「カァ〜!うめぇ!」

ドジャーが酒をゴンッとテーブルに置く。

ここはルアス99番街の酒場『Queen B』。
店主マリナの経営するこの店に、
アレックスとドジャーはいつものように訪れていた。
奥のカウンター席のすぐ横。
そのテーブル。
そこはドジャーとアレックスの特等席。

「やっぱりマリナさんの料理はおいしいですね」

新鮮な肉で作ったハンバーグを口へと運ぶ。
アレックスの顔に"したたり落ちる肉汁がたまらん!"といった幸せそうな笑みが広がる。
幸せなことだ。
食べていればいつでもこんな顔ができるのだから・・・・

「でっしょぉ〜?でしょでしょ?私も自分でそう思うわ〜〜。
 それにしてもアレックス君はおいしそうに食べてくれるから作りがいがあるわね」
「僕もおいしいから食べがいがありますよ」
「あら、私の料理以上にアレックス君はお世辞がうまいわね!
 よっしゃ!サービスしちゃうわ!前から食べたがってたステリクの亀ゼリーあげちゃう!」
「ほんとですかっ!?」

「おーぃマリナ。酒うめぇ。だから俺にもサービスくれよ」

「サービス?あんたなんて水のセルフサービスで十分だわ」
「・・・・」
「水いいですね。ドジャーさんにはそれで十分です。
 それに節酒に心がけるのも手じゃないですか?生活費が格段に浮きますしね」
「カッ!お前が食うのをやめた方が早いっての」
「無理です」
「・・・・・・」
「不可能です」
「・・・・・・・うっせ!俺だって無理なんだよ!」
「マリナさん。僕のご飯。ドジャーさんのお酒。どっちがやめた方がいいと思います」
「そりゃぁ店側としちゃどっちもありがたいけど、
 どっちかといえばドジャーの酒ね。あんまり酔うと迷惑だし」

「・・・・・・ハァ・・・・俺の仲間はお前だけだぜ」

ドジャーはそう言いながらジョッキを酒瓶にコツンと当てた。
さみしい事だ。
隣では優遇される幸せそうな食いしん坊。
自分は悪くもないのにこの待遇。
財布の中身を見るとさらに悲しくなる。

そう思っていると、
カランカランと音が鳴り、
酒場のドアが開け放たれた。



「ほぉーーーい!元気にしとるかぁ!」
「元気ぃー?」

威勢のいい二つの声が店内にこだました。
その威勢のいい声。
その音源は老体と子供から発せられた声であった。

「あら、レン爺さんとフィリー君じゃないの」

「ほっほ。こんばんわ」
「こんばんわー!」

彼らは99番街の住人である。
元気な爺さんはデイル=レン。通称レン爺と呼ばれている。
老体に似合わぬ元気さと孫バカっぷりが突き抜けているが、
吟遊詩人の世界では『楽音屋』と呼ばれるほど名売れの詩人である。
詩人の中ではこのへんくつな老人を崇拝してる人も少なくない。
おかしな世界だ。

横の少年はデイル=フィリー。
レン爺の孫でありながら99番街のイタズラ少年。
ヤンチャでワンパクな容姿性格と裏腹に、『ハイド&シーク』と呼ばれる天才盗賊少年。
わずか5歳でインビジブルをマスター。
現在10歳にしてカモフラージュをマスターという末恐ろしい子である。
子供嫌いなドジャーにとっては、
なまいきなフィリーはうざくてしょうがない。

「おいしょ」
「僕もよっこらしょーーー!」

レン爺と少年フィリーは
カウンターのすぐ横のアレックスとドジャーの座っているテーブルに座った。

「おいおいレン爺。ガキと相席なんてたまんねぇよ。
 酒も飲めない。毛も生えてない。そんなガキの横でうまい酒が飲めるかってんだ」

「まぁいいじゃないか、あ、マリナ譲ちゃん。わしにも酒を」
「僕はワイキバナナジュース!」

「はいはーい」

カウンターの裏で洗い物をしながらマリナは返事をした。

「カッ・・・・んで?今日はなんなんだレン爺」

「お、察しがよいなドジャー」

「カッ!レン爺。あんたと俺ぁ長ぇ付き合いだ。
 あんたが俺に用があるんだなってくらい分かるぜ」

「ほっほ。まぁ今日は依頼ってわけじゃないんじゃ」

レン爺が懐から数枚の手紙を出した。
小さな白い封筒。
可愛らしいシールで栓をされている。

「なんですかこれ?」

「・・・・・・結婚招待状じゃ」

「へぇーおめでたいですね。一体誰の・・・・」

アレックスが言いかけている途中。
ドジャーはゴンッとジョッキを置き、
驚いた様子で勢いよく聞く。

「おいおいおいおいおいおい!ちょ、その結婚式ってまさか・・・・・」

「そうじゃ・・・・・"フィアーとフィラー"のじゃ・・・・」

その言葉に、
食事を運んでいたマリナも驚く。

「えぇ?!とうとうなの?」
「マジかよ・・・・」

マリナとドジャーが驚きとため息を漏らした。
アレックスにはどういう事か分からない。

「あの・・・・フィアーさんとフィラーさんて誰なんですか?」

レン爺はニコニコと笑いながら、
アレックスに話す。

「おぉ、アレックスは知らないはずじゃのぉ。フィアーとフィラーはワシの子なんじゃ」
「ぼくのおかあさんとおとうさんだよー!!!」

「????・・・・はい??」

説明させてもよく分からない・・・。
・・・・・
・・・・整頓してみよう。
レン爺さんのお子さんが結婚。
・・・・・・
フィリー君はレン爺さんのお孫さんだから・・・・・・
あれ?
フィリー君のおかあさんとおとうさんが結婚?
フィアーさんとフィラーさんの子がフィリー君?
んと・・・フィアーさんとフィラーさんはレン爺さんの子供で・・・
でも結婚式て?
へ?

「あぁー・・・・・複雑な家庭なんだよな」
「複雑よね・・・・」

「複雑なんじゃ・・・・」
「むずかしくないよ!お母さんとお父さんが結婚するんだ!」

「いえ・・・よく分からないんですけど・・・」

「いや、まぁ・・・その・・・なんじゃ。ワシの子のフィアーとフィラーは男と女での・・・
 というかまぁ・・・・簡単にいうと・・・・兄妹で結婚するわけじゃ・・・・・」

「!??! えぇぇ?!」

まぁ・・・
頭の中で形になっていたようで・・・
やっと理解した。

つまりレン爺さんの子供のフィアーとフィラーが愛し合い。
その子供がフィリー。

「今まで血縁で結婚なんて法律上できなかったわけじゃない?
 でもフィアーとフィラーの愛はもう止めることもできなくて・・・・」
「結婚もせずにフィアーとフィラーは子供・・・つまりこの生意気なフィリーを産んだわけだ」

「生意気じゃないよーだ!」

「その辺が生意気なんだよ・・・」

「ほほ。ま、それで今の無法時代。法もへったくれもないからのぉ。
 この機会に遅いながらも結婚してしまおうという事なんじゃよ」

「はぁ・・・なるほど」

といってもまだよく頭が理解できていなかった。
えっと・・・とにかくレン爺さんの子であるフィアーさんとフィラーさんが禁断の兄妹愛をして、
それで無婚のままフィリー君が生まれたわけで。
それで・・・・無法時代になった今更、遅かれながら結婚式をあげようという事か。
ややこしい・・・・
そして99番街らしい話でもあるな・・・・

「まぁ面白い話じゃないですか」
「面白がってるのは当の本人達だけだってんだ。ややこしい・・・・・」
「結婚式にいってあの二人のラヴラヴ加減を見ると思うと嫌気がさすわね・・・
 なんたってあの二人のバカップル具合には反吐がでそうになるし・・・」

「フィアーとフィラーは自分達が結婚式をしてみたいだけじゃからな・・・・」

ドジャーとマリナとレン爺は同時にため息をついた。

「いいじゃないですか。お祝い事はあるにこしたことないですよ」
「フィアーとフィラー二人の自己満でみんなが幸せだと思うか?
 結婚してるのも分かってるのに結婚式あげるんだぞ?今更なんだって感じじゃねぇか!」

「ワシも少し道を外れた結婚を公にはしたくないんじゃがの・・・・」
「じいちゃん?じぃちゃんはお母さんとお父さんが結婚してほしくないの?」
「ほほ、お前が生まれたからにはいい事なんじゃがな」

レン爺がフィリーの頭をなでる。

「カッ!最悪なのはご祝儀だ!ごーしゅーうーぎ!!
 自己満の結婚式のためにご祝儀なんざあげれるか!?
 ご祝儀ってのは金を払うってことなんだぜ?ふざけんなって話だ!
 物を買うわけじゃねぇ!何も手元に戻ってこないのに金を払う!
 こんなにふざけた話がこの世にあっていいのか!どうなんだ!あん!?」

「ほっほ。お金の事なら気にせんでえぇわい。式で"アレ"をやることに決まった。
 それだけで来る価値はるじゃろう?後はお前等次第じゃよ」

それを聞くと、
ドジャーの目の色が変わり、
話にとびつく。

「マジか?!アレやんのかよ!!行く!そりゃ行くぜ!」
「え?ホントに?なら私も行くわ!」

「"アレ"?・・・・・アレってなんですか?」

「アレックス!おめぇ知らねぇのかよ!・・・ってまぁそれはまた後で教えるぜ」

「ほっほ。それよりドジャーやい。お前んとこの他のギルドメンバーも誘っといてくれんかの?」

「うちの?レン爺は知ってると思うがよぉ
 うちのメンバーなんざみんなフラフラしててそうそう捕まるもんじゃねぇぜ?」
「そうね。今もリストはほとんど真っ黒」
「普段から連絡とれるのは定職を持ってるマリナとレイズだけだってんだ。
 あとの奴らはフラフラと何をしてるやらさえ分かんねぇよ」
「メッツさんは入院中だから連絡はとれるんじゃないですか?」

「ほぉ、あのメッツが入院とは珍しいのぉ、まぁ無理してこさせんでえぇわい。
 あのゴリラみたいな男に結婚式なんぞ似合いはせんからのぉ」

「まぁレイズぐらいには連絡とってみるか」
「来ないとは思うけどね」

「それよりじぃーちゃぁーん!得盛ワイキパフェSPが食べたい!」
「しょーがないのぉ・・・マリナ嬢ちゃん。頼むわい」

「はいはーい」

ととととと得盛ワイキパフェSP?!
あのワイキフルーツで豪華に装飾された高級デザート?!
僕だって食べたいのに・・・・・
まだ食べた事ないのに・・・・・
「たべたーい」だけで食べれるなんて・・・。
くそぉ!溺愛ジジ馬鹿の力はなんて偉大なんだ!
うぅ・・・食べたい・・・。

「ドジャーさん!この僕に!どうかワイキパフェを!」
「カッ!うちはビンボーだから我慢しなさい」
「・・・・・・そんな・・・・・ドジャーさぁーん・・・」
「ダメだ」
「・・・・・」

ジャラジャラ溜め込んでるくせに・・・・。
アレックスは口にスプーンをくわえたままテーブルの上にうな垂れた。























-イカルス結婚式場前-




「あぁーイカルスに来るのはめんどくっせぇ!」
「まぁたしかに面倒ですよね」
「そんで見ろよこのイカルスの景色!
 田舎なんてレベルじゃねぇ!なんだこりゃ!?何世紀前の風景だこりゃ!?」

イカルスの風景。
まぁご存知の片はご存知だろう。
まぁあんとも原始な場所だ。

「まぁ・・・・たしかに発展という言葉とはほど遠いですよね」
「発展もクソもねぇよ!なんだこの"この間やっと手で道具を持つのを覚えました"って文明力は?!」
「ちょ、失礼ですよドジャーさん」
「うっせ!こんな金の匂いのカケラもない場所は嫌いだってんだ!
 大体なんで結婚式場はイカルスにしかねぇんだよクソ!ルアスでやれルアスで!!!」
「あぁー。それはちゃんとした理由があるようですよ」
「んあ?新婚旅行もついでにってか?」
「いえ、ほら。ここって中立都市じゃないですか。まったく世間とは無干渉の地域です」
「あぁ、そうだな。んで?」
「世間は善悪都市に分かれていますよね。その他にも生まれつきの対立関係のある勢力とか。
 そして結婚ってのはどこの誰と誰がするか分かりません。
 でも中立都市のここならそんな箱根を超えて誰もが結婚を祝えるってわけです」
「なるほどね。カッ!でもよぉ」
「はい?」
「どこの誰だって兄妹が結婚するとは思わなかったろうな」
「・・・・・箱根超えすぎですからね」
「ま、入るか」

ここが結婚式場なのかという外見だが、
結婚式場と立て札がある。
結婚式場なのだろう。

アレックスとドジャーが結婚式場に入ろうとする。

「そこ。おまえら。むり。はいれない」

明らかに"僕はイカルス原住民です"って男が話しかけてきた。

「あん?なんだてめぇ」
「入れないってどういう事です?招待状はちゃんとありますよ」

「おまえらのふく。だめそれ。"せいそう"いる。かえ。ここうってる」

「はぁぁ?正装ってそんな事レン爺の野郎なんも言ってなかったぞ」
「えっと。タキシードですよね・・・」
「あんな堅っくるしいの着れるか!」
「でも入るのに必要らしいですし・・・・・・・あの、いくらなんです?」

「にひゃくまんぐろっど。やすい。かえ」

「「かえるか!!!」」

「ちょ、ドジャー。アレックス君。何やってるのよ!もう始まるわよ!」

マリナだ。
式場の中から叫んでいる。

「いや、マリナこいつがよぉ」
「そいつはただのサギ師よ!早く入んなさいよ!」
「ゲ・・・」


アレックスとドジャーはそそくさと式場の中に入っていった。


「やすい。かえ」


イカルスの原住民は一人でまだ言っていた。















-式場内-




「うっわー。外見と違って中はしっかりしてますね」
「まぁしっかりしてなきゃ人集まらねぇわな。
 イカルスの野原や火山でやるってんならだれもこねぇよ」

赤い絨毯とシャンデリア。
アレックスはルアスの城の中を思い出した。
それにしても・・・・・・

「結構人入ってますね。こんなに大勢来ると思いませんでした。」
「まぁそりゃね。なんていってもレン爺はルアス99番街の3老と言われる人なのよ。
 その息子と娘の結婚式となれば人は結構集まるのは当然よ」
「なるほど・・・。結構昔はレン爺さん凄かったらしいですしね」
「カッ!それ以上にアレが目当てなんだと思うけどな」

アレというものの説明はまだきいてない。
が、
まぁそのうち分かるだろう。


「では、そろそろ新郎新婦の入場じゃ」

アレックスが思いふけっている途中にアナウンスが入る。
ステージの横際にレン爺がマイクでしゃべっていた。
どうやら司会役のようだ。
老体の割には背筋が伸びているのが元気な証だが、
それでもタキシードと蝶ネクタイがやけに似合わない。

「盛大な拍手で迎えとくれ」

レン爺がそう言うと、
会場に拍手の波が起こる。
そしてその波に引き出されたように
二人の男女が出てきた。

「わー!人がいっぱいね!」
「結構来てくれたんだね」

新郎新婦のフィアーとフィラーだ。
さすが兄妹だけあって顔が似ている。
レン爺とフィリーを足して割ったような顔をしている。
似ていて当然。
必然なる似たもの夫婦。
もしこのままタキシードとドレスを着せ替えたら
どっちがどっちか分からないのではないだろうかと思うほどである。

「って・・・あれ・・・・そういえば」
「どした?」
「どっちがフィアーさんでどっちがフィラーさんなのかまだ知らないです僕」

そのアレックスの言葉。
それに対し、
ドジャーとマリナは口を詰まらせた。

「あぁ〜・・・・えっと・・・・たしか男の方が・・・・・どっちだっけマリナ」
「え?えっと・・・・たしかフィラーが・・・・・・・・えっと・・・・・」
「フィアーのが一歳上だから・・・・」
「あぁ〜・・・・・と・・・」
「う〜ん・・・・えぇ〜っと・・・・」
「「・・・・・・」」

「エー。混乱する方々が多いと思うんじゃが、一応。新郎がフィアーで新婦がフィラーじゃ」

会場全体に「なるほど」といった空気が流れる。
会場全体が分かっていなかったようだ。
それもそのはず。
似た名前に
似た顔。
もうわけわからん。

「ナイス司会ですね」
「あぁ、でもすぐ忘れると思うぜ?」
「そうね。現に私達が忘れてるんだもの」
「そうですかね?」
「そうだ。試しにアレックス。フィアーって女より男よりの名前じゃね?」
「え・・・・」
「それに対してフィラーも女っぽい名前でもあるわね」
「へ・・・・」
「"ラ"と"ア"じゃラの方が男っぽいよな」
「でも最後に"ラ"がつくと大抵女よ。でもアも結構そうね」
「え・・・・・あ?あれ?」
「「さて新郎新婦のどっちがフィラーでどっちがフィアーでしょう」」

アレックスの頭が混乱する。

「ど・・・・・・どっちでしたっけ」

もうどちらがどっちか分からなくなった。
だがアレックスは考えるのをやめた。
考えれば考えるほどややこしくなりそうだからだ。
とにかくフィアーという人とフィラーという人が結婚したということなのだ。
これは間違いない。
もうそれでいい。
それ以上に興味はない。
恐らく他の99番街の方々もそうなのだろう。
同じ町の有名人の名と顔が一致しないのも頷ける。

そしてややこしい二人。
フィアーとフィラー。
忘れていたが、これは彼らの結婚式なのだ。

「会場のみなさーん。今日は僕たちの結婚式に来てくれてありがとー!」
「私達は幸せでーす!」

ステージの上で新郎新婦が話し始めた。
手を繋いでいる。

「カッ・・・・始まったよ」
「どーせラブラブ自慢が始まるのね・・・・」

ドジャーとマリナの不安をよそに新郎新婦の話は続く。

「子供ができてから10年!」
「神のご加護もあり、私達はようやく結婚できます!」
「10年たったって僕達はラブラブ!」
「というかその前からラブラブ!」
「生まれてこの方ラブラブ!」
「だからこの結婚は新婚であって新婚じゃないです!」
「でも愛はむしろ新婚以上!」
「そして永遠の愛をここに誓います!」
「誓いはなくても永遠なんだけどね」
「あぁ、永遠の愛さ」
「永久の愛ね」
「な、お前」
「ね、あなた」

壇上。
手を取り合い、見つめあう新郎新婦。

「ブーー!!」
「BOOOO!!」
「ひっこめー!!!」
「帰れー!」
「うぜー!!!」

ブーイングが飛び交う会場。
99番街の荒れくれ者達。
飛び交う殺気。
ある人は中指を突きたて、
ある人は親指を下へと突き下げ、
罵声とゴミが新郎新婦へと投げ込まれた。

結婚式とは何を祝うものか考え直したくなる。
こんな結婚式は見たことがない。
新郎新婦の気持ちも考えてあげたいところだ・・・・

「フィラー、僕らの愛を皆がひがんでるよ」
「しょうがないわ。私達の愛よりまぶしいものなんてないんだもの」

訂正。
観客達の気持ちの方がよく分かる。

「えー。会場のみなさん。気持ちは痛いほど分かるんじゃが・・・・
 ちょっと物をなげるのをやめてくれい!」

レン爺の言葉。
と同時。
突然。
突然会場のライトが消えた。
会場全体がどよめく。

「なぜなら・・・・・」

そしてスポットライトが突然ステージ上方へ集められた。

「なぜならこれから我が孫フィリーの入場じゃからじゃ!」

「「「はぁ!?」」」

会場全体の疑問の声と同時に
ステージ上はドライアイスが不思議に漂いだし。
舞台袖から煙がむき出したと思うと、
数十個のクラッカーが同時に鳴り響く。

そして最後にレン爺自作の音楽と共に
ステージ上空からゴンドラが降りてきた。

乗っているのはフィリーだ。

「えぇーこの子が新郎新婦の子でもあり、わしの孫でもある。フィリーじゃ!」
「こんにちわー!」

舞う花吹雪。
一点、フィリーに集まるスポットライト。
スターのような登場だ。

「わけがわからないわ・・・・」
「な、なんで新郎新婦の入場より孫の入場の方が派手なんだよ・・・・」
「ジジ馬鹿恐るべしですね・・・・」

そしてジジ馬鹿披露が始まる。

「もうこの子は天才での!『ハイド&シーク』といえばみなさんも知っとるじゃろう。
 才能とは怖いものじゃ〜・・・・フィリーは天才すぎてのぉ・・・・・
 しかし!その上どこの子よりも可愛いときたもんじゃ!」

相変わらずのベタ褒め具合だ。

「一体誰のお祝いの式か分からなくなってきたわ・・・」
「新郎新婦より孫愛のが強いかもしれませんね・・・・」
「分かる事はあのジジぃが誰もよりも馬鹿だって事だ・・・」

人々と怒れる新郎新婦をよそに
レン爺のスピーチは続く。

「もうほんとにカボチャの絵本を読んであげるのだけがわしの日課だったんじゃ。
 フィアーとフィラーが厳しく育てる分、わしになついてくれてのぉ。
 いや、しかしのぉ!肩たたきがうまいんじゃ!
 フィリーの肩たたきをしてもらうとわしの肩こりも心のこりも・・・・」

「親父!」
「お父さん!」
「俺達の話をしてくれよ!」
「私達の結婚式なのよ!」

「お、おぅ・・・そうじゃの・・・・」

レン爺はコホンと咳払いをした。
そして真面目な顔をして話し始めた。
本当に真面目な顔だ。
今の今までとぼけた孫自慢をしていたと思えない。
真剣な、新郎新婦の父親の顔だった。

「もう、最初はのぉ・・・・・・・正直フィアーとフィラーの結婚は反対じゃった。
 単純に常識破りじゃからの。それに兄妹愛を恋愛と間違えてるだけかとも思ったんじゃ。
 フィアーとフィラーが本気と分かっても反対じゃった。
 詩人的な性分で自由にさせてやりたいとは思っていたが、なにも兄妹で・・・とな。
 こういう結婚で苦労するのはむしろ本人達じゃしな・・・・」

レン爺はふとフィリーの頭に手をのせた。

「じゃが・・・・・・この子が生まれた。フィリーが生まれたんじゃ。
 ・・・これが可〜愛いんじゃ!!!それはもうメチャクチャに!
 老い先短い老後の最大の楽しみが出来た」

またジジ馬鹿具合が出てきたが、
突如また真剣な、
いや、安らかで穏やかな顔になった。

「・・・・・・・・・・・そしてこうも思ったんじゃ。
 わしと死んだバァさんの血を100%受け継いでくれている孫がいる。
 そんな孫ももてるジジィはこの世にワシだけじゃろう。
 こんな素晴らしい事はないと思う」

「もうお父さん!」
「結局フィリーの話になってるじゃないか!」

「ほほ、本当じゃな、すまんかった。
 ま、会場のみなさん。辛気臭い話はこれぐらいにしとこうかの」

レン爺さんの目が、
涙腺緩くなっているのか涙目に見えた。
それをアレックスはじんわりと見ていた。

・・・・・・・が、
周りの人間達はそうでもなかった。

「お、来るか」
「ここからが本題ね!」
「しゃー!こい!」
「おれだ!おれがやってやる!」
「はやく!はやくはじめろぉー!」

本題?
前言ってた"アレ"ってやつだろうか。
でもいい話だったしもうちょっとレン爺さんの話も聞いてたかったんだけど・・・。

「お祝いよりコレのために来た人も多いじゃろう。
 そして知らない人のためにルールも説明しとこうか」

そう言ってレン爺は後ろから何か取り出した。
ん?
花束?

「結婚式名物。"ブーケ争奪戦"じゃ!」

ブーケ争奪戦?

「ブーケ自体は知っておるな、手に入れた人は次に結婚できるというアレじゃ。
 ルールは簡単。新婦がこの花束を投げるからそれを取った物がそのブーケの持ち主じゃ。
 おっと、ご利益の花束なんかいらないよって人のために言っておいこうかの。
 この"バラの花束"ってアイテムは結構高価での。通常100万グロッドをくだらない物じゃ」

「おっしゃ!盗るぜ100万!」
「来たからにはもらって帰らないとね!」

そういう事か・・・。
ドジャーさんが来たがるわけだ・・・・。
そしてバカップルの遅婚に何十人もの人が集まる理由もこれか。
99番街の結婚式の行事かなんかなんだろうな。
はぁ・・・
世の中金金なんだなぁ・・・・。
奪い合い・・・
取り合い・・・
さすが99番街だ・・・・・


「プラス。今回のブーケ争奪戦は少し趣向をこらそうと思う」

「趣向?」

会場がどよめく。
ただのブーケ取り合戦では終わらないという事だろうか。

「まぁ、そんなに深く考える事はない。
 ひとつだけルールをプラスするだけじゃ。おぅい。フィリーやー」
「はいはーいジぃちゃーん」

そう言ってフィリーがレン爺の持つ花束(ブーケ)に触る。
すると途端に花束が見えなくなった。
カモフラージュやインビジブルで所有物まで消えるという特性の応用である。

「普通なら誰かがブーケを掴んだら終わりじゃが・・・・
 今回みなさんにはこの見えないブーケを取り合ってもらうとする。
 ブーケのインビジが解けた時にブーケを持っていた者を勝ちとする」

なるほど・・・
見えない花束争奪戦か・・・
それも100万グロッドの花束。
それはたしかに面白そうだ。

「カッ!そんなもん・・・・」

「もちろんディテクションでインビジブルを解除するのは無しじゃ。
 あ、あと衝撃をあたえてやればインビジが解けると思っている者もいると思うんじゃが、
 花ってのは柔らかいもんでの、逆に花自体が衝撃を受けにくい。
 まぁつまりはインビジの効果が消えるまで真面目に取り合ってもらうしかないってことじゃの。
 あとはルール無用じゃ、死人さえ出なきゃ殴る蹴る刺す。自由にしてくれ」

刺しちゃだめだろ。

・・・とアレックスは思っていたが・・・
周りを見ると・・・・結構武器を持っている人がいる。
さすが99番街の人達だ・・・
マジだ・・・
マジでとりにいく気だ・・・。
変スクでGキキに変身している人さえいる。
マジすぎる・・・・。

「では・・・・」

レン爺が花束を新婦に手渡す。
それがフィアーだったかフィラーだったかはもうどうでもいい。
熱気が式場に立ち込める。
会場全体の空気が変わる。
本気の意気が伝わる。
たくさんの人々の心の中で"金・・・金・・・"とつぶやかれているのが分かる。

「金・・・金・・・・」

すぐ隣には声に出ているピアスの盗賊もいるが・・・・・・

「では、」
「スタート!」

新婦の・・・・
えぇーっと・・・
フィアーかフィラーかどっちだったか忘れたけど、
そのどっちかが空中にブーケを投げた。
投げたといってもブーケ自体は見えないのだが

たった今空中で透明のブーケが舞っている。

「カッ!ラクショー!投げた時の手首と腕の動きや角度で大体の位置は分かるぜ!」

他の人々の間をかきわけ、
素早い動きでドジャーが走る。
そしてたった一人、ずば抜けた跳躍力で空中へと飛び出した。

「オゥラ!この辺だ!」

ドジャーが空中で手を掻き分ける。
そして

「おっしゃとったぁぁああ!!!!」

透明のブーケを掴み取ったようだ。
たしかに右手に透明の何かがあるのが分かる。
ドジャーがいきなりブーケをゲットしたのだ。

「あとは逃げ切・・・・」

その瞬間。
ドジャーの真横からギターが飛び込んできた。
・・・・と思った頃にはもう遅かった。

「どぉりゃぁああああああ!!!」
「ぐはっ!!!」

強力な勢いのギターがドジャーにクリーンヒット。
ドジャーは人とは思えぬ勢いで壁まで吹っ飛んだ。

「悪いわねドジャー。これはお店の資金にさせてもらうわ」

マリナの握る手に空間がある。
どうやらドジャーからブーケを奪い取ったようだ。
「ふふん」と勝ち誇るマリナの笑顔。
いや、100万のためとはいえ
仲間をギターで全力アタックするとは・・・・・。
頭蓋骨くらいはイってしまった音が聞こえたし・・・・・

「これでお店の冷蔵庫を新調できるわ!それからグラスとお皿を・・・・」

マリナに商売人的な表情が浮かぶ。
ボーナスの入った主婦のような顔。
が、当然これで終わるはずがない。

「それは俺んだ!」
「いや俺の金だ!」
「おいらの100万だぁ!」
「私の結婚祈願よ!」
「金をよこせ!」

数十人の人が一気にマリナに飛び掛る。

「きゃあぁぁああ!!!」

・・・所までは見えた。
あとはもうハチャメチャだ。
人と人がごっちゃ混ぜ。
たったひとつの花束のために殴り合い、押し合い
声が飛び交う。

「かせ!!」
「俺んだ!」
「死にてぇのか!!」
「わたしのよ!」
「放せ!俺に渡せ!!!」

もう何が起こっているのかわからない。
そして誰が持っているのかわからない。
人がかき混ぜられているように入り交じる。
殴る。
蹴る。
そして刺す。
もう乱闘どころではない。
戦争だ。
これは戦争だ・・・。

そして・・・・

「ない!!」
「ブーケはどこいった!」
「見えねぇぞぉおおお!!!」

ただ人々は見えないブーケを手に入れるために見える人をかきわけた。
どうやらインビジブーケは紛失したようだ・・・・
ゴチャゴチャに入り乱れ、
見えないブーケが無くなったらしい。

「ま・・・・・こうなるわな・・・・」

ドジャーが首を押さえながら傍観していたアレックスのもとへ歩いてきた。

「大丈夫ですか?ドジャーさん」
「首がイテェ・・・マリナの野郎・・・。おもっくそ殴りやがって・・・」
「で、ドジャーさんは諦めたんですか?」
「諦めるわけねぇだろ!でもあの中に入っていっても見えない物なんて見つかるわけねぇしな」
「で?」
「で、アレックス。なんかアイデアねぇかアイデア」
「・・・・・・・また僕だよりですか!?」
「うるせぇ!お前の食費もかかってるんだ!なんかアイデア出しやがれ!
 アイデアっつっても"いいアイデア"な!俺がブーケをゲットできるようなよぉ!」
「うーん・・・・アイデアねぇ・・・・。ま、僕は争奪戦に巻き込まれたくないのでアイデアだけですよ?」
「おう。早くよこせ」

ため息をつきながら、
アレックスはしぶしぶ話す。

「ま、"見えないのに場所が分かる"という夢のような手がかりがありますよ」
「?」
「匂いです。バラ特有の」
「ちょ、アレックス。声がでけぇ・・・・」

「「「「においか!!!!!!」」」」

会場全体がアレックスの言葉を聞いて一斉に静まる。
そして丹念に会場で匂いを嗅ぎ始めた。
全員が這い蹲って犬のように・・・・
異様な風景である。

「おい、アレックスてめ・・・。あんな声で言ったらバレるに決まってんだろ!」
「大丈夫です。これも作戦です」
「あん?」

アレックスがニコニコと笑いながら、
続きを話す。

「ウソのアイデアです。この会場内で匂いでってのは実際途方もない話ですよ?
 例えばドジャーさん。適当に床に香水をふきかけたとしてその床を探すのなんて・・・・」
「難しいな」
「ただ他の人への時間かせぎですよ。当分はこれで見つからないでしょう。
 まぁそれで本当の作戦なんですが。"見えないなら見える"ようにすればいいんです」
「は?ブーケのインビジを解くのは禁止って言ってたじゃねぇか」
「インビジを解かなくたって見えるようにはなりますよ」
「?」
「透明なら色をつければいいんです。いいですか?"見えないだけで物はあるんです"。
 だから例えばなにか色のついた液体とかをかけてやれば・・・・・」
「ほぉ〜・・・・なるほどな。でもそんなモン持ってねぇぞ。血でもぶっかけろってのか」
「ちょっと量が足りないですね。花束にかけるほどの血なんて出血多量ですよ。
 ま、色つきの液体ならなんでもいいんですよ。染色剤があれば一番なんですけど・・・・」

「そろそろインビジが解けるよー」

フィリーが言う。

「クッ!俺の100万!」
「ドジャーさん!あれです!」

アレックスが指をさす。
それはテーブルの上に置き並べられたワインだった。

「しゃぁ!!」

ドジャーはワインを数本掴み、
そして会場にぶちまけた。
ぶちまけては空になったワイン瓶を捨て
新しい瓶を持ち、さらにぶちまけた。

「わぶっ!」
「つめてぇ!!」

大量にぶちまけられたワイン。
会場中のワインがぶちまけられたのだ。
なんとも酒臭い。
なんともビショビショ。
濡れ舞台だ。

そして・・・・・。

「あった!!!」

ドジャーは思わず声をあげた。
赤い絨毯の真ん中。
そこに落ちている・・・ワイン色のブーケ。

全体が殺気立つ。
そして全ての全て。
全員がブーケに向かってとびつく。

「レースなら負けるかよっ!!!」

だが、
ドジャーには自信があった。
速さには。
そしてその通り。
いとも早く。
いとも高速でドジャーはブーケに手を・・・・・

「させないわ!!!」

手を付けた瞬間だった。
マリナがギターを振り切る。
ドジャーの腕が弾かれる。
吹っ飛ぶかと思うほど。

そして・・・・・・

「くっ・・・・・・」

ブーケは・・・・
空中に舞った。
最初の時のように。
綺麗なバラの花束は、空中に舞う。
さらに・・・・
見える。
ワインに濡れた部分だけじゃない。

ブーケのインビジが切れた。

「正真正銘!」
「取ったもん勝ちだ!!」

一斉に全員が空中に飛びつく。
まるで一つのくもの糸に飛びつくように。
地獄のようだ。
地獄にしては華々しすぎるが、
ともかく男達が空中のブーケに飛びつく。

「もらったぁああ!!!」

ドジャーの声。
自慢の瞬発力。
ドジャーの手が最初にブーケに・・・・・

「なっ!!!」

ヒュンッ!
と何かが横切った。
ドジャーの伸ばした手の先で。
何か大きなものが。
人?
ともかく・・・・

ブーケは消えていた。
誰かにとられたのだ。

「あぁ・・・美しいね」

式場の端で、
一人の男が花束を持っていた。

「バラの花束か・・・美しい。ボクにピッタリだね!」

男は花束を鼻に寄せ、
匂いを味わいながら目を瞑って快感に浸っていた。

「エ・・・」
「エクスポ!!!!」

エクスポはバラの花束を持ったまま、
それを掲げ、話す。

「ある人達はサクラが好きという。ある人はバラが好きという。
 何故か分かるかい?分からないだろうね。美徳の分からない人は・・・・」

エクスポは掲げたブーケを頬に寄せ、
ポーズをとる。

「前者・・・・サクラが好きっていう人は"ブシドー"って人達さ。
 サクラのように美しいまま散りたいってね。衰えを嫌うのさ。
 美しい時に散ることに美徳を感じ、人生を華々しく、輝かしくね。
 ・・・そして後者。バラが好きって人は"生というもの事態を愛する人"さ。
 衰えさえも楽しみ、それが人だと、それが人生だとね。
 生きる事の全てを愛するひと。美しい時もあるが枯れていくのもまた一興・・・・・・・ってね。
 ・・・・・・・・・・どちらもいいけどボクはこのバラのような人生がいいな」

「ど、どうでもいいんだよエクスポ!」
「あんたいきなり横から!」
「いいとこ持ってくんじゃねぇよ!!!」

「おっと・・・・心外だね。何もズルはしてないよ。
 それにボクのモットーは"最後に華々しく"・・・・・・・さ」

指をピンっと突き出してポーズを決めるエクスポ。
そして、
そんな彼に向けられる会場の殺気は・・・・・・

「まぁまぁ皆様方。今日はこの辺でお開きにしましょうかね」

レン爺がマイクでいう。
仲裁というか、
なかなかまとめるのがうまい。
年の功というやつだろう。

「うっせぇ!!」
「俺達は金が欲しかったんだよっ!!」
「フィアー!フィラー!」
「お前ら離婚してもっかい結婚しろ!」
「もっかいブーケ争奪戦だ!!」

「なぁにを言ってるんだか」
「わたしたちが離れるわけないじゃないのよねー」
「うん。そうだね。僕らの愛は永遠だもんね」
「ずっと離れないわ・・・」
「ぼくだって・・・」

「ひっこめー!!!」
「死ねー!!!」
「うぜぇー!!!!」

もう・・・
なんというか・・・
乱闘になった。
もうしょうがないというか。
うっぷんが溜まったというか。
会場全体が、
99番街の男達の、悪党達の大乱闘。
まぁ・・・
こうなるとは思ったけど・・・・。

「アレックス!帰るぞ!」
「へ?いいんですか?乱闘に混じってストレス解消すればいいじゃないですか」
「聖職者の言葉じゃねぇな・・・。ま、あんなもんに混じっても一銭の得にもならねぇんだよ」
「それもそうですね」
「エクスポ!てめぇも行くぞ!マリナの店だ!」
「ボクもかい?」
「わたしの店ぇ?」
「エクスポのおごりだからな!!!!」
「おごりですか!?やったー!」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ・・・・」
「いいじゃねぇか!大金入ったんだからよぉ!」
「いいじゃないですか!大金入ったんですから!」
「いいじゃないの!大金入ったんだから!」
「マ、マリナまで・・・・」
「あら、だってその分わたしに収入が入るんだからね。
 この調子じゃアレックス君の食べる量は凄そうだし♪」
「任せてください!!」
「・・・・・・・・・・・・・美しくない」
「カッカッカッ!」

笑いながら、
アレックス、ドジャー、マリナ、エクスポの4人は式場から出て行った。


「じーちゃんじーちゃん!」
「ほ?なんじゃフィリー」

乱闘騒ぎの中、
フィアーとフィラーもボコられている中、
レン爺とフィリーは笑顔で話す。

「結婚式楽しかったね!」
「おう。そうじゃの」
「またやりたいね!」
「ほほ、それはどうかの」
「ねーねー。じーちゃん。じーちゃんは僕が生まれてよかったって言ってたけど本当?」
「おう!あたりまえじゃぞい!」
「パパとママの子でも?」

レン爺は少し間を置いたが、
フィリーの頭に手を置き、
笑顔で返す。

「当たり前じゃ。さっきも言ったがお前はわしとばーさんの血を100%受け継いでる子じゃ。
 こんなことはそうそうないんじゃぞ?こんな嬉しいことはないわい。それにな・・・・・・」
「んー?」
「逆に言えばフィリーのじいちゃんはわしだけなんじゃぞい?
 他の子にはおじいちゃんってのは二人いるからの。
 こんな可愛いフィリーを一人じめできるジジィは幸せもんじゃ」

レン爺が笑いかけると、
フィリーもニィーっと笑った。

「じぃちゃんじぃちゃん!ぼくじぃちゃんが二人いるならもっといいな!」
「ほほ。わしが二人か?」
「うん!」
「このっ!可愛い子め!!」

デイル=レン。
デイル=フィリー。
デイル=フィアー。
デイル=フィラー。

孫愛。
ジジ愛。
兄弟愛。
恋愛。

どうやらこの一家は・・・・・少し異常だ。
異常な好きの関係。

だが、

この一家はどこの家庭よりも・・・・・・・・・・・・




家族を愛する心に満ち溢れている。


それだけは間違いなかった。













                 






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