「さぁて、刹那の勝負といくか」
「勝ち負け決めましょう」

アレックスは槍を構える。
ドジャーは右手にダガー。左手に爆弾を持った。

「爆弾じゃと・・・。坊主共、お主らも人並みの年月は生きておろうに
 "学習する"という事自体を学んでおらんのか?」

「悪いな。こちとら学校なんて行った事ねぇもんでな」
「でもこの爆弾が僕たちの最後の手です」

「何を考えておるのかわからんが・・・。来るというなら受けてたとう!このスワロンで!」

「食らいやがれ!」

ドジャーは爆弾をカージナルに向かって投げつけた。
いや、正しくはカージナルの足元の地面へ。
直接ぶつけても斬られてしまうが、地面にぶつければ・・・・
目測通り、地面に投げられた爆弾は炸裂する。
そしてその爆弾はジョーカーポーク。
途端に大きな煙を吐き出した。
煙はカージナルを飲み込む。
まるでネンドが小さなゴミを巻き込むように。

「無駄じゃ!ワシの剣に斬れぬものはない!」

カージナルは縦にソードを振り落とした。
振り切られた剣の風圧か、はたまたそれ以外、剣技の何かか。
とにかく煙はまっぷたつに割れた。
二つに分けられた煙。
カージナルの剣の先はパッカリと視界が開いた。
が、

「な!どこに行った小僧共!」

煙が空いたその先に
アレックスとドジャーはいなかった。
さきほどまでアレックスとドジャーがいたところはもぬけであった

「!!まさか煙の中に!」

カージナルの剣が舞う。
目にもとまらぬ早技とはよく言ったものだ。
そういうしかない。
こういう技の事をいうのだろう。
剣が煙をかき分けるように舞う。
煙が細切れになる。

そこにアレックス達はいなかった。

そして鮮血が舞った

「・・・・・がっ!」

カージナルの体から吹き出る血。
カージナルの周りには何もない。
部屋の中心で突然カージナルから吹き出る血。
だが流れる血。

「そういう事か・・・・」

カージナルが突然剣を振った。
そして止める。
すると何かが音を立てて落ちた。
それはドジャーのピアスだった。

何も無かったカージナルの傷口。
そこに何かが浮き出てきた。
それは槍とダガー。
浮き出てきたのは武器だけでなく。
アレックスとドジャーもだった。

「煙に隠れたと見せかけて・・・・本当はインビジで隠れてたんじゃな・・・」

「はい」
「正解」

アレックスとドジャーがカージナルの体から武器を抜く。
だがカージナルの体は崩れる事なく、
スワロンは今だピアスを落としたときのまま
ドジャーの耳下で止められていた。

「俺ぁインビジ・カモフラは苦手なんだが・・・・」
「なんとかうまくいきましたね」

「見事・・・・・じゃと言っておこうか・・・・」

カージナルはそう言って剣を落とした。
その老体はやっとガクンと落ちたが、
片ヒザと剣を支えになんとか倒れるのをこらえた。

「どうやら・・・・自分の世紀末を勝利で迎える事はできないようじゃの・・・・」

「もう十分勝ち続けた人生だったろジイさん」
「そうです。これほどの剣技・・・・そして剣聖の名を持って逝けるのはあなたくらいのものです」

「若造にそんな事を言われるようじゃワシもおしまいじゃな」

カージナルは血と共に口から笑みをこぼした。

「今回は人生で最後の夢だったんじゃが、それも適わぬようじゃ・・・・・・
 この剣に頂点として恥ずかしくない名声を与えられるところだったのじゃがのぉ
 思えば血まみれの人生じゃった。剣を追い求めるあまり、糧にするものが多すぎた
 一本の最強の剣のためにあまりの多くの命をワシは切り落とした」

カージナルが自分の両手を見た。

「ワシの両手は血まみれじゃ、いつでも血に染まっているようにさえ見える。
 ワシは剣のためならそれも已む無いと思っておったが、それを受け入れてしまってはならん
 そう思い、自分のギルドに名を刻んでおいた《ハンドレッズ(血まみれの両手)》と」

「百鬼夜行・・・・からついた名だと思っていましたけど」

「ギルド結成はそれより少し前じゃからな
 ともかくこれはあまりに多くの血を糧に育った剣じゃ
 しかしそのお陰で最強の剣にまで育った・・・・・
 お主らに頼みがある・・・・・ひとつだけ頼まれてくれんか」

「あん?なんだかんだっつってもテメェは敵だ。
 俺らに面倒事売りつけやがった。命まで買い取ろうとしやがった
 そのくせに頼みを押し売りか?ジョーダンじゃねぇぞ。ツリもねぇぜ」
「で?頼み事ってなんですか?」
「・・・・・おい」
「いいじゃないですか。もう終わったんですし」
「チッ、お前の悪いクセだ」

「まぁお主らに悪い話でもない。頼みというのはな、
 このスワロンを・・・・・使ってやってくれないかという事じゃ・・・」

「あん?このソードを?」
「こ、こんな凄い剣を・・・・」

「ワシはもうサビついてしまった・・・・。もう朽ちるだけの老体じゃ
 じゃがこのスワロンはまだサビない。まだまだ最強の剣として生けるのじゃ
 ワシは一世期の力を手に入れた。じゃがその剣はまだいける」

「ほぉ、ありがたい話だな」
「いいんですか?」

「あぁ、もちろん知りもしないお主らに与えたいわけじゃない。
 この剣を使うに等しい者に与えたいわけじゃが・・・・そちらの盗賊。
 おぬしギルメンに付き添ってワシの店に来たことがあると言ったな」

「ん?あぁ」

「99番街から来る常連といえば『人斬りオロチ』の事じゃろ。
 奴に渡してくれ。奴なら使うに値する。剣を磨き、剣を愛する奴なら・・・・
 じゃがもしその剣がサビたり折れたり、持ち主がいなくなったり、
 そうして使われる事がなくなったら、そうしたらワシの墓に刺してくれ。
 その剣とは生ける時も一緒だったが死せる時も一緒でいたい」

「わがままなジイさんだな」
「分かりましたカージナルさん。受け取りましょう」
「カッ!約束忘れたら知らねぇからな!」

「その時はその時でいいじゃろう。ワシはお主らに託したのじゃからな
 が、なぜかその剣は結局ワシのもとに戻って来そうな気がするんじゃ
 100年近く一緒にいたせいかな。ワシの愛した剣。100年の愛じゃ
 ワシの元に戻ってきたらその時、墓の中から名付けてやろう・・・・・
 "センチュリー・ラヴァー"と・・・・・そして・・・・・      」


「負けてまでいつまでも生き延びているんじゃない老いぼれ」


突然カージナルの体から血が噴出す。
剣・・・・で斬られたようだった。

「役立たずの老いぼれが」

剣がもう一振りされる。
もう一度飛び散る血しぶき
その血しぶきがアレックス達の顔に飛び掛ったと思った矢先
カージナルはすでに息せぬ老体と化した。

「・・・・・・・誰だ!!!」
「クソったれが!」

男。
黒づくめの。
その男は突然黒い何かが渦巻くようにして消えた。

「クソ!」
「逃げたか!」

「逃げません。こちらです」

アレックス達の背後にその男はいた。
黒いマントのようなもので体をくるんでいる。
しかしその男をアレックスとドジャーは知っていた。
黒づくめの格好。
黒いハット。
そして
特徴のある・・・・・ヒゲ

「一日ぶりでございますねアレックス殿。ドジャー殿」

「ピ・・・・」
「ピルゲンさん・・・」

ピルゲンはまた黒い闇に渦巻きながら消えた。
そして今度は別の所から突然現れる。

「そこそこ楽しんではもらえたでしょうか?」

ピルゲンはヒゲを整えながら言った。
その下からは不敵な笑みこぼれる。

「どういう事ですかピルゲンさん・・・・なんであなたが」

「簡単な事でございます。全て私が仕組んだ事。
 あなたが持っている"ソレ"のためにね」

フフフと笑うピルゲン。
黒い体は闇に包まれている。

「少し話をさかのぼりましょうか、私は実験をしておりました。
 "アスガルド"についての実験です。すべてはあの方のため。
 最初の実験は・・・・まぁそこそこのデータが得られました。
 実験体の名前は・・・なんでございましたっけ・・・・・・・・
 ぇぇと・・・・あぁ!そうでございました。アンジェロとモリスという輩でございます」

不思議と話の急展開に頭がついていっていた。
突然現れたピルゲンにも、出ると思っていなかったアンジェロとモリスという名前にも
とにかくそれを全て納得させるような存在感がピルゲンにあった。
闇。悪。
それらが全て目の前のピルゲンに繋がっているような存在感が。

「ピルゲンさんが・・・・」
「奴らに羽を与えたってぇことか」

「そうでございます。人体実験というやつでございましょうか
 それぞれそこそこの野心を持つ一般人を選び、手に入ったのは面白いデータでございました。
 羽を手にした物はそれぞれ"白(自尊心)"と"黒(悪意)"を持ちました
 まぁクズをモルモットにしたせいでそう長くは持ちませんでしたが
 アンジェロとモリス。両方を倒したのが貴方達というのは面白い偶然でもありました
 私に代わり、モルモットの処分ご苦労様でございました」

ピルゲンは片手をたたみ、大きくお辞儀した。

「《ハンドレッズ》の『ライトニング』ブルってやつが羽をもらうとかどうとか言っていたが・・・・・
 そりゃぁピルゲン。テメェからってことか」

「そうでございます。まぁうまく"ソレ"を手にする事ができたなら
 次のモルモットにしてやってもよかったのでございますけどね
 アスガルドのゲートは余っておりますゆえ・・・・・。
 まぁしかし、これは計画の一旦。計画の趣旨はやはり"ソレ"にあります」

ピルゲンはアレックスの腰を指差した。
高級マネーバッグ。いや、中の王冠(クラウン)を

「まぁ前置きはともかく今回の一件は完全に"ソレ"を手に入れるためだけの話でございます
 "ソレ"を手に入れなければあの方の計画は完成しない
 そこでこの《ハンドレッズ》をそそのかし、利用したのです」

「・・・・・・・・」
「カッ!街でジェイと会ったあと。すれ違いを狙ったかのようにオメェが出てきた。
 怪しいとは思ってたがこういうことだったのか」

王座の扉が開く音がした。

「・・・・・・・Fxxk・・・・ピルゲン・・・・・ユー!どういう事ダ!」

そこには『カメレオンブルー』のジェイがいた。
しかし青い服装は赤く染まっていた。
全身から血を垂れ流し、
その上片目が潰れている。
《MD》の誰かにやられたのだろう。

「なんだ貴様。命からがら生き延びてきたのですか」

「シット!訳をスピーキングしろって言ってるだろがファッカー!!!」

ピルゲンが突然いなくなった。
いや、いつの間にかまた移動していた。
また闇に包み込まれるように瞬間移動したようだ。
ジェイの目の前に。

「自惚れるなクズのくせに。貴様がモンスターを扱えるようになったのは誰のお陰ですか?
 私がその"フランゲリオンのムチ"を与えたからでございましょう
 モンスターは・・・・ジェイ。貴方に従っているのではない。
 そのもとのフランゲリオンに従っているにすぎない。調子にのるな!!!」

突然ピルゲンの手に黒い剣が現れた。
そしてその剣を振り落とした。

何かが吹っ飛んだ。
それはジェイの左腕だった。
ムチを持ったままジェイの左腕が吹っ飛んだのだった。

「な!!!ォマイガッ!!マイアーム!?!Fxxk!!!!!チクショー!」

ジェイは体をひるがえし
一目散に逃げ出した。
速い。
あっという間に王座の入り口である。

「クズが」

突然ジェイの頭上に黒い剣が現れる。
そしてその剣はジェイを貫いた。
青い服装が真っ赤に染めこまれた。
そしてジェイは動かなくなった。
青が赤に変わったという事は止まれだった。
永遠に。

「さぁ、話を続けましょうか」

「な、なんだあの剣・・・・どこから・・・・・」

「どこから?たいした問題ではこざいません。あれはホンアモリでございます
 ホンアモリは攻撃力のパワーを他人に与えるものでございますが、
 その力のエネルギーをただ固形化しただけでございます」

ピルゲンの手に突然ボォッと黒い剣が現れる。

「妖刀ホンアモリ・・・といったところでございましょうか」

また妖刀ホンアモリは消えた。

「カッ!ピルゲンてめぇ。なんでアレックスの王冠を狙う!これは一体なんなんだ!?」

「おや、アレックス殿から何も聞いてなかったようでございますね
 じゃぁ記念に教えてあげましょう。なぜ私がそれを欲しがるのか」

ピルゲンの姿が闇に飲まれながらまた移動する。
そして王座の前に立った。

「今回なぜこのルアス城を選んだか。まぁ調度よかったのです
 その王冠は簡単に言えば力なのです。いや、鍵といいましょうか
 王国騎士団の莫大な財力。そして権力。すべてはその王冠によって生み出されるもの
 放題な王国騎士団の財産。そして今は開かれる事のないギルド金庫の財産
 すべてはここの地下金庫に納められています。それはその鍵でございます」

「莫大な金庫の鍵って事か」

「おしいですね。ソレは力。税金をはじめ、全ての政権を操る力。
 ソレを持つ者が世界(マイソシア)の頂点に立つ事ができるのです
 分かりますか?何十、何百年もの間、多くの者達が攻城戦という形をとり、
 それを求めてこの地(ルアス城)で血を流し合ったのです

 その・・・・・・・    "シンボルオブジェクト"を求めて」









                 






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