「シンボルオブジェクト・・・・・アレックスのコレが・・・・」

ドジャーは目線をアレックスのバッグへと向けずにはいれなかった。

「アレックス・・・・おめぇ俺と比べ物になんねぇほどの大泥棒じゃねぇか」
「・・・・・・」

「大泥棒?そんな簡単な言葉で片付く問題ではございません
 そこのアレックス殿は言うならば世界を盗んだのですよ?」

「世界・・・・をだと?」

「シンボルオブジェクトは王座にあってはじめて効果を発揮する。
 鍵といったのはそのためでございます。
 逆に言えば王座になければ全てはストップする。世界財政も、政治も
 分かりますか?これが理由です」

「って事は・・・・」

「分かりましたでしょう。なぜ今の世界が無法時代なのかが
 なぜ世界のシステムが没落(ダウン)したのか
 そこのアレックス殿が一年前の攻城戦で持ち出したからですよ
 シンボルオブジェクトを持って逃げたのです。
 そこのアレックス殿が"システム・オブ・ア・ダウン"をもたらしたのです!!」

「アレックス・・・・おめぇ・・・・」
「・・・・・・・・・・」

アレックスは堅く閉じていた口を開く。

「このオブジェがある限り・・・・世界はいつまでも血を流しあうんです
 いつまでもオブジェを求めてギルドが戦争をし続ける・・・・・
 人がいる限り攻城戦は終わらない・・・・
 コレがある限り人同士が血を流し合う・・・・
 だから・・・・・持ち出したんです。世界は人が手を取り合って作るべきなんです」

「愚事をアレックス殿。その結果がこの荒れ果てた世界でございましょう」

「違う!これは世界の人々が乗り越えなければならない事なんです!」

「綺麗事をいう教師のようですねアレックス殿。
 女が男を殺し、男が女を殺し、親が子を殺し、子が親を殺す。
 人が泣き、人が刺しあい。人を恨み、人を嫌う。
 友が友を殺し、子が子を殺し、欲が愛を殺す。
 こんな世の中があなたの望みだったのですか・・・・」

「・・・・・」

アレックスは何もいえなかった。
いつも感じていた矛盾であった。
世界の幸せのためを思ってやった事が、世界の不幸を産んだ。
いつも自分に思いこませた。
これはいつかしなきゃならない事だったのだと
そしていつも思う。
もしかしてこれはしちゃいけない事だったのかと。

アレックスはただ黙り込むしかなかった。

「逆でございます。誰も対抗できないような巨大勢力さえあれば世界は平和になるんですよ」

ピルゲンがヒゲを整えながら言う。
反論できない。
ピルゲンの言う事が間違いなのか分からない。
自分のしたことが正解なのか分からない。

ただ残ってるのは
まだ見ぬ世界の平和と
悲しい悪夢のような現代。


「あーあーあーあーあーーーーメンドくせぇ」

ドジャーが首をコキコキと鳴らしながら言う。
空気を読んでないのかどうなのか、気のない言葉だった。
まるで食事後の食器の片付けの時のような言葉である

「つまりはぁ、このオブジェがこのアホピルゲンに取られたら
 また王国騎士団のアホでクソで強欲でチンケでムカツク政治が始まるって事だろうよ
 クソ喰らえだ。あんな我が物顔で街を歩く騎士団なんかもうまっぴらゴメンだね
 俺はアレックスに賛成だ。アレックスのした事が正しいかわかんねぇが
 ・・・・ただオメェらにまたその"力"を与えるのだきゃぁチクショーだ。ムカツクからな」
「・・・・・・・・・・・・ドジャーさん」
「別にお前が正しいとは言ってないぜアレックス。ただ騎士団の政治が平和とは思わねぇな
 ん〜で?ヤる気かピルゲン。御託は大体分かった。
 欲しいんだろ?コレが。オブジェがよぉ。俺も戦う理由がやっと分かってむしろご機嫌だ 
 オメェの顔がへこみでもしたらさらにご機嫌になるんだがよぉ」

「ふん。今回はこれにて退くとしましょう。あの方が新しい世界を作るためにはまだ早い
 世界がゴチャついておりますゆえ、少し掃除を先に・・・・としようと思います」

「逃げる気か」

「逃げる事になるのはむしろあなた方でございます。
 今回は《ハンドレッズ》だけでございましたが、
 今度から多くのギルドを"そそのかす"とします。分かりますか?
 あっという間にあなた方は裏で有名になるでしょう。オブジェを持っているのですから。
 そして多くのギルドが貴方がたを狙うでしょう。殺してでも・・・ね。
 世界の財産が手に入るのです。流れる血の量など駄賃程度にしか思わないでしょうな
 邪魔なギルド達がそれにて潰れあってくれるとこちらは楽なのですよ
 せめて貴方がた《MD》が真っ先に潰れないように御祈りさせていただきます」

「俺はテメェの"イカした"ヒゲが粉みじんになる事を祈るぜ」

「フフフ、私のヒゲはルアス一でございます
 それではご機嫌よう。今度会うのはまた先になるでしょうが・・・・・
 どうか私、『ブラック・ナイト(漆黒紳士)』ピルゲンの名を心にお残しくださいませ」

そう言ってピルゲンはおじぎをしながら闇に包まれて消えた。
王座に静寂が戻った。
いや、静寂などもとからなかったのかもしれない。


「ドジャーさん・・・・そういう事です。これでお別れです」
「何言ってんだテメェ」
「これからは今までと違います。迷惑の量がハンパじゃぁないです
 僕とドジャーさんはあくまで他人。迷惑をかけるわけには・・・・」

ドジャーがアレックスの胸倉を掴む。
そしてその目はハッキリ怒りを表していた。

「テメェふざけんなよ。やっと分かったぜ。どこかオメェが他人行儀な感じがしてたんだ
 こういう事だったんだなクソ。マジふざけんなよ!」
「・・・・・なんとでも言ってください。僕は《MD》の皆さんが大好きです。
 そのせいで甘えすぎました・・・・巻き込みたくないんですよ」
「それがふざけんなっつってんだ!巻き込まれてんだよすでに!
 だがうちの奴らはそんな事"へ"にも気にしちゃいねぇ!だがオメェはそれを裏切ってんだ!
 オメェがここでどっかいくっつーんならオメェは俺達は利用してたにすぎねぇんだよ!」
「ですが・・・・・」
「あーーーーーームカツク!」

ドジャーが力いっぱい掴んでいた手を突き放した。

「・・・・・・クソ」
「・・・・・・・それでも・・・・・ドジャーさん達に関係ない事です」
「あぁ、言っても聞かねぇんだな。たしかに俺達は関係ねぇわな」
「・・・・・・・」
「じゃぁこうだ!オメェ、今日から《MD》だ!」
「・・・・は?」

アレックスはキツネにつままれたような顔をする。
何を言ってるんだこの人はと

「それじゃぁもう無関係じゃねぇだろ!お?どうだチクショー!」
「・・・・・・ドジャーさんはバカですね」
「ぶん殴るぞおめぇ・・・・」
「アハハ・・・・・」

アレックスは口を止める。
そして悩んだ。
が、悩むのもやめた。
この人は何を言っても聞かない。
こういう人なんだ。
迷惑は大っ嫌いな人で
迷惑が大好きな人なんだ。

「・・・・・・・・・・いいんですか?」
「聞くなハゲ」
「ハゲてないです。ハゲっていう人がハゲなんですよ」
「俺もハゲてねぇよ」

アレックスはアハハと笑った。
ドジャーも軽く笑った。

「これから・・・・お世話になります」
「これから"も"だろ」
「そうですね。そして元王国騎士団アレックスはやめです
 今日から・・・・・ギルド《MD》のアレックスです」
「パンピーがパンピーに変わったな」
「アレックスはアレックスですよ。それでドジャーさんはドジャーさんです
 別に特別に扱いも変えませんからね?」
「いきなり変わってもキモいっての」
「じゃぁとりあえずマリナさんの店でおごってください」
「それしかねぇのかテメェは!」
「新メン祝賀ですよ!」
「自分で開くなっての・・・・」

ドジャーはため息をつく。
しかしその目に怒りはもう残っていなかった。
いつものドジャーである。

「まぁ・・・・それもいいけどよぉ、せっかくだから頼みがある」
「はい?」
「ここの金庫見せて」
「・・・・・・・・」

こんな時に自分も自分でマイペースじゃないかとアレックスはため息をついた。

「へ、減るもんじゃねぇしいいじゃねぇか!」
「ドジャーさんに見せたら減るかもしれないじゃないですか」
「・・・・・」
「・・・・・・・見るだけですよ?」
「は?いいのか?」
「見せるだけですって。それぐらいはいいでしょう」
「カッ!俺の手癖の悪さも考慮してくれよ」
「それは考慮できません」
「あぁん?」
「見たくないんですか」
「見たい」
「・・・・・・」

アレックスが王座へと歩みよる。
そして王座にオブジェをセットしようとした時だった。

アレックスの目にうつった。

王座の背後に広がる白骨達。
それはまだ残る騎士達の残骸。

そしてただひとつ。

白骨と化してもいまだ槍を持ち、立ち続ける者がいた。
鎧はサビ、槍もサビ、それでも骨としてそこにその者は立っていた。

「・・・・・・・・・知り合いか」
「・・・・・・はい。同僚です」
「死んでも諦めの悪い同僚だな」
「ディエゴさん・・・・・・あなたは死んでもなおココを守っているんですね・・・・」

アレックスはその場に崩れた。

「ドジャーさん・・・・金庫の話は無しで・・・」
「・・・・・あぁ」
「またつまらない過ちを犯す所でした・・・・・・
 ここはみんなが最後まで守りぬいた所です
 あの攻城戦で・・・・・結果的に僕は逃げ出した人間なのに・・・・
 さらに・・・・彼らの誇りと守るべきものまで僕は・・・・」

ドジャーはアレックスの肩に手を置いた。

「酒でも飲みにいくか」
「・・・・・・・・・・おごりですよね」
「今日"も"な」



これから先。
またアレックスとドジャーは共に生きていく事になる。

人の命を餌に生きてきた者と
人の命を助けて生きてきた者

その二人が並んでいる。

その二人の仲はもう"なんとなく"ではなかった。













S・O・A・D 〜System Of A Down〜第一部 
「物語は世界の端から(Biginnig for the 99)」











ここまで読んでくださっておつかれ様です!
そして先に言っておきます!
すぐに第二部はじめます・・・w

ただキリがよかったしアスファンのスレも長くなってきたのでってだけでして・・・
特に第一部とかに第二部に分ける必要もないんですが・・・・
とにかく少々オマケ要素を盛り込んだあとすぐに二部へ入ります。
特に休むことはありません・・・・w

これからもash缶








                 






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