ってのどうよ?」
「「却下」」
「ガフゥ・・・」

「なんでいきなり俺をハショるんだよ・・・・
 大体ギルド名は6文字に収めないとだめだ
 じゃないとルアス城で公式登録できないらしいぜ」

「あーん。じゃぁメッツ&ドジャーを略して『MD』ってどうよ」
「おめぇメッツ&ドジャーから離れろよ!」
「あぁーん?んじゃぁドジャーは何がいいんだよ」
「そうだな。こんな死に腐った街のギルドだ
 『マイソシアデッズ』。略して『MD』でどうだ?」

「なんで死ななきゃならないんだよ。
 俺達がアンデッド系のモンスターみたいじゃないか
 それじゃぁ女の子にモテないだろ?」

「うっせぇジャスティン!お前が俺に決めろっつっただろが!」
「おぅおぅ!こんなんどうだ?なんかルアス何番街かに変な会社あったろ
 『モスディドバスターズ』だったか?モスディドからとって『MD』!どうだ!?」
「「却下」」
「ゲフン・・・」
「なんでモスディドからとるか意味わかんねぇんだよ」

「・・・・・・もう俺が決めちゃっていいか?」

「あぁそうしろよジャスティン。結局テメェが文句たれてばっかだしな」
「俺が決めたかったぜ・・・」
「オメェはロクな意見ださねぇじゃねぇかメッツ・・・」

「そうだなぁ・・・。さっきの・・・えぇっと。なんだっけ?マルボだっけ?との戦い
 参加は面倒だからデートついでこっそり見てたんだけどな
 あいつみたいに低レベルで終わりたくないよな
 それじゃぁ女の子にモテないしさ、もうでっかくいっちゃわないか?」

「でっかく?」
「なんかよさそうだな!」

「いや、俺はいつも思ってたんだ。こんな世界の端みたいな街で俺は終わりたくないって
 周りの奴らはこの99番街を"ゴミ箱"なんて言ってばかにする
 ルアスだって街は2・30ほどしかないのにこの街に付けられた名は"99番街"
 いつまでたっても末の街って皮肉をこめてな。なめんなってんだよな」

ジャスティンは特別にこの街に愛着を持つ心があった。
いつもは軽い女たらしだが、
ドジャーとメッツにだけたびたびこういった自分の思いを打ち明けていた。
そしてドジャーとメッツもそれが本気だという事も分かっていた。

「んで?ギルド名は?」

「まぁ聞けよドジャー。俺いつもお前らに話してるだろ?
 いつか世界に目にものを見せてやるとね。
 99番街を馬鹿にするやつらに目に物をみせてやりたい
 つまり"クソッたれの逆襲"。な、面白そうだろ?」

「ガハハ!そりゃ面白そうだ!俺らのクソったれギルドで暴れてやるか!」
「んーでー。ギルド名はどうなったんだっつてんだ!」

「でね、こんなのはどうだ?『メジャードリーム』。略して『MD』」

「カッ!ダッセ!結局半分女受け狙ってる名前じゃねぇか!」
「ガハハ!まぁそれでいいじゃねぇか!なんか気に入ったぜ!
 『MD』!『メジャードリーム(クソッたれの逆襲)』!いいじゃねぇか!」
「まぁな。悪かねぇな」
「メジャー=メッツ&ドジャーだな!」
「メッツ・・・・お前はそっから離れやがれ・・・
 ってかなんで『MD』って頭文字から離れて考えなかったんだろな俺ら・・・」
「ガハハ!決まったもんはもういいっての!」

「じゃぁ、ドジャー、メッツ。それぞれの武器を出してくれよ」

「あん?」
「?」

ドジャーとメッツは不思議そうにそれぞれダガーと斧を前に出した。
そこにジャスティンは自分の鎌を当てた。
ダガーと斧と鎌の先端が当たり合う形になる。

「とりあえずこの3人から『MD』が始まりだ」

「カッ!俺達がギルドなんて思ってもみなかったぜ!」
「ガハハ!でもなんかやるとしたらこの3人だとは思ってたけどな!」

「ドジャー、メッツ。"桃園の誓い"って知ってるか?」

「まったく知らねー」
「あぁ、なんかどっかの国の昔話だったか?ってかジャスティン
 お前に無理やり聞かされた話じゃねぇか。こんな風に成り上がりたいってよ」
「あぁアレか」

「そうそれ。アレをやろうぜ」

「カッ!こっぱずかしい!」
「いいじゃねぇかドジャー、やろうぜ!」
「ケッ」

「ま、適当でいいさ。適当に改ざんしてさ」

ジャスティンが軽く笑った後、ジャスティンから言い始めた。

「俺達3人」
「生まれた時、場所は違えど?だっけか」
「育った場所はここ99番街ってか?」
「そして死ぬときは同じ時、同じ場所を願わん」
「カッ!そりゃぁ簡便だな!」
「ガハハ!死ぬときまでおめぇらの顔見てると思うとたまんねぇな!」
「ハハ!大成しようじゃんか、三人でさ」

三人は武器を下ろす
そして肩を並べて歩き出した。

「カッ、三人じゃ無理だろ」
「何人か声かけようぜ」
「アレはどうだい?女の子がいないんじゃ寂しいし前にココ(99番街)に来た女」
「あぁマリナか」
「そうそう、やっぱ女の子がいないとね・・・・って彼女もう女の子って年でもないけどさ」
「お、ココに落ちてきたっていやぁ三騎士の養子って噂のガキもいたな」
「あと実力でいったら傭兵好きのチェスターとか」
「聖職者もいるんじゃねぇか?」
「何言ってるんだ。俺でいいじゃないか」
「カッ!首刈って生活してる上に女からも貢ぎ物もらってるやつが聖職者なんて認めねえよ」





この後、

《MD》の名は知る人ぞ知るという形で有名になった

そして三人は形は違えど有名になっていく

ドジャーは標的を選ばない盗賊『人見知り知らず』

メッツはイカれた狂犬『クレイジージャンキー』

そしてジャスティンは戦場で会ったが最後『ハローグッバイ』



しかしこれから数年後


《MD》にジャスティンの姿はなかった。

好きだから、気が会うから
だから同じ箱根の中・・・・とはいかないものらしい。



とにかくこれが


ギルド《MD》の始まりだった










                 






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